あらすじ
ジュウと雨の出会い
複雑な家庭に育ったため、不良少年を演じている柔沢ジュウは、できるだけ他者とかかわらないように毎日を過ごしていた。そんなある日、ジュウは見知らぬ少女から呼び出される。「堕花雨」と名乗るその少女は、前世で国を治めていたジュウの下僕だったと告げ、現世でも彼の役に立ちたいと訴える。そして雨は、ジュウに激しく付きまとうようになる。ジュウから何度も突き放されても忠誠を誓い続ける雨に対して、最初は気持ちが悪いと感じていたジュウだったが、少しずつ彼女に心を開いていく。
連続通り魔事件の犯人を捜すジュウ
クラスの学級委員長・藤島香奈子は、素行の悪い柔沢ジュウにたびたび注意をしていた。そんな中、香奈子の将来の夢を聞いたジュウは自らの中途半端さが彼女をいら立たせていることを知り、彼女に敬意を払うようになる。こうしてジュウは香奈子と少しずつ距離を縮めていくが、そんな中、香奈子は近隣で多発している連続通り魔事件の被害者になってしまう。殺害された香奈子の第一発見者になったジュウは、彼女の無念を晴らすために犯人を見つけることを決意する。雨といっしょに犯人の手がかりを探す中、ジュウは見知らぬ人物から公園に行くようにうながされる。公園では人に危害を加えようとする賀来羅清の姿があった。
美夜の過去
賀来羅清は連続通り魔事件の重要参考人として、身柄を拘束された。これで事件は解決したと柔沢ジュウは安堵し、堕花雨と共に平穏な日常に戻っていた。そんなある日、沙月美夜はジュウを視聴覚室へ呼び出す。そこにはいつもと変わらない様子の美夜の姿があったが、美夜はなぜジュウを呼び出したのかをどうしても語ろうとはしなかった。
メディア化
小説
本作『電波的な彼女』は、片山憲太郎の小説『電波的な彼女』を原作としている。原作小説版は、片山憲太郎が集英社「第3回スーパーダッシュ小説新人賞」に応募したもので、当時のタイトルは『電波日和』だった。旧版は集英社「スーパーダッシュ文庫」、新装版は集英社「ダッシュエックス文庫」から刊行されている。イラストはいずれも山本ヤマトが担当している。
アニメ化
本作『電波的な彼女』は、2009年に山本ヤマトの『紅 kure-nai』のコミックス第3巻および第4巻の予約限定版に付属するOVAとしてアニメ化された。アニメーション制作はブレインズ・ベースが担当している。キャストは、柔沢ジュウを細谷佳正、堕花雨を広橋涼が演じている。
登場人物・キャラクター
柔沢 ジュウ (じゅうざわ じゅう)
私立桜霧高校2年生の男子。複雑な家庭環境に育ったため、周囲とはなじめずにいた。そのため不良を演じ、人とのかかわり合いを持たないようにしている。シングルマザーの柔沢紅香は、息子の柔沢ジュウに興味がなく帰宅もしないことから、一人暮らし状態。斜に構えているが、本来は生真面目で誠実な性格をしている。ふだんから自分を守れるのは自分だけだと考えており、腕っぷしも強い。入学早々、上級生の不良・井原から因縁をつけられるがケンカに勝ち、さらにその派手な金髪から、沙月美夜、藤島香奈子以外のクラスメートからは、怖い人物に違いないと距離を置かれるようになる。ある日、前世で国を治めていた王・ジュウの下僕だったと自称する堕花雨から執拗に付きまとわれるようになる。そして雨とかかわるようになり、猟奇的な事件に巻き込まれていく。
堕花 雨 (おちばな あめ)
私立桜霧高校2年生の女子。柔沢ジュウと同じクラスに在籍している。前世では絶大な力で国を統治していたジュウに仕える下僕だったと自称し、現世でもジュウの役に立ちたいと付きまとうようになる。ジュウからは疎まれているものの、まったく気にしていない。目立たない地味な容姿ながら、実は素顔はかわいらしい。頭脳明晰で、身体能力も極めて高い。クールな性格のために親しい友達はおらず、学校ではジュウに付きまとうとき以外は一人で過ごしている。
沙月 美夜 (さつき みや)
私立桜霧高校2年生の女子。柔沢ジュウと同じクラスに在籍している。その派手な見た目や不良という噂が広まっていることから、クラスでは浮いた存在のジュウに声をかけ、積極的にかかわりを持とうとしている。ジュウからは面倒くさい奴だとぞんざいな扱いを受けているが、めげずに声をかけ続けている。容姿端麗で明るく気さくな性格から、学年のアイドル的な存在で、多数の男子生徒から好意を寄せられている。
藤島 香奈子 (ふじしま かなこ)
私立桜霧高校2年生の女子。柔沢ジュウと同じクラスに在籍している。クラスの学級委員長を務めており、素行の悪いジュウに対して度々注意をしている。ただし、それはジュウが不良だから嫌いという訳ではなく、不良を演じているのに不良になりきれずに中途半端なことばかりしているジュウにいら立ちを覚えているため。正義感が非常に強く、相手が誰であっても自分が正しいと思ったことははっきりと口にする。同じ優等生タイプの堕花雨とは考え方が違うため、犬猿の仲になっている。のちに連続殺人犯の事件に巻き込まれ、殺害される。
井原 (いはら)
私立桜霧高校3年生の男子。柔沢ジュウと同じ学校に通っている。校内では不良として知られ、怖い存在と認知されているために幅を利かせている。入学早々、目つきが気に入らないとジュウに因縁をつけるが、返り討ちに遭ったことで、ジュウに対して距離を置くようになる。堕花雨を疎ましく思っているジュウからそそのかされ、彼女を襲う計画を立てる。
堕花 光 (おちばな ひかる)
中学3年生の女子で、堕花雨の妹。少々シスコン気味なところがある。雨が柔沢ジュウと前世からつながっていると強く主張し、心酔している様子を心配している。雨がおかしくなったのは、ジュウが姉をたぶらかしているからだと決めつけ、ジュウに戦いを挑んだことで知り合いになる。ジュウの前ではつねに好戦的な態度を見せるが、本来は姉思いの心優しい性格の持ち主。幼い頃から空手道場に通っており、腕っぷしが非常に強い。かわいらしい容姿で、男子からラブレターをよくもらっている。
柔沢 紅香 (じゅうざわ べにか)
柔沢ジュウの母親。ジュウの父親とは離婚しており、シングルマザーとしてジュウを育てた。しかし、放任主義のために母親である意識は乏しく、ほとんど家に帰ってくることもない。自分の気分で躊躇なくジュウに暴力を振るうこともあり、何度も病院送りにしている。暴力だけでなく言葉でも攻撃を繰り返し、ジュウのまじめに生きようとする気力を奪っている。
賀来羅 清 (かぐら きよし)
柔沢ジュウが住んでいる地域で発生した、連続通り魔事件の重要参考人の独身男性。年齢は29歳。ジュウが何者かによって公園に呼び出された際に、賀来羅清が女性に危害を加えようとしている場面を目撃され、ジュウの口を封じるために戦いを挑んだ。堕花雨と同様に前世の記憶を持ち、ジュウと同じく国を治めていた偉大な存在だったと自称している。