概要・あらすじ
1900年、飢饉、清朝政府の無策と腐敗、さらに外国の侵略にあえぐ清朝末期の中国。農民を苦しめる収税役人を殺した娘、姫三娘は義和団に拾われ義和団の乱の渦中に巻き込まれる。戦火を生き延びた彼女は、上海の革命家・章炳麟のもとに身を寄せ、革命に燃える青年・王太白と出会う。弾圧が強まる中、王太白とともに日本へ亡命した三娘が出会ったのは、眼病に苦しみつつも独自の社会主義を構築しつつあった青年・北輝次郎であった。
登場人物・キャラクター
姫 三娘 (き さんじょう)
糧差(収税役人)を殺して郷里を逃げ出す。黄蓮が率いる義和団娘子軍に拾われ、義和団のリーダーの一人、李来中に惚れ込みその最期を看取る。トラウマがあり男の裸を見ると殺したくなる。上海で章炳麟について学ぶ。
李 来中 (り らいちゅう)
義和団を率いる頭領の一人。弁舌の才があり、民衆を引きつける。歴史上の実在の人物、李来中がモデル。
黄蓮 (おうれん)
かつては土娼(低級な娼婦)であったが、李来中に惚れて義和団娘子軍を率いる女傑となる。
西太后 (せいたいごう)
末期の清朝の実権を握る。義和団を手なずけて西欧列強に戦いを挑むが、戦況不利と見るや義和団を賊軍とする。歴史上の実在の人物、西太后がモデル。
安川 (やすかわ)
日本の大尉。戦いに敗れ傷ついた李来中とともに逃亡中の三娘に命を助けられ、三娘を上海へ逃す。
王 太白 (おう たいはく)
章炳麟のもとに集まった上海の革命分子の一人。裕福な商人の息子だが拷問によって仲間を暴露したことを苦にしてグループを離脱。元義和団の娘、三娘を連れて日本へ亡命する。
章 炳麟 (しょう へいりん)
上海の革命思想家。満人を追い出し中国を漢人の手に取り戻すことを目指す。過激派ではなく民衆を啓蒙して革命をなそうとする慎重派。
張乙
元北洋陸軍隊長で袁世凱の護衛役。章炳麟など、上海の革命家ら反乱分子を一掃するために呼び寄せられた特殊諜史。
蜂須賀公爵夫人 (はちすかこうしゃくふじん)
進歩的な思想を持ち、上海の革命分子、王太白と元義和団の娘、三娘の亡命を助ける。政略結婚を迫られた鳩子を密かに家から逃がす。
蜂須賀 鳩子 (はちすか はとこ)
蜂須賀家の令嬢。亡命中の王太白に思いを寄せる。九和財閥の御曹司と政略結婚を迫られ、家を出て身を隠す。
蜂須賀大六 (はちすかだいろく)
貴族院議員。公爵。政治的にはタカ派であり、九和財閥と手を組みロシアとの開戦を推進する。
北 一輝 (きた いっき)
佐渡の酒造家に生まれる。眼病のプテレギームを患い、治療のために上京するも、治療法がなく常に眼帯をしている右目は失明寸前である。幸徳秋水らの社会民主党、平民党が当局に禁止されたことに怒り、自分の手で改革を決意。『国体論と純正社会主義』を執筆。日本に亡命した元義和団の娘、三娘に、郷里の恋人の面影を見てお互いに惹かれるものを感じる。 歴史上の実在の人物、北一輝がモデル。
孫 文 (そん ぶん)
広東の農民の子として生まれ、ハワイの兄のもとで英文を学び、帰国後は医者となる。興中会を組織し、華僑を糾合して革命を企てる。さらに義和団の乱に乗じて革命をなそうとして失敗。亡命中の日本での講演を、同じく亡命者である王太白が聞き、孫文が目指す共和制の政治に異を唱える。 歴史上の実在の人物、孫文がモデル。
集団・組織
義和団 (ぎわだん)
『一輝まんだら』に登場する結社。関羽、張飛、武松など、中国古代の英雄を神として崇める。「扶清滅洋」をスローガンとし、欧米人を襲撃。清朝政府とともに日本を含む欧米列強に戦いを挑み、義和団の乱を起す。役人を殺して、おたずねものになった娘、三娘は義和団の女子部隊である義和団娘子軍に拾われ、義和団の頭領の一人李来中に一目惚れする。
書誌情報
一輝まんだら 2巻 講談社コミッククリエイト〈手塚治虫文庫全集〉
第1巻
(2010-12-10発行、 978-4063737981)
第2巻
(2010-12-10発行、 978-4063737998)