あらすじ
第1巻
楢鹿高校は卒業するだけで官僚になれるというエリート育成校で、不思議な噂がいくつも流れていた。平成35年、食べることが大好きな少女の海老沼小春は、学食の高級料理を目当てに楢鹿高校に入学する。エリートの道よりも学食のことばかり楽しみにしながら、夢と欲望のままに門をくぐった小春は、始業後に「戦うために必要な漢字一文字を書け」と、紙と渡され、「食」という文字を選択する。実はこの文字とは、生徒たちが残酷な神蝕を乗り越え、この学校で生き残るための唯一の武器でもあった。さっそく神蝕が始まって多くの敵が襲撃し、小春の目の前では生徒たちが戦いを開始すると同時に、対抗できず無惨に死んでいく生徒もあった。こうして、あこがれの学び舎を血で染める地獄の青春が始まり、校内に閉じ込められ希望を失った生徒たちは、真っ逆さまに絶望の中に堕ちていく。最初の神蝕から生き延びた小春は政府組の一人でもあったが、学食のことばかりが気がかりで、楢鹿高校の仕組みをほとんど理解していない彼女は、政府組リーダーの白梅之助の部屋を訪ねる。梅之助に呆れられながらも名簿を渡された小春は、生徒の生死と生き残った生徒の文字や居場所を調べるよう依頼される。一度寮の部屋に戻った小春だったが、ルームメイトの羽賀が現れないのを不思議に思いながらも、梅之助に言われたとおりに生徒たちの調査に乗り出す。廊下で再会した柴崎妙子と親しくなった小春は、彼女と共に名簿に載った生徒を一人一人訪ねていく中で、生き残った生徒たちが持つ文字の詳細を知っていく。一通り仕事を終えてようやく学食にありついた小春は、食後に梅之助に呼び出され、文字についての詳しい解説を聞くことになる。
第2巻
海老沼小春が入学後に獲得した「食」という文字は「病文字」と呼ばれている、心身に異常を来す厄介ないわく付きの文字であった。それを知らずに食を選んでしまった小春は、自らの文字の使いこなし方を考えながらも、政府組のサブリーダーとしての職務を全うしようと奔走する。そして新たなルームメイトの猿子ゆかりや、同じクラスの柴崎妙子と親しくなった小春は、彼女たちの力を借りながらその後の神蝕を乗り越え、時には食の力を活かして生徒たちの危機を救うこともあった。そんな中、神蝕によって死んだ生徒の遺体から、その生徒の皮膚に刻まれた文字が盗まれるという奇怪な事件が問題になっていた。白梅之助は神蝕後の警戒態勢と調査を強化していたが、神蝕終了後に遺体の監視を徹底したにもかかわらず、再び文字が盗まれるという事態が発生。さらに行方不明になっていた村雲おさむが、体育館裏で上半身が激しく破損した無惨な姿で発見される。現場に残っていた菓子袋から、梅之助はこの猟奇的な事件の犯人が小春であると疑うようになるが、小春はまったく記憶にないと弁解する。その一方で、小春自身も奇妙な夢を見たり、直近の行動に関する記憶がおぼろげになる出来事が増えていた。ミーティングを通じて一連の事件は生徒たちに周知され、食の力が暴走し始めた小春に対して疑心暗鬼になる者と、彼女をかばう者が衝突するようになる。そんな中でも、事件の犠牲者から文字が盗まれる事態は続き、その陰にはいくつもの文字を求め続ける、ある人物の欲望が見え隠れしていた。
登場人物・キャラクター
海老沼 小春 (えびぬま こはる)
楢鹿高校に幽閉された女子。3組に在籍している。所有する文字は「食」で、文字は左腕に刻まれている。栗色のセミロングヘアで、エビの尻尾のような三つ編みでまとめていることから、「エビゾー」の愛称で呼ばれている。スレンダーな体型だが食い意地が張っており、数十人前の料理を平気で平らげる大食漢。幼少期から「空の島が見える」という入学条件を満たしていたが、学食がおいしいという情報に釣られて入学しただけで、「卒業後エリートになれる」といった噂にはまったく興味がない。実家は定食屋で、誤って客の料理を食べることもあった。入学後渡された紙をもとに、何も考えずに文字「食」を選択・取得するが、食が病文字という問題のある文字であったことが判明する。政府組のサブリーダーを務めるが、本部での研修などを受けておらず、楢鹿高校や文字に関する知識をほとんど持たないまま入学したため、白梅之助からは何度も呆れられている。単純で食いしん坊だが実直で素直な性格で、梅之助から病文字の危険性などを聞いたあとも、政府組の一人として生徒たちの役に立とうとしている。その後は不器用ながらも神蝕などで活躍するようになり、仲間たちと協力しながら生徒の生き残りのために奔走している。病文字の影響で身体能力が向上しており、敵の攻撃を素早く避けることもできる。健気に任務をこなす一方で、食の副作用で過剰に食べ物を求めたり、記憶があいまいになる事態が増えている。神蝕で出現した封を食らって倒したことや村雲おさむの死をきっかけに、一部の生徒から恐怖心や疑心を抱かれるようになり、おさむを食い殺した犯人として疑われるようになる。
白 梅之助 (つくも うめのすけ)
楢鹿高校に幽閉された男子。所有する文字は「封」。白銀の短髪で、政府組のリーダーを務めている。愛称は「ウメ」。海老沼小春に対しては、サブリーダーでありながらまともな研修を受けず、高級学食料理を目当てに入学したことに呆れており、彼女に対してゴミを見るような冷たい視線を向けることが多い。小春が監視対象である「病文字」の「食」を選んでしまった事実を知ってからは、彼女の様子に注意しながら、政府組としての役目を共に遂行している。病文字について調査や監視を強化する中で、神蝕のあとに生徒の遺体から文字のアザ部分だけが切り取られていることに気づき、「特別枠」と呼ばれている、過去に問題を起こした文字「集」の所有者が、生徒の中にいると疑うようになる。その後は神蝕で死亡した遺体の監視体制を強めるものの、神蝕ではなく何者かによって上半身を猟奇的に食い破られた生徒の遺体を発見し、その犯人として小春に疑念を持つようになる。しかし、小春の様子や向島義明の助言から犯人ではないと確信し、彼女の無実の証明と真犯人の正体を求めて行動するようになる。生真面目で理知的だが、対人恐怖症に近いほどに人見知りな性格で、他人の前に顔を晒すのを極端に嫌う。このためよく知らない相手の前に出る時は、つねに持ち歩いている本を顔の前にかざしながら、会話や行動をしている。ただし小春や友人の義明に対しては、入学前に慣れるための訓練をしていたため、ふつうに顔を出して話せるようになった。
柴崎 妙子 (しばざき たえこ)
楢鹿高校に幽閉された女子。所有する文字は「巣」。ウェーブのかかった金髪のロングヘアを二つのおさげにまとめている。海老沼小春と同じ3組に在籍し、政府組のサブリーダーとして生徒たちの調査を行なっていた小春と親しくなる。実家が児童養護施設を営んでおり、児童の世話やケガの手当てに慣れていたため、簡単な応急処置や手当であれば素早くこなせる。入学式に遅れそうな小春に声を掛けるなど、友人に対しても面倒見がよく、政府組の仕事をこなそうとする小春を気にかけ、協力的かつ親身に接している。文字について詳しく知らないまま楢鹿高校に入学したうえに、使い方がよくわからない文字を選んでしまう。このため、神蝕が起こってもあまり戦闘には参加できず、いつもケガをしている。おしとやかでおとなしく、周囲への気配りもできる優しい性格をしている。実は一連の怪死事件と文字盗難の真犯人であり、本来所有している文字はもっとも危険な病文字「欲」であった。欲という文字が真っ先に浮かんだのは、実家で面倒を見ていた新田カナのあれこれほしがる癖が強く記憶に残っていたことと、「強さが欲しい」と願ったため。しかし、当初はこの文字の危険性をほとんど認識していなかった。事件が進むたびに体調が悪化していったのは、村雲おさむをはじめとする複数の生徒を殺して文字を奪い、自分の皮膚に無理やり移植していたため。体中が包帯だらけなのも、ケガをしたからではなく移植した文字を隠すためであった。奪った文字の一部はビンに保存していたが、欲の暴走により次々と他人の文字をほしがるようになった。しかし白梅之助の警戒が強まったことから、途中からは犯人を小春に仕立てるための偽装工作も加えるようになった。
猿子 ゆかり (ましこ ゆかり)
楢鹿高校に幽閉された女子。所有する文字は「閃」。青紫色のショートカットで、1組に在籍している。活発で明るいサバサバした性格で、面倒見もいい姐御肌タイプ。寮で同室の生徒が神蝕で死んだため、同じくルームメイトを失った海老沼小春の部屋に転がり込み、彼女と親しくなった。政府組ではないが、楢鹿高校には多少の知識を持ったうえで入学したため、特に文字については小春よりも豊富な知識を持つ。友人思いで、危険な「病文字」を選んでしまった小春に対し、毎日観察日記をつけることで危機管理ができると提案した。その後も小春を気にかけ、彼女の様子を観察日記に記録しながら、政府組のサブリーダーとして不器用ながらも奔走する彼女に何かと協力したり、励ましたりしている。一連の怪事件の犯人として疑われるようになった小春をかばい、彼女を疑う栂村天子たちと対立するようになる。それでも小春のことをかばい続けていたが、小春の就寝中に何者かの襲撃を受け、寮室の中で上半身の大半を著しく破損した、無惨な遺体となって発見される。
向島 義明 (むこうじま よしあき)
楢鹿高校に幽閉された男子。所有する文字は「罠」。黒髪の短髪で、長い前髪で右目が隠れている。かつては政府組のリーダーを務めていた。白梅之助と共に本部で研修を受けていたが、本部の大人たちに対しては非常に反抗的だった。さらに無断でデータを送りつけるなど違反行為をしていたため、入学前の時点でリーダーの資格を剝奪された。もともとサブリーダーとなる予定だった梅之助がリーダーになり、まともに研修を受けていなかった海老沼小春が急遽サブリーダーに繰り上げられたのは、こんな事情がある。かなり気難しい性格で、周囲とのチームワークや協調性が欠落しており、集会などをサボることが多く、めったに顔を出さない。生徒の大半に対して不愛想であり、小春にも冷たくそっけない態度で接し、梅之助に紹介されるまでは情報提供どころか名乗ることすらなかった。生徒の中で友人と呼べるのは同じ研修を受けていた梅之助だけで、極度の人見知りである彼が顔を隠さずに話せる数少ない人物でもある。また、梅之助のことは「ウメ」の愛称で呼んでいる。すでに浸透しているニックネームのある人物に対しても自分流のあだ名で呼ぶことが多く、「エビゾー」が愛称の小春のことは「エビコ」と呼ぶ。現在の立場上は政府組ではないものの、リーダーにふさわしい才能や素質はまったく衰えておらず、梅之助以上に冷静な判断力や考察力を持つ。梅之助と改めて再会してからは彼の捜査に協力するようになり、いくつかの出来事をきっかけに一連の事件の犯人は小春ではないと確信し、さらには真犯人の正体にも真っ先に気づいた。
野上 駿太 (のがみ しゅんた)
楢鹿高校に幽閉された男子。所有する文字は「卵」。青い髪を短髪にしている。明るく単純な性格で、どこか小春と似ている。かなりのゲーマーで、とりわけ「完熟英雄」という名のゲームをこよなく愛しており、文字「卵」もこのゲームから着想を得て選んだ。文字を使う際に卵型の石といっしょに持っている大幣のような道具は、ただの雰囲気アイテムでしかなく、あまり役に立たない。病文字を含め、文字や楢鹿高校について知識豊富で、海老沼小春が「食」を使いこなすための特訓に協力する。
南 大樹 (みなみ ひろき)
楢鹿高校に幽閉された男子。所有する文字は「九(りゅう)」。茶髪の短髪で、眼鏡をかけている。文字について予習したうえで入学していたため、「漢字博士」を自称している。友人の村雲おさむが神蝕以外の場で猟奇的に殺害されたことに憤り、その後の政府組による調査に積極的に協力している。
栂村 大地 (んがむら だいち)
楢鹿高校に幽閉された男子。所有する文字は「菌」。愛称は「んがちゃん」。カールしたもみあげの黒髪の短髪で、小太りな体型をしている。4歳下の妹がいる。文字をイメージで扱うための独自の研究を行っている。この... 関連ページ:栂村 大地
栂村 天子 (んがむら てんこ)
楢鹿高校に幽閉された女子。所有する文字は「枯」。黒髪のセミロングヘアで、小柄で小太りな体型をしている。かつて楢鹿高校に通っていた栂村大地の四つ下の妹。幼少期より、兄のことを心から尊敬しており、口を開くたびに兄の自慢話ばかりする。また、大地の受け売りで、政府組のことは「役立たず組織」と認識しており、現リーダーの白梅之助のこともまったく信用していない。見た目は大地によく似ているものの、寛大で面倒見のいい彼とは異なり、少々疑り深く心の狭い性格の持ち主。文字「枯」は、魔法少女のようなステッキを出現させて敵を攻撃する。封を猟奇的に食い殺した海老沼小春に恐怖心を抱くと同時に、村雲おさむを殺した犯人として真っ先に小春を疑う。これ以降は、小春に対して疑念を向け続けて猿子ゆかりたちと対立するようになり、その後に起こった目黒一やゆかりの死も、現場の状況から小春の仕業であると決めつけていた。
目黒 一 (めぐろ はじめ)
楢鹿高校に幽閉された男子。所有する文字は「医(くすし)」。進んで回復能力を持つ文字を選んだ穏やかで心優しい性格で、ケガをした生徒を積極的に救助している。入学初日に柴崎妙子に一目惚れしているが、彼女の前に出ると緊張してしまうことが多く、中々アプローチできずにいる。一連の怪事件の犯人として疑われるようになった海老沼小春を心配してキャラメルを渡すが、その後に行方不明となった。数時間後、村雲おさむと同様に上半身を食い破られたような、謎の怪死を遂げる。
村雲 おさむ (むらくも おさむ)
楢鹿高校に幽閉された男子。所有する文字は「鉈」。南大樹の友人。3回目の神蝕終了後に行方不明になっていたが、体育館裏で上半身の大半が食い破られたような、悲惨な遺体で発見された。
利根川 (とねがわ)
楢鹿高校に幽閉された男子。所有する文字は「透」。文字「透」は監視対象の一つであるため、政府組として文字調査をしていた海老沼小春たちには利根川自身の文字を隠していた。透は名前のとおり透明化能力で、自らの姿を隠して行動できる。2回目の神蝕の途中でつまずいて転倒してしまい、敵に襲撃されて死亡した。
新田 カナ (にった かな)
柴崎妙子の実家の児童養護施設で育った少女。ある理由から妙子の持ち物をなんでも欲しがるようになり、渋々要求に応じた妙子からさまざまな持ち物をもらっていた。しかし、それらの欲求はエスカレートしていき、妙子が友人からもらった小物まで欲しがるようになってしまう。これにより妙子の友人関係にも大きな影響が出たことから、妙子にとってカナとの出来事はトラウマになっている。
封 (ふう)
3度目の神蝕「封」で出現した敵。鎖や鉄で貫かれた巨大な爬虫類の姿をしている。さまざまな神蝕の中でも敵はこの爬虫類一体しか出現しないものの、地面や人体などに枝のような植物を植え付けることで攻撃するため、一度の攻撃で複数の生徒が死ぬこともある。さらに植樹によって文字を封じることもできるため、対抗手段が非常に少ない難敵となっている。このため多くの生徒の動きが封じられ苦戦したが、優れた身体能力を活かして植樹をかわして飛びついた海老沼小春に食い殺され、体のほとんどを失って消滅した。
欲の男子生徒 (よくのだんしせいと)
過去に楢鹿高校に通っていた男子。病文字の一種「欲」を獲得していた生徒の一人。おとなしい性格で、過去の事故で小指が1本ないことを悩んでいた。欲の副作用が出始めてからは他人の指を求めるようになり、神蝕の犠牲者の遺体から、小指を切り取って盗み出すようになっていく。しかし、神蝕は毎日起こる現象ではないため、欲がエスカレートしていったことで自らほかの生徒を殺し、指を奪って収集するようになる。さらには奪った指を欲の男子生徒自身の体に埋めるという奇行を繰り返し、腐敗臭から今までの犯行が暴かれた。最終的には体に埋めた指が腐敗していき、敗血症を発症して死亡した。
集団・組織
政府組 (せいふぐみ)
楢鹿高校に入学する生徒のうち、研究機関に集まって特別研修を受けた生徒によるまとめ役グループ。研修で得た知識を活かして、生徒たちを引っ張るリーダーとして活動している。もとは楢鹿高校を運営する組織ではなく、昔の有志OBたちによって作られたグループであり、さまざまな危険に晒されている生徒の生存率を、少しでも上げるという目的のために活動している。主に神蝕発生時に生徒に的確な指示を下す役割を持つが、神蝕以外にも校内で事件や問題などが発生した際には、率先して対応する。特別講習などで得た文字の豊富な知識や経験を活用しながら、率先して生徒たちを先導し、適切な対応や指示を出す役割を担っている。現在は白梅之助がリーダーを、海老沼小春がサブリーダーを務めている。
場所
楢鹿高校 (ならかこうこう)
楢鹿市にある謎の高校。拝ヒロシが迷い込み転学することになった。正式名称は「楢鹿高等学校」で、1年制のために生徒の大半は新入生となっている。卒業するだけで大学に通うことなく官僚への道が開けることや、試験... 関連ページ:楢鹿高校
空の島 (そらのしま)
つねに空に浮かんでいる謎の島。ふつうの人間には視認できない存在であり、この島が見えることが楢鹿高校への入学条件となっている。また神蝕の発生にも大きくかかわっており、島が太陽と重なって影ができる際に神蝕... 関連ページ:空の島
その他キーワード
文字 (もじ)
楢鹿高校で生徒に与えられる、武器や能力の総称。生徒自身が神蝕と戦い、あらゆる試練や事件から生き抜くための唯一の力となる。入学および転学した生徒は、ホームルームなどで渡される紙に漢字で一文字書き、書いた字を発声することで、自身の能力として得ることができる。また、獲得した文字はその証として、体の一部にアザのような形で刻まれる。生徒自身が真っ先に思い浮かべた文字が選ばれることが多いが、病文字のように危険な文字も存在するため、注意して選ばなければならない。獲得した文字を使いこなすには、文字に対するイメージを沸き立たせることで、それに合った現象を起こせるようになり、使い道が広まる。原則として文字は一人につき一つまでとなっているが、例外的に複数の文字の獲得や文字の移植に成功した者もいる。しかし複数の文字を持つことには、さまざまなリスクや副作用が生じるため、まったく推奨されていない。過去に文字を移植する実験が行われていたが、複数の文字を移植した被験者三人のうち二人は死亡、一人は寝たきり状態となった。また、文字移植の副作用として、動悸や息切れ、吐き気などのさまざまな体調不良が現れる。
病文字 (やまいもじ)
政府組の監視対象であり、さまざまなリスクや危険を伴う文字の総称。具体的には「寝」「食」「欲」「飲」などが該当する。病文字を持っている者は運動能力などが向上する一方、持ち主本人の身体や周囲の者に対して、危険や害を及ぼすことがある。また、持ち主の精神バランスを崩すことがあり、言動や性格に悪影響が及ぶこともある。さらなるデメリットとして、能力として神蝕で使いこなすのが難しく、有効活用する前に持ち主や周囲の者が死んでしまうこともある。このようなデメリットの深刻さから、病文字の獲得はまったく推奨されておらず、持ってしまった者は政府組からの監視を受けることになる。
食 (しょく)
病文字の一種。海老沼小春が所有する文字。過去にこの「食」の文字を獲得した生徒は四六時中食事に夢中になり、徐々に食欲がエスカレートしていった。やがて短期間で肥満になったうえに、無意識のうちに自食を始めて自分の唇や腕、脚など口の届く範囲をかじるようになった。これらがさらに悪化し自暴自棄になって他人を襲うようになり、自らの舌を嚙み切って自死した者もいた。小春を除き、これまでに食を宿した生徒は三人いたが、いずれも動脈を嚙み切って出血性ショックで死ぬなど、悲惨な最期を遂げている。もともと食べ物や食事への執着心が強い小春の場合、すぐに大きな変化は現れなかったが、菓子に異様に執着したり奇妙な夢を見たりと、影響が少しずつ現れ始める。さらには記憶がおぼろげなことが増えていき、食欲がエスカレートして小春自身の皮膚を食い破るといった自食や奇行が見られるようになった。
欲 (よく)
病文字の一種。病文字の中でももっとも危険な「最凶」の文字として、政府組から強く警戒されてきた。名前のとおり持ち主の欲望や願望を極端に暴走させる危険性があり、持ち主の潜在意識やトラウマに応じて徐々に暴走していき、特定の物をあらゆる手段を使ってでも欲しがるようになる。やがて、自らの欲望を満たすために犯罪行為や殺人も厭わなくなるうえに、精神状態や性格にも大きな影響を与える。「欲」を持った生徒は歴代二人いたが、いずれも欲望からの奇行が暴走し、多くの生徒に危害を加えたり殺害したりしている。
神蝕 (しんしょく)
楢鹿高校の生徒すべてに下される試練や現象、あるいはこれらに出現する敵の総称。単に「蝕」と称されることもある。一般的には、太陽と空の島が重なった時に発生する。天気が曇りなどで太陽が見えない状態や、太陽が... 関連ページ:神蝕
クレジット
- 原作
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