ブラッドハーレーの馬車

ブラッドハーレーの馬車

歌劇団を運営しているブラッドハーレー家に、養女としてもらわれていく少女たちがたどり着いた先は、暗い暗い塀の中。ルーシー・モード・モンゴメリ作の小説「赤毛のアン」にインスパイアされた作者・沙村広明が、少女たちの過酷な運命を描いた連作短編集。「マンガ・エロティクス・エフ」に2005年から2007年にかけて掲載された。

正式名称
ブラッドハーレーの馬車
作者
ジャンル
その他歴史・時代
レーベル
F×comics(太田出版)
巻数
全1巻完結
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概要・あらすじ

ブラッドハーレー歌劇団を運営するブラッドハーレー家は、毎年孤児院から少女を1人養女として迎え入れている。ブラッドハーレー家の養女になることは、孤児院で生活する少女たちにとって、夢であり、憧れでもあった。「柳荘」と呼ばれる孤児院で生活していた少女のダイアナは、ついにブラッドハーレー家に養女としてもらわれることとなり、念願が叶った喜びに満ち溢れていた。

しかし、馬車に乗せられて連れて行かれた先は、見たこともない奇妙な形の塀に囲まれた建物だった。(エピソード「見返り峠の小唄坂」)

登場人物・キャラクター

ダイアナ

エピソード「見返り峠の小唄坂」に登場する。黒くて長い髪に、左目の下に小さなほくろがある少女。孤児院「柳荘」で14年間生活をしていた。今年ブラッドハーレー家の養女としてもらわれることになり、ドレスを身にまとって馬車で連れて行かれた。

コーデリア・シャーリー (こーでりあしゃーりー)

エピソード「見返り峠の小唄坂」「馬車と飛行船」に登場する。短髪で白い半袖のワンピースを着た少女。ダイアナとは友達で、孤児院「柳荘」で共に孤児として生活をしている。今年ブラッドハーレー家に養女としてもらわれていくダイアナを祝福し、手紙を書いて送ることを約束していた。死んだ母親がブラッドハーレー歌劇団が好きで、生前よく舞台の話をコーデリア・シャーリーにしていた。 その影響で、彼女もブラッドハーレー歌劇団に憧れるようになった。

ステラ・コーコラン (すてらこーこらん)

エピソード「友達」に登場する。前髪を眉毛の上で切りそろえた、肩までの短い金髪の少女。1/14計画によって、孤児院「パティの家」からカージフ刑務所に送られ、その当日、懲役囚によって、左手の指を5本すべて折られてしまう。プリシラとは同じ孤児院で生活していた友人同士。孤児院で行っていた金桂祭の演劇では、よく共に主演として舞台に立っていた。 昨年ブラッドハーレー家に養女としてもらわれていったプリシラを、表向きは祝福していたが、胸中には悔しさしかなかった。

ジョナス

エピソード「ある追憶」に登場する。チョッキを羽織って白いシャツを腕まくりし、膝当ての縫われた長ズボンをサスペンダーで吊っている少年。百姓の息子で、自宅の近くにある孤児院「道の辺」のフィリパとは仲が良く、手を繋いだり、カエルの皮で作った首飾りを作ってあげている。毎週日曜日には、フィリパと共に教会でパンを貰い、湖畔へ向かうのを日課にしていた。 ある日、フィリパが綺麗なドレスに身を包んで、馬車に乗せられて行くところを目撃。その2年後に父親が死に、スペンサーバーグに住む商家の叔父の家に引き取られることになる。

トマス・リン (とますりん)

エピソード「家族写真」に登場する。短髪で囚人服を着用した男性。マキンバー刑務所に収容されている懲役囚。周りの懲役囚からは「ドン」と呼ばれている。刑務所に入れられてから今年で12年。刑務所内の郵便係を懐柔して、外と関わりを持っている。窃盗時代の悪友から煙草を仕入れ、刑務所内を仕切っている。ヘンズレーの暴動により1/14計画が実行された初年度に、彼もパスカの祭りに参加した。 調達されてきた少女たちの目に恐れ慄き、それ以来、彼女の目が脳裏に焼き付き、次の年からパスカの祭りには参加していない。

ルビー・スペンサー (るびーすぺんさー)

エピソード「絆」に登場する。長い金髪を左右に分けてツインテールにした少女。父親は生まれる前からおらず、母親はルビー・スペンサー1人を残して自殺している。現在は孤児院「炉辺荘」で生活している。同じ部屋のジェン・イングリスとは親友の仲。共にブラッドハーレー家の養女になって、いずれはブラッドハーレー歌劇団の劇団員の1人として、舞台に立つことを夢見ている。

ケネス・アービング (けねすあーびんぐ)

エピソード「澱覆う銀」に登場する。長い前髪を左右に分け、顎の付近まで生えた濃いもみあげを持つ男性。シャプカ帽を被り、ファーのついた軍服を着用している。元々はハッグズビル刑務所にいたが、異動でヘンズレー刑務所に配属することとなった監視官。1/14計画によって、孤児院から刑務所に連れられてきた少女を監視することが仕事。 2段ベッドの上に掛け布団を縛って、首を吊って自殺しようとしたリラを助け、そのときに情が移ってしまう。

レスリー

エピソード「鳥は消えた」に登場する。長いストレートの金髪で、切れ長の目をした女性。かつては「フォアウィンズ孤児院」で生活していた。ブラッドハーレー家の養女としてもらわれることになり、孤児院を去った。のちにブラッドハーレー歌劇団に所属し、劇団員として活躍する。その外見から男優を任されることが多い。舞台の帰り道で、「フォアウィンズ孤児院」で一緒だったメイティと再会。 同じ孤児院出身のマーガレット・ブリュエットについて尋ねられ、それをきっかけに彼女の消息を探すことになる。

レベッカ

エピソード「見返り峠の小唄坂」に登場する。長い黒髪を後頭部でお団子にまとめ、半袖のワンピースを着た女性。孤児院「柳荘」で孤児たちの先生をしている。ブラッドハーレー家に養女としてもらわれることになったダイアナが、馬車に乗って連れて行かれる様子を見て、暗い表情をし、涙を流していた。

プリシラ

エピソード「友達」に登場する。前髪を右に流した、短髪の黒髪の少女。1/14計画によって、孤児院「パティの家」からカージフ刑務所に送られた。所長に気に入られ、現在に至るまで彼の相手を続けている。ステラ・コーコランとは同じ孤児院で生活していた友人同士。孤児院で行っていた金桂祭の演劇では、よく共に主演として舞台に立っていた。 ステラからは「プリス」という愛称で呼ばれている。3日前に刑務所に調達され、毎日懲役囚の相手をしているステラを元気づけるために、隣の部屋から話しかけている。

フィリパ

エピソード「ある追憶」に登場する。短髪の黒髪で、ギンガムチェックの長袖のワンピースを着た少女。孤児院「道の辺」で生活している。孤児院に入所する前は、街でも指折りの豪商の一人娘だった。その商家は、祖父の代に東欧から亡命してきた一家だったが、両親が急死すると管財人の手により、家の莫大な財産を国内外のさまざまな慈善団体に、すべて寄付してしまった。 そのため、無一文で放り出されて孤児院に入所することになった。ジョナスとは友人で仲が良く、ブラッドハーレー歌劇団に入ることが夢だと語っている。

ピアス・ドーソン (ぴあすどーそん)

エピソード「家族写真」に登場する。金髪のマッシュルームヘアーで、囚人服を着た大柄な男性。マキンバー刑務所に収容されている懲役囚。元北部の炭鉱の出稼ぎ鉱夫だったが、爆発事故による閉山で職を失い、大酒をくらっては傷害事件を繰り返して、この刑務所に収容されている。爆発事故時の後遺症なのか定かではないが、言葉足らずな口調で話す。 妻と娘が1人いる。

クリフ・ガードナー (くりふがーどなー)

エピソード「家族写真」に登場する。横の髪を耳にかけて後頭部でまとめ、長い前髪を垂らした元政治記者の男性。マキンバー刑務所に収容されている懲役囚。入所して2年目。ある下院議員のスキャンダルを追って議員宅に不法潜入したところを見つかり、逮捕された。当時の新聞の報じるところでは、逃走を企てた際に宅内の使用人を1人殺害したとされている。 本人は「母の名に誓ってそんなことはしない」と強く否定している。

ジェン・イングリス (じぇんいんぐりす)

エピソード「絆」に登場する。長い黒髪を左右に分けておさげにした少女。母親を幼い頃に病気で亡くし、父親は馬車の事故で亡くしている。現在は孤児院「炉辺荘」で生活している。同じ部屋のルビー・スペンサーとは親友の仲。共にブラッドハーレー家の養女になって、いずれはブラッドハーレー歌劇団の劇団員の1人として、舞台に立つことを夢見ている。 今年、ブラッドハーレー家からオーガンジーのドレスが届いた。

ヘスター

エピソード「絆」に登場する。金髪で、前髪を眉毛の上で切りそろえ、後頭部で長い髪をお団子にまとめた女性。孤児院「炉辺荘」で先生をしている。ブラッドハーレー家から、ルビー・スペンサーとジェン・イングリスのどちらかを、養女として指名するという連絡が届いて頭を抱えていた孤児院の園長に、お茶を淹れてあげていた。ルビーとジョシイが喧嘩した際にも、仲裁して話を聞いてあげるなど、孤児院のまとめ役を担う。

ジョシイ

エピソード「絆」に登場する。黒髪で、ふくよかな体型をした少女。額が見えるように前髪を左右に分けており、長い髪を大きなリボンで束ね、ポニーテールにしている。孤児院「炉辺荘」で、ルビー・スペンサーとジェン・イングリスと同じ部屋のベッドで寝ている。就寝時間に、「ルビーがブラッドハーレー家の養女に選ばれるものだと思っていた」と話し、ルビーが枕元に置いていた手紙を見つけ、誰から届いた手紙なのか、と執拗に迫って喧嘩になる。

リラ

エピソード「澱覆う銀」に登場する。黒く長い髪で、白い半袖のワンピースを着た少女。父親が1年前に首を吊って自殺した際、その姿を目撃している。その後、孤児院に入所して生活をしていた。1/14計画によって、孤児院からヘンズレー刑務所にやって来た。パスカの祭りの後、2段ベッドの上に掛け布団を縛って、父親と同じように首を吊って自殺を図った。 そこを、監視官のケネス・アービングに見つかり、一命を取り留める。

メイティ

エピソード「鳥は消えた」に登場する。長い黒髪を左右に分けて三つ編みにし、おさげにした少女。「フォアウィンズ孤児院」で生活をしていた。彼女を養子にしたいという夫婦が現れ、今年の2月からホックニーという町で、家事を手伝いながら義父と義母と共に暮らしている。近くでブラッドハーレー歌劇団が上演することを知り、久しぶりにレスリーと再会する。 その際に、「フォアウィンズ孤児院」で一緒だったが、のちにブラッドハーレー家に養女として連れて行かれ、レスリーと同じブラッドハーレー歌劇団に所属していると思っていた、マーガレット・ブリュエットについて尋ねる。

ニコラ・A・ブラッドハーレー (にこらえーぶらっどはーれー)

エピソード「鳥は消えた」に登場する。口の周りに髭を生やし、白髪をオールバックにまとめた男性。国内第4位の資産を有する公爵家ブラッドハーレー家の主。貴族院議員で、1/14計画を文章にし、発議した張本人。以前「フォアウィンズ孤児院」にいたレスリーを、養女としてブラッドハーレー家に迎え入れ、現在は自らが運営している少女たちによる歌劇団・ブラッドハーレー歌劇団の劇団員として、舞台に立たせている。

ブライス

エピソード「馬車と飛行船」に登場する。前髪を左右に分け、黒く長い髪を後頭部で束ねた女性。立て襟の前に、ジッパーのついたドレスを着用している。字を読むときにだけ眼鏡をかける。ブラッドハーレー家に養女として迎え入れられることになったコーデリア・シャーリーを、彼女が生活していた孤児院「柳荘」に馬車で迎えに来た。

集団・組織

ブラッドハーレー歌劇団 (ぶらっどはーれーかげきだん)

ニコラ・A・ブラッドハーレー貴族院議員が運営している歌劇団。「カナアン」「後宮からの脱出」「フィデリオ」といった演目を舞台で上演している。グリシーヌ・ノワ、マルガリータ・コルネッホ、フェアギス・マインニヒト、ミス・マリラ・オルキデアといった歌手が所属している。噂では、この歌劇団の舞台に上がっている少女たちは、全員がブラッドハーレー家の養女であり、元孤児の出自だと言われている。

イベント・出来事

ヘンズレーの暴動 (へんずれーのぼうどう)

19世紀最末年に、ヘンズレー刑務所で起こった大規模な暴動事件。囚人・看守を合わせて死者37人、負傷者145人を出した。この暴動事件を発端に、非人道的として決議を見送られ続けていた1/14計画が、火急に採用され、実行することになった。

パスカの祭り (ぱすかのまつり)

性処理のために孤児院から調達された少女たちであるパスカの羊が、刑務所に来る日の通称。長期・無期懲役囚のみに参加手続きをする権利が与えられており、1、2年はもちろん、5年や10年程度の懲役囚には参加の権限はない。暴動や集団脱獄の中核を担いそうな者ほど、この祭りでは類を見ぬ苛烈さをもって少女たちを苛む。刑務所内の噂では、一度でも少女たちを抱いた者は無期囚となり、二度と塀の外には出られず、仮釈放も認められなくなると言われている。

その他キーワード

1/14計画 (いちいちよんけいかく)

刑務所での暴動・集団脱獄などを防ぐための計画案。決議を見送られ続けていたが、死者37人を出したヘンズレーの暴動によって、この計画案が火急に要請されて採用、実行されるに至った。長期・無期懲役囚たちの性欲求・破壊欲求抹消の抜本塞源として、13歳以上の体力的に未熟過ぎない孤児の女子を、年に1回、有償で刑務所に調達してもらうという内容。 調達された少女たちは、長期・無期懲役囚の性処理を目的として提供される。

パスカの羊 (ぱすかのひつじ)

孤児院からパスカの祭りのために、刑務所に連れて来られた少女たちの通称。長期・無期懲役囚の誰からともなく、彼女らをパスカの羊と呼ぶようになった。経済幇助の形で契約した8か所の孤児院から、毎年1人の少女が調達されている。調達された少女に対しては、殺さなければ何をしてもいいと言われている。

書誌情報

ブラッドハーレーの馬車 全1巻 太田出版〈F×comics〉 完結

第1巻

(2007年12月18日発行、 978-4778320515)

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