ミリオンジョー

ミリオンジョー

国民的人気漫画「ミリオンジョー」の作者である真加田恒夫が急死したことで、担当編集者の呉井聡市は、この死を隠蔽して代筆による連載の続行を決意。それを犯罪と理解しつつも、なんとか「ミリオンジョー」を完結させるために奔走する聡市の姿を描いたクライムサスペンス。「モーニング」2013年第13号から2014年第13号にかけて連載された作品。

正式名称
ミリオンジョー
ふりがな
みりおんじょー
原作者
十口 了至
漫画
ジャンル
作家・漫画家
 
犯罪
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊3巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

出版社「千道社」に勤める呉井聡市は、日本一の人気を誇る漫画「ミリオンジョー」の担当編集者を務めている。「ミリオンジョー」は単行本最新刊の初版部数が500万部、TVアニメ版の視聴率は20%を超えるという国民的作品で、出版社の命運がかかっている人気漫画である。しかし、著者の真加田恒夫は偏屈な性格の人間嫌いで、聡市とチーフアシスタントの寺師良太以外の人たちとまったく会わないという、極端な生活を送っていた。そのため聡市は、恒夫も「ミリオンジョー」も好きになれないまま、恒夫から原稿を受け取るだけの日々を過ごしていた。そんな9月上旬のある日、聡市は恒夫から体調不良を伝えられる。しかし聡市は、これまでに何度も恒夫にウソをつかれていたため、それが信じられずに無視してしまう。しかしその夜、聡市が恒夫のもとに原稿を取りに行くと、恒夫は自室で亡くなっていた。この状況に責任を感じつつ、恒夫が亡くなったことで初めて「ミリオンジョー」がいかに偉大な作品かを認識した聡市は、恒夫の死を隠蔽することを決意。そして恒夫と同様の画力のある良太と、知人の岸本薫を巻き込んで、三人で恒夫の遺産を山分けすることを条件に恒夫の死体を遺棄し、恒夫の代わりに「ミリオンジョー」を描き始める。

第2巻

呉井聡市がネームを描き、寺師良太が作画を担当する「なりすまし」代筆を始めてから初の「ミリオンジョー」が掲載された。聡市は代筆がバレていないことに安堵するが、その週のアンケートは芳しくない結果となる。かろうじて1位はキープしたものの、得票数は大幅に減っていたのである。危機感を抱いた聡市は、かつての漫画家仲間である小川アヤカの意見を聞いたり、自らハガキを大量に送って得票数を操作するが、根本的な原因は自分の描くネームにあると認識していた。真加田恒夫の遺した脚本どおりに描いていても、聡市の技術が足りないために、作品のクオリティは大幅に落ちていたのだ。そこで聡市は、恒夫が予定していたよりも物語のペースを上げ、一話あたりの情報量を増やすことで、改善を試みる。一方、若手漫画家の森秋麻衣は恒夫の熱狂的なファンで、以前からどうにかして恒夫に接近しようと考えていた。そんなある日、岸本薫が用意した恒夫の替え玉の佐藤宏冶を恒夫とカンちがいして声を掛けたことで、麻衣は聡市たちの計画に気づいてしまう。そして麻衣は、聡市に宏冶が恒夫の替え玉である証拠をつきつけ、聡市は危機に陥る。

第3巻

森秋麻衣は自分も仲間に加わることを条件に、呉井聡市たちの計画を他言しないと約束する。しかし「ミリオンジョー」の連載は、相変わらずあやうい状況が続いていた。どうにかアンケート得票数は回復したものの、編集部や周囲の漫画家たちは連載されている作品を見て、本当に真加田恒夫が描いているのか、怪しむようになっていた。そのまま年が明け、「ミリオンジョー」は予定よりも早いペースで完結に向かっていた。これで残るは最終章「神聖時間(サクロタイム)編」のみとなるが、キャラクターデザインに悩んだ寺師良太は、聡市が管理している恒夫の創作ノートを見せてもらうことにする。一方その頃、左子は聡市の机をチェックして、聡市が「ミリオンジョー」を代筆している証拠を発見していた。そこで佐子は編集長の橋爪文彦にすべてをバラすと聡市を脅すが、どんなことをしてでも「ミリオンジョー」を完結させるという聡市の狂気に似た思いを知り、恐怖する。これによって佐子はこの件から手を引くことにし、千道社を去るのだった。こうして佐子との件は解決するが、その直後に良太が創作ノートを紛失する事件が発生。聡市は仕方なく記憶を頼りに連載を続け、アンケート結果も安定するが、ようやく恒夫の預金を引き出す段階になって、佐藤宏冶が失踪する。

メディアミックス

TVドラマ

2019年10月から、テレビ東京系列にて本作『ミリオンジョー』のTVドラマ版が放送された。監督は榊英雄、脚本は政池洋佑が務めている。呉井聡市役をKis-My-Ft2の北山宏光、寺師良太役を萩原聖人、岸本薫役を深水元基、森秋麻衣役を今泉佑唯がそれぞれ演じている。

登場人物・キャラクター

呉井 聡市 (くれい そういち)

出版社「千道社」に勤務する編集者の男性で、年齢は28歳。少年漫画誌「週刊少年グローリー」編集部で、真加田恒夫の「ミリオンジョー」を担当している。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばした金色のウルフカットにしているが、生え際は黒くなっている。太眉で鼻が大きい。場当たり的ないい加減な性格ながら、相手の懐に入るのがうまく、非常に肝が据わっている。そのため、常識的な人であれば到底できないとためらうようなことも平気でこなしてしまう。また非常に記憶力がいい。23歳の頃までは漫画家を目指しており、当時の代表作は「バイオレンス昆虫 KABUTO」。小川アヤカとは当時の作家仲間で、彼女からは「ソーチン」と呼ばれていた。また、大学在学中に別の作家のアシスタントに出向いた際に知り合った寺師良太とは、長い付き合いである。しかし作品のクオリティは高いものの、オリジナリティに欠けるという理由で漫画家としてのデビューは叶わず、編集者になった。そのために恒夫の担当編集者になってからも、恒夫の才能を妬むあまり「ミリオンジョー」を真剣に読むことすらしてこなかった。しかし9月5日に恒夫が亡くなり、いかに「ミリオンジョー」が偉大な作品であるかをようやく理解した。「ミリオンジョー」を完結させるために恒夫の死を隠匿し、自分が代筆するという形で完結させようとする。出身地は愛媛県。

真加田 恒夫 (まがた つねお)

漫画家を生業とする中年男性。代表作は出版社「千道社」から出版されている少年漫画誌「週刊少年グローリー」で連載中の「ミリオンジョー」。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、腰まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。目がぎょろぎょろとしていて大きく、鼻が高い。体形は非常に背が高く瘦せており、頰がこけている。寡黙な気難しい性格で、人とのコミュニケーションを極端に嫌っている。そのため「ミリオンジョー」の制作現場においても、アシスタントは自分の住むマンションの別室で作業させており、担当編集者の呉井聡市とチーフアシスタントの寺師良太以外には基本的に会わない。また、天涯孤独で養護施設育ちであるため、亡くなっても遺産を受け取る親族はいない。「ミリオンジョー」の単行本初版部数が400万部を超えた頃から体調を崩し始め、聡市には頻繁に心臓に痛みを訴えていた。しかし、心配してやって来る聡市に冷たく接したり、心臓の痛みがウソだったと言ったりしたことで、次第に信じてもらえなくなる。そのため「ミリオンジョー」第43巻が発売された年の9月5日、聡市に体調不良を伝えるが信じてもらえず、自宅で一人亡くなった。実は、真加田恒夫自身の元担当編集者である伊佐治義彦の後任を決める際、義彦づてに聡市の「バイオレンス昆虫 KABUTO」を読んでおり、ひそかに気に入っていた。そこで千道社の編集者となった聡市を三代目担当編集者に指名したが、聡市はこの事実を知らない。甲野晃のファンで「ミリオンジョー」は晃の作品「マジックスターズ」の影響を強く受けている。

寺師 良太 (てらし りょうた)

漫画アシスタントを務める男性で、年齢は45歳。真加田恒夫の「ミリオンジョー」の制作現場で、チーフアシスタントを務めている。短髪にバンダナを巻き、無精ひげを生やしている。非常に眉が太く、いつも目を閉じているように見える。アシスタントとしての技術は非常に高く、恒夫のセンスにもぴったりとはまることから、絵に関しては恒夫の全面的な信頼を得ている。そのため、数年前からは「ミリオンジョー」のメインキャラクターのペン入れまで任されるようになった。また、恒夫とほかのアシスタントのあいだを取り持つ業務も行っており、ふだんは人嫌いな恒夫に配慮して別室でほかのアシスタントたちと作業しながら、アシスタントでは唯一恒夫の部屋に入ることが許されている。しかし基本的に、原稿のやり取りでしか恒夫に会うことができないため、周囲の人たちにはあまり認められておらず、この事実に強い不満を感じている。さらに、1年前に妻の真理子と別れてからは酒や風俗に溺れる荒れた生活を送っており、多額の借金を背負っている。そのため、恒夫の死を知ってからはこれを利用して自分の生活を立て直そうとするが、呉井聡市の計画に巻き込まれてしまう。聡市とは聡市が大学生の頃、漫画家を目指していた際に知り合った。しかし仲がいいわけではなく、計画を始めてからもつねに聡市や岸本薫を疑っている。

岸本 薫 (きしもと かおる)

呉井聡市の友人の若い男性で、なんの仕事をしているかは不明。髪の毛を刈り上げて残った髪の毛を頭頂部で結んだ、どんぐりのような髪形をしている。眉が非常に太く、顎ひげと口ひげを長く伸ばしている。体形は背が高くやや太めで、強面のために近寄りがたい雰囲気を漂わせている。目的のためには手段を選ばない残酷な性格で、他人を物のように扱い、暴力的に振る舞っている。しかし聡市のことは気に入っており、心からの友人ではないと言いながらも聡市を認めている。出身地は愛媛県で、聡市とは小学校の先輩後輩の関係だが、当時は面識がなかった。その後、東京都にやって来てから居酒屋で偶然聡市と会った際に、出身地が同じことから一気に親しくなり、聡市の何をしでかすかわからない人間性に惹かれるようになる。そのため、真加田恒夫の死を隠蔽し、遺産を聡市、寺師良太の三人で山分けする計画を持ち掛けられた時も、その提案を受け入れた。その後、二人に漫画制作を任せて、岸本薫自身はどうしたら遺産をバレずに手に入れるか考える計画を練ることになり、恒夫の替え玉として佐藤宏冶を用意したり、恒夫の死体の一部を保存していざというときに利用できるようにしたりと周到に立ち回った。しかし、次第にお金だけではなく聡市の「ミリオンジョー」に対する執念に惹かれるようになり、計画が失敗しそうになっても最後まで聡市の邪魔をすることはなかった。

佐藤 宏冶 (さとう こうじ)

無職の中年男性。元パソコンメーカーの営業マンで、高額の借金を背負っていた。真加田恒夫と雰囲気が似ていることから、岸本薫に恒夫の替え玉役を演じるように命じられる。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、腰まで伸ばしたストレートロングヘアという、恒夫と同じ髪形にしているが、身長は恒夫より少し低い。要領が悪く知性に欠けているが比較的画力があるため、計画に参加してからは、いざというときのために恒夫風のイラストを練習するようになる。恒夫として行動するようになってすぐ、恒夫とカンちがいした森秋麻衣に声を掛けられ、別人であることがバレてしまい、麻衣を仲間に加えざるを得なくなった。その後は呉井聡市の判断で引き続き恒夫役を演じることになるが、次第に自分には恒夫の遺産が分け与えられないことを不満に感じるようになる。そこで、麻衣と寺師良太と結託して恒夫の遺産を確保し、途中で良太を見捨てて、麻衣と二人で聡市と薫の前から姿を消した。

森秋 麻衣 (もりあき まい)

漫画家の若い女性。代表作は出版社「千道社」の少年漫画誌「週刊少年グローリー」で連載中の「破裂プリンス!」で、担当編集者は石田が務めている。前髪を眉上で短く切り、腰まで伸ばしたロングヘアにしている。一見明るくかわいらしいが、真加田恒夫と結婚するために漫画家を志したという変わり者。そのため恒夫と「ミリオンジョー」の熱狂的ファンで、恒夫に関する話題になると周りが見えなくなる。手が早く締め切りは守るものの、なかなか人気を獲得できないでいる。「破裂プリンス!」の連載が始まったのを機に、恒夫に接近するために編集部に頻繁に顔を出したり、恒夫の担当編集者である呉井聡市を付け回す。そんなある日、恒夫とまちがえて替え玉の佐藤宏冶に声を掛けて誘惑するが、すぐに別人であることに気づく。そしてこの証拠を聡市につきつけ、森秋麻衣自身も彼らの仲間に加わる。それ以来は計画を他言しないという約束を守り、聡市たちの漫画制作にプロ漫画家としてアドバイスをしたり、寺師良太や宏冶とも親しくしたりして一見良好な関係を築いていた。しかし、心の底では恒夫の作品を冒瀆した聡市たちを許せず、天罰を下さなくてはいけないと考えていた。そこで、良太と宏冶と結託して恒夫の遺産を確保し、途中で良太を見捨てて、宏冶と二人で聡市と薫の前から姿を消した。

橋爪 文彦 (はしづめ ふみひこ)

出版社「千道社」の編集者を務める中年男性。少年漫画誌「週刊少年グローリー」の編集長を務めている。頭頂部が禿げ上がり、肩につくほどまで伸ばした外はねボブヘアに眼鏡をかけ、顎ひげと口ひげを長く伸ばしている。小柄で太めの体形で、たれ目たれ眉。やや短気な性格で、気に入らない編集者に暴力を振るっている。しかし、編集長としての役目はまじめにこなし、担当編集が納得した原稿であればあまり口出しせずに受け取るようにしていた。しかしある日を境に、「ミリオンジョー」の原稿の品質が落ちたことに気づき、当初は真加田恒夫の体調不良が原因であると考え、呉井聡市を叱咤していた。その後、漫画の内容は持ち直したものの、今度は絵のタッチに迷いが生じていることを見抜き、この状態が続くようであれば、恒夫と一度真剣に話をしなければならないと考えている。しかし、すでに恒夫は亡くなっており、聡市と恒夫のチーフアシスタントである寺師良太が「ミリオンジョー」の代筆を行っていたことが発覚。この事件の責任を取って編集部を去った。しかしその後も編集部に顔を出しており、事件の収束後は聡市が代筆した漫画を出版するため、新編集長の伊佐治義彦に掛け合った。

伊佐治 義彦 (いさじ よしひこ)

出版社「千道社」の編集者を務める男性で、年齢は49歳。少年漫画誌「グローリー濃(のう)」の編集長を務めており、真加田恒夫と「ミリオンジョー」の元担当編集者でもある。前髪を上げて額を全開にした癖のある短髪で、無精ひげを生やしている。ある日、「週刊少年グローリー」で「ミリオンジョー」と甲野晃の「マジックスターズ」のコラボレーション企画が持ち上がったことを知るが、恒夫が乗り気でなく、なかなか話を進めようとしないことに違和感を抱くようになる。そこで呉井聡市に連絡して、晃と打ち合わせをするように命じた。そして聡市の役目は、なんとしてでも「ミリオンジョー」を完結させることであると説いた。実は以前、伊佐治義彦自身に代わる恒夫の編集者を決める際、聡市の「バイオレンス昆虫 KABUTO」を恒夫に渡しており、恒夫がこの作品をひそかに気に入っていたことを知っている。

石田 (いしだ)

出版社「千道社」の編集者を務める若い男性。少年漫画誌「週刊少年グローリー」編集部で本杉テツヤの「トライゼッタ」と、森秋麻衣の「破裂プリンス!」の担当編集者を務めている。前髪を眉が見えるほど短く切った短髪で、たれ目で釣り眉。明るく爽やかな性格で、コミュニケーション能力が非常に高い。そのため呉井聡市がほかの編集者に嫌味を言われて困っているときにさりげなく助けたり、編集部の望まない飲み会を上手に断ったりしていた。しかし麻衣のことは苦手で、異常なまでに真加田恒夫に執着する麻衣を危険人物ととらえている。甲野晃の作品「マジックスターズ」のファンでもある。

左子 (さこ)

出版社「千道社」の編集者を務める中年男性。少年漫画誌「週刊少年グローリー」編集部に所属している。前髪を眉の高さで切って真ん中で分けた短髪で、丸眼鏡をかけている。細く小さい目で、無精ひげを生やしている。体形は背が高く瘦せており、頰はこけている。嫌味で高圧的な性格の持ち主。真加田恒夫の熱狂的なファンであるため、「ミリオンジョー」の担当編集者である呉井聡市を妬んでおり、事あるごとに意地悪を言ったり、担当を変わるようせまったりしている。また「ミリオンジョー」のストーリーや作画を隅々までチェックしており、些細な変化にも目ざとく気づく。恒夫が亡くなった翌日、最新話の小さな作画ミスと、作者コメントの内容が不自然であることから、恒夫に何かあったのではないかと疑うようになる。

小川 アヤカ (おがわ あやか)

漫画家の若い女性で、主に少年漫画誌「週刊少年キックス」で連載している。代表作は「ファンタジス太」。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、腰まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。容姿端麗なために美人漫画家として知られており、男性から人気がある。呉井聡市とは昔からの友人で、デビュー前からお互いの作品を見せ合う仲だった。当時、聡市の「バイオレンス昆虫 KABUTO」を読んでその才能を認めていたため、聡市が漫画家になる夢をあきらめたことを残念に思っている。

本杉 テツヤ (もとすぎ てつや)

漫画家の中年男性で、代表作は出版社「千道社」から出版されている少年漫画誌「週刊少年グローリー」で連載中の「トライゼッタ」。担当編集者は石田が務めている。前髪を長く伸ばして真ん中で分け、髪全体を後ろに流した外はねのボブヘアにしている。非常に熱い志を持つベテラン作家だが、読者からはやや作風が古いと評されている。「週刊少年グローリー」のアンケートでは「ミリオンジョー」にどうしても勝てず2位止まりだったが、ある日を機に「ミリオンジョー」を抜いてついに1位を獲得。しかし、これをきっかけに「ミリオンジョー」の内容がおかしいことに気づき、ついに真加田恒夫ではない誰かが描いているのではないかと疑うようになる。そこで担当編集者である呉井聡市に会いに行き、もしかすると代筆しているのは聡市ではないかと考えるが、あえて何も聞かずにアドバイスを送った。

甲野 晃 (こうの あきら)

元漫画家の中年男性で、代表作は「マジックスターズ」。日本漫画史の生きる伝説として、漫画ファンの中では神様のような扱いを受けている。前髪を眉の上で切ったぼさぼさの癖のある短髪で、眼鏡をかけている。穏やかなおっとりとした性格で、編集者に対しても非常に丁寧に接する。しかし、漫画に対しては非常に真摯に取り組んでおり、自分が漫画を描けなくなっても誰かが代筆することは絶対に許せず、そんなことがあれば代筆者を殺してしまうかもしれないと考えている。1976年に「嵐の剣」でデビューし、1980年代には「ドドド学園」「ゴールデンマン」「ロンビット」といったヒット作をはじめ多数の連載を抱え、少年漫画雑誌黄金期を築いたとされている。特に1988年に連載開始された「マジックスターズ」は、これまでの漫画では考えられないような大ヒットを記録し、社会現象となった。TVアニメ版は平均視聴率が28%という驚異的な数字を残しており、単行本の発行部数は全世界で3億部を超えている。しかし甲野晃自身は「マジックスターズ」の完結以降は創作活動はほとんどしておらず、その後は時折、少年漫画誌「週刊少年グローリー」に読み切りを描く程度で、引退したに等しい状態にある。

真理子 (まりこ)

寺師良太の元妻の中年女性。良太と結婚していた頃の名前は「寺師真理子」。前髪を目の上で切り、真ん中で分けた短髪にしている。良太とは1年前に離婚しているが、初めて「ミリオンジョー」を読み、この作品のチーフアシスタントを務めていた良太の偉大さを認識した。現在交際している男性から暴力を振るわれており、のちに良太に連絡してこの事実を打ち明ける。これにより良太は、真理子を助けるためにも、真加田恒夫の遺産を手に入れなくてはならないと考えるようになった。

その他キーワード

ミリオンジョー

真加田恒夫の執筆する作品で、出版社「千道社」から出版されている少年漫画誌「週刊少年グローリー」で連載中の少年漫画。「週刊少年グローリー」の看板作品で、連載期間はすでに10年を経過している。単行本は第43巻まで刊行され、その初版が500万部、TVアニメ版の視聴率は20%を超えるほどの大人気作品。主人公のニャック・リウヘウンを中心に、世界中の「魂士(ソウルジャー)」たちが謎の男「ミリオンジョー」の秘密を巡って戦うという冒険バトルもので、物語に配置された多くの謎と伏線が最大の魅力となっている。特に最新シリーズの「古代戦士編」は非常に人気があったが、その完結直前に恒夫が死亡。それ以降の「魔境インケラード編」と「神聖時間(サクロタイム)編」の2作品の約100話分は、恒夫の死を隠蔽した呉井聡市が恒夫の創作ノートを基にネームを描き、寺師良太が主な作画を担当するという、成り済ましの形で連載が続けられた。しかし、途中から聡市が予定よりも一話の情報量を増やして進めたことで、100話分よりも短くなり、全55巻で完結する予定も変更された。それでも連載は順調に続いていたが、翌年にこの成り済ましが発覚し、連載は休止。しかし最終話まで、聡市が恒夫の構想どおりに描いたネームは存在しており、ファンのあいだでは出版が熱望されている。

クレジット

原作

十口 了至

書誌情報

ミリオンジョー 3巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2013-07-23発行、 978-4063872354)

第2巻

(2013-10-23発行、 978-4063872675)

第3巻

(2014-03-20発行、 978-4063883138)

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