概要・あらすじ
エデニア国辺境の孤児院で、先生のデュランのもと、のびのびと育ったタツ・フラムトは、みんなのリーダーとして、友人と明るい未来を夢想する楽しい日々を送っていた。そんなある日、突如として現れた飛空挺の集団が孤児院を襲撃。彼らを統率するシェパードは、タツたちの「ママ」を自称し、タツとその仲間を軍へと連れ去ろうとする。
一瞬のスキをついてタツとともにその場を逃れたデュランは、タツたちが強力なエネルギーの供給源として、軍に作られた特別な雷髄人間であることを明かした。そして、自身に残るすべての電力をタツに渡して彼の髄を覚醒させ、その命を落とすのだった。6年後、一人前の戦士として立派に成長を遂げたタツは、エデニア国の戦勝記念祭を翌日に控えたタイミングで飛行艦、スキルビル号を襲撃。
シェパードを討ち取り、動力として使われていた雷髄人間を解放したタツは、すべての雷髄人間を解放する革命の旅へと出発するのだった。
登場人物・キャラクター
タツ・フラムト (たつふらむと)
エデニア国の辺境にある孤児院で育った快活な少年。「大将」を自称する、皆を引っ張るリーダー的な存在。タツイチモンジを帯刀し、軍服と軍帽を身に着けている。軍によって作られた強力な雷髄を体内に入れられる7人の雷髄人間の内の1人。同じ雷髄人間のデュランによって救い出され、仲間と一緒に辺境の孤児院に匿われ、普通の孤児として育てられていた。 孤児院がシェパードの襲撃を受けた際に、デュランと一緒に逃れ、デュランの命と引き換えに体内の髄を覚醒させた。「超速電導髄血質」の持ち主で、電流の流れが通常とは比べ者にならないほどに速い。6年間の修練の末、超速電流を完全に自身のものにすることに成功。超速の反射運動を駆使して戦うことができる、一人前の戦士となる。 エデニア国の飛空艦・スキルビル号を奪取した後にスプライト号と改名し、エデニア国の戦勝記念祭の日に、飛行国家、マゴニアとして、独立宣言を果たす。「小生」「よしなに」といった、やや古風で大人びた話し方をする。行動力のある優れたリーダーだが、一旦戦場を離れれば、ワインを飲んでへべれけに酔っ払うこともあるなど、あどけない面を多く残した子供でもある。
アルフレッド・マキネス (あるふれっどまきねす)
エデニア国の辺境にある孤児院で育った元気な少年。タツ・フラムトの兄貴分。皆からは「アル」というあだ名で呼ばれていた。軍によって作られた強力な雷髄を体内に入れられる7人の雷髄人間の内の1人。孤児院がシェパードの襲撃を受けた際に捕らわれ、人体実験場に連行されてしまう。1年後に脱出を果たし、そこでナルビオン王国の軍に拾われて、国を護る雷髄兵士となる。 その後は、エデニア国の侵攻を獅子奮迅の活躍で食い止め続けたため、ナルビオン王国では国の英雄として称えられる存在にまでになる。自分を拾ってくれたナルビオン王国とサー・ゲイルマンに強い恩義を感じていた。
モノ
エデニア国の辺境にある孤児院にやって来た少年。前髪で目元を隠しており、表情が読み取りにくい。気が弱く、おとなしい性格をしている。孤児院に来た当初は孤立気味だったが、タツ・フラムトのリーダーシップによって、すぐに皆の仲間として打ち解けることになった。軍によって作られた強力な雷髄を体内に入れられる7人の雷髄人間の内の1人。 他の6人よりも放つ電磁波の量が格段に多い。その電磁派の大きさを軍に探知され、孤児院がシェパードに襲撃される原因を作ってしまう。襲撃後に軍まで連行され、巨大陸戦艦「グレート・アトラス号」の動力として使役されていた。6年後、一人前の戦士となったタツに救出され、スプライト号の一員として革命の戦いに身を投じることになる。
デュラン
エデニア国の辺境にある孤児院の先生。優しく面倒見の良い性格をした若い男性。食事から教育まで、身寄りのない子供たちの世話を献身的にしていた。もともとは雷髄人間として軍に作られ、死ぬまで使役される道具として育った過去を持つ。とある軍人によって救出され、その恩義に報いるために、彼らの息子である雷髄人間のタツ・フラムトたちを孤児院に匿っていた。 孤児院がシェパードの襲撃を受けた際に致命傷を負い、タツを救い出した後、命と引き換えに彼の髄を覚醒させて絶命する。
シェパード
エデニア国の軍人。階級は中佐。女性のような言葉遣いを特徴とする不気味な雰囲気を漂わせた男性。タツ・フラムトをはじめとする、高い適性を持つ7人の雷髄人間を作り上げた張本人である。冷酷非情な性格をしており、雷髄人間をドブネズミ並の存在としか見ていないが、手塩にかけて作り上げたタツたち7人の回収には、かなりの執着を見せていた。 指先についた金属の針を自在に伸ばし、対象を攻撃することができる。孤児院を襲撃した6年後、スキルビル号にやって来たタツによって成敗される。
ジェイムス・ランドルフ (じぇいむすらんどるふ)
エデニア国の科学者。オールバックの髪型をした男性。雷髄人間に対する非道な扱いを快く思っておらず、シェパードがスキルビル号の動力を、すべて雷髄人間でまかなっていることを知った際は、本人に猛抗議していた。タツ・フラムトがスキルビル号を奪った時に一緒に捕虜として連れ去られ、なし崩し的に彼らと行動をともにするようになった。
デイビッド・アトラス (でいびっどあとらす)
エデニア国の将軍。最高指導者を務めている長身の男性。エデニア国を唯一の正義国としており、従わない周辺国を「悪国」と謗(そし)って、圧倒的な軍事力を行使して制圧し続けている。国民の前では威厳ある正義の軍人として振舞っているが、裏では失敗した部下を容赦なく焼き殺すなど、狂気に満ちた危険人物。戦闘能力も高く、高速で動き回るタツ・フラムトの動きを完全に捉え、タツに一目置かせていた。
リベルラ
雷髄人間の少年。バンダナを頭部にまいて髪をオールバックにしている。スキルビル号で燃料として奴隷のように使役されていた。タツ・フラムトによって解放された後に、アームの高い操縦技術を買われ、タツからスプライト号の初代アーム操縦大臣に任命されていた。
ガネット
雷髄人間の短髪の男性。スキルビル号で燃料として奴隷のように使役されていた。タツ・フラムトによって解放された後に、スプライト号と改名した飛空艦の一員となる。口やかましい性格で、奔放なタツのことを最初は信用していなかったが、実戦を経て徐々に一人前のクルーへと成長していく。タツからは坊主頭のヤカラ扱いされていた。
ハボクック
雷髄人間の男性。スキルビル号で燃料として奴隷のように使役されていた。タツ・フラムトによって解放された後に、スプライト号と改名した飛空艦の一員となり、厨房で料理を作る役割を任される。寡黙な性格で、明かりを灯さない暗い厨房で料理をしていた。
シーガル
雷髄人間の少年。スキルビル号で燃料として奴隷のように使役されていた。タツ・フラムトによって解放された後に、スプライト号と改名した飛空艦の一員となり、医務室で医療を担当する係となる。何かと無茶をするタツに対し、「ケガがないのが一番ですからね」と諭していた。
パンジャン
雷髄人間の少年。スキルビル号で燃料として奴隷のように使役されていた。タツ・フラムトによって解放された後に、スプライト号と改名した飛空艦の一員となる。独房兼研究室で、捕虜となったデイビッド・アトラスの研究を見張っていた。
フォール
雷髄人間の美しい女性。スキルビル号で燃料として奴隷のように使役されていた。操舵技術を持っていたため、タツ・フラムトによって解放された後に、スプライト号と改名した飛空艦の操舵士として働くことになった。フォールはあだ名で本名は不詳。タツからは「不吉なあだ名」呼ばわりされていた。
リチャード・フレデリック・ブリストル (りちゃーどふれでりっくぶりすとる)
エデニア国の将軍。駆逐戦艦、エクスキャリバー号の指揮官。高貴な出自であることに誇りを抱くあまり、他人を見下している。雷髄人間のことを家畜扱いしており、停戦交渉に来たタツ・フラムトを不良品扱いして、電撃を放つ特殊な武器、トニトルスで打ち倒そうとした。タツの力の前に返り討ちに合い、エクスキャリバーごと海へと落とされてしまう。
サー・ゲイルマン (さーげいるまん)
ナルビオン王国の将軍を務めている厳格な男性。人体実験場から脱出し、放浪していたアルフレッド・マキネスを拾い、心身を鍛えて、一人前の人間として育て上げた人格者。近い将来のナルビオン王国の滅亡を予見しており、アルフレッドに対し、かつての仲間がいるマゴニアへ行くことを薦めていた。
ベアトリクス・アルトリウス・ナルビオン (べあとりくすあるとりうすなるびおん)
ナルビオン王国の女王。世界最年少の国家元首で、年齢はまだ11歳だが、凛とした振る舞いで人々を魅了する。エデニア国の侵攻によって滅亡寸前に追い込まれた国の行く末を案じており、最後まで前線に立ち、終焉の時にはその首をエデニア国に差し出そうと覚悟していた。
ブラックバーン
エデニア国の遺灰兵士。古の大戦における戦死者の1人で、ナルビオン国との戦いで、多くの雷髄兵士の死と引き換えに呼び出された。凄まじいまでの戦闘能力を誇り、タツ・フラムトとアルフレッド・マキネスを圧倒する。その伝説的な強さから「雷電の王」と呼ばれていた。
集団・組織
クルセイダーズ
エデニア国に所属する雷髄兵士のグループ。「神経型」と呼ばれる白兵戦に特化したタイプで構成されており、わずか数人で大軍と互角以上に渡り合うことができる戦闘能力を持つ。構成員は「QF-1」「QF-2」「QF-3」「QF-4」「QF-5」の5人。
場所
ナルビオン王国 (なるびおんおうこく)
1000年以上前に成立した半島国家。大航海時代にはその地理と海軍力で栄華を極めたが、雷髄による資源革命が起きてからは、他国の技術革新についていくことができず、時代遅れの国家に成り果ててしまった。国土の多くが磁気嵐にさらされる「超帯電雲」で覆われており、この中では飛空艦をはじめ、電磁航空戦力が役に立たない。そのためエデニア国との戦いでは、半島の付け根で壮絶な地上戦が繰り広げられている。
エデニア国 (えでにあこく)
光の国と称される大陸国家。強大な軍事力を行使し、従わない国家群を邪悪国とみなして征服し、領土を拡張している軍事大国。今はナルビオン王国にターゲットを定め、国民ごと殲滅させんと断続的に攻撃している。元々は戦乱に明け暮れる乱世を統一し、戦乱を終結させるために興った国だったが、長い年月を経て強権的な国へと変貌を遂げた。
マゴニア
神話やおとぎ話に登場する空想上の島。その昔、悪魔が自らの死に際に作った巨大な鉄の古墳が、長い年月を経て磁力を帯び、宙に浮いて雲の中に姿を消した、という伝承が残っている。そこで今もなお、天空のどこかにマゴニアが実在するのではないかと噂されていた。タツ・フラムトは、エデニア国から奪った飛空艦、スプライト号を飛行独立国家、マゴニアとし、エデニア国からの独立を宣言する。
スプライト号 (すぷらいとごう)
エデニア国の飛空艦、スキルビル号を、タツ・フラムトが奪った後に改名したもの。正式名称は「レッドスプライト号」だが、基本的には「スプライト号」と略して呼ばれる。すべての雷髄人間を救うための革命の拠点となる船であり、飛行独立国家、マゴニアの領土となった。もとになっているのは、タツたちが孤児院にいた時に紙に描いた夢の飛空艦に付けられていた名前。 命名はデュランによるもの。敵艦から姿を隠せる、潜空艦としての能力が非常に高い。
その他キーワード
雷髄 (らいずい)
地下深くにある化石から採取できる特殊な燃料。「雷髄燃料」とも呼ばれている。雷髄から発電できるエネルギーは、従来使われていた石炭や蒸気機関を上回ったため、輸送量や生産力が著しく向上し、世界の文明を一気に発展させる要因となった。さらに、雷髄技術の進歩で、磁力の力で飛ぶコイルエンジンが発明され、飛空艦と呼ばれる巨大な機体が空を舞うことになる。
雷髄人間 (らいずいにんげん)
雷髄の力を利用し、電力を抽出するためだけに育てられた人間。手に電極を埋め込んだ生きた人間に雷髄を注入して、電極から電力を取り出す。この手法であれば雷髄は本来の力を取り戻すので、原液の数倍から数百倍の出力を得られる。資質のある雷髄人間なら、2~3人で戦艦すら動かすことができる。エデニア国の軍隊がその手法を編み出した。 シェパードはより高性能な雷髄人間を生み出すために実験を重ね、本来は人間に入れることができないほど強力な雷髄を、高い適性を持った子供たちに幼少期から馴染ませた。その結果、凄まじい力を宿した、タツ・フラムトをはじめとする7人の子供を作り出すことに成功する。
エクスキャリバー号 (えくすきゃりばーごう)
エデニア国が運用していた最強の駆逐戦艦。艦首に「大出力大型電磁砲」を備えており、限界出力の超電磁力によって特殊合金弾を発射することができる。これに耐えられる装甲は存在せず、これを超える射程の武装も存在しないため、最強の駆逐戦艦として、周辺諸国にもその名を轟かせていた。
タツイチモンジ
決して折れず、研がなくても切れ味の落ちない謎の剣。タツ・フラムトが孤児院の地下室で見つけ、仲間との剣の戦いに勝利したタツが、景品として自分の物にした。太古の昔に滅亡した国で使われていた刀剣とのふれこみだったが、その詳細は不明。
トニトルス
電力を放出する「放雷針」。これ自体に敵を攻撃する能力はないが、雷髄人間に対しては、放つだけで電撃が飛んでいくため、非常に効果的な武器となる。エクスキャリバー号に乗艦するリチャード・フレデリック・ブリストルがタツ・フラムトに対して使っていた。
雷髄兵士 (らいずいへいし)
雷髄人間が軍人としての訓練を積み、兵士となった者。電力を自在に扱えるため、通常の兵士とは比較にならない戦闘能力を発揮する。エデニア国はナルビオン王国との戦争で多数の雷髄兵士を投入していた。
遺灰兵士 (あっしず)
死んだ雷髄人間の灰が帯びている電磁力をまとって現世に蘇った雷髄兵士。エデニア国の建国当初から戦い続けているため、その強さはもはや次元が違うものとなっている。