風の如く火の如く

風の如く火の如く

時は幕末、動乱の時代。徳川幕府開闢(かいびゃく)以来、公儀の隠密活動を受け継いできた鷹ノ羽一族の17代目・鷹ノ羽真九郎の戦いを描く。幕末という動乱の時代を、史実に沿いつつも作者独自の解釈で綴った大河ロマン。

正式名称
風の如く火の如く
ふりがな
かぜのごとくひのごとく
原作者
鷹司
作者
ジャンル
時代劇
 
幕末
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概要・あらすじ

大老・井伊直助を斬ったのは公儀「影目付」として暗躍する鷹ノ羽真九郎だった。次の役目は軍艦操練所教授方頭取・勝海舟の警護。この任務のため、真九郎は勝と共に上洛することになる。同じころ、多摩の試衛館は幕府の浪士募集に応じ、近藤勇を筆頭に京へと出立する。上洛前の景気づけにと、土方歳三沖田総司は勝の暗殺を企てるが、これは真九郎によって退けられる。

まったく同じ顔で、さらには同じ星型の痣があることから、真九郎と沖田は互いを兄弟であると確信する。だが、その後の活動を経て、勝や坂本竜馬を通じ世界へと目が開かれていく真九郎と、幕府に仕える真九郎を尊敬し慕うものの、あくまでも侍にこだわる沖田との間には、徐々に溝ができていくのだった。

登場人物・キャラクター

鷹ノ羽 真九郎 (たかのは しんくろう)

公儀影目付として幕府のために隠密活動をする鷹ノ羽一族の17代目。目にも留まらない三段突きの使い手。勝海舟や坂本竜馬と親交するにつれ、幕府主体ではなく、何が国のためになるかを考えるようになり、公儀の任務を辞めて坂本と行動を共にする。坂本を暗殺しようとした沖田総司と寺田屋で対峙し、完全に敵対関係になる。 坂本が怪我に倒れてからは、高杉晋作と共に長州に渡る。

勝 海舟 (かつ かいしゅう)

開国派の幕臣。非常に見識が広く、警護につけられた鷹ノ羽真九郎にもさまざまな知識を語って聞かせる。江戸城無血開城の立役者。歴史上実在した勝海舟がモデル。

徳川 慶喜 (とくがわ よしのぶ)

徳川15代将軍。家茂亡き後将軍に就任する。知識人で大局を見据えた結果、大政奉還を成し遂げる。歴史上実在した徳川慶喜がモデル。

大目付 (おおめつけ)

鷹ノ羽真九郎の直属上司。幕府のことを第一に考える保守派。

沖田 総司 (おきた そうじ)

新選組の切り込み隊長。鷹ノ羽真九郎の双子の弟で、鷹ノ羽家一子相伝の三段突きを使う。幼いころから剣を一緒に学んだ土方歳三や近藤勇、試衛館の浪士を家族のように慕っている。普段は温厚だが、侍として生きることを信条としており、相反する考えには冷徹なまでに牙をむく。労咳(ろうがい)(現在の結核。当時は不治の病)を隠して戦っている。 なお、沖田総司は歴史上実在した人物だが、史実に兄弟がいた記述はない。真九郎がオリジナルキャラクターのため、真九郎の弟というのも本作品のオリジナル設定である。

土方 歳三 (ひじかた としぞう)

新選組副長。京の治安を維持するために新選組に厳しい法度を作る。融通の利かない苛烈な性格だが、試衛館時代からの仲間には温情をかける。歴史上実在した土方歳三がモデル。

近藤 勇 (こんどう いさみ)

新選組局長。試衛館道場をたたんで上洛し、新選組の局長となる。おおらかな性格で涙もろく、大名になるのを夢見ている。歴史上実在した近藤勇がモデル。

山南 敬助 (やまなみ けいすけ)

新選組の穏健派で心優しく温厚な性格。試衛館からの仲間で、近藤勇に浪士募集の知らせを持って来たのも山南敬助だった。のちに伊東甲子太郎の罠にはまり、切腹する。歴史上実在した山南敬助がモデルだが、切腹の経緯についてはこの作品のオリジナル解釈である。

芹沢 鴨 (せりざわ かも)

新選組の初期の局長の1人。京での粗暴な振る舞いが目立ったため、沖田総司らによって暗殺される。歴史上実在した芹沢鴨がモデルで、暗殺の経緯も史実に沿ったもの。

藤堂 平助 (とうどう へいすけ)

試衛館時代からの構成員。伊東甲子太郎を新選組に連れて来た。沖田総司殺害を試みるも、逆に沖田に殺されてしまう。試衛館時代は沖田とも非常に仲が良かった。沖田と共に近藤四天王とも称される。歴史上実在した藤堂平助がモデル。

伊東 甲子太郎 (いとう かしたろう)

藤堂平助の紹介で新選組に加わる。新選組内で自分の派閥を作るが、その真の目的は新選組を乗っ取ることだった。藤堂を利用して沖田総司殺害を試みるも、逆に沖田に殺される。歴史上実在した伊東甲子太郎がモデルで、史実でも内部抗争により殺害されている。

坂本 竜馬 (さかもと りょうま)

土佐郷士の生まれだが、脱藩。もとは尊王攘夷派の志士だったが、暗殺を謀った勝海舟から逆に列強国の脅威を聞かされ、開国派になる。戦争を嫌い、無血革命を目指している。長州と薩摩を貿易で結びつけようと亀山社中を設立する。のちに近江屋で中岡慎太郎と共に暗殺されるが、彼が書きあげた船中八策を参考に鷹ノ羽真九郎が歴史を動かすことになる。 歴史上実在した坂本竜馬がモデル。

中岡 慎太郎 (なかおか しんたろう)

坂本竜馬の幼馴染で親友。西郷吉之助の考えを支持し、思想的には坂本と袂を分かつ。勅許により武力討伐が行われる旨を書いた西郷からの書状を持って近江屋で坂本と会談するが、沖田総司に襲撃され死亡。近江屋に残されたこの書状と、坂本の船中八策が鷹ノ羽真九郎により徳川慶喜に伝えられ、大政奉還が行われた。 歴史上実在した中岡慎太郎がモデル。

山内 容堂 (やまのうち ようどう)

土佐藩15代藩主。安政の大獄で隠居を命じられ、鷹ノ羽真九郎と坂本竜馬が訪ねた時点では元藩主となっていた。真九郎に酒の飲み比べを命じるが、それは真九郎の本心を聞き出すためのものだった。真九郎、坂本の考えを支持し、徳川慶喜に大政奉還を進言する。歴史上実在した山内容堂がモデル。

高杉 晋作 (たかすぎ しんさく)

小柄で童顔ながら破天荒な暴れん坊。実は女性で、鷹ノ羽真九郎に好意を寄せる。長州藩上士の生まれながら、改革派の筆頭で奇兵隊の創設者。労咳を患っていることから死に場所を探している。歴史上実在した高杉晋作がモデル。実際の高杉晋作は男性であるが、この物語では女性として描かれている。

吉田 稔麿 (よしだ としまろ)

長州藩の大物志士。池田屋で新選組に襲撃される。労咳の発作を起こした沖田総司に一度は優勢に立つも、沖田を助けに来た鷹ノ羽真九郎に殺される。歴史上実在した吉田稔麿がモデル。

石川 (いしかわ)

高杉晋作の後の奇兵隊総督。長州藩が保守派になったため高杉を捕えようとするが、宝竜山と鷹ノ羽真九郎の志の高い言葉に感銘を受け高杉側につく。そのまま長州征伐の最後まで真九郎、高杉と共に戦う。歴史上実在した遊撃隊の石川小五郎がモデルと思われるが、作中では明らかにされていない。

宝竜山 (ほうりゅうざん)

元奇兵隊・力士隊の隊士。長州藩が佐幕になっても、高杉晋作を信じ彼の帰りを待っていた。高杉のために生き、高杉のために死ぬという彼の言葉は、石川ら奇兵隊の心を動かした。長州征伐の最後まで鷹ノ羽真九郎、高杉と共に闘う。なお、現実の奇兵隊にも力士隊は実在したが、宝竜山の名前は見当たらず、オリジナルキャラクターと思われる。

西郷 吉之助 (さいごう きちのすけ)

薩摩藩士。坂本竜馬の考えを支持し、一度は長州と同盟を結ぶべく高杉晋作と会談するが、高杉に殺されかけ破談に。のちに高杉がその非礼を詫び薩長同盟が成立する。長州征伐でも援軍を送ることになる。幕軍との戦争を企て、朝廷から徳川幕府征伐の勅許を貰おうと画策する。歴史上実在した西郷隆盛がモデル。「吉之助」は実在の西郷の通称であった。

紗絵 (さえ)

勝海舟の姪で、勝を通じて鷹ノ羽真九郎と出会う。真九郎に惹かれ、最後まで彼を愛する。彼女が真九郎に渡した簪(かんざし)が後に、真九郎の窮地を救うことになる。作品のオリジナルキャラクター。

お竜 (おりょう)

坂本竜馬を心の底から愛する坂本の恋人。鷹ノ羽真九郎にも「1人の女を救えない男が国を救えるか」と告げ、奮起を促す。また一度は身を引こうとした紗絵にも、「愛しているなら諦めてはいけない」と元気づける。歴史上実在した竜馬の恋人、お竜がモデル。

お雪 (おゆき)

沖田総司が清水寺で出会った美しい女性。労咳の発作を起こした沖田を救ったことをきっかけに、愛し合うようになる。近藤勇が島原で熱を上げている花魁(おいらん)の深雪太夫と同一人物で、伊東甲子太郎の女でもあった。伊東の差し金で近藤、沖田を手なずけようとするが、沖田の温かさに触れ、最終的には伊東を裏切る。 史実でも沖田の恋人にお雪という人物がいたとされるが、どんな人物かは定かではない。

クレジット

原作

鷹司

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