『装甲騎兵ボトムズ』は1983年に放送が開始されたアニメ作品で、総集編を含む全52話構成が約1年にわたって放送された。
『機動戦士ガンダム』の放送開始が1980年、その続編にあたる『機動戦士Zガンダム』の放送開始が1985年になるので、ボトムズはちょうどその間で放送されていたことになる。
ボトムズの最大の魅力といえば、ガンダムシリーズにもなかなか見られないハードボイルドさ。
ボトムズを手掛けた高橋良輔監督が、ボトムズをつくる前に先んじて制作した『太陽の牙ダグラム』というこれまた渋い作品があるのだが、ボトムズはその高橋監督のハードボイルド路線の二作目にあたる。
作品の舞台はアストラギウス銀河という架空の銀河で、ギルガメスとバララントという二つの軍が争い合う、100年戦争末期の荒れ果てた世界。
主人公となるキリコ・キュービィーは、その内のギルガメス軍に所属する一兵士で、味方の基地を襲撃するという不可解な作戦を実行中、軍の機密である「素体」の存在を知ってしまったため、軍から追われる身となり、様々な争いに巻き込まれていくというものだ。
ボトムズの大きな特徴として挙げられるのが、ロボットアニメでありながらほとんど「アーマードトルーパー」と呼ばれる量産ロボットしか登場しないという点。
これはガンダムシリーズでいうところの「ザク」のようなもので、そのため非常に泥臭い肉弾戦が描かれる。
ボトムズのハイライトとも呼ばれるのが、次回予告。
作中の主要人物、ジャン・ポール・ロッチナの声優も務める銀河万丈の渋いナレーションと卓越したセンスが光る文句がカッコよさを演出している。
どの回もそれぞれに良さがあるのだが、ここではその中でも特に人気の高い次回予告をいくつか紹介する。
◆第8話「取引」
「昨日の夜、全てを失くして酸の雨に濡れていた。
今日の昼、命を的に夢買う銭を追っていた。
明日の朝、ちゃちな信義とちっぽけな良心が、瓦礫の街に金を蒔く。
ウドは百年戦争が作ったパンドラの箱。
質を問わなきゃ何でもある。
次回「救出」。
明後日、そんな先の事はわからない」
まさにウドの街でのキリコを言いあらわしたような次回予告。
ウドの街には、明後日が来るかどうかもわからない。
◆第18話「急変」
『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』には、この世は革命、戦争、平和のワルツを絶え間なく続けていくものだということばが登場します。
「たまには火薬の臭いを嗅ぐのも悪くない」、戦うことの意味を問う名文句だ。
◆第30話「幻影」
「この、果てし無く広がる闇は、輝く星のためにあるとしたら。
今日という日が、明日のためにあるとしたら。
天国はこの地獄の隣にあるはずだ。
ここはもう充分に見た、充分に。
たとえそこが禁断の地であろうとも。
次回「不可侵宙域」。
だが、今日という日が、昨日のためにあるのだとしたら」
サンサ編、3話目にあたる「不可侵宙域」の次回予告。
暗闇というのは星が光り輝くためにあるもの、今日という日は明日のためにあるもの。
ボトムズの世界に生きる男たちは、自分がいったい何のために戦っているのかを分かっていない。
それでも、戦いの先にはきっと明るい未来があるはずだ。
しかし、もし、今日という日が昨日のためにあるのだとしたら?
ボトムズの世界観を的確に表現した次回予告だった。
ハードボイルドな男の世界。
男性にだけでなく女性にも観てもらいたい作品だ。