デスゲーム×明治時代の王道時代劇
本作は「デスゲーム×明治×サムライ」をテーマにしたエンターテイメント時代劇で、廃刀令から数年後の明治時代の日本を舞台にしている。明治11年、京都の天龍寺に292人の、剣術をはじめとする武芸に秀でた強者たちが集められる。謎の主催者、槐(えんじゅ)の号令により始まったのは、勝者に莫大な賞金が与えられるデスゲーム「こどく」だった。このゲームは七つの掟のもとにスタートし、武人たちの頂点に立つ者「戦神(いくさがみ)」を決定するための壮絶な戦いでもあった。さまざまな事情や過去を抱える武人たちが、賞金と自らの誇り、そしてそれぞれの命を懸けて挑む陰謀と暴力のバトルロワイヤルが、迫力満点の剣客アクションと共に展開される。
元・人斬りの剣豪が主人公
家族が流行病に倒れ、治療のために多額の金が必要となった愁二郎が主人公を務める。最古の流派「京八流」の使い手であり、かつては人斬りとして暗躍し、戊辰戦争や上野戦争にも参加したという過去を持つ。一度は剣を捨てた愁二郎は、二度と人斬りには戻りたくないと強く思っていたが、愛する家族のためにやむを得ず「こどく」に参加することになる。そんな愁二郎は、こどくの序盤で12歳の少女、香月双葉と出会う。双葉もまた、家族を流行病から救うために大金が必要な事情を抱えていた。少女であるがゆえにほかの参加者から狙われやすい双葉を見捨てることができない愁二郎は、自分だけでなく彼女の命も強敵から守りながら、こどくに挑むことになる。こどくの参加者の中には、過去の愁二郎を知る者も多く、復讐や腕試しのために挑んでくる者も存在する。
東海道の七か所を辿るデスゲーム
参加者たちが「こどく」に挑む理由は多岐にわたるが、大半は巨額の賞金を目指しており、個性的な参加者たちの背景や事情を掘り下げながら、愁二郎たちがどのように強敵を打ち破り、生き残っていくのかが見どころとなっている。時には、弱者を装って周囲を欺く立川孝右衛門のように、策略を駆使する参加者も登場し、武術の腕前だけでは解決できない心理戦が繰り広げられることもある。また、かつて人斬りだった愁二郎の秘密や過去もこどくと深くかかわっており、謎に包まれた主催者たちがこのデスゲームを催した真意や、その背後に潜む陰謀も徐々に明らかになっていく。本作は、参加者たちが東海道の七か所を辿りながら東京を目指すため、特定の場所に留まらず、進行に伴ってデスゲームの舞台が変わるのも特徴となっている。
登場人物・キャラクター
嵯峨 愁二郎 (さが しゅうじろう)
デスゲーム「こどく」の参加者で、「百八」の札を持つ男性。ふだんは穏やかな性格の持ち主だが、最古の剣術「京八流」を使う剣豪で、奥義「武曲」を使う。こどくに参加した。実は幕末に暗躍していた人斬り「刻舟」であり、明治維新後は剣を捨てたあとに出会った妻と平和に暮らしていた。もう人を斬りたくないと考えていたが、医者である妻と子供が流行病のコロリに感染し、家族やほかの患者たちを救うために大金が必要となり、こどくに参加するために再び刀を取ることになる。こどく開始後に助けた双葉と行動を共にすることになる。好きな食べ物は団子。
香月 双葉 (かつき ふたば)
デスゲーム「こどく」の参加者で、「百二十」の札を持つ少女。黒髪をポニーテールにまとめており、年齢は12歳ながら、旧亀山藩士でもあった父親の栄太郎から天道流を学んでいたため、腕に自信がある。武器は短剣で、戦闘時にはその技術を駆使している。栄太郎は天道流の指南役や警視隊として活躍していたが、戦争で命を落としてしまう。その後、流行病のコロリにかかった母親を救うためにこどくに参加することを決意した。ほかの参加者に襲われた際、愁二郎に助けられ、その後は行動を共にするようになる。似た境遇の愁二郎に対しては親しみを感じており、深い恩義と敬意を抱いている。
その他キーワード
こどく
七つのルールが定められた奇妙なデスゲーム。勝者には巨額の賞金が支払われる。怪文書によって京都の寺に集められた292人の武人たちが参加者として名を連ねている。すべての参加者には木札が配られ、各木札は1点の点数となっている。参加者たちはこの木札を参加者同士で奪い合いながら、東海道の七か所を辿って東京を目指すという基本ルールが設定されている。主催者は、能面のような不気味な顔立ちをした男性、槐で、彼やその部下に対して危害を加える行為は禁止されている。警察関係者の中には、このゲームが明治政府に反乱を起こす兵士を集めるためのものだと考える者もいるが、真の目的は依然として不明である。
クレジット
- 原作
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今村 翔吾
書誌情報
イクサガミ 4巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2023-04-21発行、 978-4065313343)
第2巻
(2023-07-21発行、 978-4065323939)
第3巻
(2023-12-21発行、 978-4065340134)
第4巻
(2024-05-22発行、 978-4065355831)