あらすじ
Karte1~2
看護師の雪野鈴は、父親の借金の形にヤクザに誘拐され、無免許医・犬童辰次とモグリの保険屋・犬童亥三たちが営む犬童病院に身売りされてしまう。裏社会で生きる者たちが運び込まれる犬童病院で、看護師の主な仕事は暴れる患者を抑えつけること。鈴が犬童病院につれてこられてしばらくすると、左腕を切断されたチンピラ・ヒロとその彼女が犬童病院を訪れる。無事辰次の手術は終わるが、そこに土佐組のヤクザ甲斐が現れる。土佐組の事務所にボウガンを撃ち込み、その犯人として名乗り出たヒロに対して、甲斐は落とし前として左腕を切断していたのだった。手術後のヒロを追ってきた甲斐は、面子を保つために再度ヒロの左腕を切断しようとしていた。しかし、ボウガンを撃ち込んだ犯人がヒロではないということが、彼を診断した辰次によって明かされる。ところが、甲斐は「自分に嘘をついていた落とし前」として、手術後に寝ているヒロの首を切りつけ、犬童病院を立ち去っていく。辰次は再手術のための治療費を、ヒロの彼女に請求するが、彼女に支払い能力はない。ヒロを助けようともしない辰次たちを見かねた鈴は、自分の戸籍を売って治療費を肩代わりしようとするのだった。
Karte3~6
土佐組のヤクザの元愛人で覚醒剤中毒患者の結城春乃が、堕胎手術のために犬童病院を訪れる。しかし、人工中絶可能な期間は大幅に過ぎており、辰次たちは「一度出産した後で胎児を処分する」ことを提案し、春乃もそれを許諾する。ところが、生まれてきた子どもは双子だった。辰次は二人分の処分料には足りないと、春乃に対してどちらの子どもを処分するか選ばせようとする。
登場人物・キャラクター
犬童 辰次 (いぬどう たつじ)
弟の犬童亥三とともに犬童病院を営む無免許医の男性。童顔で小柄な体格。凄腕の外科医だが、どのような経緯で無免許医になったのかは不明。幼いころから裏社会で育ち「裏社会では他人の役に立たなければ生き残れない」という信条を持つ。そのためルールに厳格で、非情な一面も持つが、治療費さえ払えばどんな手術でも成功させる。二十数年前に自殺未遂をし、以降植物状態となった母親の治療費を稼ぐため、闇医者を行っている。 死亡した看護師の代わりに、雪野鈴の身柄をヤクザから買い受ける。
犬童 亥三 (いぬどう いぞう)
兄の犬童辰次とともに犬童病院を営む男性。強面で、格闘家のような大柄な体格の持ち主。モグリの保険屋であり、事前に掛金を払った患者の治療費を負担している。また、治療費を払えない患者に対し、臓器や戸籍の売買などを紹介したりもする。ふだん保険屋としてどのような手段で稼いでいるのかは不明。
雪野 鈴 (ゆきの りん)
看護師の女性。父親の借金の形にヤクザに誘拐されたところを、犬童辰次によって買われる。以降、犬童病院で看護師として働くようになる。当初はルールに厳格な犬童兄弟たちの生き様を目の当たりにし、自分も裏社会で生き延びていくことを決意する。
甲斐 (かい)
土佐組というヤクザの若頭の男性。左目に刀傷があり、左右の瞳の色が違うのが特徴。犬童兄弟とは知人同士。犬童病院とは基本的に対等な関係であるが、自分の組に敵対する患者が運び込まれることもあり、対立することも多い。
ヒロ
チンピラの男性。ヤクザの土佐組の看板にボウガンの矢を撃ち込んだ犯人として名乗り出たため、甲斐によって左腕を切断され、腕をピラニアのいる水槽に捨てられるという落とし前をつけられる。その後、彼女を連れて犬童病院を訪れ、治療を受けようとする。
結城 春乃 (ゆうき はるの)
21歳の女性。土佐組の組員の愛人だったが、その組員は覚醒剤で逮捕されてしまう。服役中、その組員の弟分と関係を持ってしまい妊娠。出所前に2人で逃げ出す相談をしていたが、弟分は直前に一人で行方をくらます。関係を持っていた事実を隠すため、堕胎手術を受けようと犬童病院を訪れる。