ヤマトタケル

ヤマトタケル

「古事記」や「日本書紀」にあるヤマトタケルの物語を、作者である安彦良和が独自の解釈を加えて再構成。ヤマトタケルを「確かに実在した人物」として、苦悩や成長を含めて等身大に描く。「サムライエース」2012年第1号から連載中の作品。

正式名称
ヤマトタケル
ふりがな
やまとたける
作者
ジャンル
時代劇
レーベル
角川コミックス・エース(KADOKAWA)
巻数
既刊5巻
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概要・あらすじ

紀元4世紀、第12代景行天皇の皇子である小碓皇子は、中央に反抗する勢力を討伐するために九州に遠征した。しかし、賊の長である川上タケルの砦の守りは固く、小碓皇子たち遠征軍は苦戦する。そんななか、遠征軍の武内宿禰が、タケルの娘の鹿文を捕らえて小碓皇子に引き合わせたことをきっかけに、小碓皇子の運命は大きく転換していく。

登場人物・キャラクター

小碓皇子 (おうすのみこ)

景行天皇の第二皇子。中央に従わない川上タケルを征伐するため、兄の大碓皇子らと共に九州に派遣された。卑怯なことを好まない勇敢な性格だが、純粋で理想主義的に過ぎるため、武内宿禰とたびたび意見の対立を起こす。タケルの砦に単身乗り込んで死闘の末にタケルを倒し、死ぬ間際のタケルから「ヤマトタケル」の名を贈られ、以降はそう名乗るようになる。

大碓皇子 (おおうすのみこ)

景行天皇の第一皇子。大王の後継者として、川上タケルの討伐軍を率いている。しかし、弟の小碓皇子とは反対に、気が弱く決断力にも欠ける。小碓皇子には兄として慕われており、忠誠心を寄せられている。

武内宿禰 (たけうちのすくね)

大碓皇子、小碓皇子の近臣で、幼なじみの男性。景行天皇に才を見込まれ、大碓皇子や小碓皇子の補佐役として九州に派遣される。特に小碓皇子とは、主従の関係を越えて兄弟のようにざっくばらんに語り合う仲。好戦的な性格で、忌み嫌う九州の民には高圧的な態度で接する。

弟彦 (おとひこ)

大碓皇子、小碓皇子の近臣の男性。大碓皇子らに付き従い、川上タケルの征伐軍に加わっている。兵士たちの宿営所の手配などの雑務をこなす、優秀な官吏肌の人物。弓の名手でもある。常識的な感覚の持ち主で、直情的すぎる小碓皇子に苦言を呈することもある。

川上タケル (かわかみたける)

中央の纒向ヤマトの支配に従わない部族の族長の男性。中央からの討伐軍に対して奇襲を仕掛けたり、山中の砦にこもって討伐軍を苦しめたりするなど、優れた統率力を誇る。堂々とした荒々しい武人であるが、一人娘の鹿文を、人一倍気にかけている。

鹿文 (かや)

川上タケルの一人娘。武内宿禰によってタケルの砦からさらわれ、小碓皇子と対面する。父親に対しては、亡き母親を巡って屈折した想いを抱いており、小碓皇子に対してあることを頼む。

景行天皇 (けいこうてんのう)

纒向ヤマトの大王の男性。中央に従わない勢力に対して、積極的に軍事行動を起こす行動的な君主。風采も態度も堂々としており、王らしい威厳に満ちている。しかし、降伏しようとする部族を皆殺しにするなど、纒向ヤマトの勢力を確立するためには、非情な手段も辞さない。

倭媛 (やまとひめ)

先代の大王の娘。斎宮(巫女)として神に仕えている。気品のある佇まいの老女。纒向ヤマトに滅ぼされた日向ヤマトの怨霊が害をなさないよう、霊を鎮める役目を負う。ヤマトタケルが山中で死霊に襲われた時、その危機を救った。

神骨 (かむぼね)

美濃国の国造(国のかしら)の男性。景行天皇は、神骨の娘、遠子の美貌を聞きつけ、大碓皇子を派遣して我が物にしようとした。しかし大碓皇子は遠子と恋に落ち、美濃国にとどまってしまう。神骨はそれを利用し、纒向ヤマトに反抗しようとした。古狸のような油断のならない男。

遠子 (とおこ)

美濃国の国造・神骨の娘。大碓皇子は、景行天皇に命じられ、遠子を連れ帰るため美濃に向かった。しかし遠子と大碓皇子は恋に落ちてしまう。柔弱だった大碓皇子が勇敢な性格に変わり、天皇に反抗するようになるきっかけとなった人物。

建稲種 (たけいなだね)

大碓皇子の従者の男性。大碓皇子が景行天皇の命を受け、美濃国に向かった際に付き従った。遠子と恋に落ち、美濃に留まろうとする大碓皇子を置いて帰国しようとしたが、途中で、大碓皇子を連れ戻すためにやってきたヤマトタケルと行き会う。

弟橘姫 (おとたちばなひめ)

伊勢国の豪族・忍山宿禰(おしやまのすくね)の娘。男の服を身に着け、髪も男のような結い方をしている。勝気な性格で、自らの血筋を誇り、ヤマトタケルら中央の王族にも対抗意識を持っている。伊勢国に出向いたヤマトタケルに、初対面で馬での競争を挑むが敗れ、以後は彼のことを慕うようになる。

稚足彦 (わかたらしひこ)

景行天皇と八坂入媛(やさかのいりひめ)との間の皇子。小碓皇子の異母兄弟。のちに皇位を継いで成務天皇となる人物。大碓皇子が景行天皇に反抗した出来事の後、小碓皇子が皇位継承者の有力候補となったが、稚足彦はそれに反対している。

場所

奴国 (なこく)

現在の九州にあった国。表向きは中央政権である纒向ヤマトに従っており、小碓皇子らの遠征軍がやってきた時も受け入れた。しかし、心の中では纒向ヤマトに心服しておらず、特に武内宿禰に不信感を抱かせた。

日高見国 (ひたかみこく)

武内宿禰が東北地方への遠征に向かったときに行き着いた国。「粛慎」という部族名が正しい名前。顔に刺青を入れ、ヤマトとは言葉も違っている。自らを「天神(テングリ)の子」と称しており、不気味な格好をしたシャーマンが口にした、神のお告げを信じて行動する。

その他キーワード

ヤマト

本作『ヤマトタケル』では、古代の日本には2つのヤマト国があったという説を採っている。1つは九州にあった日向ヤマトで、卑弥呼のいた邪馬台国の血筋を引く。もう1つは奈良盆地にあった纒向ヤマトで、のちに大和政権となって日本を統一する。

纒向ヤマト (まきむくやまと)

現在の奈良盆地にできた政権で、のちの大和政権。出雲族のスサノオを先祖とする。日向ヤマトの皇子イワレヒコ(初代神武天皇)を世継ぎに迎えたことから、「ヤマト」を名乗るようになった。第12代の景行天皇は、2つのヤマトが併存する状況を清算するため、九州の日向ヤマトを滅ぼした。

日向ヤマト (ひむかやまと)

九州にあった、邪馬台国を祖とする王国。纒向ヤマトの景行天皇の遠征によって滅ぼされた。しかし、九州での纒向ヤマトに対する抵抗は根強く、天皇は九州の民を再度服属させるために、大碓皇子と小碓皇子を派遣することになった。

書誌情報

ヤマトタケル 5巻 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉

第3巻

(2015-04-10発行、 978-4048111188)

第4巻

(2017-02-25発行、 978-4048111454)

第5巻

(2017-12-09発行、 978-4041065051)

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