寄席芸人伝

寄席芸人伝

様々な芸人たちの人生を描く1話完結式のシリーズ作品。1話ごとに主人公が異なり、各話に共通する登場人物はいない(複数の話に同一人物が登場することはある)。主人公を務める者は落語家が大部分を占めるが、漫才師や浪曲師、曲芸師などが主役となるエピソードも存在する。

正式名称
寄席芸人伝
ふりがな
よせげいにんでん
作者
ジャンル
お笑い
 
落語
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

橘家万太郎は、人一倍真摯な芸人。人情噺の名人と評判を取っているが、金で芸を荒らしたくはないと、高座は1日1度に決めていた。しかし、息子の病によって八百円もの借金を負い、その返済のため、珍芸ヘラヘラ踊りでいくつもの寄席をかけもちし始める。(「ヘラヘラの万太郎」あらすじ)

登場人物・キャラクター

柳亭 左楽 (りゅうてい さらく)

人情噺の名人として人気を誇っていたが、ある客から仕草の欠点を指摘され、それをきっかけにレアリスム(写実主義)に目覚める。リアルな仕草や語り口を追求するため、愛犬を殺し、雪山で遭難しかかるなどの凄絶な実体験を重ね、芸に磨きを掛けていく。

柳亭 小三太 (りゅうてい こさんた)

老女だろうがヤクザの情夫だろうが見境なく手を出すほどの女好き。ドサ回りの旅のとちゅうで出合った女おタエと所帯を持つが、女遊びは一向に止まず、ついには梅毒にかかり寝たきりになってしまう。その彼が最後に望んだのは、もう一度寄席で噺を演じることだった。

桂 文平 (かつら ぶんぺい)

帝国大学出という珍しい前歴の持ち主。かつては学者を志していたが、論文を盗作されたことで、学問の場を離れ、噺家となった。しかし、生真面目な性格が災いし、高座での受けはいまひとつ。さらに、大看板の横暴で、真打昇進にも漏れたと思い込んで捨て鉢となり、泥酔して高座に上がってしまう。

団蔵 (だんぞう)

寄席柏木亭の下働き。若手の噺家にはことあるごとに辛く当たる意地悪おやじとして知られている。かつては自身も噺家であり、橘家団蔵の名で高座を務めていたが、とあるしくじりから扇子を封じ、さらに若手育成のために憎まれ役を演じていたことが明かされる。

金原亭 ぎん馬 (きんげんてい ぎんば)

運に恵まれず、何人もの師匠に付いて修行を重ねる噺家。最初の師匠は弟子入り後一年で急死してしまい、次の師匠は博打で刑務所へ、その次の師匠は脳溢血で倒れ、持ちネタは最初の師匠が稽古を付けてくれた前座噺「道灌」だけ。同じ噺しか演じられないために道灌小僧と嘲られる。

又蔵 (またぞう)

あまりに酷い訛りのため、落語の道をあきらめるが、早替わりで幽霊姿に仮装する怪談芸で大評判を取る。その後、火事を出しかけたことで早替わりの仮装は禁じられてしまうが、即座に新しい芸として体中に電球を仕込んで踊る電気踊りを披露。工夫とアイデアで芸人として生きていく。

橘家 文吾 (たちばなや ぶんご)

老練の噺家。練りに練った寸分違わぬ芸を身上としており、同じ噺ならぴったり同じ時間で演じ切るという名人。しかし、老齢からかその芸に狂いが生じ始める。

橘家 文橘 (たちばなや ぶんきつ)

材木問屋の若旦那で、豪儀に金を使う遊び人だったが、放蕩が過ぎて父親から勘当されてしまう。噺家橘家文蔵の家に居候し、形ばかりの弟子としてのん気に暮らしていたが、実家の材木問屋が潰れ、両親をも失ったことで、一から修行に励み始める。

柳家 小円太 (やなぎや こえんた)

二ツ目の若手噺家。真打になるまでは、売れなくてもじっくりと修行すると決めているため、常に金には縁がなく、息子を取り上げた産婆への支払いさえままならないありさま。方々にツケを溜めながら、愚直に修行を重ねていく。

春風亭 小圓蔵 (しゅんぷうてい こえんぞう)

かつては天才と謳われた若手噺家だったが、結核を患い甲府の療養所で日々を送っていた。自分の若い頃と同様に才に溺れ慢心している噺家春風亭小柳を諌めるため、病身を押して最後の高座に上がる。

三遊亭 伝蔵 (さんゆうてい でんぞう)

彰義隊の一員として官軍と戦った元・武士。上野の戦いで兄を失う。明治の御世となり、刀を捨て噺家として身を立てようと三遊亭円蔵に弟子入りする。10年余りの修行の末に真打となったが、ふとしたことから兄の仇の行方を知り、仇討ちを決意する。

三遊亭 圓佐 (さんゆうてい えんざ)

父である先代三遊亭圓佐が引退したことで、大名跡である圓佐の名を継いだ。しかし、父に甘やかされ、腕も未熟なままに大きな看板を背負わされたことで、周囲からは白眼視される。

三遊亭 大遊 (さんゆうてい だいゆう)

大変な大食漢で、食べるために相撲部屋に入門するが、一向に芽が出ず、ふとしたきっかけから噺家に弟子入りする。噺は上達しないが、なぜかものを食べる仕草だけは絶品で、その高座を聞いた客は、噺に出てくる食べ物が食べたくなるほどである。

柳亭 ぜん馬 (りゅうてい ぜんば)

中堅の噺家で、下の者に教えるのは上手いが、自身の芸はあまり受けがよくない。心ない者からは「稽古屋」などと呼ばれ、思い悩んでいたが、とある飲み屋でプロ野球のコーチと知り合ったことで、自分も落語界のコーチとして生きていくことを決意する。

弥七 (やしち)

人力車の車夫で、ゴロツキ同然の生活を送っていたが、偶然出合った噺家三遊亭円遊の態度に感銘し、お抱え車夫となる。当代一の人気を誇る円遊に付き従ううちに落語の妙に魅かれていくが、その思いを秘めたまま歳を重ねていく。

三升家 八十八 (みますや やそはち)

噺家三升家勝之助の下に弟子入りした70歳の老人。実は一代で大会社の社長にまで上り詰めた人物だったが、無一文から第二の人生を始めたいと、財産のすべてを寄付した上で入門していた。

柳家 すずめ (やなぎや すずめ)

噺家柳家小しんに弟子入りしたものの、モノにならぬまま廃業し、郷里に帰った若者。後に地元で教師となり、巡業でその地を訪ねた小しんと再会する。

柳家 平助 (やなぎや へいすけ)

屁、糞、小便などが出てくる汚い噺ばかりを好んで演じる噺家。お座敷で無粋な旦那から「何かやって見せろ」と言われ、その顔めがけて屁をひったことから「空クモ(屁)の平助」の異名で呼ばれる。下品だがその反骨心は本物で、寄席を訪れた宮様の前で、糞と屁の噺を嬉々として演じた。

林家 千五郎 (はやしや せんごろう)

落語を地で行くような粗忽者で、毎日のようにくだらない失敗ばかりしている。高座の上でも粗忽さは変わらず、とちってばかりでまともに演じられない。だが、おかしなことに、客もその失敗を楽しむようになり、期せずして人気者となってしまう。

古今亭 朝次 (ここんてい ちょうじ)

眉目秀麗な若者で、まだ二ツ目ながら若い女性客から絶大な人気を誇っている。本人も「崇徳院」や「宮戸川」などの女性受けのいい噺ばかりを好んで演じている。だが、その姿勢を危惧した師匠古今亭朝馬から、下品なバレ噺である「なめる」だけを演じるように命じられてしまう。

三遊亭 右朝 (さんゆうてい うちょう)

老境に入って久しい噺家で、高座には上がるものの、前座噺や短い噺ばかりを演じているため、若手からは軽く見られている。しかし、実はトリの演者をひきたてる“ひざがわり”の名人であり、人気絶頂の大看板からも頼りにされる噺家であった。

桂 万次 (かつら まんじ)

三歳のときに自分を捨てた母親を探すため、噺家として名を上げようと日夜稽古に励む若手。その真摯な態度が好感を呼び、努力の甲斐もあって順調に出世を重ねていく。

柳家 喜助 (やなぎや きすけ)

先輩の噺家はもちろん、前座から自分の女房、果てはバスの運転手にまでヨイショしまくるという噺家。芸を磨くよりヨイショに熱心で、すでに三十代も半ばを過ぎたのに、二ツ目に留まっている。見かねた師匠の柳家小もんから激しく叱責され、その直後に女房からも逃げられたことで一念発起する。

三升家 勝太郎 (みますや かつたろう)

ひたすらに酒を愛する噺家。楽屋ではお茶の代わりに冷酒を一杯ひっかけ、ほろ酔いで高座に上がるほどの酒好き。大酒を飲んでラジオに出演し、マイクの前でいびきをかいて寝込むという失態をさらすが、それを咎めた師匠に対して「酒を断つぐらいなら噺家を止める」と言い放つ。それでも客からは愛され、高座の上で一斗枡の酒を飲み干すという酒仙ぶりを披露した。

今朝蔵 (けさぞう)

30年以上も前座を続けているという中年男。細やかな気遣いで、寄席を支え続けている。自分の芸が荒いことを誰よりもわかっており、「三流の真打になるよりも、一流の前座でいたい」と、大師匠が持ち込んだ二ツ目への出世話を断った。

林家 源平 (はやしや げんぺい)

何事にもクソ真面目に取り組む性格で、噺家であるにも拘らず「冗談はキライでございます」と語る妙な男。「品川心中」を演じるために、品川の海で溺れかけたり、「紙入れ」の研究のために、間男になったりと、落語のためなら常軌を逸した行動を取る。

橘家 万太郎 (たちばなや まんたろう)

人情噺の名人として知られる中堅真打。一高座に全身全霊を打ち込むために一日の高座は一度と決めており、かけもちの依頼には決して応じない。そのため、実入りは少なく、名声に反して親子三人の慎ましやかな生活を送っていた。しかし、一人息子が病に倒れ、その手術代のために借金を負ったことで節を曲げ、珍芸ヘラヘラ踊りで東京中の寄席を掛け持ちして回るようになる。

林家 清蔵 (はやしや せいぞう)

かつては先を期待される若手噺家だったが、饅頭屋の娘と夫婦になったことで出世欲を失ってしまい、二ツ目のままだらだらと日々を重ねる。しかし、ある日見た夢に死んだはずの義父が現れたことをきっかけに、真打となるべく修行をやり直す。

林家 清六 (はやしや せいろく)

噺は下手だが声色は上手いという明治期の噺家。特に人気の歌舞伎役者六代目菊十郎の声色を得意としていた。あるお座敷で、本物の六代目菊十郎と出会い意気投合、本人に認められたことで、噺家を廃業し、声色芸人として高座に立つことになる。

金原亭 秀之助 (きんげんてい ひでのすけ)

元・浪曲師の噺家。かつては粗野な物乞い芸として蔑まれていた浪花節を、寄席の出し物として認めさせるために苦労を重ねる。やがてその努力は実り、東京市内に浪花節の定席が十数軒にも増えることとなった。しかしそんな折、秀之助は何者かに水銀を飲まされてしまう。命は取り留めたものの、以前の美声を失った秀之助は、噺家として再出発することを決意する。

SHARE
EC
Amazon
logo