葬流者

葬流者

騒乱を起こし、幕府の転覆を狙っている尾張藩に立ち向かうことを決意した浪人刑波之進が孤高に闘い続ける姿を描いている。天下万民のため己の主君にも刃向かう刑波之進の凄絶な生き様を通して武士道を描き抜いた、時代劇の枠を超えた劇画長編。原作・小池一夫。

正式名称
葬流者
作者
ジャンル
時代劇
レーベル
キングシリーズ(小池書院)
巻数
全4巻完結
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概要・あらすじ

時は天明。飢饉が起こり庶民は苦しい生活を強いられ、全国に不穏な空気が渦巻いていた。そんな中、尾張藩藩主義通は政権奪取をたくらみ、凶徒を集め武芸を教えた上で、全国に混乱を引き起こすため解き放った。刑波之進は主君の私利私欲に走った姿を憂い、脱藩すると葬流者(ソールジャー)と名乗り、全国に散り悪事をはたらく凶徒たちを次々と始末していった。

かつての主君義通の目を何とかして覚まそうと、波之進の血塗られた苦難の旅は続いてゆく。

登場人物・キャラクター

刑 波之進 (おさか なみのしん)

総髪で髭まみれ、鋭い目つきに長合羽をまとった浪人。自称する「葬流者(ソールジャー)」とは、「過去を葬り今日を流れる」者という意味である。超絶的な剣の腕前を持つ。刀を投げたり、着用する合羽で目くらましをするなど、勝つためには手段を選ばない非情の男。鞭や拳銃など、倒した敵の武器は己の物とする。もともとは尾張藩の鏡番だったが、藩主義通が政権交代をたくらみ手勢の無法者たちに世の中を攪乱させる計画を実行したことを憂い、同志8人で脱藩し、無法者たちを処分しようとした。 しかし尾張藩手飼いの隠密組織根来黒葵によって、波之進以外は命を落とした。波之進の身体には、死んでいった7人の仲間たちの名前が彫り込まれている。 全国に散らばる根来黒葵の手先の無法者どもを始末するため、波之進は各地を放浪してゆく。

一郎兵衛、次郎左 (いちろべえ、じろうざ)

浪人刑波之進を始末するため追ってきた隠密組織根来黒葵の一員。一郎兵衛は「牛頭(ごず)」、次郎左は「馬頭(めず)」という異名を持つ。人肉の味を覚えた凶暴な巨大犬を鞭で操り、攻撃を仕掛けてくる。

鬼千鳥の平吉 (おにちどりのへいきち)

両手に構えた鎖を武器に悪行を重ねてきた無法者。「鎖の平吉」とも呼ばれている。尾張藩の隠密組織根来黒葵によって武技を仕込まれ、彼らの命に従って全国で事件を起こし続けてきた。浪人刑波之進にとって標的のひとり。

おのぶ

「湯船」という、船に浴室を設けた移動式銭湯を経営する女性。その正体は尾張藩の隠密組織根来黒葵のひとり。刑波之進は、「根来黒葵に仕込まれた300人の凶徒は身体のどこかに刺青を入れられているので、湯船に立ち寄れば見つけやすい」という情報を得て、おのぶの経営する湯船へとやってきた。 実はその情報も根来黒葵が流したもので、おのぶは湯女を装って波之進に近づき、彼を始末しようとする。

富谷 五兵衛 (とみや ごへえ)

代官所の手代。賞金首だった鎖の平吉や鬼の目鉄心を始末した浪人刑波之進は、賞金を受け取るために彼のもとへ参じた。しかし波之進へ多額の賞金を受け渡すことを惜しんだ五兵衛は、代官所の中で波之進を亡き者にしようとする。だがその陰謀は失敗し、結果として米蔵の中の米を全て取り上げられてしまった。 その米は波之進の手によって、飢饉で苦しむ庶民たちにふるまわれた。

日下 半九郎 (くさか はんくろう)

槍術の使い手。もとは武士だったが、藩内で私腹を肥やす者どもを槍で粛清した際に、まちがって無関係な商人を2人も殺してしまった。後悔の念から脱藩し、老いた母を連れて流浪の身となった。生活は困窮を極め、ついには大道芸人として槍芸を見せるまでに落ちぶれた。母の薬代にも事欠く暮らしを送る彼のもとに隠密組織根来黒葵が現れ、浪人刑波之進を百両の報酬で始末するよう誘いかける。

ヘマムシコ組 (へまむしこぐみ)

島流しにあっていたが脱獄した男4人女1人の5人組の犯罪者集団。平吉、万、向次郎、志馬垣、幸太郎という全員の名前の頭文字をとって「ヘマムシコ組」と名乗っている。全員がこの名前を身体に刺青している。脱獄した後も強奪・殺人を繰り返していたため賞金首となっている。浪人刑波之進は庶民を守りその賞金で彼らの生活を助けるため、ヘマムシコ組の首を狙う。

下苅り半次郎 (しもがりはんじろう)

遊廓の女郎たちの陰毛を剃刀で剃る職業「下苅り屋」を営む。男装しているが本当は女性である。血の道の病で、月に1度生理になると凶暴化してしまう。親の仇をとるため、己の癇性な病を克服したいと悩んでいる。偶然知り合った浪人刑波之進を頼りがいのある剣豪だと見込み、共に旅をしようと、つきまとう。 そのうち波之進と隠密組織根来黒葵との因縁を知ってしまった半次郎は、波之進の相棒として復讐の道行きに同行することとなる。

安財 数馬 (あんざい かずま)

尾張藩で1番の銃の腕前を持つ青年。政権奪還をたくらむ藩主義通により、10代将軍徳川家治を狙撃し命を奪うよう指令を受けた。主君の命令を守るため、数馬は姉と二人で狙撃場所へと向かうが、その途中で無法者の集団に姉が犯されそうになる。将軍狙撃の使命を全うするため、下手に抵抗して殺されるわけにはいかぬと、姉は自らの身体を無法者たちに捧げた。 この出来事により安財姉弟は、将軍への怨念をさらに募らせた。だが実は、無法者を使って姉を犯させたのも藩主義通による策略であった。わざと彼らを辛い目に遭わせ、将軍暗殺を確実にさせようという冷酷非道なたくらみである。

大風 生曳 (おおかぜ いきびき)

三河凧師衆のひとり。凧師衆とは、天下太平と五穀豊穣を願って大凧を舞わせる者たちの総称である。大風はその中でも評判高い名人で、急使を凧に乗せて川越えに成功したという逸話を持つ。浪人刑波之進は大風のもとを訪れ、自分を乗せて空を飛べる大凧の製作を依頼した。政権奪還を狙う尾張藩藩主義通を拉致するため、居住している名護屋城に凧で侵入しようという計画を立てたからである。

尾張大納言 義通 (おわりだいなごん よしみち)

尾張藩の藩主。隠密組織根来黒葵にそそのかされ、自らの血統こそが天下を統べる将軍にふさわしいと考えるようになり、政権奪還をたくらむ。かつて尾張藩に仕えていた浪人刑波之進から、心を入れ替え領民のための政治を行うよう何度も説得されたが受け入れず、逆賊として波之進を始末するよう根来黒葵に命令していた。 しかし刺客たちは皆返り討ちにあい、義通自身もついに波之進によって拉致されてしまった。そして、庶民の苦しい生活に触れて世間の厳しさを知るため、波之進と二人連れでの浪人旅を強制されることとなった。

集団・組織

根来黒葵 (ねごろくろあおい)

『葬流者』に登場する組織。尾張藩に仕える隠密組織。裏で暗躍し、藩の政策を陰から支える役割を担う。徳川家康から黒葵の家紋を賜っている由緒ある集団。藩主の義通をそそのかし、尾張家の政権奪取のため、以下のような計画を練った。まず300人もの無法者に根来衆の武技を仕込んでから全国に放ち、悪事の限りを尽くさせる。 その対策に幕府が追われ混乱状態に陥っている中で尾張家が救済に乗り出せば、苦せずして天下の信望が尾張家に集まり、政権を奪取できるというのだ。無法者たちを従わせるため、彼らを阿芙蓉という麻薬の中毒にし、意のままに操っている。また、根来黒葵L32の計画に反対し、脱藩して妨害を続ける浪人波之進の命も狙い続けている。

その他キーワード

安宅丸 (あたかまる)

『葬流者』に登場する軍船。最新式の砲台を装備している幕府の軍船である。幕府砲術指南の大垣天山が指揮している。浪人刑波之進と従者の下苅り半次郎は、船で遭難していたところを安宅丸に救われ、命拾いをした。しかし大垣天山は冷酷非道な人間で、砲台の威力を試すために、島流しにあっていた罪人たちを狙い撃ちし虐殺し始めた。 これに怒りを覚えた波之進は、罪人たちと協力し大垣天山ら幕府の役人どもを誅し、安宅丸を乗っ取った。

人間墓標 (にんげんぼひょう)

『葬流者』に登場する言葉。浪人刑波之進は自分自身をこう称している。波之進の身体に7人の名前が刻まれていることに由来する。波之進たち8人はもともと尾張藩に仕えるご意見番「鏡番」だった。しかし藩主義通が隠密組織根来黒葵にそそのかされ、尾張家自らが政権を奪還するため、300人もの無法者を使って全国に騒乱状態を生み出そうと計画していることを知り、絶望した。 波之進たち8人は脱藩し、悪事を働き人民をおびやかす無法者を始末しようとした。しかし根来黒葵によって波之進以外の7人は命を落とした。彼らの無念を忘れず共に闘い続ける決意の証明として、波之進は自らの身体に7人の名前を刻み、「人間墓標」と自称しているのである。

書誌情報

葬流者(ソールジャー) :男泣き時代劇名選 全4巻 小池書院〈キングシリーズ〉 完結

第1巻 さ無頼編

(2009年2月発行、 978-4862254252)

第2巻

(2009年2月発行、 978-4862254269)

第3巻 殺戮の海編

(2009年3月発行、 978-4862254320)

第4巻 島抜け船編

(2009年4月発行、 978-4862254337)

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