世界観
物語の舞台は1990年のオリゴン村。ここは神戸市北区山側に造られたニュータウンで、アメリカの郊外がモデルとなっている。登場人物は全員が裕福で、大きな庭付きの一戸建てに住み、チェリーパイを作ったり、ホームパーティーを開いたりしている。日本国内でありながら、登場人物のリアクションや身振り手振りも大きく、まるでアメリカのホームドラマを見ているような錯覚に陥る、特殊な世界観となっている。
あらすじ
第1巻
1990年、神戸市北区にあるニュータウンのオリゴン村には、アメリカ郊外のような、美しい街並みが広がっていた。そんな高級住宅地に家を持つ園山修とママは、夫婦仲はよかったものの、子供に恵まれずに寂しい思いをしていた。60歳を過ぎ、施設から孤児を引き取る決意をした夫妻のもとに姿を現したのは、ブロンドヘアが美しい一人の美少年、園山秘鳥だった。彼の美しさと聡明さにたちまち魅了された園山夫妻は、親となり、秘鳥を本当の息子のようにかわいがっていた。しかし、秘鳥には夫妻の知らない秘密があった。それは彼が、実は双子の兄弟だったのだ。双子の本当の名前はミギとダリ。まったく同じ風貌の二人は、その外見を最大限に生かし、そもそも一人しかいないように振る舞うことで、園山夫妻だけでなくすべての人たちを欺いていた。一方、園山夫妻は、秘鳥が双子だということを疑いもせず、息子がいるという日常に幸せを感じ、大きく感動していた。親からの無償の愛を知らずに育ったミギとダリは、まだ夫妻を完全に信用してはいなかったが、時々巻き起こるアクシデントに全力で立ち向かいながら、二人で力を合わせ、幸せな子供を演じようとする。だが、実はそんなミギとダリがこのオリゴン村に来たのには、誰も知らない大きな目的があった。それは、7年前、この村で亡くなった母親のメトリーを殺した犯人を探すことと、その復讐を遂げることだったのだ。
第2巻
園山修、ママ夫妻の勧めで、ボーイスカウトに入団したミギとダリは、そこでいっしょになった同じ年の子供たちと友達になることで、母親であるメトリーの死の真相を探るための足掛かりにしようと考えた。だが、特殊な環境下で育ってきた二人には、友達のつくり方さえわからず、ヤンチャな子の多いボーイスカウト内では、さっそく変わり者扱いを受けることになり、友達つくりどころではなくなってしまう。そんな二人だが、努力の末に家へ招いてもらえるチャンスを得た。一人目の秋山俊平とは、図らずも深い友情を築くことになるが、二人目の堤丸太からは、ミギがひどい仕打ちを受ける事態になり、母親の死につながるような情報を得ることはできなかった。しかし落胆する二人の前に、新たな人物が登場する。それは、定期的に園山家を訪れる家政婦の光山だった。オリゴン村にあるさまざまな家を家政婦として回っている光山は、おしゃべりが大好きで各家庭の事情に詳しい、いわば情報の宝庫だった。ただし、園山秘鳥が聞いても何も語らず、おしゃべりの相手は仲のいい園山家のママだけ。考えあぐねた結果、ダリはママの物まねを極めたミギの能力を利用して情報を得ることに成功。母親の死のヒントをつかむための第一歩となるであろう、ペイズリー柄の壁紙の部屋が、一条家にあることを突きとめる。そしてミギは、一条家の息子である一条瑛二とボーイスカウトの活動で接触を図り、自宅に招いてもらうために奔走。友達になることは失敗に終わるが、カンちがいした瑛二のおかげで、秘鳥は幸運にも自宅に招かれることになる。
第3巻
ミギは、一条家で一条瑛二から治療を受けたことで、薄れかけていた昔の記憶を少しずつ取り戻していった。それに伴い、母親のメトリーの死に関して謎も増えていく。一条家に関しては、明らかにおかしいところがあったが、母親の死とのかかわりに関してはわからずじまい。メトリーが生前、ミギとダリと共に一条家の物置部屋に隠れ住んでいた理由も、まったくわからないままだった。なんの証拠も得られず、ただ断片的な情報だけが集まる中、母親の死の真相は不明なままで、憶測だけが広がっていくばかりだった。もうすぐ春休みも終わり、中学入学を直前に控えたミギとダリが、オリゴン村を歩き回り、調査していると、偶然にもメトリーが頭から血を流した姿で発見された現場を通りかかり、ミギは当時の詳細な状況を思い出す。倒れていた母親の姿や状態を鑑みた結果、ダリは一つの結論を導き出した。それは、何者かに襲われて頭に傷を負ったメトリーは、這って逃げようとしたが、その途中で息絶えたということ。そして母親は、二人が待っていた村はずれの崖に向かおうとしていた、ということだった。母親が埋葬された村はずれの崖で、メトリーの最期を語り合っていたミギとダリが、家に帰ろうと腰を上げた時、いっしょにいた犬のサーディンがおもむろに地面を掘り始める。そこはまさに母親を埋めた場所であり、サーディンを止めようとした次の瞬間、掘り起こされた地面から二人が見つけたのは、雪の結晶の模様があしらわれた洋服のボタンだった。そしてそれが、母親の死と一条家をヒモづける大きなヒントとなる。
第4巻
一条瑛二がミギの持ち物の中から、雪の結晶の模様があしらわれたボタンを発見したことにより、事は大きく動き始める。瑛二と一条怜子、一条華怜は、園山修、ママ夫妻と園山秘鳥を名乗るミギを一条家に招待し、食事会を開催。そこでボタンが一つなくなった服を持ち出した瑛二は、ミギにボタン窃盗の濡れ衣を着せることで追い詰め、犯罪を犯した彼を再教育するという名目で、ミギを一条家に監禁することに成功した。一方ダリは、監禁されたミギを助けようとチャンスを窺っていたが、犬の存在や部屋の構造が邪魔をして、簡単にはそれを許してくれない状況にあった。心配するダリに、ミギは自分のことは心配ないと伝え、このチャンスを利用して屋敷内をしらみつぶしに調査してほしいと伝える。ミギは、閉ざされた部屋の中で赤ん坊の格好をさせられ、怜子から本当の赤ちゃんのように世話をされていた。怜子のミギを再教育しようとする執念は、もはや常軌を逸するものだった。一方、ダリはミギの言葉を信じ、ひっそりと調査を開始。瑛二の父が留守にしたスキに、ダリが書斎の鍵を開けようとした時、後ろから突然姿を現したのは、いたずらな笑みを浮かべた家政婦の光山だった。思いがけない味方の登場にダリは、鍵を持った光山と共に未開の部屋へと足を踏み入れ、そこで衝撃的な光景を目にする。そして光山の言葉から、一条家に隠された秘密のヒントをつかむ。
テレビアニメ
2023年10月テレビアニメ化。メインキャストとしてミギ:堀江瞬、ダリ:村瀬歩が出演。
登場人物・キャラクター
ミギ
今年で13歳になる少年。7年前に母親のメトリーを亡くしてからは、双子の兄のダリと共に施設で暮らしてきた。園山修、ママ夫妻に引き取られることになり、ダリと共に一人の少年、園山秘鳥を演じることに徹している。素直で利発な印象を与える、細身の美少年。生まれついての金髪で、異国の血が混じっていると思われる。きき手は右、髪は右分けにしているのが特徴で、どちらかというとカッとなりやすい性格で、勉強は引き算であきらめるほど苦手。計画を実行するにあたっては、矢面に立っておとり役になることも多く、その割を食うことも少なくない。母親のメトリーが、オリゴン村で何者かによって殺されたことがわかっているため、その犯人探しと復讐を目的に園山家に潜り込んだ。まだ母親が生きていた頃、村のどこかにある家の一室に、三人で隠れるように暮らしていた記憶があり、壁紙の柄を頼りに家を調査した結果、クラスメートの一条瑛二の自宅だったことが判明。詳しい経緯を探るために奔走する。もともと、他人との接触がなく育ってきたこともあり、友達のつくり方もわからず、友達との接し方もわからない状態。園山夫妻から勧められ、ボーイスカウトに入隊するが、同じ年頃の子供たちの中ではかなり浮いた存在となっている。山星学園中学校入学後は1年5組に在籍する。のちに、母親の墓近くから偶然掘り出されたボタンを持っていたことで、瑛二から窃盗の濡れ衣を着せられることになり、一条家で赤ちゃんの服を着せられ、監禁される。ママの表情のまね、声まねがうまい。
ダリ
今年で13歳になる少年。7年前に母親のメトリーを亡くしてからは、双子の弟のミギと共に施設で暮らしてきた。園山修、ママ夫妻に引き取られることになり、ミギと共に一人の少年、園山秘鳥を演じることに徹している。素直で利発な印象を与え、細身の美少年。生まれついての金髪で、異国の血が混じっていると思われる。きき手は左、髪は左分けにしているのが特徴で、どちらかというと物事を冷静に分析できる落ち着いた性格で、勉強もほどほどにできる。しかし、ミギのことになると、頭に血がのぼりやすいという意外な一面も持ち合わせている。計画を実行するにあたり、ブレーン役として綿密な計画を練る役になることが多い。母親のメトリーが、オリゴン村で何者かによって殺されたことがわかっているため、その犯人探しと復讐を目的に園山家に潜り込んだ。まだ母親が生きていた頃、村のどこかにある家の一室に、三人で隠れるように暮らしていた記憶があり、壁紙の柄を頼りに家を調査した結果、クラスメートの一条瑛二の自宅だったことが判明。詳しい経緯を探るために奔走する。もともと、他人との接触がなく育ってきたこともあり、友達のつくり方もわからず、友達との接し方もわからない状態。園山夫妻から勧められ、ボーイスカウトに入隊するが、同じ年頃の子供たちの中ではかなり浮いた存在となっている。山星学園中学校入学後は1年5組に在籍する。のちに、ミギが監禁されている中、家政婦の光山と共に一条家を探索することとなり、一条家に隠された秘密を目の当たりにする。
園山 秘鳥 (そのやま ひとり)
金髪瘦身の美少年で、今年で13歳になる。オリゴン村に住む園山修、ママ夫妻のもとに養子として引き取られ、いっしょに暮らし始めた。実は、双子の兄弟のミギとダリが、そっくりな外見を利用して、二人で一人の少年、園山秘鳥を演じている。園山夫妻はおろか、学校の先生をはじめとするオリゴン村の住民の中で、誰一人としてこの事実を知る者はいない。夫妻を親として信用しきっていない節もあるが、時間経過と共に、二人からの愛情を感じ始める。
園山 修 (そのやま おさむ)
ミギとダリを一人の少年、園山秘鳥として養子に迎えた60代の男性。妻のママとのあいだに子供を授からなかったため、念願の養子を施設から迎え入れることとなった。秘鳥が双子とは知らず、一人の少年という認識でいる。家族になった秘鳥を、本当の息子のように愛し、父親という大役を務めようといつも全力。だが、寄る年波には勝てず、最近は体の老化を感じることが多い。腰が弱いためにむちゃはできないが、昔からダンスが好きで、今でも妻と踊ることがある。穏やかな性格で夫婦仲はよく、互いを「パパ」「ママ」と呼び合っている。何かと暴走しがちなママのストッパー役として活躍することもしばしば。「サーディン」という名の犬を飼っていて、とてもかわいがっている。
ママ
ミギとダリを一人の少年、園山秘鳥として養子に迎えた60代の女性。夫の園山修とのあいだに子供を授からなかったため、念願の養子を施設から迎え入れることとなった。秘鳥が双子とは知らず、一人の少年という認識でいる。家族になった秘鳥を、本当の息子のように愛し、叱るべきときにはお尻を叩くこともあり、親としての責務を果たそうとしている。20年来、定期的に家事をお願いしている家政婦の光山とは非常に親しく、「よっちゃん」「みっちゃん」と呼び合う仲。明るく気さくな性格ながら、ちょっと短気で暴走しがちな一面も持ち合わせている。料理は大好きだが、そのほかの家事は苦手。ものぐさなところがあるが、秘鳥の服だけは、きちんと手もみ洗いをしている。ぽっちゃり体型で、アメリカの奥様的な若々しい印象ではあるが、日々変化するヘアスタイルは実はすべてウィッグ。自宅の二階にある収納庫には、大量のウィッグが収納されている。昔からダンスが好きで、若い頃は瘦身の美女だった。今でも夫と踊ることがあり、夫婦仲は非常にいい。「サーディン」という名の犬を飼っていて、とてもかわいがっている。
メトリー
ミギとダリの母親。7年前、何者かによって殺害され、オリゴン村の路上で頭から血を流し、亡くなっているところをミギとダリによって発見された。今は村のはずれにある、崖の上の墓に埋葬されている。子供たちがまだ幼い頃、村のどこかにある家の一室で隠れるように暮らしていた。子供たちの記憶だけではそれがどこの家なのかわからなかったが、その後の調査で、その部屋は一条瑛二の自宅であったことが判明。実は昔、一条家で家政婦をしていたのではないかと推察されており、彼女の死には、一条家がなんらかの形でかかわっているのではないかと疑われている。
光山 (みつやま)
家政婦を生業とする初老の女性。オリゴン村を中心に、さまざまな家庭で家事を担っており、村の住人の家庭事情に精通している。ママとは「よっちゃん」「みっちゃん」と呼び合うほどの非常に親しい仲で、おしゃべりなために、他人の家の実情をこぼしてしまうことも少なくない。実は見かけによらず、ドアの鍵をヘアピンで開けてしまう能力を持つ。現在は隣村に在住しており、毎週水曜日は一条家に家事手伝いのため通っている。ある日、いつものように一条家を訪れた際、書斎を覗き見ようとしているダリを発見。家政婦としての権限を武器に、時には権限を逸脱しながらも、ダリと共に家中を探索した。その結果、屋根裏部屋の秘密にたどり着くことになるが、人の気配を感じたため、ダリを箱の中に入れて自分が出て行くことを選択。のちにダリが確認すると、彼女がいなくなったあとには、首のもげた彼女そっくりの人形が落ちていた。
一条 瑛二 (いちじょう えいじ)
オリゴン村に住む少年で、年齢は13歳。一条家の一員。父親は自宅で精神科医をしており、医者の息子として、模範的な少年だと大人からも友人からも崇められている存在。園山秘鳥を名乗るミギ、ダリとはボーイスカウトで知り合った。明らかに様子のおかしい秘鳥を多重人格者とカンちがいし、カウンセリングをしてあげるからと自宅に招いた。秘鳥と同じ山星学園中学校に入学するが、特進クラスである1年1組に在籍している。入学式には生徒代表を務めるほどの成績優秀者。ある時、秘鳥の持ち物の中から、雪の結晶の模様があしらわれたボタンが発見されたことをきっかけに、秘鳥に牙をむくようになる。秘鳥に窃盗の濡れ衣を着せることで犯罪者扱いし、自宅で監禁した。その後、自宅でメトリーの姿を見た時には失禁しながら「おばけだ」と叫ぶなど、一条家の中で、唯一メトリーを故人と理解した反応を見せた。優秀な外面とは対照的に、未だにおねしょをすることがあり、母親の一条怜子もそれを知ったうえで、事実を隠ぺいしている。
秋山 俊平 (あきやま しゅんぺい)
オリゴン村に住む少年で、年齢は13歳。園山秘鳥を名乗るミギとダリとはボーイスカウトで知り合い、友達になった。飛行機や鳥が大好きで、鳥のように空を飛びたい欲望に駆られている。その姿を揶揄した友人たちからは「バード秋山」と呼ばれ、いじめの対象にされかけて嫌な思いをしている。もともと、秘鳥となかよくするつもりはなかったが、無理難題を押し付けられても、何度倒れても起きあがろうとする不屈の精神に惹かれ、自宅へ招待した。その際、飛行機や鳥の話を熱心に聞いてくれたため、なかよくなった。山星学園中学校入学後には、秘鳥と同じ1年5組に在籍することになるが、その頃には勝手に秘鳥の「心友」を名乗り、すっかり彼に依存するようになった。施設育ちを理由に、学校でいじめを受けそうになった秘鳥をかばって以降、自分がクラスメートからいじめられるようになったが、秘鳥のためならばとまったく気にする様子はない。
堤 丸太 (つつみ まるた)
オリゴン村に住む少年で、年齢は13歳。出っ歯が特徴で、いつもしっぽの付いたロシア風の帽子をかぶっている。過保護に育てられたため、自分の思うようにならないと気が済まないわがままな性格で、典型的なお坊ちゃま。自宅に園山秘鳥を名乗るミギとダリが遊びに来た際には、菌が付くからおもちゃに触れるなと手袋の着用を求めたり、ゲームで負ければ即リセットしたりした。じゃんけんでは秘鳥の手をグーで固定して遊ぶなど、傍若無人な鬼畜の所業ぶりが明確になった。しかし、そんな彼からの仕打ちに耐え忍んでいたミギの様子を見て逆上したダリから徹底的な逆襲を受け、態度は一変。秘鳥に対してゴマをするようになった。しかし、山星学園中学校入学後には、再び悪さを始め、秘鳥が施設育ちであることを言いふらした。表向きにはいい子でいたいため、母親の前ではいい子を演じ続けている。オリゴン合唱団で鍛えた歌声が自慢。
一条 華怜 (いちじょう かれん)
一条瑛二の妹で、一条家の一員。ピアノを習っており、ピアノコンクール覇者としての実力を持つ。現在も、次のコンクールに向けて練習中。自室では、大きなドールハウスとリアルな人形を使って遊んでいるが、自分が使っていないときは、人形をドールハウスにある家具の中や家具の下、煙突の中など、ありとあらゆる隙間に隠すように詰め込んでしまっている。
瑛二の父 (えいじのちち)
一条瑛二、一条華怜の父親で一条家の当主。精神科医を務めており、オリゴン村に住む人々からは、確固たる信頼を得ている。医者として、自宅での診療や学会への参加、勉強などに忙しい日々を送っている。そのため、妻や子供たちが、再教育と称して園山秘鳥を名乗るミギを自宅に監禁していることは知らない。7年前まで家政婦を務めていたメトリーとは、家政婦と家主以上の、ただならぬ関係だったようだが、詳細は不明。自宅でメトリーの姿を目にした時、ミギが扮した姿だと疑いもせず、ただ会いたかったと抱きしめ、今までどこに行っていたのかと発言。メトリーが死んだという事実を知らない様子を見せた。
一条 怜子 (いちじょう れいこ)
一条瑛二、一条華怜の母親で、一条家の一員。町内会長を務めており、オリゴン村に住む人々からは、確固たる信頼を得ている。さまざまな面で潔癖な性格をしている。園山秘鳥を名乗るミギに窃盗の濡れ衣を着せ、今後も犯罪を犯す可能性のある精神を再教育しなければいけないという大義名分をかざし、秘鳥を自宅に監禁した。自宅では、秘鳥に赤ん坊の格好をさせ、「はやく瑛二になぁれ」と謎の発言をしつつ、本物の赤ん坊のように接した。その後、時間経過とともに秘鳥が従順に従うようになり、更生したと感じた途端に園山家へ帰ることを許可した。のちに、自宅でメトリーの姿を見た時には、ミギが扮したことも気づかず、狂気を帯びた様子でハサミを手に持って家中を探し回り、メトリーを攻撃しようとした。
児玉 (こだま)
山星学園中学校の女性教師で、1年5組の担任を務める。まだ若くて経験も浅いため、クラスの子供たちからはなめられ、言うことを聞いてもらえない学級崩壊寸前の状態。頼りなく見えるが、学校を休んだ園山秘鳥を名乗るミギ、ダリから、家に招かれた時には、秘鳥からの挑発や誘導にまったく乗らず、マイペースを貫いた。その際、秘鳥がウソをついたことが明るみになり、ママからお尻を叩かれ、叱られているところを見て感化される。そして翌日、言うことを聞かない生徒たちのお尻を叩くことで、崩壊しかけていたクラスを制圧した。
サリー
山星学園中学校に突然現れた女子生徒。ロングヘアの美人で、図書館にいる姿が目撃され、学校中の男子生徒から噂の的になった。実は、ダリがママのウィッグと女子生徒の制服を借りて、女装した姿。ミギが園山秘鳥としてクラスで学校生活を送っているあいだ、居場所に困った末に取った苦肉の策だった。しかし、思いがけずに何も知らなかったミギから異性として意識され、思いを寄せられることになった。これをチャンスととらえ、特進クラスの一条瑛二に近づくため、勉強のできないミギにやる気を引き出させることを利用し、接近に成功。ご褒美のデートを最後に、遠くの町に引っ越すとウソをついて姿を消した。
根津 (ねづ)
一条家に患者として通っている初老の女性。チリチリパーマで、左右に広がる三角定規のようなシルエットが印象的な髪型をしている。もともとはオリゴン村に住んでいたが、現在は別の場所へと引っ越した。引っ越したあとも、瑛二の父を目当てに一条家に通っている。
場所
オリゴン村 (おりごんむら)
神戸市北区山側にある村で、アメリカの郊外をモデルとして造られたニュータウン。広い庭付きの大きな屋敷が立ち並ぶ閑静な住宅街となっている。ここに暮らす住人は、富裕層ばかりで、どの家庭もひと癖もふた癖もある家庭事情を抱えており、特に子供は扱いにくいタイプが多い。
一条家 (いちじょうけ)
オリゴン村にある家。医者である瑛二の父、その妻で町内会長を務める一条怜子、成績優秀で品行方正な息子の一条瑛二、ピアノコンクール覇者である娘の一条華怜という理想を絵に描いたような家族構成で、村人からはあこがれの的であり、信頼も厚い。毎週水曜日には家政婦の光山が家事手伝いとして一条家を訪れている。彼女には、この家には秘密がなく、まるでシミのないシルクのシーツのようだと評されている。家政婦は、基本的に一階のみの掃除を任されており、二階への立ち入りは禁止されている。一階のキッチンの横には収納庫があり、カーテンで隠された扉のその奥には、ペイズリー柄の壁紙の小部屋が隠されている。また、華怜の部屋には、大きなドールハウスがあり、彼女が遊びに使っている人形は、患者として出入りしている根津や、元家政婦のメトリーなど、実在する人物そっくりに作られた非常にリアルなもの。その人物たちはすべて、過去にオリゴン村に住んでいたが、今は村にいない人ばかり。二階にある夫婦の寝室からは、屋根裏部屋に行くことができるが、仕掛けを解除しなければ、そこに通じる階段は出現しない仕組みになっている。屋根裏部屋には、オリゴン村全体が再現された、大きく精巧なジオラマが存在する。そこに設置された各家には、住人そっくりの人形が入れられており、家族構成が完璧に再現されている。それらはすべて、村を監視して手に入れた個人情報を基に作られている。
書誌情報
ミギとダリ 全7巻 KADOKAWA〈ハルタコミックス〉
第1巻
(2018-05-15発行、 978-4047348363)
第2巻
(2018-09-15発行、 978-4047353503)
第3巻
(2019-08-10発行、 978-4047356238)
第4巻
(2020-02-15発行、 978-4047360228)
第5巻
(2020-10-15発行、 978-4047361126)
第6巻
(2021-07-15発行、 978-4047366343)
第7巻
(2021-12-15発行、 978-4047368460)