世界観
現代パートは、かごめの15歳の誕生日から、高校合格を経て、中学を卒業するまでの1年間をメインに描く。最終話の中で3年が経過し、かごめは高校を卒業することになる。
戦国時代パートは、戦国の世をモデルに、さまざまな妖怪が跳梁跋扈する世界として描かれる。妖怪は巨大災厄のレベルから、僧侶、法師、妖怪退治屋により退治される害獣レベルのものまで、人に仇なすものとして捉えられている。妖怪・九十九の蝦蟇が登場する第21話にて、織田信長を「尾張のうつけ」と呼ぶ描写があることから、16世紀半ば以降の年代と推測されるが、実在の歴史上の人物に対する言及は本件のみに留まる。
本作に登場する妖怪は高橋留美子のオリジナルであり、これは日本の妖怪はのどかであり、人を食べたりしないから、との理由による。
作品構成
デビュー連載作『うる星やつら』から一貫して、1話完結もしくはショートストーリーでのドタバタラブコメディを得意にしている高橋留美子であるが、『犬夜叉』はスケールの大きい大河ドラマを描いてみたいという思いから構想された。巫女・桔梗に対する邪念が生み出した奈落という存在が物語の発端となる本作は、憎しみや嫉妬など、負の感情がストレートに描かれた。
犬夜叉一行と奈落の対立のみならず、犬夜叉と殺生丸の兄弟間の確執、本体である奈落と、奈落の分身である白童子、赤子らの主導権争いなど、登場人物たちのさまざまな思惑が交錯し、謀略や裏切りが入り乱れ、物語は混沌としていった。
高橋留美子作品の中では『人魚シリーズ』に近いテイストで、妖怪でも人間でもない半妖という存在が、妖怪と人間の双方から差別、迫害を受けるといったエピソードについても繰り返し描かれている。
また、人間や妖怪が大量に死ぬ描写が頻出するが、その死屍累々たる光景の中で、犬夜叉とかごめの中学生レベルの恋愛が展開していくのも本作の特徴である。
あらすじ
1996年の東京。古い神社の娘として生まれた日暮かごめは、15歳の誕生日に実家の隠し井戸・骨喰いの井戸から飛び出した妖怪により井戸の中に引きずり込まれる。かごめが井戸から出ると、周囲は様変わりし、御神木には半妖の少年・犬夜叉が封印されていた。かごめは、自分が戦国時代にタイムスリップしたと知る。その夜、かごめが祖父から御守として手渡された四魂の玉を求めて、妖怪・百足上臈が村を襲う。四魂の玉を取り込んで強大化した百足上臈を倒すため、かごめは犬夜叉の封印を解く。
殺生丸篇(第14話~20話)
無数の欠片となって世に放たれた四魂のかけらを集めることになった犬夜叉とかごめの前に、犬夜叉の異母兄・殺生丸と、亡くなったはずの犬夜叉の母親があらわれる。妖怪の殺生丸と半妖の犬夜叉という出自の異なる兄弟の確執を描いたエピソードで、この後、犬夜叉と殺生丸は父親の遺した鉄砕牙を巡り、幾度となく剣を交えることになる。
桔梗篇(第47話~52話)
鬼女・裏陶が楓の村を襲撃し、桔梗の墓から霊骨を奪った。鬼女・裏陶は、強大な霊力を持つ桔梗を蘇らせ、下僕として四魂の玉を集めさせようとしていた。桔梗の復活が描かれるエピソード。犬夜叉と桔梗が現世で再び巡りあうことにより、ふたりの過去が語られる。
弥勒篇(第53話~第60話)
犬夜叉と旅を続けるかごめは、山中で怪しげな法師に四魂の玉のかけらを奪われる。弥勒と名乗るその法師は、右手の風穴で何でも吸い込む力を持っていた。弥勒の祖父に風穴の呪いをかけた奈落が、犬夜叉と桔梗を憎しみ合わせた元凶だったと判明するエピソード。
鬼蜘蛛篇(第67話~第74話)
桔梗と奈落の因縁について考える犬夜叉に、楓は、犬夜叉と桔梗を憎しみ合わせることで、四魂の玉が汚れることを望んでいた野盗・鬼蜘蛛の存在を告げる。奈落が誕生した経緯が描かれるエピソード。また、身を案じた犬夜叉により現代に帰されたかごめが、犬夜叉に対する恋心を募らせていく恋愛エピソードでもある。
死魂篇(第75話~第80話)
女の死魂により偽りの生を維持する桔梗と、その生まれ変わりであるかごめが、犬夜叉を奪い合う恋愛エピソード。自らの恋愛感情をストレートにぶつけるかごめと、犬夜叉を変えたかごめに対して嫉妬心を隠さない桔梗が、対比して描かれる。
珊瑚篇(第88話~第96話)
妖怪退治屋の女・珊瑚をはじめとする手練たちが妖怪退治のために城に呼ばれるが、珊瑚の弟・琥珀が何者かに操られ、自分の父親を含む退治屋を皆殺しにしてしまう。操りにより同士討ちをさせた挙句、生き残った珊瑚に犬夜叉が仇だと吹き込むという、奈落の卑劣さがよくあらわれたエピソード。四魂の玉の誕生についてや、歴史を超えて巡る四魂の玉の因果についても語られる重要なエピソードである。
琥珀篇(第108話~第113話)
旅を続ける犬夜叉一行の前に、奈落の城で殺されたはずの琥珀があらわれた。四魂のかけらによって蘇った琥珀は、奈落の忠実な下僕となり、無抵抗な村の民を皆殺しにしたのだった。驚く珊瑚の前に奈落があらわれ、弟を助けたければ、犬夜叉の鉄砕牙を奪ってこいとそそのかした。物語終盤まで続く、仇である奈落の手先となって非道を働く弟を殺せるのかという姉・珊瑚の葛藤と、奈落に操られたとはいえ、自分の手で父親や仲間たちを殺した忌まわしき記憶に苦しむ弟・琥珀という姉弟の悲劇の幕開けとなるエピソードである。
邪気の穴篇(第118話~第126話)
かつての鬼蜘蛛、現在は人見家の主君・蔭刀という偽りの身上を生きる奈落と、50年前に死んだ巫女・桔梗が、再び相まみえる。巫蠱の術を使って、強大な体を手に入れようと目論む奈落の姿と、完璧な四魂の玉を手にした奈落を、自らの手で地獄に送ろうと誓う桔梗の思惑が交錯する。
鋼牙篇(第132話~第140話)
四魂のかけらが見える能力に目をつけた妖狼族の若頭・鋼牙がかごめをさらう。かごめを巡って犬夜叉の恋のライバルとなる鋼牙が登場するエピソード。また、瀕死の自分を看病した村の娘・りんを通じて、殺生丸の内面がわずかに変化する様子を描いたエピソードでもある。
奈落の分身篇(第143話~第172話)
神無、神楽、悟心鬼、獣郎丸・影郎丸ら、奈落の体から生み出された分身たちが犬夜叉一行に襲いかかる。風のように自由に生きたいと願い、奈落の支配から逃れるため、時には奈落を裏切る神楽が登場する。また、殺生丸の新しい刀・闘鬼神が生まれるエピソードも語られる。
七人隊篇(第236話~第288話)
非道な振る舞いにより、全員打ち首となった凄腕傭兵部隊、通称・七人隊が、四魂のかけらで蘇った。奈落を追う者を皆殺しにせんと、七人隊は、犬夜叉一行や鋼牙たちに襲いかかる。一方、姿を消した奈落の気配を追う犬夜叉たちは、すべての邪気を浄化する白霊山に近づく。かつては人間だった死人を敵方に配置することで、邪悪な存在に利用される人間の弱さにスポットを当てたエピソードである。
あの世とこの世の境篇(第295話~第328話)
白童子が、高僧や神官、妖怪を殺して回る。死の瞬間、心に浮かぶという、あの世とこの世の境の場所を探しているのだ。あの世とこの世の境には、四魂のかけらのうち、行方のわからない最後のかけらがあるという。奈落の新しい分身である白童子と赤子が行動を開始する。また、奈落の体の秘密が語られるエピソードでもある。
魍魎丸篇(第335話~第450話)
妖怪を繋ぎ合わせた不気味な妖怪たちに犬夜叉一行と鋼牙が遭遇する。その先には合成妖怪の最終形・魍魎丸を連れた白童子の姿があった。奈落の分身である白童子と赤子によって生み出された妖怪・魍魎丸を物語の軸に、白童子、奈落、そして犬夜叉一行の思惑が交錯し、事態は混沌としていく。
蜘蛛の糸篇(第454話~第467話)
崩落した白霊山跡地を奈落は再び訪れる。桔梗を殺すために必要な武器である、この地を去る前に捨てた人間の負の心を取りに戻ったのだ。蜘蛛の姿に化身した鬼蜘蛛の心を吸収した奈落が桔梗を襲う。桔梗と犬夜叉、かごめの関係に決着がつけられるエピソード。
鉄砕牙篇(第501話~第506話)
「お前の父親はいずれ天生牙を鉄砕牙に吸収させるつもりだった」との刀々斎の言葉の意味について考える殺生丸。奈落の罠にあえて乗り、鉄砕牙の正当な継承者を決める犬夜叉との闘いに臨む殺生丸の姿が描かれる。長きに渡り描かれた犬夜叉と殺生丸の兄弟の対立は本エピソードをもって決着となる。
曲霊篇(第515話~第531話)
四魂の玉に封じ込まれていた邪悪な霊・曲霊が、奈落の肉体を使ってこの世にあらわれた。曲霊は、闇で満ちた四魂の玉を完成させるため、琥珀の命をつなぐ最後の四魂のかけらを狙う。四魂のかけらにより奈落に操られる弟・琥珀と、弟の身を案ずる姉・珊瑚のエピソードが決着する。また、殺生丸が自分自身の剣、爆砕牙を手に入れるエピソードでもある。
四魂の玉篇(第532話~第560話)
奈落の汚れに満ちた四魂の玉が完成した。奈落との決着を託された犬夜叉一行は、巨大な蜘蛛の姿に変化した奈落の内部に突入する。奈落をも意のままに操った四魂の玉を巡る、時空を超えて繰り返す因縁の物語はここに決着する。
掲載情報
小学館「週刊少年サンデー」誌に、1996年第50号から2008年第29号まで全558話が連載された。単行本は全56巻(ワイド版は全30巻)。また、最終話から半年後の犬夜叉たちを描いた「特別編 あれから」が「週刊少年サンデー」誌2013年第13号に掲載された。本作は東北復興支援プロジェクトの一環として刊行された『3.11を忘れない ヒーローズ・カムバック』、2015年6月に発売されたワイド版30巻に収録された。
メディアミックス
TVアニメ
2000年10月16日から2004年9月13日までの4年間、全167話が日本テレビ系列で放映された。かごめの弟・草太の恋愛話や、かごめの中学の文化祭に妖怪が乱入する話など、アニメオリジナルのストーリーもみられた。放映内容が連載に追いついたため、単行本36巻、御霊丸が登場するエピソードの中で、ひとたび放映終了となった。
その後、作品の完結を待って『犬夜叉 完結編』が、前作と同じく日本テレビ系列にて、2009年10月3日より放映された。単行本の残り20巻の内容を全26話にまとめたため、駆け足の展開となった。
映画
オリジナルストーリーによる劇場版が4作公開されている。2001年12月15日公開の第1作『犬夜叉 時代を越える想い』は、犬夜叉の父親を自分の父の仇とする妖怪・瑪瑙丸が犬夜叉一行に襲いかかる。2002年12月21日公開の第2作『犬夜叉 鏡の中の夢幻城』は、弥勒の祖父に封印された妖怪・神久夜が復活、夢幻城にかごめを連れ去る。2003年12月20日公開の第3作『犬夜叉 天下覇道の剣』は、かつて犬夜叉の父親が使用していた妖刀・叢雲牙が時を経て復活するというストーリー。原作には登場しない犬夜叉の父親の死、そして犬夜叉を身ごもる犬夜叉の母親・十六夜の姿が描かれる。 2004年12月23日公開の第4作『犬夜叉 紅蓮の蓬莱島』は、不老不死の島・蓬莱島を牛耳る四闘神に犬夜叉がリベンジするというストーリー。なお、この作品のみ『とっとこハム太郎』シリーズの劇場版、『とっとこハム太郎 はむはむぱらだいちゅ! ハム太郎とふしぎのオニの絵本塔』と同時上映された。
ドラマCD
「少年サンデー」誌の応募者全員サービスで配布された『聴くドラマCD~死を呼ぶ温泉しりとり!~』、『聴くドラマCD2~竹取の翁は凶暴じゃった~』、ドラマアルバムとして発売された『犬夜叉 地獄で待ってた七人隊!』、『犬夜叉 嵐と祭りの宝来島!』、『犬夜叉 紅と白の歌合戦!』 犬夜叉版、同殺生丸版など、ギャグ中心のコミカルな内容のものが発表されている。また、ワイド版全巻予約特典のドラマCD『犬夜叉第559話 あさって』では、最終話「明日」の後日談が語られている。
演劇
2000年4月から5月にかけて全国7ヶ所(追加公演含む)で、劇団☆新感線+PARCOプロデュースにより公演された。犬夜叉を演じたのは元・光GENJIの佐藤アツヒロ。翌2001年1月から2月にかけて再演された。再演の様子はDVD化されて発売されている。
小説
金春智子による『小説 犬夜叉』が2004年12月に発売されている。第1巻の始まりから逆髪の結羅との戦いまでが描かれ、原作者の高橋留美子も挿絵で参加している。
ゲーム
2001年から2005年にかけてワンダースワンやPlayStationを中心とした様々なプラットフォームで発売された。2005年に発売されたPlayStation 2用ソフト『犬夜叉 奥義乱舞』は3Dポリゴンで描かれたキャラクターたちが最大2対2で対戦できるというものである。
登場人物・キャラクター
犬夜叉 (いぬやしゃ)
巨大な犬の妖怪と人間の女性を母に持つ半妖。長い白髪に犬のような耳を持ち、丈夫な赤色の火鼠の衣を纏った少年。50年前巫女・桔梗と恋仲になるが、奈落によって仲違いさせられてしまい彼女によって封印されていた。現代の世からタイムスリップしてきた桔梗の生れ変わりの少女・日暮かごめに封印を解かれ、その後共に四魂の玉を探す旅に出る。 短気で乱暴な性格で、旅の最初は四魂の玉の力で完全な妖怪になることを目指していたが、次第に気持ちが変化していき心身ともに成長していく。半妖故に、月に一度の新月の夜・朔の日には人間になってしまい、犬耳や爪などが妖力と共になくなり、髪の毛も黒くなってしまう。 最初は桔梗容姿も酷似したかごめに戸惑うも、次第に心が惹かれていくようになる。しかし、その一方で昔惚れた相手であり、更には負い目もある桔梗のことも見捨てきれていない。武器は父親が形見として残した鉄砕牙。必殺技は、鉄砕牙を使った風の傷や爆流波、また素手では散魂鉄爪なども使用する。
日暮 かごめ (ひぐらし かごめ)
神社の娘として産まれた中学三年生の少女。15歳の誕生日に、家の裏にある古井戸・骨喰いの井戸に落ちて戦国時代へとタイムスリップ、四魂の玉を巡る争いへと巻き込まれていくことになる。行動力に優れ、肝も据わっており、心優しい性格。強力な霊力を持ち、また犬夜叉と恋仲でもあった巫女・桔梗の生れ変わりであり、彼女同様に強い神通力を持つ。 また、使用する武器も桔梗と同じく弓。最初こそ乱暴な犬夜叉に反発していたが、彼の心に触れるに連れ次第に側にいることを望むようになる。犬夜叉が桔梗に対する気持ちも知っており、しばし葛藤する。犬夜叉を、言霊の念珠で縛り付けており、「おすわり」という言葉で地に伏せさせることが出来る。 現役の受験生でもあり、しばしば現代と過去を行き来してはテストに頭を悩ませている。
桔梗 (ききょう)
戦国時代の高名な巫女であり、かつて犬夜叉と恋仲であった女性。日暮かごめの前世。冷静で、慈愛に満ちた性格。四魂の玉を守るという使命を受け、玉を狙う妖怪との戦いを続ける中犬夜叉と出会い、やがて親近感を抱くようになる。そして犬夜叉に妖怪ではなく人間になるように説得するも、奈落の計略によって仲違いさせられ犬夜叉を封印したのち自らも四魂の玉を抱いて自殺してしまう。 その後、鬼女・裏陶により復活。犬夜叉に恨みを抱きつつしんだものの、彼に対する愛情も消えずにいる。魂の殆どが既にかごめに転生しているために、頻繁に霊魂を補充しなければならない。強力な神通力は今なお健在であり、強力な結界を張ることも可能。 使用する武器は霊力を込めた弓矢・破魔の矢。
七宝 (しっぽう)
力は弱いが機転が効き、変身能力を駆使することでピンチを幾度となく乗り切る幼き妖狐。父親の仇を討つ際に犬夜叉と共闘したことを機に仲間となった。他の妖怪にビビるほど臆病な反面、覚悟を決めた際は頑固とも思えるほどの根性を見せる。日暮かごめのことを強く慕う。
弥勒 (みろく)
高い徳を備えた美形の僧侶。普段は物腰柔らかな人物だが、本性はスケベで女ったらしのチンピラ。右手は、祖父の時代から奈落の呪いによりあらゆるものを吸い込んでしまう風穴と化しており、非常に強力な力を持つ反面、やがては風穴に飲まれて存在が消滅してしまうという宿命を背負っている。 風穴の呪いを解くために奈落を倒すことを目標としており、犬夜叉とは最初敵対するものの、やがて行動を共にする。錫杖を武器とした体術にも秀で知識も豊富。阿波の八衛門狸という、狸の妖怪を従えている。
珊瑚 (さんご)
最初に四魂の玉が出来た村で妖怪退治屋を営む一家の娘として産まれた少女。退治屋として高い誇りを持ち、責任感がとても強い。一族でも一番の手練れであり、猫又の雲母(きらら)にを駆り、巨大なブーメラン状の武器・飛来骨を振り回す。普段は着物姿だが、戦闘時には鎖帷子のような衣装を纏い、口を防毒面で覆っている。 奈落の陰謀により一族郎党を皆殺しにされてしまい、最初は犬夜叉達の仕業だと奈落に唆されて戦うが、誤解が解けた後は行動を共にするように。しかし、弟の琥珀は奈落によって蘇らされ人形のように操られてしまい、罠だと分かっていても動いてしまうこともある。仲間の弥勒の優しさに触れ、惚れつつあるが彼の節操無き女好きに度々呆れている。
殺生丸 (せっしょうまる)
犬夜叉の異母兄であり、彼とは違って完全な妖怪。美形で優男風だが、性格は極めて冷酷。額に月型の紋がある。軽快な動きと、細身の体から想像もつかない怪力を持ち、他の妖怪とは一線を画す能力の持ち主。爪の先からは強力な毒を放つ。一振りで100の妖怪を倒すと言われる父の形見・鉄砕牙を巡り、二度犬夜叉と刃を交える。 その後、村娘・りんと交流するなかで、次第に優しさという感情に芽生えていく。鉄砕牙とは別に、蘇生能力を持つ刀・天生牙を持つ。
邪見 (じゃけん)
殺生丸に付き従う小妖怪。小心者であり、どこか抜けている所がある。翁と女性の顔が付いた人頭杖という杖を持ち、火炎を放つ武器として使用する他に探知機能も持ち合わせる。途中から道連れになったりんのお転婆っぷりに手を焼いているものの、大切に思っている節がある。
りん
野盗に親兄弟を殺されて、恐怖から声の出せなくなってしまった少女。犬夜叉との戦いに敗れて深手を負った殺生丸の介抱をした。その後、妖怪により殺されてしまうも殺生丸の天生牙により蘇り、言葉を取り戻し彼に同行する。天真爛漫で好奇心旺盛。彼女と過ごす中で、残酷だった殺生丸にも変化が訪れていく。
鋼牙 (こうが)
荒野に棲む狼の妖怪であり、一族を束ねる若頭。元から高い身体能力を、四魂の玉の欠片で大幅に強化している。気性が荒いが仲間思い。日暮かごめに惚れており、犬夜叉とは恋敵。当初は四魂の欠片を巡り犬夜叉たちとは敵対するものの、後に奈落と神楽に郎党を虐殺されたことにより、共通の敵を持つ者として協力することも増えていく。
奈落 (ならく)
桔梗により看病され、彼女に欲情するようになった浅ましい野盗・鬼蜘蛛を繋ぎとして、数多の妖怪が融合して産まれた怪物。ベースは人間であるため半妖で、ひと月に一度妖怪の力を失う日があるが、犬夜叉と異なりその日を任意で選べる。四魂の玉を手にして完全な妖怪になることを目論む。 半妖になったものの、未だに桔梗のことを殺し切れず、犬夜叉に嫉妬するなど人間臭い所がある。計算高く陰謀好きで、桔梗と犬夜叉を仲違いさせたことに始まり、殺生丸に犬夜叉を殺させるよう唆したり、珊瑚の情を利用して弟・琥珀を使った罠をしかけたりと様々な所で暗躍する。また、頭が切れるだけでなく、高い生命力と戦闘能力も持ち合わせ、更には体は強い毒と瘴気で満ち溢れているために防御面でも優れている。 姿を自在に変化させる能力も持ち、人見家の嫡子・陰刀の姿を借りていることが多い。神楽や神無などの配下は自らの分身。危険な相手と接触する際には猿のような被り物をした傀儡を使うことが多い。
神楽 (かぐら)
奈落の体の一部から産まれた風と屍を操る女性の妖怪。束縛を嫌う性格で奈落に心服はしていないが、彼に自分の心臓を握られているために逃げ出すことが出来ずにいる。
神無 (かんな)
奈落の体の一部から産まれた妖怪。奈落の分身の中では一番初めに産まれたが、最も幼い姿をしている。魂を吸い取って操ったり、攻撃を反射させたりと様々な技を使える死鏡を武器とする。よく行動を共にする神楽と異なり感情に乏しい。
琥珀 (こはく)
妖怪退治の村に産まれた珊瑚の弟であり、鎖鎌を獲物とする少年。若年ながらも高い運動神経を生かした戦いをするものの、奈落の策謀により初陣にて死亡。その後奈落により記憶をいじられた上で蘇生され、彼の忠実な部下となってしまう。
冥加 (みょうが)
犬夜叉を犬夜叉さまと呼び慕うノミの妖怪。犬夜叉の父親の代からつき従っており、長年の経験から得た知識は豊富。体は非常に丈夫な上に逃げ足も人一倍速い。毒を傷口から吸い出すなど、ノミならではの技も使う。
刀々斎 (とうとうさい)
犬夜叉の父親の依頼で、鉄砕牙、天生牙という二振りの名刀を叩き上げた妖怪の刀匠。猛々という三つ目の牛に乗り、どこか飄々としているが、実力は非常に高い。刀匠という仕事に誇りを持ち、また刀という武器の力をよく理解している。
北条 (ほうじょう)
日暮かごめの同期生で、彼女に思いを寄せる爽やかな好青年。かごめが戦国時代へと行っている間吐いた仮病(リューマチや、痛風など)を信じ、彼女に健康グッツなどを差し入れするも、中々思いが届かない。
翠子 (みどりこ)
平安時代に存在し、強大な霊力を持っていたとされる巫女。数多の妖怪と七日七晩に渡り戦い続け、やがて力尽きる寸前に妖怪たちと自分の魂を玉に封じ込めて四魂の玉を作り上げた。肉体は妖怪退治屋の里の洞窟内でミイラ化しているが、彼女の精神はずっと四魂の玉内で妖怪と戦い続けている。
無双 (むそう)
奈落が、桔梗への未練を断ち切るために捨てた鬼蜘蛛としての部分。産まれた時は顔を持たなかったが、後に無双という坊主の顔を奪い名前も拝借した。残虐な性格であり、奈落同様に変身能力と再生能力を持つ。
犬夜叉の父 (いぬやしゃのちち)
物語開始時は既に鬼籍。西国を支配していた犬の大妖怪。天を衝くほどの巨体と底知れぬ妖力を持ち合わせていたと言われている。自らの墓を、行き方が限定されるあの世とこの世の境界線に設置している。犬夜叉の右目の中にあった黒真珠は彼の墓場へと通じる道の一つであり、そこには形見である鉄砕牙が眠っている。
白道士 (はくどうし)
奈落が自らの体を分離させて産み出した妖怪。白髪で少年のような容姿をしている。人の心を探り、意のままに操る能力を持つ。人間らしい感情を全て捨てているために、奈落以上に冷酷な性格。
最猛勝 (さいみょうしょう)
『犬夜叉』に登場する妖怪。奈落がしもべとする蜂によく似た妖怪であり、大群を成しての攻撃や偵察など要所で活躍する。猛毒を持っているため、弥勒が持つ風穴の天敵。
集団・組織
七人隊 (しちにんたい)
『犬夜叉』に登場する集団。戦国時代、「7人で100人分の働きをする」と言われるほどの圧倒的な力を誇りつつも、特定の主君に仕えることを良しとせずに戦場を渡り歩いてきた傭兵七人組。あまりにも残虐さが目立つために討伐されてしまったが、十数年の月日を経た後に奈落の手により復活。四魂の玉と引き換えに犬夜叉を倒すことを約束し、彼らの前に立ちはだかる。 少年の体格ながら剛腕を持つリーダーの蛮骨を筆頭に強者が揃う。メンバーの名前はそれぞれ「―骨」で統一されている。
場所
骨喰いの井戸 (ほねくいのいど)
『犬夜叉』に登場する場所。日暮かごめの実家である神社に存在する枯れ井戸。昔は妖怪の死体を捨てるために活用されていた。タイムスリップさせる不思議な力があるが、作中で時代を行き来出来たのは犬夜叉とかごめの二人のみ。
その他キーワード
四魂の玉 (しこんのたま)
『犬夜叉』に登場する宝物。かつて強大な力を持った巫女・翠子の魂と数多の妖怪達の魂が合わさって出来た宝玉。持つ者に強大な力を与えることが出来、また持つ者によって清らかにも邪悪にも変化する。四魂とは、荒魂・和魂・奇魂・幸魂という、この世の全ての者が持つ四つの魂を表している。
鉄砕牙 (てっさいが)
『犬夜叉』に登場する武器。犬夜叉の父親が、自らの牙を用いて作った刀で犬夜叉に形見として残したもの。妖怪の刀匠・刀々斎によって叩き上げられた。見た目はただの古びた刀だが、選ばれた者が人間を守る時に力を発揮する。元は犬夜叉の父親が、犬夜叉の母親の為に作った守り刀であり、持つだけで邪気から身を守る効果を持つ。 また、強大な妖気を納めなければいけないため、鞘にも同様の効果がある。
天生牙 (てんせいが)
『犬夜叉』に登場する武器。犬夜叉の父親が残した刀の一つで、死後の世界からの使いを切ることで、人や妖怪を蘇生させることが出来る。慈悲深い者が扱えば一振りで100の命を救うことも可能とされる癒しの刀。また自動で結界を張り、持ち主を守ることもある。非常に強力ながら、蘇らせることが出来るのは一人一回のみ。
風の傷 (かぜのきず)
『犬夜叉』に登場する技。犬夜叉が鉄砕牙を使って放つ、自分と相手との妖気の流れにそって刀を振るうことで強力な衝撃波を放つ大技。一振りで妖怪100匹を薙ぎ倒すと言われている。また、技を放つ際に敵の妖力を巻き込んで更に強力な衝撃波を放つ、爆流波という上位技も存在する。
散魂鉄爪 (さんこんてっしょう)
『犬夜叉』に登場する技。犬夜叉が素手の際に使用する基本技。敵に突進しながら爪を振るうという単純な技でありながら、並みの妖怪なら大群でさえも蹴散らす威力を持つ。
風穴 (かざあな)
『犬夜叉』に登場する技。犬夜叉の仲間・弥勒が使用する技。彼の祖父が奈落に呪いをかけられたことで、代々受け継がれてしまうことになった手の平に空いた穴のこと。穴はブラックホールのようにいかなるものでも吸い込んでしまう強い力を持つが、やがて穴が広がりきってしまうと術者をも吸い込んでしまう。普段は呪いを掛けた数珠を巻くことで力を抑えている。 また、最猛勝という蜂型の妖怪が弱点であり、吸い込んでしまうと毒が体中に回ってしまう。
関連
~異伝・絵本草子~ 半妖の夜叉姫 (いでん えほんぞうし はんようのやしゃひめ)
戦国時代からタイムスリップしてきた少女が、現代で再会した妹と従姉妹と共に波瀾に満ちた旅をする和風ファンタジー。高橋留美子の漫画『犬夜叉』のスピンオフアニメ『半妖の夜叉姫 ―戦国御伽草子―』のコミカライ... 関連ページ:~異伝・絵本草子~ 半妖の夜叉姫
アニメ
書誌情報
犬夜叉 全56巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉
第1巻
(1997-04-18発行、 978-4091252012)
第2巻
(1997-06-18発行、 978-4091252029)
第3巻
(1997-10-18発行、 978-4091252036)
第4巻
(1997-12-10発行、 978-4091252043)
第5巻
(1998-03-18発行、 978-4091252050)
第6巻
(1998-05-18発行、 978-4091252067)
第7巻
(1998-08-08発行、 978-4091252074)
第8巻
(1998-11-18発行、 978-4091252081)
第9巻
(1999-01-18発行、 978-4091252098)
第10巻
(1999-04-17発行、 978-4091252104)
第11巻
(1999-07-17発行、 978-4091255815)
第12巻
(1999-09-18発行、 978-4091255822)
第13巻
(1999-11-18発行、 978-4091255839)
第14巻
(2000-02-18発行、 978-4091255846)
第15巻
(2000-04-18発行、 978-4091255853)
第16巻
(2000-06-17発行、 978-4091255860)
第17巻
(2000-08-09発行、 978-4091255877)
第18巻
(2000-10-18発行、 978-4091255884)
第19巻
(2001-01-18発行、 978-4091255891)
第20巻
(2001-03-17発行、 978-4091255907)
第21巻
(2001-06-18発行、 978-4091256416)
第22巻
(2001-08-09発行、 978-4091256423)
第23巻
(2001-11-17発行、 978-4091256430)
第24巻
(2001-12-18発行、 978-4091256447)
第25巻
(2002-03-18発行、 978-4091256454)
第26巻
(2002-06-18発行、 978-4091256461)
第27巻
(2002-09-18発行、 978-4091256478)
第28巻
(2002-12-05発行、 978-4091256485)
第29巻
(2003-03-18発行、 978-4091256492)
第30巻
(2003-05-17発行、 978-4091256508)
第31巻
(2003-07-18発行、 978-4091266613)
第32巻
(2003-09-18発行、 978-4091266620)
第33巻
(2003-12-05発行、 978-4091266637)
第34巻
(2004-02-18発行、 978-4091266644)
第35巻
(2004-05-18発行、 978-4091266651)
第36巻
(2004-07-16発行、 978-4091266668)
第37巻
(2004-09-17発行、 978-4091266675)
第38巻
(2004-12-10発行、 978-4091266682)
第39巻
(2005-02-18発行、 978-4091266699)
第40巻
(2005-05-18発行、 978-4091266705)
第41巻
(2005-08-08発行、 978-4091273215)
第42巻
(2005-10-18発行、 978-4091273222)
第43巻
(2005-12-15発行、 978-4091273239)
第44巻
(2006-02-17発行、 978-4091200884)
第45巻
(2006-05-18発行、 978-4091203502)
第46巻
(2006-07-18発行、 978-4091205582)
第47巻
(2006-11-17発行、 978-4091206800)
第48巻
(2007-01-13発行、 978-4091208101)
第49巻
(2007-04-18発行、 978-4091210272)
第50巻
(2007-07-18発行、 978-4091211569)
第51巻
(2007-10-18発行、 978-4091211989)
第52巻
(2008-01-18発行、 978-4091212672)
第53巻
(2008-04-18発行、 978-4091213396)
第54巻
(2008-07-11発行、 978-4091214287)
第55巻
(2008-10-17発行、 978-4091214805)
第56巻
(2009-02-18発行、 978-4091215802)