世界観
本作は、作中での人気オンラインゲーム、通称「リアデイル」の世界を舞台としている。リアデイルは仮想現実大規模多人数オンラインRPGで、日本を中心に展開されており、総プレイヤー人口は数千万人ともいわれ、定期的にイベントが開催されて多くの参加者を集めていた。ゲーム内では、戦士や魔術師といった決まった職種は存在せず、その代わりに種族と装備、四千以上もの技能によってプレイヤーが望むままのアバターが作成可能。種族は人間、エルフ、ドワーフ、竜人族、魔人族などがあり、そのあまりの自由度の高さに、「放任世界」と揶揄されたほど。また、オンラインモードとオフラインモードがあり、オフラインモードはほかのプレイヤーが存在するオンラインモードとは異なり、プレイヤー以外のキャラクターはすべてNPCとなる。また、オンラインの場合はゲーム開始地点が所属する国の王都だが、オフラインでは適当に配置された辺境の村になる。そのほか、オフラインでは依頼をこなすと出発地の村を発展させることもできる仕様となっている。なおリアデイルの世界には、もともと白の国ヘルシュペル、黒の国ライプラス、紫の国ヘルベール、翠の国、赤の国、蒼の国、茶の国と七つの国があったが、戦争によって土地も人々も荒れ果ててしまう。見かねた神が争いを鎮めるために、七つの国の中から三人の指導者を選び出し、その三人によって七つあった国は、ヘルシュぺル、フェルスケイロ、オウタロクエスの三つにまとめられたという経緯がある。ゲームのリアデイルはこの時代を描いているが、ケーナが転生したのは、それから約200年が経過した世界である。なお、このあいだにゲームのリアデイルはサービス終了となり、プレイヤーのほとんどがこの世界からいなくなっている。
あらすじ
目覚め
ある日の朝、一人の少女(リット)に呼びかけられた「各務桂菜」が目を覚ますと、そこにはいつもと違った風景が広がっていた。状況を理解できずにいると、桂菜は自分が病室で機械につながれて寝たきりの生活を送っていたことを思い出す。そんな中、自分の目の前に見慣れたアイテムボックスの表示が現れる。そこから鏡を取り出した桂菜が恐る恐る自分の姿を見ると、そこには見覚えのあるVRMMORPG「リアデイル」のアバター・ケーナと同じ姿があった。使い慣れたメニュー画面を操作して自分自身を確認したケーナは、自らがリアデイルの世界にいることを確信する。自由に動く手足や流暢に話すほかのキャラクターたちと、すべてがゲームの枠を超えてあまりにもリアルなことに混乱しながら、ケーナはログアウトを試みる。しかし、メニューにはそれらしいものは見当たらず、運営に連絡を取ることもできない。ケーナは愕然とするものの、リットの母親で宿屋の女将・マレールの優しさに触れて元気を取り戻し、AI・キーからの情報提供もあり、少しずつ現状を理解し始める。ケーナは、現実世界で起きた停電によって各務桂菜という肉体を亡くしたが、精神だけがリアデイルに逃げ延びていたのだ。そしてここは、ゲーム中のリアデイルから200年が経過した世界だった。にわかには信じられない現実を突きつけられ、ケーナはショックを受けながらも、200年のあいだに起きた変化について少しずつ情報収集を開始する。そこでケーナは守護者の塔の一つである、銀の塔の存在を思い出す。スキルマスターであるケーナは、銀の塔を拠点として所有していたのだ。銀の塔に行けば何かわかるかもしれないと考えたケーナは、さっそく銀の塔に向かう。
フェルスケイロの王都
ケーナは、滞在する辺境の村を訪れた隊商から、200年前に里子システムで送り出した三人の子供たちのうち、長男のスカルゴについての情報を得る。フェルスケイロにおいて、スカルゴは王や宰相に次ぐ発言権を持つ大司祭となっており、知らない者はいない存在となっていた。ケーナはフェルスケイロの王都へと旅立つことを決め、辺境の村に別れを告げ、アービタ、エーリネたちと共に王都を目指す。10日間の行程を経て、隊商は無事フェルスケイロの王都に到着する。そして、ケーナは冒険者としてギルドに登録して初めての依頼も難なくこなし、順調に事を進めていく。その後、ケーナはスカルゴに会うために王都を散策しながら中州の教会へと向かうが、国の重鎮となったスカルゴに一市民が簡単に会うことができるはずもなく、あえなく門前払いされてしまう。続いて中洲の工房に向かったケーナは、そこで偶然にも次男のカータツと出会う。カータツによれば、長女のマイマイ・ハーヴェイは、中洲の王立学院で学院長を務めているとのことだった。三人の子供たちはみんな出世し、おいそれとは会えなくなっていたが、ケーナは子供たちが元気なことがわかっただけでも収穫だったとして、日を改めることにする。そんな中、ケーナは守護者の塔についての調査を始めていた。エーリネからの情報とギルドに寄せられた依頼内容を基に、王都西部に目を付けたケーナは、王城付近にある闘技場へと向かう。そこでケーナは、この世界に関する新たな情報を手に入れる。
三人の子供たち
闘技場の守護者から、リアデイルがサービスを終えていることを聞かされたケーナは、それが本当なら仲間など見つかるはずもなく、守護者の塔を探しても意味がないと、自室に引きこもってしまう。そんなケーナの様子を知ったスカルゴは、ケーナの気持ちなどおかまいなしに彼女のもとを訪れ、久しぶりの再会を喜ぶ。しかし、スカルゴの無神経な言動でケーナの怒りを買い、ケーナは遮断結界の魔法で殻の中に閉じこもり、周囲からの接触をいっさい拒絶してしまう。そして、ケーナの攻撃を受けて気絶したスカルゴを、カータツとマイマイ・ハーヴェイが回収し、ケーナを宿屋の女将に託してその場をあとにする。ほどなくしてケーナは食欲とともに復活し、自分の言動は母親としてあるまじきものだったと反省する。その後、カータツとの話し合いを経て、マイマイとスカルゴのもとを訪れ、無事に和解することに成功する。そんな中、ケーナはエーリネの提案を受けて、フェルスケイロを旅立つことを決め、顔なじみの傭兵・アービタらの隊商と共に旅立つ。道中、辺境の村に立ち寄ったケーナは、リットをはじめとする村人たちと感動の再会を果たすことになる。そこで村の井戸の奥から不気味な唸り声がして困っていると聞いたケーナは、村長から冒険者として正式に調査の依頼を受ける。
予期せぬ出会い
ケーナは、エーリネたち隊商の護衛をしながら北の国「ヘルシュペル」に到着する。マイマイ・ハーヴェイに託された手紙を渡すため、王族に次ぐ権力を持つとされる商家「堺屋」へと向かうと、エーリネとケーナを迎えたのは若旦那・イヅークだった。イヅークは手紙の内容を確認すると、血相を変えて二人を客間に通す。するとそこに、手紙の届け主である大旦那・ケイリックが姿を現す。彼はケーナに目をやると丁寧にあいさつし、ケーナを「お婆様」と呼ぶのだった。ケイリックはマイマイの息子だと語り、それはケーナの孫であり、さらにケイリックの息子・イヅークは、ケーナのひ孫にあたることを意味していた。予期せぬ出会いによって、17歳にして三人の子供に孫、ひ孫まで存在する事実を突き付けられ、ケーナはショックを受ける。明らかに気落ちした様子のケーナを心配し、都で一番の宿屋を手配すると豪語したケイリックは、粗末な宿より疲れが取れるはずと口にする。気遣いのつもりの一言だったが、この言葉がケーナの逆鱗に触れてしまう。自分が大切と感じているこの宿をけなされたことに腹を立て、その場を去ったケーナは、宿屋でアービタたちと合流し、あらためて宿屋の温かさや人々の優しさを実感する。そんなケーナの前に、ヘルシュペル騎士団のケイリナ・サカイが姿を現す。彼女はケイリックの双子の姉であり、つまりケーナの孫だった。宿屋でのケーナの様子を見たケイリナは、ケイリックがよほどの無礼を働いたのだろうと考え、弟の代わりに謝罪したいと申し出る。ケーナはケイリナの謝罪を受け入れて事を収めたあと、10日間の自由行動期間を手に入れたケーナは、守護者の塔について調査を開始する。そんな中、三日月の城の存在が浮上するが、それと同時に盗賊団による厄介な問題が浮き彫りになり、ケーナの調査は思うようにいかないでいた。そこでケーナは、事情に詳しいであろうケイリックに協力を仰ぐため、ケイリックとの関係改善を図ろうと料理の準備を始める。
関連作品
小説
本作『リアデイルの大地にて』は、Ceezの小説『リアデイルの大地にて』を原作としている。原作小説版はCeezが「小説家になろう」に投稿したもので、KADOKAWAエンターブレイン「ファミ通文庫」より刊行された。原作小説版は「ラノベ好き書店員大賞2020」の単行本部門において第1位を獲得している。
メディア化
テレビアニメ
2022年1月より、本作『リアデイルの大地にて』の原作小説『リアデイルの大地にて』のテレビアニメ版『リアデイルの大地にて』が、TOKYO MXほかで放送された。監督は柳瀬雄之、シリーズ構成・脚本を筆安一幸が務めている。キャストは、ケーナを幸村恵理、スカルゴを小野大輔、カータツを杉田智和、マイマイ・ハーヴェイを名塚佳織が演じている。
登場人物・キャラクター
ケーナ 主人公
VRMMORPG「リアデイル」のプレイヤー「各務桂菜」が作成したアバター。種族はハイエルフ、レベルは1100で、「スキルマスターNo.3」の称号を持つ。現実世界で桂菜は年齢17歳の女子で、裕福な家庭で... 関連ページ:ケーナ
キー
ケーナこと「各務桂菜」のために作られたAI。現実世界で寝たきり生活を余儀なくされた桂菜を補助することを目的に、桂菜の叔父が特注で作った。リアデイルの世界でも、ケーナから呼びかけられればいつでも応じ、必要とあらばキーから語り掛けることもある。200年前、現実世界で桂菜が就寝後、約2秒間の電力瞬断があり、病院のシステムとの遮断、そしてリアデイルのマスターシステムとのリンクが切断されたことを過去の緊急案件として記憶している。
マレール
フェルスケイロの辺境の村にある宿屋の女将。明るい性格で威勢がいいが、配慮に欠ける一面がある。基本的には夫と二人で宿屋を切り盛りしているが、昼間は娘のリットに手伝ってもらっている。夕方からは、村人たちが飲みに集まることで忙しくなるため、嫁いだ長女・ルイネに手伝ってもらっている。宿では手作りの食事を提供しており、評判も上々。ある時、宿泊客のケーナと出会い、一見頼りないケーナを実の娘のように心配したり、世話を焼いたりするようになる。銀の塔には「銀環の魔女」と呼ばれる悪い魔女がいるという噂を知り、銀の塔に恐れを抱いているが、銀環の魔女がケーナであることは知らない。
リット
フェルスケイロの辺境の村にある宿屋の女将・マレールの娘。引っ込み思案な性格ながら、マレールを手伝いながらいっしょに宿屋を切り盛りしている。ある時、宿泊客のケーナと出会い、一見頼りない彼女を心配するが、いっしょに過ごすうちにケーナの魔法や能力の高さを目の当たりにし、優しいケーナを心から慕うようになる。ケーナが辺境の村から旅立つことを知った日、ショックで涙に暮れてしまう。その後、ケーナから銀の塔の悪い魔女だと打ち明けられるが、ケーナの人柄を知っていたため、ケーナは悪い人じゃないと否定した。ケーナの秘密を共有したことで、再び彼女に会える日を楽しみに、旅立つケーナを見送った。その後、村の井戸の奥から保護された人魚のミミリィを気にかけるようになり、親しくなっていく。
ルイネ
フェルスケイロの辺境の村にある宿屋の女将・マレールの長女。結婚して家庭を持っているため、村人が飲みに集まる夕方頃の時間帯に、主に食堂の手伝いをしている。底抜けに明るい性格で、非常に威勢がいい。
スカルゴ
ケーナがリアデイルで作り出した男性キャラクターで、ケーナの子供にあたる。エルフ族で、回復魔法に特化した神職系。マイマイ・ハーヴェイ、カータツとは三人兄弟で、里子システムを利用し、ケーナの長男として教会にもらわれていった。その後、ケーナと連絡を取るために銀の塔の守護者のもとを訪れたが、連絡が取れなかったため、守護者の前で泣きながらケーナの尊さや美しさを数時間にわたって語り続け、愛の言葉を延々と並べ立てた。実は現在はフェルスケイロの大司祭という要職に就いており、王や宰相に次ぐ発言権を持っている。激動の時代からの生き字引的な存在で、国のNo.3。美青年で、スカルゴの魅力に酔わない者はいないといわれている。好きなときに感情に合わせたさまざまなエフェクトを、周囲に発現できる特殊技能「薔薇は美しく散る」(オスカル)を使いこなす数少ない人物。そのため、背中にはよく感情のままに花や波を背負い、目を輝かせて自分に陶酔している。周囲はそんなスカルゴにあてられ気味だが、本人はその自覚がまったくない。母至上主義者で、ケーナのことになると聞く耳を持たず、突っ走りがちなところがある。何かと問題の多い性格ととらわれがちだが、いつも精一杯国のことを考えており、すべてはいつかケーナが安心して人前に出られるようにと考えてのこと。マイマイとは大人になった今でも、魔法を使った大喧嘩が日常茶飯事となっている。
カータツ
ケーナがリアデイルで作り出した男性キャラクターで、ケーナの子供にあたる。ドワーフ族で技能系の職人として登録されている。スカルゴ、マイマイ・ハーヴェイとは三人兄弟。里子システムを利用し、ケーナの次男としてもらわれていった。現在は一級建築士となり、フェルスケイロの中州にある工房の工房長を務めている。いっしょに働く仲間たちからは怖い親方として恐れられながらも、尊敬されている。ある日突然、ケーナが工房に姿を現し、思いがけず200年ぶりの再会を果たす。それを機にスカルゴ、マイマイにも連絡を取り、ケーナが王都に来ていることを報告した。きょうだいの中ではつねに中立の立場にあり、冷静な性格で一番の常識人。ケーナから、何かと頭をなでられることが多くあり、その都度恥ずかしさにもだえ、周囲の反応を気にしている。
マイマイ・ハーヴェイ
ケーナがリアデイルで作り出した女性キャラクターで、ケーナの子供にあたる。エルフ族で攻撃魔法に特化している。スカルゴ、カータツとは三人兄弟で、その長女として里子システムを利用し、魔法使い組合に就職した。元宮廷魔術師で、現在はフェルスケイロの王都にある王立学院で学院長を務めている。夫のロプス・ハーヴェイとのあいだに双子の息子のケイリックと娘のケイリナ・サカイがおり、ケイリックには息子・イヅークがいる。ケーナは大好きな母親で、敬うべき人として扱っており、マイマイ・ハーヴェイ自身の子供たちには、怒らせると魔人のようになり、身内でも容赦なく粉微塵にするとよく言い聞かせてきた。ケーナがフェルスケイロの王都を旅立つ際、ヘルシュペルのケイリックに宛てた手紙を託し、自分の息子であることは伏せたままケーナをケイリックに会わせて驚かせようと画策した。スカルゴとは大人になった今でも、魔法を使った大喧嘩が日常茶飯事となっている。
ロットル
フェルスケイロの辺境の村に住む猟師の男性。夜になるとよく宿屋に顔を出す常連客で、仲間内で酒を飲んではよく騒いでいる。ある日、森で狩りをしていた際に、ホーンベアに襲われて絶体絶命のピンチに陥るが、偶然通りかかったケーナに助けられることとなった。これをきっかけにケーナの実力を知り、それまでケーナを「嬢ちゃん」と呼んでいたが、名前で呼ぶようになった。その後、ケーナが狩りに同行した際には、森の歩き方や薬草の見つけ方についてレクチャーした。
銀の塔の守護者 (ぎんのとうのしゅごしゃ)
守護者の塔の一つである、銀の塔を守っている者。石像のような姿をしている。塔の最上階に鎮座し、スキルを求めてやって来る者と対峙しているが、ここ最近は平和続きのために訪問者はいない。塔の所有者であるケーナとは守護者の指輪でつながっており、本来ならすぐに連絡を取り合うことができるはずだったが、200年ものあいだ音信不通になっていたため、実質的には放置状態だった。銀の塔を管理するためには魔力が要り、ケーナからMPを補充してもらう必要があり、200年ぶりにケーナとの再会を果たした際に、MPを満タンにしてもらった。この時、ほかの守護者の塔が機能停止している事実をケーナに伝え、その対処を頼んだ。口は悪いが優しい性格の持ち主。
エーリネ
隊商をまとめている存在。犬のような外見で、眼鏡をかけている。つねに冷静で穏やかな性格のため、隊商のブレーンとなっている。フェルスケイロの辺境の村への道中、仲間のケニスンがオーガに襲われて瀕死の重傷を負った。状況的に見て手遅れだろうと覚悟を決めていたが、ケーナが高度な魔法技術を駆使し、ケニスンを救う姿を目の当たりにする。仲間を助けてもらったお礼を伝え、自分にできることなら何でもすると伝えたところ、ケーナからリアデイルの地図が欲しいと頼まれ、用立てた。その際、商人根性で通常の4倍の値段を吹っ掛けたもののケーナが素直に支払いに応じたため、彼女の警戒心のなさと金銭感覚のなさに驚愕する。その後、王都に行きたいというケーナと行動を共にすることになり、貨幣の価値についてレクチャーすることとなった。日頃からケーナの様子をよく観察しており、のちにフェルスケイロの王都から、ヘルシュペルの王都へ向かう際も、ケーナに護衛として同行を依頼したりと、何かと行動を共にすることが多い。傭兵のアービタとは長い付き合いで、彼を信頼している。
ケニスン
エーリネたちの隊商に同行している傭兵の男性。フェルスケイロの辺境の村への道中、オーガに襲われて瀕死の重傷を負うこととなった。毒状態と深手という絶望的な状況の中、ケーナが高度な魔法技術を駆使し、必死に治療にあたったことで一命を取り留めた。それ以来、ケーナを命の恩人と崇めている。また団長のアービタを信頼しており、慕っている。
アービタ
隊商で団長を務める傭兵の男性。フェルスケイロの辺境の村への道中、仲間のケニスンがオーガに襲われて瀕死の重傷となった。絶望的な状況に覚悟を決めていたが、ケーナが高度な魔法技術を駆使し、ケニスンを救ってくれたことを心から感謝している。その後、王都に行きたいというケーナと同行することになり、その後も何かと行動を共にする。ケーナに対して「嬢ちゃん」と呼んで気安く接しているが、時折見せる意思の強さに興味を持っている。傭兵団「ほのおのやり」の団長でもあり、行動を共にする仲間からは一目置かれ、仲間への気遣いも忘れない。エーリネとの付き合いは長く、非常に親しい。
アガイド
フェルスケイロの宰相を務める男性。フェルスケイロの王都で知り合ったケーナに、赤毛の少年を捜してほしいと協力を要請した。その後、ケーナの活躍に対して多額の報酬を支払い、アルバレスト公爵家の紋章をケーナに手渡した。その後、独自の調査でケーナがスカルゴ、カータツ、マイマイ・ハーヴェイの母親であることを突き止めた。
ロンティ・アルバレスト
フェルスケイロの王立学院に所属する女性。アガイドと行動を共にし、フェルスケイロの王都で知り合った冒険者・ケーナに赤毛の少年を捜してほしいと協力を要請した。少年はケーナにほどなくして発見されるが、その際、赤毛の少年を殿下と呼ぼうとして「でん」と呼び、あわてて「坊ちゃま」と呼び直したことで、ケーナは少年を「デン助」と呼ぶようになった。もともと人見知りで引っ込み思案な性格だが、この一件から個人的にケーナを慕うようになる。
デン助 (でんすけ)
フェルスケイロ王都で行方不明になった赤毛の少年。実はフェルスケイロの王子で、王城での暮らしに飽き、たびたび城を抜け出していた。同じ年頃の子供たちを率いて、やんちゃな言動で周囲の者を困らせている。デン助を捜すように依頼されたケーナに見つかり、さまざまな魔法を駆使されて捕まってしまう。これを機にケーナを逆恨みし、ケーナが自国の重要ポストに就く人物の母親であるという事実をアガイドから聞き、化けの皮をはがしてやると意気込んでケーナを尾行するものの、あえなく返り討ちに遭ってしまう。同じ年頃の仲間からは「大将」と呼ばれ、「デン助」という呼び名もケーナが名づけたもので、本名ではない。
ロプス・ハーヴェイ
フェルスケイロの王立学院の錬金科で教授を務める男性で、マイマイ・ハーヴェイの夫。マイマイとのあいだには双子の息子のケイリックと、娘のケイリナ・サカイがおり、ケイリックには息子・イヅークがいる。古代の遺物と化した製造方法で作られたポーションに強い興味を持っている。初めてケーナに会った時、「嬢ちゃん」と呼んでいたが、マイマイの母親だと紹介されて驚愕し、それ以来態度を改めた。
ミミリィ
人魚の女性。フェルスケイロの辺境の村にある井戸の水脈の先にある洞窟でケーナに発見された。もともとは人魚の里で暮らしていたが、ある日、里の外れで一人で過ごしていた際に、突然黒い渦のような大穴が現れ、その渦に吸い込まれてしまった。気づいた時には見知らぬ洞窟におり、何度か脱出を試みたものの、水脈が複雑すぎて洞窟にとどまるしかないと判断。幸いにも外敵はいなかったため、小魚を食べて飢えをしのぎ、歌を口ずさんで過ごしていた。その歌声が複雑な水脈の中を反響し、唸り声のような音となって辺境の村にある井戸に届き、奇妙な声が聞こえる騒動となった。その後、ケーナによって洞窟から助け出され、人魚の里の場所がわかるまで辺境の村で保護されることになった。実はミミリィ自身は、人魚の里に戻りたいとはあまり思っていない。ネガティブな性格のため、保護されてからも落ち込んでいたが、リットの優しさや温かさに触れ、村での暮らしを受け入れ始める。
賊 (ぞく)
フードを深くかぶった盗賊たち。フェルスケイロの辺境の村から北に向かう途中にある関所で、複数の兵士たちを焼き殺し、関所を制圧した。その後に姿を現したケーナ、アービタ、エーリネたち一行を迎え撃ち、荷物を強奪しようとした。戦いの際には起動呪文だけで炎撃を発動することができるアイテムを利用し、ケーナに攻撃を仕掛けた。しかし、それがケーナの怒りに触れて火に油を注ぐこととなり、高等な氷魔法による反撃を受けた末に、ほとんどが壊滅状態となった。
ケイリック
ヘルシュペルにある商家「堺屋」の大旦那の男性。マイマイ・ハーヴェイとロプス・ハーヴェイの息子で、ケーナの孫にあたる。人当たりはよく、周囲からも慕われている。初めてケーナと会った時、マイマイからの手紙で彼女が祖母であることを知り、丁重に対応した。しかしケーナのために都で一番の宿屋を手配しようとし、冒険者が利用する安宿を粗末な宿と貶めたことで、逆にケーナの怒りを買うことになってしまう。その後、双子の姉であるケイリナ・サカイの謝罪で、ケーナの許しを得ることができた。ケーナのことは、怒らせると魔人のようになり、身内でも容赦なく粉微塵にする人だと幼い頃からマイマイに聞かされていたため、本気で恐れており、ケーナに対しては極端にへりくだって対応している。現在、勢力を拡大している盗賊団のせいで、不通となった交易路も多くあり、不利益が生じている状況にある。それを改善するため、表向きは駐屯地に物資を運ぶという名目でケーナに盗賊の退治を依頼した。
イヅーク
ヘルシュペルにある商家「堺屋」の若旦那の男性。ケイリックの息子で、ケーナのひ孫にあたる。人当たりが非常によく、いつもにこやかな笑顔を絶やさない。ケーナに初めて会った時は、ケイリック宛てに預かった手紙の内容を確認し、ケーナが曾祖母であることを知って血相を変え、大慌てで客間に通した。
ケイリナ・サカイ
ヘルシュペル騎士団に所属している女性。マイマイ・ハーヴェイとロプス・ハーヴェイの娘で、ケイリックの双子の姉で、ケーナの孫にあたる。ケーナと初めて会った時、ケイリックのせいで腹を立てていたケーナの様子を見て、兄の代わりに謝罪した。ケーナのことは、怒らせると魔人のようになり、身内でも容赦なく粉微塵にする人だと幼い頃からマイマイに聞かされていたため、本気で恐れており、ケーナが謝罪を受け入れてくれたことに心底安堵している。駐屯地では隊長として騎士たちを率いており、駐屯地が九体のロックゴーレムからの襲撃に遭った際、騎士団の仲間全員で対応してもまったく歯が立たず、一時的に絶望的な状況に陥ることとなった。この時、居合わせたケーナが魔法で応戦してくれたおかげで助けられ、同時にケーナの能力の高さを思い知る。そしてケーナからは、駐屯地を通り抜けて立ち入り禁止区域に入るのを見逃すことを求められ、それを許可した。
お頭 (おかしら)
ヘルシュペルの駐屯地をロックゴーレムに襲撃させた張本人。種族は魔人族で、レベルは432。魔王の鎧(なんちゃってまおう)を装備し、魔法攻撃を無効化しており、肉弾戦しか通用しない。実はリアデイルのプレイヤー。この世界がゲームであると信じて疑わず、自分の力を悪用し、盗賊団の頭として悪事を繰り返していた。ある時、ケーナと遭遇し、この世界がゲームではない現実世界だと諭されるものの、聞く耳を持たずにケーナと戦うこととなった。近接格闘に限っては、レベル1100のケーナと同等の強さを誇るが、浅はかな性格と知識不足のためにケーナには勝てなかった。戦いの最中、お頭自身がよりリアルな痛みを感じていることに気づき、この世界がゲームではないと実感する。ゲームは死んでもリセットできる、自分は子供だから警察に連絡すれば大丈夫と考えていたが、ケーナに現実を突きつけられ、泣いて助けを請おうとした。自らが盗賊の頭として悪の限りを尽くしたことを認めざるを得ない状況に陥る。その責任を問われ、ケーナにとどめを刺される直前、ケイリナ・サカイら騎士団一行に制止され、ヘルシュペルの法で断罪されることとなった。連行時には、全ステータスが10分の1になる警告アイテム「懲罰の首輪」がケーナによって装着され、ある程度無力化された。
オペケッテンシュルトハイマー・クロステットボンバー
リアデイルに存在するアバター。種族は魔人族で、限界突破者のため、レベルは1100。「スキルマスターNo.13」の称号を持っており、守護者の塔の一つである三日月の城の所有者。ケーナとはリアデイルがβテストを始めた頃からの腐れ縁で、親しい者たちからは「オプス」と呼ばれている。尊大でいたずら好きな変わり者で、放っておくとしゃべり続け、無駄な雑学を披露したかと思えば謎の電波を受信し始めるなど、言動が取り留めなく一貫性もない危険人物。しかし一方で、謀略で彼の右に出る者はおらず、「リアデイルの孔明」と他国にもその名をとどろかせていた。ケーナにとっては悪友で師匠でもある。200年前、現実世界では当時寝たきりだったケーナにゲーム内でのさまざまな知識を教えた張本人で、ケーナにとってはただの仲間以上の大きな存在。
場所
フェルスケイロ
現在「リアデイル」にある三国のうちの一つ。王都は、エッジド大河をまたぐ形で町が形成され、東岸は商業地区や住宅地区のある一般区となっており、西岸は王城と貴族街が占めている。また、川の中州には教会や王立学院、工房があり、ガレー船や帆船が川を行き来し、空にはトンボ便が飛び交って景観都市とも謳われる美しさを誇っている。200年前に白の国と翠の国が争っていたのは、川の中州で採れる特殊アイテムが原因だった。
ヘルシュペル
現在「リアデイル」にある三国のうちの一つ。王都は、山裾の斜面に建設され、周囲は池や湖が多く点在している。町を見下ろす位置に王城があり、周囲は森に囲まれている。日本風の王城で、着物を着ている人も多くおり、欧風の建物や畳のある和風の建物が混在している。街並みにそぐわない王城が異質な雰囲気を醸し出している。町はおおまかに南北に二分され、貴族街と商家、庶民街に分かれている。果樹農業が盛んなため、町全体に緑が豊かで、多くの果樹が植えられている。街中にある果実は自由に食べていい決まりとなっている。
守護者の塔 (しゅごしゃのとう)
リアデイルにある、スキルマスターが所有する塔。この塔はもともとプレイヤーのスキル会得の試練のために存在しており、課される試練の内容はその所有者によって異なる。守護者の塔は全部で13か所ある。また塔には守護者が鎮座し、試練を受けに来た者を管理している。守護者と所有者は「守護者の指輪」でつながっており、連絡を取り合うことができる。また、塔にはアイテムボックスが存在し、所有者によって保存されたアイテムなどが取り出せるようになっている。守護者の塔は、200年の時間経過によって所有者不在となり、それぞれがその機能を失いつつある。機能を回復するためには、塔を管理する守護者に対してMPの補充が必要。また塔の内部に入るには、「乱世を守護する者よ、堕落した世界を混沌より救済せしめ給え」というキーワードを唱える必要がある。
銀の塔 (ぎんのとう)
フェルスケイロの辺境の村から行ける場所にある塔。守護者の塔の一つで、ケーナが所有しており、彼女にとっての拠点でもある。銀の塔では、24時間以内に塔の最上階へたどり着くことをプレイヤーのスキル獲得の条件としている。全高数百メートルの塔内部には階段があり、人が登り始めると無限に増え続ける仕組みや、飛行魔法を無効化する術式、動きを止めた者を棟外へ転移させるトラップなどが存在し、挑戦者の行く手を阻んでいる。塔の最上階には銀の塔の守護者が鎮座し、塔の管理を行っている。200年前より、銀の塔には悪い魔女がいるという噂がささやかれていた。当時ケーナがスキルマスターの称号とともに贈られた輪状の特殊装備を装着し、戦いに挑んだ際に目撃者によって付けられた呼び名が「銀環の魔女」で、その噂が独り歩きした結果、悪い魔女の噂となった。
闘技場 (とうぎじょう)
フェルスケイロの王都西部、王城付近にある闘技場。現在の王国が誕生する前から存在する。最近、幽霊が目撃されるようになり、冒険者ギルドにその対処が依頼された。幽霊は、さまざまな姿で目撃されており、何か危害を加えるわけでもないが、気味悪がられて運営もままならない状態となっている。ケーナの調査の結果、ここが守護者の塔であることが判明。直系50メートルくらいの半円ドーム状の空間があり、天上にある空は本物ではなく映像が使用されている。中心にある小さな鉢植えがこの塔の守護者で、管理者でもある。ケーナが枯渇しかけた魔力を補充したことで、人型の管理者が姿を現し、復活することになった。この塔の所有者である「スキルマスターNo.9」の称号を持つ京太郎が、リアデイルというゲームのサービス終了を思わせる言葉を残すとともにこの塔を去り、塔はスリープモードへと変わり、人知れず維持されてきた。ケーナが闘技場を訪れた時、管理者は京太郎はもういないと認識し、この塔の新たな所有者がケーナであると判断。ケーナの指示のもと、これからも闘技場として自由に利用できるようになった。
堺屋 (さかいや)
ヘルシュペルの王都にある商家。大旦那のケイリック、若旦那のイヅークを中心に営まれている。世界各国に支店があり、商人ギルドにも絶大な影響力を持つ。取り扱う商品は幅広く、ここでそろわないものはないといわれており、ヘルシュペルでは王族に次ぐ権力を持つとされる。事務所は日本風の建物で、周囲にも広い土地を所有している。
三日月の城 (みかづきのしろ)
ヘルシュペル近郊の湖に浮かぶ城。守護者の塔の一つで、オペケッテンシュルトハイマー・クロステットボンバーが所有している。この塔の守護者は王座の椅子で、そこにMPを補充すると、冠とマントを装着したガイコツが姿を現す仕様となっている。もともとはヘルシュペルの観光資源でもあったが、盗賊団の勢力圏内にあるため、周囲は立ち入り禁止区域となっており、近寄ることもできない状態になっている。三日月の夜に光るという噂があり、一部からは「守護者の城」と呼ばれて恐れられている。
その他キーワード
スキルマスター
リアデイルでスキルを極めた者。通常はリアデイルにおいて、アバターがゲーム内で到達できるレベルは1000までとされているが、限界突破クエストをクリアすることで、レベル1100まで上げることが可能。また1500の魔法技能と、2500の技術技能を習得した者だけが、スキルマスターの栄誉を得ることができる。スキルマスターはスキル作成技能が付与され、自身が修めたスキルをほかのプレイヤーに習得させることができる。そのため、楽してスキルを習得しようと考えたプレイヤーが、スキルマスターにたかろうとする事案が多発し、ノイローゼになったスキルマスターが引退する事態にまで発展したため、運営によって仕様が変更された。それ以降はスキル譲渡クエストを担当することになり、スキルマスターが課したクエストをクリアできた者のみがスキルを獲得できることになった。また、人手不足もあって、ゲームマスターの権限の一部がスキルマスターに譲渡されることとなった。200年前には、ケーナやオペケッテンシュルトハイマー・クロステットボンバー、京太郎をはじめとした13人のスキルマスターが存在した。
里子システム (さとごしすてむ)
リアデイルにおいて、NPCの名づけが面倒になった運営が使用しなくなったサブキャラクターをプレイヤーから買い取るシステム。200年前当時は、前代未聞といわれた。もともとリアデイルではアカウント一つにつき二つのキャラクターを作成することができ、一つはメイン、一つはサブとするのが一般的だった。サブキャラクターは主に不要なアイテムを預ける倉庫として扱われることが多かったが、拠点を持つとそちらを倉庫として運営することができるため、自然と忘れ去られる存在でもあった。そんなサブキャラクターを買い取り、要所のNPCとして再利用するのがこの里子システムで、所有技能によっては要職に就くNPCになることも可能。提供したプレイヤーには、NPCが稼いだお金の半分が送金されるシステムになっているため、ゲーム初心者には初期の金策の手段として、ベテランプレイヤーには自キャラがNPCとして登場する満足感を与えてくれるとして、利用者も多かった。なお、届け出る際には、提供者と提供したキャラクターの関係性を示す設定を作り、運営に提出する必要がある。
召喚魔法 (さもんまじっく)
リアデイルにおいて、プレイヤーがモンスターを召喚することができる魔法。これには一定の法則が存在し、同一種族を呼び出せるのは一度に最大九体まで。また強度制限もあり、召喚したモンスターの強度レベルは合計で最大12までとなっている。さらに、モンスターのレベルは「術者のレベル×強度×10%」となり、これに当てはめれば、召喚されたモンスターから術者のレベルを判別することができる。つまり、術者が強いほど召喚モンスターも強くなる仕組みとなっている。200年が経過した現在では、召喚魔法の存在自体が失われており、プレイヤーだけが扱うことができる。
クレジット
- 原作
-
Ceez
- キャラクター原案
-
てんまそ
- 構成
-
涼風 涼
書誌情報
リアデイルの大地にて 6巻 KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉
第1巻
(2020-03-26発行、 978-4049129397)
第4巻
(2022-01-08発行、 978-4049141153)
第5巻
(2022-11-25発行、 978-4049147254)
第6巻
(2023-10-27発行、 978-4049153552)