音無しの剣

音無しの剣

横山光輝のプロデビュー作となった時代劇漫画。江戸時代を背景に、必殺剣を編み出したことで一躍有名となった少年剣士が、次々と襲いかかる剣豪たちとの決闘を通じて次第に成長していく様子を、時にシリアスに、時にコミカルに描く。戦前から戦後にかけて大流行した剣豪小説や剣劇・映画などの影響が色濃く反映された娯楽作品であると同時に、剣の道を極める武士としての大義と、人を殺めることの罪悪感との相克に悩む少年剣士の青春譜的な側面を持った作品。

正式名称
音無しの剣
ふりがな
おとなしのけん
作者
ジャンル
時代劇
レーベル
小学館クリエイティブ
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概要・あらすじ

道場で剣の極意を追求する少年剣士の高柳又四郎は、必殺・無敵の剣法「音無しの剣」を編み出し評判となるが、同時に世間からは剣の道をはみ出した「魔剣」と揶揄され又四郎は煩悶する。そんななか、又四郎の前に浪人の村雨次郎が現れ、真剣勝負の末に又四郎は間一髪で勝利する。さらに又四郎は、兄弟子の寺田正太郎を襲った卑怯者の市川兄弟を打ち破り、自身の剣術に磨きをかけていく。

それから3年後、復讐に燃える次郎が再び又四郎の前に姿を現す。又四郎は決死の覚悟で次郎との最後の戦いに挑むのだった。

登場人物・キャラクター

高柳 又四郎 (たかやなぎ またしろう)

「中西一刀流道場」の門弟として剣を学ぶ武士。まだ元服前の少年ながら道場一の実力者で、自身が編み出した剣法「音無しの剣」の使い手。究極の剣法に命をかける求道者だが、その一方で世間から非難を浴びて思い悩む、真面目過ぎる性格。

村雨 次郎 (むらさめ じろう)

道場破りをしながら諸国を旅している浪人。独自に編み出した剣法「村雨流飛龍剣」の使い手。実戦用の剣を標榜し、道場の竹刀剣法を見下している自信家の剣士。一度惜敗した高柳又四郎の「音無しの剣」を破るために3年間もの歳月を修行に費やした。又四郎の生涯のライバル。

寺田 正太郎 (てらだ しょうたろう)

「中西一刀流道場」の門弟で高柳又四郎の兄弟子。妻と息子の3人家族で暮らす武士。人当たりのいい人格者で、剣の道に悩む又四郎の良き相談相手でもある。世話をした市川伝二郎に逆恨みされ、闇討ちに遭って負傷してしまう。

市川 伝二郎 (いちかわ でんじろう)

大捨流の使い手の武士で市川兵斉の兄。寺田正太郎宅にたびたび金の無心に訪れたうえに、無謀な依頼を断られたことで逆恨みし、弟の市川兵斉とともに正太郎を闇討ちした卑怯者。正体を見破った高柳又四郎に対し、弟とともに2対1で対決に挑む。

市川 兵斉 (いちかわ ひょうさい)

大捨流の使い手の武士で市川伝二郎の弟。抜打ちの名人で、兄をも上回る卑劣でひねくれた性格の持ち主。兄の無謀な依頼を断った寺田正太郎を逆恨みし、ともに闇討ちを仕掛けた。正体を見破った高柳又四郎に対し、兄とともに2対1で対決に挑む。

隼の源太 (はやぶさのげんた)

街道ですれ違いざまに通行人の財布を抜き盗るスリ。身のこなしの素早さと逃げ足の速さが自慢。村雨次郎に取り押さえられたことを根に持ち、復讐の機会を狙っている執念深い悪党。目明かしの兄がいる。

鹿島の老人 (かしまのろうじん)

諸国を漫遊している伝説の老人。剣術・槍術・忍術など武芸全般に通じた達人で、特に棒術に関しては、過去に一度も敗れたことがないというほどの偉大な武芸者。高柳又四郎に剣の道を説く。

高柳 みどり (たかやなぎ みどり)

高柳又四郎の妹。寺田正太郎夫妻とも親しくしており、寺田夫妻に誘われて兄とともに温泉への旅に同行する。美女ながら蛇を素手で捕まえるなどお転婆な一面があり、兄の窮地の際には刀を持って駆けつけるほどの行動力がある。

その他キーワード

音無しの剣 (おとなしのけん)

高柳又四郎が剣の道に悩んでいた際に、暴漢に襲われたことがきっかけで編み出した剣法。音を立てず、一瞬の早技であっという間もなく敵を倒すという秘技。あまりの無敵ぶりに、世間からは「邪剣」「魔剣」と恐れられている。

村雨流飛龍剣 (むらさめりゅうひりゅうけん)

村雨次郎が自力で編み出した剣法。左手で手裏剣を投げながら右手に持った長刀で斬りかかるという独特の変形二刀流。次郎は、諸国を漫遊し各地で道場破りをしながら、この剣法に磨きをかけてきた。道場の竹刀剣法とは一線を画した、実戦的な真剣勝負用の剣法である。

書誌情報

音無しの剣 小学館クリエイティブ

(2013-01-21発行、 978-4778032449)

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