ドリフターズ

ドリフターズ

古今東西を問わず、ありとあらゆる地域や時代の歴史上の人物が異世界に召喚され、戦いに巻き込まれていくSFファンタジー。召喚される人物は、島津豊久をはじめとして、山口多聞、ハンニバル・バルカ、サンジェルミ伯と多種多様。本来関わるはずのなかった偉人たちが異世界に一堂に会して、時に手を組み、時には対立しながら好き放題に暴れまわる。歴史上の人物の逸話に関するネタやギャグが度々登場するため、史実を知っているほど楽しめる作品になっている。少年画報社「ヤングキングアワーズ」2009年6月号から連載。2013年「第17回文化庁メディア芸術祭」で審査委員会推薦作品に選ばれるなど、数々の受賞歴を誇る。

正式名称
ドリフターズ
ふりがな
どりふたーず
作者
ジャンル
バトル
 
ファンタジー
レーベル
YKコミックス(少年画報社)
巻数
既刊7巻
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世界観

舞台は中世ヨーロッパ以前のような文明を持った異世界。世界にはエルフドワーフ、獣人やなど数多くのファンタジー上の生物のほか、人間も存在する。基本的に互いの種族は対立しており、例えば人間はエルフのことを「耳長」と呼び、対してエルフは人間のことを「耳短か」「耳なし」などと呼び合っている。数十年前までは種族がそれぞれの領土を維持していたため、ある程度の均衡が保たれていたが、とある「漂流物」と呼ばれる人物のうちの1人が強大な国を建国したことによって均衡は崩れ、エルフやドワーフはその脅威に怯えるようにして奴隷同然の暮らしを強いられている。一方、突如出現した「廃棄物」と呼ばれる者たちも獣人らを支配下に置き、その勢力を広げつつある。

あらすじ

第1巻

西暦1600年、関ヶ原の戦いの最中、徳川軍に包囲された島津豊久は主君を逃がすために殿を買って出る。戦いの末、ふと気がつくと豊久は無数の扉が並ぶ空間にいた。さらにその空間にいた謎の男によって、豊久は異世界へと転送されてしまう。異世界で行き倒れとなった豊久が目を覚ますと、そこにいたのは織田信長那須与一だった。いずれも豊久がいた時代よりも以前に死亡しているはずの二人の姿に驚く豊久だったが、その直後、行き倒れとなった豊久を助けたエルフ達の村が襲撃されている気配を察知。豊久は信長や与一と共に、エルフの村を襲撃する人間達を撃退するのだった。十月機関オルミーヌは、そんな豊久達と接触し、彼らのように異世界から召喚された者は「漂流物」と呼ばれ、ある目的によって集められた事を告げる。しかしそれを聞いた信長は、オルミーヌに反発し、従うつもりはないと返答する。

第2巻

十月機関オルミーヌは、島津豊久達と同じ世界から召喚された者でありながら、別の役割を持つ者達もいる事を話す。彼らは「廃棄物」と呼ばれ、人間への激しい憎しみを糧とし、この世界に住む化物達を従えて進軍しているという。そしてオルミーヌは、「廃棄物」に対抗する事ができるのは、同じ世界からやって来た「漂流物」のみであると語る。その話を聞いた「漂流物」達は、織田信長の号令のもと、エルフを従えて異世界の国奪りを開始。手始めにエルフの村から簒奪を繰り返していたオルテ帝国の拠点を落とした信長は、豊久を頭目として進撃を始めていく。そこへジャンヌ・ダルクと、彼女に従うジルドレの率いる「廃棄物」の軍勢が出現。信長はエルフの力を借りて「廃棄物」の軍勢を一網打尽にするが、その中でもジャンヌとジルドレの二人だけは、信長達の想像を絶する戦闘力を見せる。

第3巻

かつて魔女と呼ばれて火炙りの刑に処せられたジャンヌ・ダルクは、謎の扉を通ってこの世界へとやって来た。人間への深い憎しみを持つジャンヌは、「廃棄物」として炎をあやつる人外の能力を身につけ、島津豊久と激闘を繰り広げる。豊久はオルミーヌの助けを借りてジャンヌを追い詰めたものの、ジャンヌが女性である事を知ると戦意を喪失し、彼女を見逃すのだった。一方、那須与一は、屈強な肉体を持つジルドレに苦戦していたが、織田信長の援軍と、彼らと同じくこの世界に召喚されて来たブッチ・キャシディサンダンス・キッドの銃火器によって、かろうじてジルドレを倒す事に成功する。信長は、キッド達と行動を共にしていた安倍晴明と出会い、改めて自分ら「漂流物」が「廃棄物」に対抗するために召喚されて来た事を伝えられる。それを受け、信長は鉄砲作りに着手。手始めに火薬の調合を成功させ、次いで鉄砲の砲身を作る技術を持つというドワーフを仲間に引き入れるべく、行動を開始する。しかし、ドワーフ達はエルフと同じようにオルテ帝国によって監禁されていた。

第4巻

オルテ帝国からドワーフを解放した織田信長は、さっそく鉄砲の量産に入る。そんな中、オルテ帝国を見限ったサンジェルミ伯島津豊久達に接触し、オルテ帝国へのクーデターを画策している事を告げる。信長はドワーフや[エルフ]達を率いてサンジェルミ伯の導きでオルテ帝国に攻め入るが、オルテ帝国の背後には「廃棄物」がいた。信長達はドワーフ製の鉄砲で戦局を優位に進めていくものの、「廃棄物」の指揮を執る土方歳三は一時的に兵を退却させ、単身で豊久との対決に臨む。激しくぶつかり合う豊久と土方だったが、決着はつかず、土方は「廃棄物」の指導者である黒王の指示で撤退する。こうしてオルテ帝国の首都、帝都ヴェルリナを陥落させる事に成功した信長達は、次にオルテ帝国と敵対関係にあるグ・ビンネン商業ギルド連合との和平工作を始める。その中には客員提督として「漂流物」の山口多聞の姿があった。大日本帝国海軍の少将だった山口の指揮による艦隊行動により、海を制覇したグ・ビンネン商業ギルド連合もまた、オルテ帝国との和平を望んでいた。

第5巻

安倍晴明の指示で黒王の動きを探っていた十月機関のメンバーは、そこで黒王達が「廃棄物」と共に化物と呼ばれる存在に文明を授け、人間の世を終わらせようとしている事を知る。清明は、人間に対する黒王の底知れぬ憎しみを知りながら、それでもなお人間のために黒王と戦い続けようと決意を新たにするのだった。その頃、オルテ帝国の首都を陥落させた織田信長は、サンジェルミ伯に指示を出し、オルテ帝国の残党狩りを始める。そこへ、長年にわたりオルテ帝国と敵対してきたグ・ビンネン商業ギルド連合を率いるバイゼルマシン・シャイロック8世が現れる。信長達は、オルテ帝国の首都を陥落させた島津豊久ら「漂流物」の力を認め、和平交渉にやって来たというシャイロックの言葉を受け、あくまでも表向きながら和平を進めていく。だが、その時すでに黒王率いる「廃棄物」と化物の軍勢は、オルテ帝国に向けて進軍を開始していた。その中にはかつて豊久と戦ったジャンヌ・ダルク土方歳三の姿もあった。

作風

太い実線と陰影を強調した迫力のある絵柄が特徴。また言語センスには独特なものがあり、西洋の古典作品や演説のような特徴的な言い回しが使われる。この独特の台詞は、単に雰囲気を盛り上げるだけではなく、言葉の裏に真実を隠した布石、伏線となることもあり、物語の盛り上がりに一役買っている。一方でギャグシーンになるとキャラクター造形を極端にデフォルメした落書きのような絵柄が用いられ、言葉遣いも非常に単純かつ下品になるため、テンションの落差が非常に大きい。特に本作『ドリフターズ』は、異なる時代、異なる地域の人物が登場するという設定の作品であるためか、個人間での常識・非常識の考え方や物事の捉え方が大きく違い、これをテーマにしている面も見受けられる。

登場人物

本作『ドリフターズ』の主要な登場人物は、ほとんどが歴史上の実在の人物をモチーフにされている。そのため、名前が明かされなくても、その人物に関係する逸話や容姿からその正体を推測することができる。また一部の登場人物同士の絡みでは、歴史上のネタが会話にちりばめられることもあり、歴史の知識があるほど深く楽しめる構成になっている。

パロディネタ

歴史上の人物が登場するという性質上、史実の歴史ネタやパロディはもちろんとして、サブカルチャーに関係するパロディが豊富に登場する。例として、織田信長に関して「空を飛んだり目から怪光線を出したりする」(元ネタはTVゲーム「戦国BASARA BATTLE HEROES」のオープニングムービー)、那須与一に関して「人物より武器のほうが有名」(元ネタは和製RPGに登場する「与一の弓」と思われる)などの発言が飛び交う。また、コミックスのカバーを外すと、表紙に必ず何らかの作品のパロディイラストが掲載されている。第1巻は『幽玄漫玉日記』、第2巻は『闇金ウシジマくん』、第3巻は『信長のシェフ』、第4巻はアーティストの「SEKAI NO OWARI」及び「サカナクション」、第5巻はTVゲーム『スプラトゥーン』が元ネタだった。

表現上の特徴

物語の舞台となる異世界に元からいた住人が使う言葉はフキダシに横文字で書かれ、また現地語と思われる文字も併記されている。この現地語について、当初は特定の文字体系ではないどころか、「せっかく連れてきてやったのに」という意味の表記が「(判読不可能)GumdamZZ」だったり、「あんたらと同じ漂流者だろ」の表記が「Super Mario Brothers」だったりと判然としなかった。後にひらがなやカタカナをアレンジした文字に統一。異世界の地図にも同様の文字が見られるようになっている。なお、後に自動翻訳を可能にする札が登場したため、会話においては、現地語セリフもあまり使われなくなっていった。

特殊な設定

ありとあらゆる時代と地域から歴史上の人物が召喚され、1つの世界に集められるという特殊な設定。召喚される人物にはある一定のパターンがあると見られており、そのパターンによって「漂流物」と「廃棄物」に区分けされている。「漂流物」は歴史上で完全に死亡が確認されないまま行方不明となった人物であり、によって異世界に召喚される者。一方の「廃棄物」は現世に強い悔恨を持ったまま壮絶な最期を遂げた人物であり、EASYによって召喚される者と定義されている。「廃棄物」はその負の念のもと、異世界のありとあらゆるものの破壊を望むとされ、「漂流物」たちは互いに協力をしてそれに立ち向かっていく。

単行本の装丁

各コミックスの巻末には、作者のあとがきとキャラクター紹介、2ページのオマケ漫画「あとがきゆかいまんが黒王様御乱心」が掲載されている。また、コミックスのカバーを外すと、表紙にはゲームやマンガ作品、アーティストなどを元ネタにしたパロディイラスト、裏表紙には「漂流物廃棄物こうほ」の紹介が描かれている。これらすべてのオマケの内容は、とにかく支離滅裂でシュールな不条理ギャグの嵐になっており、特にキャラクター紹介とオマケ漫画では、本編でシリアスな表情を見せる登場人物たちのキャラクター崩壊が激しい。その他、コミックス付属の帯には、作者平野耕太の代表作である『HELLSING』に登場したヴァレンタイン兄弟が毎回登場し、本作『ドリフターズ』に登場する人物の所属や境遇を皮肉った「ルークとヤンの猿でも分かる○○(○○にはそれぞれ登場人物に関係する出来事や所属団体が入る)」というイラストが描かれている。

コラボレーション

アーケードゲーム「戦国大戦」

2014年9月25日から稼働したアーケードゲーム「戦国大戦」バージョン3.0「戦国大戦 -1600 関ヶ原 序の布石、葵打つ-」の限定カードとして島津豊久が実装された。レアリティはSS(戦国数寄)で、本作『ドリフターズ』の名言でもある「首置いてけ!」という特殊計略を持っている。

「信長の野望・創造 with パワーアップキット」

2015年1月29にはPC用、及び各種家庭用ゲーム機用ソフト「信長の野望・創造 with パワーアップキット」とのコラボレーション企画が行われた。内容は、ダウンロードコンテンツを導入することで、本作『ドリフターズ』の作者である平野耕太が監修した島津豊久織田信長那須与一の武将データが使用可能になるというもの。また2015年3月31日には同ゲームにてコラボレーション企画第2弾が発表され、同様に黒王土方歳三ジャンヌ・ダルク安倍晴明の武将データが実装された。

タイアップ

祭り告知ポスター

2013年10月12日から岐阜県関ヶ原町で行われた祭り「関ヶ原合戦祭り2013」のポスターに島津豊久の描き下ろしイラストが採用された。また、2015年10月24日から行われた鹿児島県日置市の「妙円寺詣りフェスタ2015」のポスターにも島津豊久の描き下ろしイラストが採用された。

公式コラボカフェ「ドリフターズカフェ」

2015年3月30日には、秋葉原にあるメイド喫茶「ミアカフェ」とタイアップし、公式コラボカフェ「ドリフターズカフェ」が期間限定で開店。期間中は、カフェスタッフが本作『ドリフターズ』の登場人物に扮したコスプレをして接客。また限定グッズのついた期間限定メニューなどが販売された。

メディアミックス

2015年3月にTVアニメ化が発表され、2016年10月7日より放送。制作スタッフは、監督を鈴木健一が、脚本を倉田英之黒田洋介が、キャラクターデザイン・総作画監督を中森良治がそれぞれ務める。なお、これらのスタッフは本作『ドリフターズ』の作者である平野耕太の代表作『HELLSING』のOVA版にも関わった経験がある。

評価・受賞歴

本作『ドリフターズ』は「このマンガがスゴい!」2011年オトコ編第7位。「マンガ大賞」2011年第10位、2012年第6位。2013年「第17回文化庁メディア芸術祭」審査委員会推薦作品などの賞を獲得している。

登場人物・キャラクター

島津 豊久 (しまづ とよひさ)

目が隠れるほどの長さの黒髪短髪、ギョロリとした大きな瞳を持つ30歳の男性。「漂流物」の1人。薩摩訛りの方言を使って話す。考えるより先に体が動く、周囲の状況に関わらず自分の好きに行動するなど非常に短絡的、かつ単純な思考の持ち主。また好戦的で、特に首級を上げることには常に全力。身の丈ほどもある太刀を軽々を操り、一刀のもとに敵を両断したり高い戦闘力を持つ。 安倍晴明の名前を知らないなど知識に偏りがある一方、戦のことになると一般人をも戦に駆り立てる言動をはじめ、織田信長の戦術にも理解を示すなど高い能力を有する。実在した人物、島津豊久がモデル。関ヶ原の戦いで島津義弘を逃がすため殿(しんがり)を務め、討ち死に寸前の状態で異世界に召喚される。

織田 信長 (おだ のぶなが)

右目に眼帯をつけ、無精髭を生やし、前髪を無造作にかき上げてオールバックにした黒髪長髪の50歳の男性。「漂流物」の1人。戦術・知略に長けた人物で、銃のない時代に早くから武器の重要性を知り、オルミーヌの使う符術や通信用水晶の戦術転化を思いつき、また異世界における「漂流物」の存在意義にたどり着くなど、人並み外れた知能と観察眼を誇る。 性格は尊大にして傲岸不遜、常に人を小馬鹿にしたような態度を取るが、過去に自分の腹心である明智光秀をはじめ、多くの家臣に裏切られた経験が一種のトラウマとなっており、折に触れ自嘲気味のジョークを吐く繊細な部分もある。モデルは実在した人物の織田信長。焼け落ちる本能寺から逃げようとしたところ、異世界に迷い込んだと語る。

那須 与一 (なすの よいち)

前髪を斜めに分けて片目を隠し、長い髪をポニーテール状に結った髪型が特徴の19歳の男性。「漂流物」の1人。切れ長の目を持ち、女性と見まがうほど眉目秀麗な容姿だが、本人いわく「11人兄弟のなかで一番ブサイク」だという。史実での逸話通り弓の名手であり、正鵠を射た矢に重ねて2本の矢を命中させる人間離れした実力を誇る。歳がひと回りもふた回りも離れた島津豊久や織田信長とも同等に接するほど落ち着いた物腰の人物で、戦では奇襲や敗走兵の追撃・殲滅など、汚れ仕事を平然と行う冷徹さも持ち合わせる。 しかし、同時代に生きた源義経に出会った際は、平時の不敵な態度からは想像もできない動揺を見せた。モデルは実在した人物の那須与一。四十間(約72メートル)離れた波に漂う小舟の上の扇を、一射でしかも鏑矢で射抜いたという逸話が有名だが、本人いわくその当時は「無茶言うな」と思っていたという。

ハンニバル・バルカ (はんにばるばるか)

スキピオ・アフリカヌスとケンカしているところをカフェトに発見された「漂流物」の1人。顔に無数の皺が刻まれた老齢の男性で、逆立てた髪に顎ひげを蓄え、眼帯状に布で左目を覆っている。すでにかなりの高齢で、尿意を我慢できずに失禁したり、後にスキピオと離れてしまった時には堰が切れたようにボケてしまっている。しかし、半ばボケながらも、織田信長には思いもよらない戦術を示唆したり、非常に高い戦略眼を持つ。 モデルは実在した人物のハンニバル・バルカ。紀元前3世紀頃に生きたカルタゴの将軍で、スキピオいわく「我がローマは100万の兵も恐れないが、ハンニバルただ1人を恐れた」と言われるほどの奇才。

スキピオ・アフリカヌス (すきぴおあふりかぬす)

ハンニバル・バルカとケンカをしているところをカフェトに発見された「漂流物」の1人。半月状の丸く大きな目を持つ壮年の男性。生前の因縁のため、ハンニバルとはなにかにつけて言い争う仲だが、偉大なライバルとして敬意を払っており、失禁したハンニバルを笑った周囲の人物に対して怒りをあらわにする面もある。当初は安倍晴明ら導師結社「十月機関」とサンダンス・キッド、ブッチ・キャシディらと共にカルネアデスの北壁に身を寄せていたが、黒王軍の襲撃に遭って離脱。 その道すがら馬車から転落してしまい、はぐれた後は菅野直と行動を共にする。モデルは実在した人物のスキピオ・アフリカヌス。紀元前3世紀頃に生きたローマの軍人で、後世にまで語り継がれる戦略家であるハンニバルを破り、カルタゴとローマの戦争を勝利に導いた人物。 作中ではことあるごとにハンニバルに「パクリ」呼ばわりされるが、「最終的に俺が勝った」と張り合っている。

ブッチ・キャシディ (ぶっちきゃしでぃ)

無造作に伸ばしたボサボサの黒髪に鋭い目つきが特徴の男性。「漂流物」として召喚され、サンダンス・キッドと行動を共にする。当初は安倍晴明やカフェトら導師結社・十月機関の面々と、ハンニバル・バルカ、スキピオ・アフリカヌスらローマ陣営と共にカルネアデスの北壁に身を寄せていたが、黒王軍の襲撃を受けて撤退。 撤退戦では二丁拳銃を用いて竜相手に応戦した。非常に好戦的な人物で、「明日はなく、今日を生きる」がモットー。モデルは実在した人物のブッチ・キャシディ。19世紀後半アメリカの強盗団「ワイルドバンチ強盗団」のメンバーの1人。

サンダンス・キッド (さんだんすきっど)

中折れ帽にロングコートを着込んだ男性で、垂れ下がった目と口ひげが特徴。「漂流物」として召喚され、ブッチ・キャシディと行動を共にする。当初はブッチと同じく、安倍晴明ら導師結社・十月機関やハンニバル・バルカ、スキピオ・アフリカヌスと共にカルネアデスの北壁に身を寄せていたが、黒王軍の襲撃を受け撤退する。 その際は、一緒に召喚されたとみられるガトリング銃を用いて竜を撃破した。無鉄砲で直情的なブッチの諌め役として紳士的な態度を見せる人物。モデルは実在した人物のサンダンス・キッド。19世紀後半アメリカの強盗団「ワイルドバンチ強盗団」のメンバーの1人。

菅野 直 (かんの なおし)

黒王軍がカルネアデスの北壁に襲撃をかけている最中、戦闘機に乗ったまま異世界に現れた人物。日の丸徽章の付いたパイロットスーツにパイロット帽の出で立ち。異世界に召喚されて早々、街を焼き払う黒王軍を見て敵と判断し、攻撃を加えた。非常に気性が荒く、「コノヤロウ」「バカヤロウ」が口癖。とにかく目に入ったものすべてにケンカを売っていくという無軌道で暴力的な人物。 カルネアデスの戦いの後はどこかに不時着し、そこに暮らす犬人を従え「空神様」と呼ばれる。モデルは実在した人物の菅野直。第二次世界大戦において「撃墜王」と呼ばれるほどの戦果を残した軍人。

山口 多聞 (やまぐち たもん)

異世界に空母「飛龍」と共に召喚された、垂れ目気味の小さな目を持つ男性。常に軍服、軍帽をかぶっている。座礁した飛龍の中で寝泊まりをしながら、グ=ビンネン商業ギルド連合の客将として、軍の編成や戦略にアドバイスをする代わりに食料などの支援を受けている。心の底からグ=ビンネンのことを信用してはおらず、幾たびもにわたる飛龍の受け渡し要請にも一切応じる気配を見せない。 モデルは実在した人物の山口多聞。第二次世界大戦期に生きた軍人で、本作『ドリフターズ』中での肩書きは特進前の少将となっている。

サンジェルミ伯 (さんじぇるみはく)

オルテ帝国の4分の1の領土を所有する大貴族。見た目は立ち上げた前髪とカールがかった長い金髪、頬の濃いチークが特徴のオカマ。元々オルテ帝国が建国される前からその地を治めていた領主だったが、国政に反旗を翻したチョビ髭に与し、オルテ帝国の礎を築いた。非常に鋭い先見の明を持ち、エルフの反乱に対する軍議の反応で早々にオルテ帝国の崩壊を予知。 側近であるアレスタとフラメーを連れて島津豊久ら「漂流物」につこうと接触を図る。モデルは実在した人物のサンジェルマン伯爵。18世紀に生きたとされる人物で、不老不死伝説を持つ。作中でも50年前のオルテ建国から生き、現在の若さを保っていることに疑問を持たれている。本作『ドリフターズ』中では「セントジェルム伯」「セントジェルミ伯」とされることもある。

アレスタ

サンジェルミ伯の側近の1人。大きく突き出した前髪、星型や渦巻き型のチークが特徴のオカマ。島津豊久ら「漂流物」と手を組む算段をつけるためにそのもとを訪れつつ、「力試し」と称して豊久に襲い掛かった。細い剣を二刀流で扱う剣術を使い、その実力は豊久をして「鋭い剣筋」と言わしめるほど。しかし決着をつける前に、ハンニバル・バルカの姿を見て腰を抜かした。 好みのタイプは「ヒゲで歴戦のナイスシルバー」。

フラメー

サンジェルミ伯の側近の1人。四方八方に大きく立ち上げた前髪と、月型のチークが特徴のオカマ。アレスタと共に島津豊久らに力試しを申し込むが、アレスタと異なり、そもそも攻撃を仕掛ける前に那須与一を見て腰を抜かした。好みのタイプは「片目隠れホーステールの少年」と語る。

黒王 (こくおう)

「廃棄物」、及びゴブリンやコボルトなど見た目の醜悪な亜人種を従える。自身も「廃棄物」。全身をマントで覆い、頭にはフードを深くかぶっており、素顔は不明。人間に強い憎しみを抱いており、異世界のすべてを滅ぼし、人間以外で構成される世界に作りかえようとしている。手のひらにはかつて穴が穿たれたような傷跡があり、またトンボの装飾のついた杖を持つ。 触れただけで傷を治す力や、数粒の麦を瞬く間に一面に盛り重なるほどの量に変える特殊な能力を持つ。これらはすべて生命の力を増幅させる力によるものであるという。

土方 歳三 (ひじかた としぞう)

黒王軍に所属する「廃棄物」の1人。センター分けにした黒髪と鋭い目つきが特徴の男性。あまり言葉を発さない寡黙な性格。刀を武器に使い、カルネアデスの北壁の城門扉を瞬時に斬りさくなどその実力は計り知れないものがある。また、新選組の霊魂のようなものを呼び出して使役することができ、その攻撃は実態をもって相手にダメージを与える。 生前の因縁からか、薩摩人というだけで憎しみの対象となり、島津豊久と対峙した時は、普段見せない感情を露わにした。モデルは実在した人物の土方歳三。幕末に生きた新選組の副長で、非常に規律に厳しく、また高い剣の実力を持つことから「鬼の副長」と呼ばれ恐れられた。

ジャンヌ・ダルク (じゃんぬだるく)

ベリーショートの髪型ときつい目元を持ち、十字の意匠をふんだんに盛り込んだ甲冑を着込んだ女性。世界と人類への非常に強い憤怒を抱えており、好戦的な性格を持つ。炎を現出させ意のままに操る特殊能力で、対峙した島津豊久を一時は追い込むものの、その決死の攻撃により水の張った井戸に落とされ、能力を一時的に封印されてしまう。さらに、豊久に「女の首級は手柄にならん」と見逃されたことを情けをかけられたと勘違いし、豊久のことを自分が殺すべき相手として憎むようになる。 モデルは実在した人物のジャンヌ・ダルク。15世紀のフランスでイングランドとの戦争の旗頭に立った女性軍人で、イングランドとの戦争を勝利に導いた。しかし、その後異端の嫌疑をかけられ民衆が見守る中、火刑に処される。 作中では、その処刑中にEASYに招かれ「廃棄物」となる。

ジルドレ

腰ほどもある長い髪に長身痩躯、首輪と手かせを付け、それらを鎖でつないだ特異な出で立ちの男性。また全身にはラテン語で書かれた文章と十字をモチーフにした入れ墨が入っている。主にジャンヌ・ダルクと共に行動する。長大な十字槍を使った近接戦闘を得意とし、一薙ぎで城壁を斬り裂く怪力を誇る。また「廃棄物」としての特殊能力か、全身を矢で貫かれても、半身を失っても死亡しない。 モデルは実在した人物のジル・ド・レ。15世紀のフランスに生きた軍人で、イングランドとの戦争においてジャンヌ・ダルクと肩を並べて戦った人物。作中では、聖人であったはずのジャンヌが処刑されたことに絶望し、その後は自らも罪を重ねることを決意し、悪の道におちる。

アナスタシア・ニコラエヴァ・ロマノヴァ (あなすたしあにこらえゔぁろまのゔぁ)

憂いを帯びた細い目を持ち、真っ白な修道着のようなドレスをまとった女性。腕一つ動かさずにあたり一面を氷土に変え、人間をも凍りつかせる力を持つ。「廃棄物」であるが、同じ陣営のジャンヌ・ダルクには厳しくも優しく接し、島津豊久に敗れたジャンヌに同情し怒りを覚える一面もある。一方で、戦は苦手と語っている。また、ラスプーチンからは「皇女様」と呼ばれ、付き従われている。 モデルは実在した人物のアナスタシア・ニコラエヴナ。生前からラスプーチンとは親交があった。

ラスプーチン

黒王の側近を務める「廃棄物」の男性。黒王軍の情報管理及び直接的な指揮を行っている他、亜人たちに宗教概念や統一文字の概念を植えつけるように働きかける役割を持つ。幅の広い帽子をかぶった黒髪長髪の男性で、切れ長の瞳で丸いメガネをかけている。モデルは実在した人物のグリゴリー・ラスプーチン。19世紀末頃に生きたロシアの僧侶で、亜人たちへの布教を「本職」と語る。 生前からアナスタシア・ニコラエヴァ・ロマノヴァとは親交があり、「皇女様」と呼んで付き従う。

源 義経 (みなもとの よしつね)

異世界において、特異な立場を持つ人物。主に黒王軍と行動を共にしているものの、自ら「面白いほうに付く」と公言しており、黒王からも「お前は漂流物か廃棄物か」と問われるほど、立ち位置がはっきりしていない。容姿は若く、腰のあたりで茶筅状に結った長い黒髪を持つ。現実世界で因縁のあった那須与一には、「化け物」と評されている。 モデルは実在した人物の源義経。

明智 光秀 (あけち みつひで)

異世界に召喚され、倒れていたところを源義経に発見された人物。頬のこけた細長い顔に半目がちの細い目をした男性。召喚された後は黒王軍に身を寄せ、帝都ヴェルリナの攻防戦の様子を伺っていた。この時、「漂流物」側に織田信長がいることを知り、黒王軍に与することを決意する。モデルは実在した人物の明智光秀。 戦国時代に生きた武将で、織田信長のいる本能寺を火攻めにした逸話は有名。島津豊久によれば現実世界では「伏見で農民の落ち武者狩りにつかまり斬首された」とされている。

安倍 晴明 (あべの はるあきら、あべの せいめい)

導師結社「十月機関」の長を務める人物。黒髪に切れ長の大きな瞳、左目の下にある泣きぼくろが特徴の男性。元々現実世界の人間であり、「漂流物」であったが、異世界に来て「廃棄物」の脅威を知り、自分が「この世界で廃棄物を滅ぼすために存在した」者であると確信する。以降「十月機関」を結成して、部下に「漂流物」の監視と管理をさせる傍ら、導術を教えながら過ごしてきた。 見た目は非常に若く20~30代に見えるが、カフェトによれば中身は83歳のおじいさんだという。「漂流物」でありながら、紫について何かを知っている風な素振りを見せる謎めいた人物。モデルは実在した人物の安倍晴明。平安時代に生きた陰陽師であり、超が付くほどの有名人。 彼を知らない島津豊久は織田信長に「残念な子」扱いされることになった。

オルミーヌ

導師結社「十月機関」の一員。金髪ツインテールにメガネをかけた巨乳の女性。安倍晴明の指示で、織田信長や那須与一、また島津豊久の動向を密かに監視していたが、監視がバレてしまい、強制的に接触することになった。その後、正体を明かしてそのまま行動を共にする。特殊な術を使うことができ、符を貼った場所から任意のタイミングで巨大な石壁を生えさせることができる。 「十月機関」のなかでも潜在的な能力は高いと評されており、特に石壁を作り出す術に限っては並ぶものがいないと安倍晴明から太鼓判を押されるほど。主張の激しい胸のせいで、信長からは「オッパイーヌ」「オルミー乳」などと言われ、まともに名前を呼んでもらえることがない。 果ては同じ機関に所属するカフェトにすら、その特徴を「オッパイメガネ」と評されたこともある。

カフェト

導師結社「十月機関」の一員。横分けにした金髪の前髪にメガネをかけた若い男性。「漂流物」であったハンニバル・バルカとスキピオ・アフリカヌスを発見して保護し、カルネアデスの北壁に連れて行った。安倍晴明とは同じ機関に所属する上司と部下の関係でありながら敬語を使わずに接し、オルミーヌのことを「オッパイメガネ」と評するなど、真面目そうな見た目とは裏腹にかなり砕けた性格を持つ。

黒髪の導師 (くろかみのどうし)

導師結社「十月機関」の一員。ドグと共に、カルネアデスの北壁を占領した黒王軍の動向を探っており、知能の低いはずのゴブリンたちの生活様式が劇的に変化したのを受けて、内情を偵察しに潜り込んだ。一時は源義経に正体を見破られて死の危機に直面するも、安倍晴明の術によって逃げ出すことに成功する。

(むらさき)

紫の廊下にいる謎の男性。斜めに分けた前髪に分厚いスクエア型のメガネをかけ、大きさの違う同心円が重なった独特の瞳を持つ。手元にある書類には「漂流物」の名前が記されており、その書類になんらかのサインをすることで、異世界に「漂流者」たちを送っている。廊下の真ん中にある紫の机から動かず、最低限の言葉しか発しない非常に不愛想な人物で「漂流物」が来ても眉一つ動かさない。 しかし、紫の新聞に島津豊久の活躍が報じられた際には、軽く笑みを浮かべるような様子も見られた。何らかの理由でEASYとは対立しており、顔を合わせると殊更に不愛想な対応をする。

EASY (いーずぃー)

現実世界の人物に接触して、「廃棄物」として異世界に送り込んでいる少女。長い黒髪に吊り上がったきつい目つき、ゴシック風のドレスシャツにネクタイを着用している。紫が紫の廊下から動かず、やってきた「漂流物」に対して事務的な対応をするのとは逆に、「廃棄物」を召喚する際には自ら現実世界に通じる扉を開き、対象の人物を異世界へと招く。 何らかの理由で紫とは対立しており、何かにつけては紫の廊下に赴いて挑発的な態度を取るが、軽くあしらわれている。紫とは違って表情は豊か。

マーシャ、マルク

森で行き倒れていた島津豊久を織田信長や那須与一らのいる廃城まで運んだエルフ族の兄弟。名前はわかっているものの、兄と弟、どちらがマーシャでどちらがマルクなのかは不明。兄のほうは目元にそばかすがある。代々長命で成長の遅いエルフ族のため、見た目は少年であり、精神的にもまだ未熟だが実年齢はそれぞれ39歳と36歳。 豊久はこれを聞き、彼らが「年上」であることにショックを受けていた。

シャラ

アラムに殺されたエルフの村長の息子であり、マーシャ、マルクの兄。見た目は青年だが、すでに106歳。オルテ帝国に村が滅ぼされるかもしれないという危機感と、島津豊久の檄を受けて、オルテ帝国への反逆を決心。エルフ族の平和と権利を守るため、エルフ族代表の1人として戦線に立つ。

フィゾナ

左頬に大きな傷を持つ、エルフ族の青年。シャラたちが「漂流物」の助けを得てエルフの女性らを助け出したことを知り、島津豊久ら漂流物と共闘すべく村の男たちを集めて合流した。シャラとは知己であり、以降はシャラと共にエルフの兵の中心となる。

ミルズ

オルテ帝国のエルフ族占領土政庁「下見の塔館」で働いていた男性。七三に分けた黒髪に、メガネをかけている。「下見の塔館」で働く者がエルフらに処刑されるなか、捕らえたエルフの女性らに乱暴を働かなかったことを訴え続け、1人だけ命を助けてもらう。その後は廃城に留まり、島津豊久ら「漂流物」の物資管理や黒色火薬の作成・運搬指揮を行うなど、オルテ帝国時代と同じ事務仕事を任されている。 なお、「下見の塔館」襲撃事件の際の必死の命乞いにより、エルフらからは「童貞」「童貞人間」と呼ばれ、エルフの女性らからは忌避されてしまっている。

バイゼルマシン・シャイロック8世 (ばいぜるましん・しゃいろっくはっせい)

グ=ビンネン商業ギルド連合を束ねる人物の1人。肩書きはシャイロック商会およびシャイロック銀行大番頭、グ=ビンネン連合水軍水師。褐色の肌に大きな瞳を持つ若い男性で、表面的には表情をころころと変えて明るい態度を見せるが、実際は打算的で観察眼に優れる人物。「放蕩 なれど出来息子」と評される。

ナイゼル・ブリガンテ (ないぜるぶりがんて)

グ=ビンネン商業ギルド連合を束ねる人物の1人。肩書きはブリガンテ商会主席手代、ブリガンテ銀行番頭、連合水軍軍監師。鼻筋の通った頬のこけた顔に口ひげを蓄えた、細く厳しい目つきの男性。言葉遣いは丁寧だが、どんな言葉を話す時も表情一つ変えずに冷徹な印象を与える。「頭を冷たくし、心はなお冷たくし」と評される。

島津 義弘 (しまづ よしひろ)

島津豊久の伯父にあたる人物で、豊久が17歳の頃に実父である島津家久が死んだのち、養父として豊久を育てたとされる。作中では関ヶ原の合戦で退却を余儀なくされ、豊久と共に逃げようとしたが、豊久自身から「伯父上は逃げてくれ」と言われたのに対し、「必ず生きて薩摩に戻れ」と返してその場を後にした。

井伊 直政 (いい なおまさ)

関ヶ原の合戦にて島津軍の追撃を行い、「捨て奸(がまり)」として殿(しんがり)を務めた島津豊久と対峙した武将。鬼気迫る豊久の決死の奮戦により、不意を突かれて銃で撃たれ、撤退した。

エルフの村長 (えるふのむらおさ)

廃城の近くにあったエルフの村の長。村人であるマーシャ、マルクが「漂流物」と関わった件を罪に問われ、アラムをはじめとするオルテ帝国領主軍に攻め込まれた際、その罪を見逃してもらおうと嘆願した。しかし、その思いは聞き入れられずアラムによって斬り捨てられる。

アラム

マーシャ、マルクが島津豊久を助けたことを聞き、エルフの村に押し入ったオルテ帝国軍の指揮官。眉がなく眉骨の盛り上がった厳しい目つきが特徴。エルフをまるで奴隷のように扱い、罪を犯した罰として村人たちを処刑した。その後、島津豊久を相手に一合交えるも組み伏せられ、戦意を失ったところでエルフたち数人の手でめった刺しにされ、死亡する。

スティーヴン・ジョンソン (すてぃーゔんじょんそん)

島津豊久の次に紫の廊下に足を踏み入れたアメリカの陸軍兵士。1971年12月11日に死没したとされる人物。なお、本編では紫の廊下に出現して以降出番はない。

チョビ髭 (ちょびひげ)

物語開始より60年ほど前に突如現れ、オルテ帝国の建国を主導した人物。肖像画にはぴっちりと横分けにした前髪と、鼻の下に生やしたチョビ髭が特徴の人物が描かれる。ある日突然酒場に現れ、天才的な演説と人心掌握術を以って人々を扇動して当時の国の首都に攻め入り、新たに国を成した。その手法は手慣れたものであるかのようだったと語られている。 オルテ帝国を建国した後、すぐに自殺するという謎の結末を迎えている。

ドグ

導師結社「十月機関」の一員であり、冒険者ギルドにも所属する人物。頭部から耳が生えた獣人族であり、顔には左頬でクロスする十字の模様がある。

青銅竜 (せいどうりゅう)

異世界で力を持つといわれる六大竜のうち、末席にその名を刻む巨大な竜。全身が青銅の表皮に包まれた威厳のある容姿をしている。黒王軍が飛竜を手なずけていることに不満を持っており、威圧するため、黒王のもとに現れる。しかし、生命を無限に増殖する黒王の力によって体中の細胞が異常活性し、全身を腫瘍で覆われた醜い姿になり果てる。 その際、黒王から「戦列に加わるか、死を選ぶか」の選択を迫られ彼に屈する。

レメク

オルテ帝国西部に拠点を置く、第四軍を指揮する将軍。織田信長の計略に嵌り、帝都ヴェルリナに向かう最中、同じオルテ帝国の第三軍による襲撃に遭い、あえなく死亡する。

ジグメンテ

オルテ帝国西部に拠点を置く、第三軍を指揮する将軍。禿頭に眉のない目つきをし、大きな図体を持つが、頭が切れ、用心深い性格の人物。織田信長の計略に嵌り、同じくオルテ西部を守備する第四軍のレメク将軍を殺害。その後、帝都ヴェルリナに向かうところを那須与一に狙撃され、死亡する。

アメーショ

猫人で一番の勇将と謳われる人物。オルテ帝国に対抗するために犬人と手を組むか否かという交渉の席に現れるも、「空神様」と呼ばれる菅野直の無礼で無防備な姿に苛立ちを覚え、語気を荒げた。しかし、直によって文字通り猫のように鼻をつつかれ、喉元を掻かれたことで懐柔されてしまう。

アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ

廃棄物。金髪で冷淡な表情をした女性。最後のロシア皇帝ニコライ2世の娘で、帝政ロシア末期の皇女。敵の軍勢を瞬時に凍らせ壊滅させうるほどの吹雪を操る。モデルは実在人物アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。

集団・組織

十月機関 (おくときかん)

安倍晴明が組織した導師の結社。異世界を滅ぼそうとする「廃棄物」に対抗するため、「漂流物」たちを監視、または管理してサポートする役割を果たしている。構成員は大なり小なり導術を使うことができる他、晴明の陰陽術を利用して作ったさまざまな魔法アイテムを有する。また「廃棄物」の脅威に対抗するため、異世界に住む人間たちとも積極的に接触・交渉を図り、時には「漂流物」との仲立ちをすることもあるが、基本的に武力的・政治的な介入は一切行っていない。 そのため、オルテ帝国によるドワーフやエルフへの非人道的行為も知りながら黙認していた。

テーバイ神聖隊 (てーばいひえろすろこす)

サンジェルミ伯が持つ選りすぐりの最強戦力軍。筋骨隆々の男性の同性愛者ばかりで構成された軍隊であり、通常の軍隊以上に高い結束力を誇る。なお、「テーバイ神聖隊」というのは、ハンニバル・バルカが端的に軍隊の構成をたとえた言葉であり、正式名称ではない。本来の「テーバイ神聖隊」は、古代ギリシャのテーバイという都市で、同様に同性愛者ばかりで構成された軍隊の呼称である。

黒王軍 (こくおうぐん)

「廃棄物」である黒王が指揮する軍団。ジャンヌ・ダルクやラスプーチンら「廃棄物」を将に、ゴブリンやコボルト、オークなど亜人の中でも容姿が醜く、人間扱いされていない化け物たちを兵として構成されている。のちに支配下に置いた青銅竜の体皮をはいで装備を整え、巨人やケンタウロスなどの新たな亜人を加えて徐々に拡大しつつある。

場所

紫の廊下 (むらさきのろうか)

「漂流物」が異世界に飛ばされる前にたどり着く謎の場所。白い石造りの長い廊下に、壁一面にさまざまなデザインの扉が備え付けられた風景で、廊下の中央には紫の机に座った紫がいる。この場所に送られてくる人物はある程度順番が決まっているようで、紫の手元には、今来ている人物の来歴と次に訪れる人物の来歴などが記された書類がある。

EASYの部屋 (いーずぃーのへや)

どこか異世界にあるEASYの部屋。扉や壁、床までもが白と黒が交互に配置されたタイルパターンで構成されており、部屋の中には中世ヨーロッパ風の家具やぬいぐるみが置かれた少女趣味なデザイン。また部屋の中央にはノートパソコンが置かれており、異世界での出来事や「漂流物」、「廃棄物」の動向がメールで届く。部屋の扉には看板が掛けられており、そこには「E.A.S.Y」という大きな文字と、その下に「Eternal Anti~(以下判読不能)」という記述が見える。

廃城 (はいじょう)

傷を負った島津豊久が異世界に召喚された際、マーシャ、マルクによって運び込まれた、中世ヨーロッパ時代のような石造りの建築。すでに召喚されていた那須与一と織田信長が根城にしており、ここで3人が出会うことになる。これを理由に、彼ら3人は漂流物の中でも「廃城の3人」と称されることとなる。

エルフの村 (えるふのむら)

廃城の近くにあったエルフたちが住む集落。領主から、森に入ること、弓を作ること、「漂流物」と関わることを禁じられていたが、それを村人であるマーシャ、マルクが破ってしまったため村人全員が処罰の対象となり、オルテ帝国軍の襲撃を受ける。アラムを含む先遣隊の魔手から一度は島津豊久ら「漂流物」によって救われたものの、のちに本隊の追撃に遭い、戦場となった。

カルネアデスの北壁 (かるねあですのほくへき)

カルナデス王国の北方、国境線にある長大な砦。非常に堅固な守りを誇っており、北方からの異民族の侵攻に対し、数百年以上国土を守り通した。しかし、黒王によって編成・指揮された黒王軍の前に為す術もなく崩壊する。単に「北壁」とだけ呼ばれることもあるほか、「カルナデスの北壁」と呼ばれることもある。

カルナデス王国 (かるなですおうこく)

異世界に存在する国の1つ。カルナデスの民と呼ばれる褐色の肌の人間が統治している。異民族、とりわけオークなど獣人の住処と隣接しているものの、その境界線にカルネアデスの北壁と呼ばれる長大な砦を擁しているため、数百年間の長きにわたって国土への侵攻を許していない。しかし、その守りの堅さゆえに兵たちの慢心は著しく、黒王軍によって攻め入られた際には為す術なく陥落してしまう。

オルテ帝国 (おるてていこく)

異世界で巨大な領土を誇る国の1つ。数十年前にチョビ髭が建国したもので、エルフやドワーフ、ホヴィットといった亜人の領土を支配下に置きながら瞬く間に一大国家となった。しかし、領土がむやみに広大になったことに加え、国境間では他国や他部族との争いが絶えず、全盛期に比べると現在はかなり国力が疲弊している。

帝都ヴェルリナ (ていとゔぇるりな)

オルテ帝国の首都。大きな中世ヨーロッパ風の城塞と、それに連なる城下町からなる街で、オルテ帝国の主要人物が集まっている。街は広大で作りは立派だが、若い男性は各地の前線に送られ、また度重なる戦への物資供給が強要されたこともあり、首都でありながらかなり寂しい風景が広がる。

下見の塔館 (したみのとうかん)

オルテ帝国内で元々はエルフの国土があった部分に存在する館。「エルフ族占領土政庁執政代官城館」と位置づけられている。オルテ帝国の執政官がいる場所であり、エルフ族の繁栄を阻止するため、エルフ族の女性は全員城内の塔に監禁されている。一揆を企てたエルフたちが、島津豊久ら「漂流物」と共に、自分たちの権利を取り戻すために攻め入った。

ガドルカ鉱山 (がどるかこうざん)

かつてはドワーフが住む地だったが、現在はオルテ帝国に占拠され、大兵廠となっている鉱山。オルテ帝国最大の兵器廠であり、それゆえに堅い守りが敷かれていたが、島津豊久ら「漂流物」とエルフの一揆によって火の海になった。

マモン間原サルサデカダン (まもんかんげんさるさでかだん)

オルテ帝国の西に存在する山間の平原。オルテ帝国が建国される前に砦が設けられていた場所であり、帝都ヴェルリナに向かう黒王軍を止めるため、迎撃の地として織田信長が選んだ。

グ=ビンネン商業ギルド連合 (ぐびんねんしょうぎょうぎるどれんごう)

オルテ帝国から離れた海上の島嶼に存在する国家。7つの商業ギルドが連合を組んで国家体制を維持している。国是は「貧乏人に戻りたくないだろう?ならば剣を取れ」。

ラ・ズナ土候国 (らずなどこうこく)

カルネアデスの北壁の南に位置する小国。いくつもの小部族の集まりからなる国であったが、導師結社「十月機関」から黒王が南進することを聞いても、「漂流物」に指揮権を譲ろうとしなかった。結果、南進した黒王軍に国土を蹂躙されることとなる。

その他キーワード

漂流物 (どりふ)

現実世界から異世界に迷い込んだ歴史上の人物たち。現実世界で死没したとされるものの確たる証拠がなく行方不明とも言える点、紫によって召喚されている点、ジョークを飛ばしたりするほどの理性と正常な思考を持つ点が共通項として挙げられる。行方不明となった年代と異世界に飛ばされる時間には関連性がない。オルテ帝国を建国したという「チョビ髭」や「安倍晴明」も漂流物であったことから、少なくとも数十年前には異世界に「漂流物」が現れていることが分かる。

廃棄物 (えんず)

現実世界から異世界に迷い込んだ歴史上の人物たち。現実世界で非業の死を遂げた点、EASYによって召喚されている点、異世界において生前の妄執にとらわれ、正常な思考ができなくなっている点などが共通項として挙げられる。また「廃棄物」には、生前の逸話などに絡んだ特殊能力が付与されていることが多い。異世界には過去にも何度か「廃棄物」が現れた形跡があり、その度に世界は危機に瀕したという。

エルフ

異世界に存在する亜人の一族。人間に比べて耳が長く、種族の特性として男女を問わず見目麗しい容姿をしている。またかなりの長命であり、まだ少年のように見えるマーシャ、マルクですら39歳と36歳。青年のように見えるシャラに至っては106歳である。オルミーヌによると、人間の5~6倍ほどの長さを生きるという。かつては自分たちの領土を持ち暮らしていたが、オルテ帝国に攻め入られて支配下に入り、奴隷のような生活を送っていた。

ドワーフ

異世界に存在する亜人の一族。人間に比べて低身長だが、種族の特性として、エルフいわく「野卑で乱暴で野蛮。髭ぼうぼうで汚く、臭く、大飯喰らいの大酒飲み」だという。他に筋骨隆々の体躯と、冶金術に長けるのが特徴。織田信長が初めて種子島鉄砲を見せた時には、「現物があれば同じものを作るのは容易い」と言い切った。元々ガドルカ鉱山に住んでいたが、オルテ帝国に占領され、そこで鉱夫として奴隷同様の扱いを受けていた。 島津豊久ら「漂流物」とエルフに助けられて以降は、元々険悪であったエルフ族とも手を組み、協力するようになる。

ゴブリン

異世界に存在する亜人の一種。オークのように巨大な体躯を持ち、毛髪はなく、頭に角状のこぶがある他、口からはみ出るほど大きな牙を持つ。黒王軍では前衛の重歩兵隊として使役されている。

コボルト

異世界に存在する亜人の一種。人間に比べて全体的に小さな体躯で、鼻と口は犬のように少し前に突き出て、小さく尖って上を向いた鼻と横に裂けた口を持つ。目はギョロリと大きく丸いのが特徴。エルフや人間が話すのとは別の言語を用いる。

オーク

異世界に存在する亜人の一種。豚のような顔を持った二足歩行の生物で、腹の突き出た大きな体躯を持つ。エルフや人間、またコボルトとも異なり、「ピギャ」「ギュア」という鳴き声に近い言語で意思疎通を行う。

ケンタウロス

異世界に存在する亜人の一種。人の上半身と馬の下半身を持ち、頭部には馬のような鬣を持ちつつ、鼻と口が前に突き出た異様な顔面をしている。黒王軍によって騎馬隊として調教され、軍馬として使われる。

巨人 (きょじん)

異世界に存在する亜人の一種。顔面だけでコボルトの身長と張り合うほどの巨体を持つ部族。黒王軍の配下に加わり、ただれた青銅竜の体皮で作った鎧を身にまとい、背にゴブリンやコボルトを乗せた生体攻城兵器として戦場に立つ。

(りゅう)

異世界に存在する生物の一種。いくつかの種類に分かれているが、単に「竜」という場合は飛竜を指す。飛竜は伝説に語られる、いわゆる西洋風の竜そのままの姿をしている。胴体部のみで菅野直が乗る戦闘機と同等の大きさを誇り、人やコボルトを背に乗せたまま飛ぶことができる他、口から炎を吐き出して攻撃することも可能。

グリフォン

異世界に存在する生物の一種。人を背に乗せて飛ぶ事ができるほどの巨体を持った怪鳥。グ=ビンネン商業ギルド連合が山口多聞の提案に乗って航空隊を編成した際、その乗り物として使役されている。

犬人 (いぬびと)

オルテ帝国の北方に暮らす部族。犬のような顔を持ち、手や足が毛深い体毛に覆われた種族。戦闘機に乗って空から飛来し、好き放題に暴れまわる菅野直のことを「空神様」と崇め、つき従う。

猫人 (ねこびと)

オルテ帝国の北方に暮らす部族。猫のような顔を持ち、手や足が毛深い体毛に覆われた種族。犬人と対立を続けていたものの、オルテ帝国に対し善戦をしていることから共闘交渉の席に着いた。その場で、菅野直のことを「空神様」と呼ぶ犬族の姿に呆れるも、彼に懐柔され共闘を決意する。

石の壁 (すとーんうぉーる)

オルミーヌが使う妖術。呪文を書いた符を用い、符を貼った場所から高さ3メートル以上の分厚い石の壁を生やすことができる。石の壁を出すタイミングは自在に操ることが可能で、先に地面に符を貼っておき、任意のタイミングで出現させるという罠のような使い方もできる。オルミーヌはこれを攻撃から守るための術としか考えていなかったが、島津豊久には射出台や敵を誘い込んで閉じ込める罠として、またハンニバル・バルカには、高い城壁を乗り越える階段として利用された。 こういった攻撃的な符術の使い方に、オルミーヌは多少不満を持っている様子。

紫の机 (むらさきのつくえ)

紫が座っている机。紫の廊下にあるもので、机には乱雑な書類と電気ポットらしきもの、また順番待ちのための整理券配布機が備えられているほか、昼休み休憩の時にかける札がある。また机の横面にはプレートが備えられており、それぞれ「U.B.J UNION」「GRAND. APR」「(判読不可)~OF POWER CONSOLE」「Social infinity terminal unit」などの記述がある。

自動翻訳札 (じどうほんやくふだ)

安倍晴明が作った札。この札を体の一部に貼り付けることで、別の言語を用いるもの同士でもお互いの言葉が通じ合うようになる。しかし、那須与一らに使用するときに「サムライっぽい人」用の札を探していたことから、対応する言語は札の種類によってある程度限られる様子。織田信長いわく「陰陽道っぽい」デザインの札だという。

通信用水晶球 (つうしんようすいしょうきゅう)

2つの水晶で1つのセットとなっており、互いの水晶を通じて、音や会話をやり取りすることができる。それまでは「日々の研究や報告をすぐに共有できる便利なもの」程度にしか扱われていなかったようだが、織田信長の発想の転換により、のちに戦況報告や戦術伝達用のものとして使われることなる。

飛鷹、隼鷹 (ひよう、じゅんよう)

グ=ビンネン商業ギルド連合が擁する2隻の船の名称。山口多聞が提案したグリフォンによる航空爆撃部隊の発進と着艦を可能にするため、広く平らな甲板を持つ。

廃城の石碑 (はいじょうのせきひ)

廃城の近く、元々廃城の遺構があった場所に建てられている石碑。「織田信秀」と「島津家久」の名が刻まれている。

書誌情報

ドリフターズ 7巻 少年画報社〈YKコミックス〉

第1巻

(2010-07-07発行、 978-4785934071)

第2巻

(2011-10-13発行、 978-4785937140)

第3巻

(2013-03-18発行、 978-4785950439)

第4巻

(2014-10-27発行、 978-4785954369)

第5巻

(2016-06-06発行、 978-4785957902)

第6巻

(2018-11-30発行、 978-4785963446)

第7巻

(2023-08-10発行、 978-4785974978)

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