サトコとナダ

サトコとナダ

アメリカの大学に通う日本人留学生のサトコと、サウジアラビアからの留学生のナダが、一つ屋根の下で友情を育んでいく姿を描いた異文化コミュニケーション4コマ漫画。サトコの目を通して、イスラム教のしきたりや文化がわかりやすく解説されている。また、各巻の巻末には短編のボーナストラックが収録されている。Twitterアカウント「ツイ4」と、星海社ウェブサイト「最前線」に2017年1月から2018年11月まで掲載された作品。

正式名称
サトコとナダ
ふりがな
さとことなだ
作者
ジャンル
友情
レーベル
星海社COMICS(星海社)
巻数
既刊4巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

アメリカの大学に留学したサウジアラビア出身のナダは、ルームメートを募集し、日本から来た留学生のサトコがそれに応募した。初対面で、サトコはニカブ(全身を覆うスタンダードなペール)姿のナダに衝撃を受けるが、一つ屋根の下での生活がスタートすると、サトコはニカブに隠されていたナダのチャーミングな一面に気づかされる。そしてサトコはナダをもっと知りたいと、イスラム圏の文化への理解を深めていく。こうして、社会人を経て大学生となったアメリカ人のミラクルも仲間に加わり、引っ込み思案だったサトコに変化が訪れる。

第2巻

ある日、ナダの兄のラフマンが、ナダの結婚相手であるアブダーラの写真を持って、ナダとサトコの部屋を訪れた。イスラム圏では結婚式で相手に初めて会うという事も珍しくはなく、ナダは父親や兄が認めた男性を受け入れる覚悟はできていたが、イスラム圏での女性の結婚は運による部分も大きく、複雑な心境になっていた。そんなナダを心配する一方、サトコは意見が違っても相手を尊重するのが通常であるアメリカでの生活で、心身共に解放されていく。仲間はずれを恐れ、いつしか人に合わせるようになってしまったサトコは、自分を取り戻すため、アメリカ留学を決心した経緯があったのだ。

第3巻

ナダの婚約者のアブダーラは自分の目で結婚相手を判断したいと、突如ナダのいるアメリカへやって来る。ナダの兄のラフマンから事情を聞いたサトコは、何も知らされていないナダを気遣い、ナダとアブダーラとを会せないように右往左往する。しかしアブダーラのしっかりした人となりを知ったサトコは、ナダとアブダーラが一目だけでも会えるよう、一役買う。そして万が一、結婚したナダに危機が訪れた際には、自分がどこへでも駆けつける事を秘かに決心するのだった。

第4巻

サトコと同じ日本人留学生のマチコは、ホームステイ先の家族ともうまくいかず、ナダという親友を得たサトコを羨ましく思いながら帰国した。一方、アメリカでナダを一目見たアブダーラは彼女への思いを募らせ、ついにシャウファを申し出る。シャウファに立ち会ったサトコは、大事な人の人生が大きく動く場面に感銘を受ける。そんな中、サトコの帰国が近づき、サトコとナダは最後の思い出作りにと、ニューヨークへの旅行に出掛けるのだった。

メディアミックス

関連作品

本作『サトコとナダ』の関連作品として、イスラム入門書『「サトコとナダ」から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史』が、星海社新書より2018年12月に発売された。イスラム教やムスリム(イスラム教徒)についてわかりやすく解説し、本作を引用しながら、ムスリムと隣人として付き合うための現実的な共生についても触れられている。著者は椿原敦子と黒田賢治。

登場人物・キャラクター

サトコ

日本からアメリカの大学に留学している女子大学生。髪形はラフなショートボブヘアにしている。スリムな体形で、目が細く背が高い。サウジアラビア出身のムスリムのナダとルームシェアする事になり、当初はニカブ姿のナダとうまくやっていけるのかと不安を抱いていたが、彼女のチャーミングな一面を知るうちに、イスラム圏の文化に興味を持つようになる。小学生の頃、友達から無視された過去があり、それ以降は嫌われるのが怖くなり、周りに合わせるようにして生きてきた。次第に誰も知らないところへ行きたいという気持ちが高まり、自分を取り戻すため、アメリカへの留学を決意した。自分の意見をしっかり持っているナダの影響を受け、物おじせずにはっきりモノを言えるようになり、おしゃれにも気を使うようになった。大学内のカフェテリアでパートとして働いており、仕事ぶりは非常にまじめ。ケーキが大好物。フルネームは「内村サトコ」。

ナダ

サトコと同じアメリカの大学に留学している女子大学生。サウジアラビア出身のムスリムで、年齢は23歳。長い黒髪の美人で身長は低い。チャーミングな性格で、自分の意見をしっかり持っている。新しい事に挑戦しようとルームシェアの募集をかけた。宗教上、外ではヒジャブ(一般的なかぶりものでデザインや色は多様)とニカブ(全身を覆うスタンダードなペール)で、全身を覆い隠しているが、実はすごくおしゃれに敏感。仲間ばかりが集う「おうち・女子会」では、自分の好きなファッションを謳歌している。自国では満足に治療を受けられない人々が多いため、将来は医者になりたいという夢を持つ。父親や兄のラフマンが認めた相手と見合い結婚をする事を受け入れているが、見合い相手がアブダーラに決まった際には、複雑な心境に陥った。ちなみに、サウジアラビアは一夫多妻制で、夫の方から勝手に離婚できる。自国の話をすると、先入観からマイナスのイメージを持たれてしまう事が多いが、なんでも気持ちよく聞いてくれるサトコに心を許している。チョコレートが大好物で、日本の漫画やアニメが好き。

ミラクル

サトコと同じアメリカの大学に通う、ショートヘアのアメリカ人女性。社会人を経て大学に入学したため、年齢は29歳。サトコとナダがよく行くレストランで働いており、男性にナンパされているところをサトコに助けられて以降、二人と交流を深める。熱心なキリスト教信者で、教会のボランティア活動ではリーダーシップを取っている。ネイルをぬったりケアするのが得意で、肉が大好物。パキザとは勉強の大切さを感じた事で共感し、打ち解けた仲になる。

ケビン

サトコと同じアメリカの大学に通う、日系アメリカ人3世の男子大学生。ラフなショートヘアにしている。大学には授業とは別に英語と多国語を教え合えるサークルがあり、サトコの会話練習のパートナーを務めている。日本で働きたいという夢があるが、見た目がアジア人そのものなので、英語を話しそうな外国人が採用されがちな日本での就職に不安を抱えている。日本のアニメが大好きなオタクで、日本の学校生活に強いあこがれを持つ。ナダの婚約者のアブダーラを家に泊める事になり、共通の趣味であるアニメを通して親交を深める。ダニエルとはアニメのオタク仲間。サトコに好意を持っているが、アメリカは自分のフィールドなのでアプローチするのはフェアではないと考え、自分が日本に行った時に同じ気持ちでいたら、サトコに気持ちを打ち明けようと思っている。

パキザ

サトコと同じアメリカの大学に通う女子大学生。アフガニスタン出身のムスリムで、ナダの友達。ふんわりとしたショートヘアで、外では目の部分が網目になったブルカ(全身を覆うペール)を着用している。落ち着いた性格ながら、頼りになるのかならないのかよくわからないところがある。夫のアジーズと、娘のマリアムと暮らす28歳の既婚者。ミラクル同様、社会人を経て大学に入ってよかったと考えている。将来娘がどちらの国を選んでもいいようにと、アメリカとアフガニスタンの二重国籍を取得している。アフガニスタンには複雑な気持ちを抱いており、帰れる故郷がある事は幸せだとサトコたちに説いた。

ラフマン

ナダの兄。やや薄毛で顎ヒゲを生やしている。ナダの家では女性が一人で暮らす時、親族の男性一人が近くにいなければならない決まりがあるため、ナダが住む場所の隣町でSEをしている。ナダの結婚相手であるアブダーラの写真を持ってくるなど、家族の中ではナダの結婚を進める役割を担う。アブダーラが突如アメリカを訪れた際には、二人を会わせないよう、サトコと共に右往左往する。その後、勝手に結婚を決められたナダの苦悩を知り、彼女の味方になろうと決心する。

アブダーラ

ナダの婚約者であるサウジアラビア人男性で、年齢は26歳。口元にホクロがあるイケメンで、ウェービーなショートヘアにしている。婚約者をこの目で確かめるため、親には黙ってアメリカへやって来て、大学内でナダを探しまわっていた。写真だけで結婚を納得できるわけないと考えていたが、写真のナダを気に入っており、ナダを一目見てからは、ナダの事ばかり考えるようになる。大学を卒業後、父親の会社に1年勤めて別の会社に就職した。結婚相手の条件として、親に無理難題をつきつけた事でナダと巡り合えたため、今ではわがままを言ってよかったと思っている。シャウファの時に初めてナダの顔を見て、涙を流すなど純粋な一面があり、結婚したらナダと砂漠を車で爆走する事を夢見ている。ナダの医者になる夢に理解を示している。アメリカに来た際には、観光ガイドを務めたケビンとアニメで意気投合し、帰国してからも連絡を取り合う仲になる。ケビンからは「アブー」と呼ばれている。

ダニエル

サトコと同じアメリカの大学に通う男子大学生。前髪が長いショートヘアで、大きな眼鏡をかけている。韓国出身で、ケビンと仲がいい。「トランスフォーマーシリーズ」の大ファン。ケビンとオタク的な価値観が同じで、オタク独特の会話で盛り上がり、周りを困惑させる事も多い。酔うと兵役の話しかしなくなるため、女性がいる席での飲酒は控えている。

ミラクルの祖母 (みらくるのそぼ)

ミラクルの祖母で、ロングヘアを緩く結んでいる高齢の女性。教会のボランティア活動でサトコと出会う。教会に通う事が元気の秘訣だとはりきっているが、やや痴呆気味なところがある。敬虔なクリスチャンで、ボランティア精神が高い。

マチコ

サトコと同じアメリカの大学に留学している日本人の女子大学生。体形はスリムで、ポニーテールの髪形にしている。コンサートでサトコと知り合い、日本人コミュニティにサトコを誘った事から親しくなった。二か月の短期ステイながら、ホームステイ先の家族がビジネスライクであり、日本人コミュニティをよりどころとするようになった。帰国する際には、辛かった胸の内をサトコに打ち明けている。当初、ムスリムに漠然とした偏見を持っていたが、実際にナダの人柄に触れ、偏見を改めるに至った。

サトコの母 (さとこのはは)

サトコの母親。ウェービーなミディアムヘアをハーフアップにした、眼鏡をかけた優しげな女性。ナダの事をサトコからよく聞いていたため、レストランで見つけたハラールのマークの付いた食べ物をナダのマークだと言って、帰国したサトコの涙を誘った。

その他キーワード

ファトワー

イスラム法学に基づき、ムフティー(イスラム教指導者)によって発令される勧告や布告、見解、裁断。たとえば、インドネシアではスマトラ沖地震の時、海外からの支援物資は豚肉以外何を食べてもいいというファトワーが、東日本大震災の時には日本への哀悼の意に加え、支援をうながすファトワーが出た。これ自体に法的拘束力はないが、ファトワーを出したムフティーが死んだ場合は、彼以上の権限を持つムフティーや組織が解除できる。

シャウファ

結婚する事になった二人がお互いに家族同伴のもとで顔を合わせる儀式で、アラビア語で「見る」という意味がある。ここで花婿は花嫁の顔を初めて見る事ができる。ナダを気に入ったアブダーラがナダの兄のラフマンに申し出て、ナダとアブダーラのシャウファがアメリカで実現した。付き添い人として、アブダーラの兄のラシード、姉のアフレイマ、ラフマン、サトコが参加。シャウファで意気投合すると、電話やデート(男性親族同伴)をして絆を深め合いつつ、親族同士が本格的な結婚に関しての相談を進める事になる。

ハラール

イスラム教徒が安心して食べられる食品で、ハラールのマークが付いている。サトコはナダのため、ハラールマーク付き商品を選んで自炊している。肉に関しては、豚肉など一部の動物は食べられないが、特別な処理の仕方をしているものは食べられる。ハラールの肉がどうしても手に入らない場合は、キリスト教圏の肉など、例外的に大丈夫な場合もある。ちなみに、一部の醤油が正式にハラール認定され、ナダはサトコといっしょに刺身や寿司を食べられるようになった。

クレジット

監修

西森 マリー

書誌情報

サトコとナダ 4巻 星海社〈星海社COMICS〉

第1巻

(2017-07-08発行、 978-4063695724)

第2巻

(2017-12-08発行、 978-4065107706)

第3巻

(2018-04-28発行、 978-4065114322)

第4巻

(2018-12-12発行、 978-4065138250)

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