望郷太郎

望郷太郎

赴任先のイラク共和国で、世界的な大寒波から逃れるため人工冬眠に入った商社マンの舞鶴太郎は、それから500年後の世界で目を覚ます。文明が崩壊した世界で、故郷の日本を目指して旅する男を描いたSFサバイバル。「モーニング」2019年40号から掲載の作品。

正式名称
望郷太郎
ふりがな
ぼうきょうたろう
作者
ジャンル
終末・ディストピア
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊11巻
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あらすじ

第1巻

記録的な大寒波が世界を襲い、すでに凍死者は数億人を超えていた。大手商社、舞鶴グループ創業家の7代目で、舞鶴通商イラク支社長である舞鶴太郎は、社屋の地下に秘密裏に作っていたシェルターで、大寒波を逃れるために家族と共に人工冬眠に入る。天候が回復するまでにひと月ほど冬眠する予定だったが、太郎が目覚めると500年の歳月が流れており、いっしょに人工冬眠に入った妻の美佐子と息子の光太郎は、装置が停止してすでに死亡していた。人っ子一人いない世界で、せめて日本を見て死にたいと考えた太郎は、シベリア鉄道を歩いて日本を目指すために旅立つ。旅の途中で力尽きた太郎は、パルミトの二人に命を救われる。そして三人で狩猟生活を続けていたある日、彼らが「祭り」と呼ぶ、猛獣との戦いの儀式でミトが命を落としてしまう。ミトを弔った二人は、日本を目指して旅を再開する。

第2巻

舞鶴太郎パルはシベリア鉄道の駅に到着したものの、駅はもちろんのこと鉄道も荒廃していた。意気消沈した太郎は、パルの故郷の村へと向かう。パルの故郷である西の村に無事到着するが、西の村は中の村との「大祭り」と呼ばれる厳しいルールのある物々交換の儀式に苦しんでいた。太郎の機転により西の村と中の村の和平は保たれるが、より強大な力を持つ東の村の脅威が迫り、二つの村の村人たちは、東の村との戦争の道を選ぶ。戦争に参加したくない太郎は、偵察と偽って東の村へ亡命する。ケガが治るまで東の村に身を潜めるつもりだったが、太郎を怪しむ村長のアンテは、太郎に対して奴隷になるよう命じる。奴隷として働くことになった太郎は、奴隷頭を務める女性のプリと出会うが、彼女は数年前に東の村に差し出された、パルの娘だった。その後、東の村よりもさらに強大な国、マリョウとの大祭りでも差し出されたプリと別れた太郎は、残りの奴隷たちと共に東の村からの脱走を図る。

登場人物・キャラクター

舞鶴 太郎 (まいづる たろう)

厳しい競争社会を生き抜いてきたやり手の商社マンの男性。年齢は38歳。大手商社である舞鶴グループ創業家の7代目で、舞鶴通商イラク支社長としてイラク共和国に妻の美佐子、息子の光太郎と共に赴任していた。中学受験を控えていた娘の恵美は、東京にいる父親の家に預けていた。世界的な大寒波から逃れるために、妻と息子の三人でシェルター内の人工冬眠装置で眠りにつき、500年後に目覚める。数百年前に装置が停止したために妻と息子はすでに死亡しており、文明が崩壊した世界に絶望するが、故郷の日本を一目見るために旅へと出る。特に腕っぷしが強いわけでも、サバイバル能力に優れているわけでもないが、商社マン時代の行動力や交渉力で、人類のほとんどが死滅した氷河期世界を生き抜く。

美佐子 (みさこ)

舞鶴太郎の妻。立ち居振る舞いが上品な女性。夫と共にイラク共和国で暮らし、大寒波を逃れるために夫と息子の光太郎と共に人工冬眠装置で眠りにつくが、シェルターや人工冬眠について不安を感じていた。2214年に人工装置が停止したらしく、そのまま装置の中で死亡していた。

光太郎 (こうたろう)

舞鶴太郎の息子。小学生と思われる。舞鶴通商イラク支社長としてイラク共和国に赴任した父親について、母親の美佐子と共にイラク共和国で暮らしていた。大寒波を逃れるために両親と共に人工冬眠装置で眠りについたが、2331年に人工冬眠装置が停止したらしく、そのまま装置の中で死亡していた。

恵美 (めぐみ)

舞鶴太郎の娘。父親と母親の美佐子、弟の光太郎がイラク共和国に渡った際、中学受験を控えていたため、東京にある祖父の家で暮らしていた。安否は不明ながら、500年以上前なので死亡していると思われる。

パル

行き倒れていた舞鶴太郎を救った男性。口ひげを生やし、中東系の顔立ちをしている。太郎が死んでいると思い、その死体を食べるためにテントに持ち帰った。しかし、喉を切る直前に太郎が目を覚まし、それからは太郎の面倒を見ている。西の村の出身で、「大祭り」という儀式で妻と妹をほかの村に差し出したつらい過去を持つ。村の暮らしに嫌気がさして飛び出し、南方で狩猟生活を続ける。日本へ向かうという太郎の旅に同行することに決め、その途上で故郷である西の村へ戻る。

ミト

小さい頃にパルに拾われ、パルと行動を共にする若い男性。年齢は十代。赤毛で青い瞳を持つ、ヨーロッパ系の人種と思われる。パルとの長年の狩猟生活を通じて、狩りの技術に長けている。舞鶴太郎にもよく懐いていたが、「祭り」と呼ばれる、猛獣との戦いの儀式で命を落とす。パルたちの風習では、戦いで死ぬことはよいこととされており、その遺体が残った者に食べられることで生き続けると考えられているが、太郎の提案によって食べることをせず、鳥葬で弔われた。

サケ

ロシアの南方、アルタイ地方のビイスク辺りにある西の村の村長を務める男性。パルの父親の弟。妻のアン、長女のニュン、婿のミリ、生まれたばかりの孫と暮らしている。西の村が中の村に吸収されるのを村長としてなんとか防いだものの、中の村と共に東の村と戦争をすることになる。

メリ

ロシアの南方、アルタイ地方のノボクズネツク辺りにある中の村の長を務める男性。西の村よりも村民の数が多いものの、より強力な東の村に対抗するため、西の村を奪おうと画策している。西の村の吸収は失敗に終わり、西の村と協力して東の村と戦争する道を選ぶ。

アンテ

ロシアの南方、アルタイ地方のエニセイ川上流ミヌシンスク辺りにある東の村で、長を務める男性。三人の妻を持つ。75人の村民を抱え、奴隷を使って村を維持している。亡命してきた舞鶴太郎を信用せず、奴隷として使役する。村の力をより強固にするため、中の村との戦争を考えている。

プリ

東の村で、奴隷頭として10人ほどの奴隷をまとめている女性。パルの妹で、もともとは西の村の出身だが、「大祭り」と呼ばれる物々交換の儀式で、交換材料として中の村へと引き渡され、さらに中の村から東の村へと差し出された。体中に傷痕のあるたくましい肉体の持ち主で、新しく入ってきた男の奴隷とは、まぐわうことで従わせている。500年前のものと思われるコンドームを100個所持しており、それで避妊をしている。兄の仲間だという舞鶴太郎のことを一応は信用しており、自分がマリョウの国へ差し出されていく際に、太郎を次の奴隷頭に指名する。ムリョウの国で成り上がり、いつの日にか東の国に攻め込んでアンテを殺し、奴隷たちを解放するという野心を持っている。

ムーク

東の村で、奴隷として生きている男性。新しく奴隷として入ってきた舞鶴太郎が、ソバなどの見知らぬ美味しい料理を作ってくれたり、奴隷たちの食事情を改善してくれたことに感謝し、彼にすっかり心を許すようになった。奴隷生活に絶望しており、自分が罰で殺されてもいいから、太郎に村を脱走することを進言。その後、太郎と共に奴隷全員で村から脱走することとなる。

書誌情報

望郷太郎 11巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2019-12-23発行、 978-4065179901)

第2巻

(2020-05-22発行、 978-4065189658)

第3巻

(2020-10-23発行、 978-4065189962)

第4巻

(2021-03-23発行、 978-4065223079)

第5巻

(2021-08-23発行、 978-4065241035)

第6巻

(2022-02-22発行、 978-4065269206)

第7巻

(2022-07-22発行、 978-4065285565)

第8巻

(2023-01-23発行、 978-4065302774)

第9巻

(2023-06-22発行、 978-4065320136)

第10巻

(2024-01-23発行、 978-4065343692)

第11巻

(2024-06-21発行、 978-4065359563)

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