主人公・星野鉄郎と謎の美女・メーテルが、銀河超特急999号で広大な宇宙を巡り、行く先々の星で奇想天外な冒険を繰り広げる様子を描いたSFロマン。機械の体をくれる惑星を目指す『アンドロメダ編』と、人類殲滅を企む敵の正体をめぐる『エターナル編』に大別される。ハーロックやエメラルダスといった、松本零士作品のお馴染みのキャラクターたちも登場。
本作の舞台は、遥かな未来の銀河を駆ける銀河超特急999号。科学技術の発達により、人間は身体機能を機械化し、千年を超える寿命を手にしている。その一方で身分や貧富の差は拡大していた。機械の身体を持つ特権階級の人間は、生身の人間を野生動物のように狩る権利を有している。主人公・星野鉄郎は、母とふたりで暮らす貧しい少年だ。ある夜、彼の母は機械伯爵に狩られて命を落とす。どうにか逃げ延びた鉄朗は、行き倒れになっていたところを、謎の女性・メーテルによって救われる。そして彼は、メーテルから銀河鉄道の無期限パスを与えられ、彼女と共に旅をすることとなる。鉄朗の目的地は、無料で機械の身体が与えられるという惑星だ。西部劇の舞台のような荒野が広がる火星、花の咲き乱れる楽園・タイタン、氷に閉ざされた冥王星。旅路の星々で、様々な出会いと別れを繰り返しながら、鉄朗は少年から一人前の男へと成長していく。
妖怪と人間が仲良く暮らす猫又村での賑やかな日常を描いた、ハートウォーミングな怪奇譚。主人公・宮沢ジョウジは、子供の頃から電車の運転士を夢見てきた31歳の青年だ。彼は鉄道会社に就職し、免許も取得したものの、年齢を理由に運転手への道は閉ざされてしまう。絶望した彼は、死に場所を求めて彷徨ううち、三毛猫鉄道の特別夜行列車に乗りこんでしまった。それは、妖怪と人間が共存する猫又村へと向う列車だった。
本作の舞台となるのは、黒三毛鉄道・特別夜行列車。数奇な巡り合わせでこの列車に乗りこんだ主人公・宮沢ショウジは、列車の運行中に運転手が病で倒れるというアクシデントに遭遇。そこでショウジは、臨時の運転手を務めるよう求められる。当初は二の足を踏んでいた彼だが、責任者のクロミケと名乗る少女に尻を叩かれ、運転席に座る。かくして彼は、思わぬ形で子供の頃からの夢を実現することとなる。無事アクシデントを乗り越えた彼は、黒三毛鉄道の正式な運転手として採用されたのだ。だがそれはただの鉄道ではなく、クロミケの正体はなんと妖怪・猫又。それどころか、列車の運行先である猫又村は、妖怪と人間が共存する、妖怪にとっての観光名所だったのだ。驚愕の事実を知り、動揺するショウジに対し、村の妖怪たちは気さくに接する。そんな彼らとの触れ合いを重ねるうち、常識という鎖に縛られたショウジの心は、徐々に解きほぐされていく。
大陸を駆け巡る機関車を舞台に、元気で純朴な新人乗務員の成長を描く、トレイン・ファンタジー。物語の舞台は、19世紀後期から20世紀初期の西欧をベースにした架空世界。そこでは永らく「虹石」と呼ばれる鉱石を動力源とする、機関車が鉄道の主役だった。しかし、電気の普及に応じて虹石機関車は、その数を減らしていく。主人公・トーキィ・トーイは、そんな機関車に子供の頃から憧れる少年だ。田舎から上京した彼は、「最後の虹石機関車」の乗務員となり、個性豊かな仲間たちと共に、業務をこなしていく。
本作の舞台となる列車は、「虹石」と呼ばれる鉱石を動力源として、虹色の煙を吐きながら走る虹石機関車。虹石機関車は燃費に優れ、エネルギー精製中に真水が取れるため、長距離列車として重宝された。しかし、虹石の扱いには高い技術が必要であり、電気の普及に伴って多くの虹石機関車が姿を消した。主人公・トーキィ・トーイが客室乗務員となったのは、そんな残り少ない虹石機関車の1つだ。客車は機関部に近い順に、モーニング、アフタヌーン、イブニングという名前で別れており、振動と騒音の少ない後部車両になるほど高級となる。トーキィが配属されたのは、「安い・せまい・うるさい」のモーニング車両である。トーキィの直属の上司・ワイズマンは強面で厳しいが、乗客のことを第一に考えるプロフェッショナル。新人であるトーキィは様々な失敗を重ねつつも、持ち前の明るさと真っ直ぐな気持ちで日々の仕事をこなしていく。ノスタルジックでハートフルな物語だ。
鉄道と駅弁に魅せられた作者が、「乗りたい」と「食べたい」という欲求の赴くまま、全国各地の列車に乗りご当地の駅弁を食べまくる、異色の旅グルメ漫画。巻頭では、日本地図上に各話で取り上げた駅弁のカラー写真を配置した駅弁マップを掲載。特急図鑑、各駅ガイドといったコラムも充実しており、旅のガイドブックとしても役立つ作品だ。
本作の舞台は、実在する日本の全国各地の鉄道列車と駅である。作者の井上いちろうは、漫画の企画で2年間全国を旅して回った経験から、鉄道と駅弁の魅力にどっぷりとハマってしまっていた。本作はそんな彼が、改めて駅弁を目当てに全国を旅し、食レポを行う駅弁グルメ漫画だ。最初の旅路は、ダイヤ改正で惜しまれつつ姿を消した寝台特急「富士・はやぶさ」に揺られ、九州・熊本へ。お目当ては新八代駅の鮎弁当「鮎屋三代」だが、その道中でも駅弁三昧。横浜崎陽軒の「シウマイ弁当」に舌鼓を打ちながら、B寝台で相席となった男性と駅弁談義に花を咲かせる。熊本駅で特急「リレーつばめ」に乗り換えた彼は、新八代駅で「鮎屋三代」をゲット。その後、熊本~大分を結ぶ「九州横断特急」に乗りこんでいよいよ実食。単に駅弁を味わうだけでなく、鉄道オタクでもある作者が列車のことにもトコトンこだわっているのが本作の大きな見所だ。
王国と共和国による戦争が続く中、王国に新設された「二○二試験補給中隊」の活躍を描く、ウォー・アクション漫画。主人公・シャーロット・テューダー大尉は、わずか14歳で大学と士官学校を飛び級で卒業した天才少女。彼女が副長として所属する王国軍「二○二試験補給中隊」は、共和国との膠着する戦局を打開するために設立された、特別な補給部隊である。重武装の軍用列車ラーヴィックを駆る彼らの練度は、最前線の部隊にも引けを取らない。シャーロットたちは、前線の兵士たちを支えるため、崇高な志を持って戦場に物資を届け続ける。
如何に精強な部隊であろうとも、弾薬や食糧といった補給物資なくしては、十分な力を発揮出来ない。迅速かつ確実な補給は、勝利への重要なカギとなる。本作の舞台である軍用列車ラーヴィックはまさに、共和国との戦いを勝利に導く、王国軍の影の主役ともいうべき存在だ。重装甲の車両に数多くの銃座を備えた姿は、輸送列車というより戦闘列車という表現が相応しい。さらにラーヴィックを運用する「二○二試験補給中隊」には、大きな切り札がある。それがディズ・ノーサイト伍長だ。普段は粗暴で無礼な上に、隙あらば居眠りをする怠け者だが、その正体は“全死を呼ぶ一兵(オールデッドワン)”の二つ名を持つ歴戦の英雄だ。彼専用の手持ち式対戦車砲を軽々と扱うその姿は、まさに戦鬼そのもの。彼を筆頭とする頼もしい部下たちと共に、主人公・シャーロット・テューダー大尉は困難な補給任務をこなしていく。