中世のイングランドを舞台にヨークとランカスター両家による王権争い「薔薇戦争」をモチーフとし、両性具有の主人公を主軸としたダークファンタジー。原案はウィリアム・シェイクスピアの史劇「ヘンリー六世」、「リチャード三世」。敬愛する父親の名を継ぐヨーク家三男のリチャード・プランタジネットは、母親から「悪魔の子」と疎まれる両性具有。運命の悪戯に翻弄され、身体に秘密を抱えることで生まれるリチャードの苦悩と葛藤が描かれる。2022年にテレビアニメ化。
ヨーク家三兄弟の末っ子であるリチャードは、男女両方の性を持つことで苦しむが、心の奥底では愛を求めている。自身の「光」であった父親を失い、戦場の「悪魔」となっていくリチャードの心を癒すのは、偶然出会った「羊飼いのヘンリー」。しかし、彼の正体は憎きランカスターの当主・ヘンリー六世であり、悲劇が待ち受けているとも知らずに二人は互いを心の拠り所としていく。残酷な選択を迫られながら進むリチャードの先に待ち受けるのは憧れ続けた楽園か、それとも地獄か。新たなキングメイカーとなるバッキンガム公爵との再会により、運命は大きく動き出す。複雑な心模様が絡み合う愛憎劇であり、リチャードの持つ魔性の魅力や中性的な美しさが作者の繊細なタッチで表現されている。
陰謀渦巻く王宮で王権争いに翻弄されていく王女と影武者の少年の運命を描く王宮ファンタジー。ゼントレン国の第三王位継承権を持つ王女・エリザベスの影武者を探す従者のウィリアム・セシルは、立ち寄った小劇団で、女装すればエリザベスと瓜二つの少年・ロバートを見つける。王宮に連れてこられたロバートは、影武者として生きることを決意する。しかし、やがて王宮は華やかな見た目とは裏腹に、人間の醜い欲望や裏切りにまみれた場所であることを知るのだった。
舞台となるゼントレン国では、王位継承権三番以内の者には影武者がつくことが定められている。王族は命を狙われやすく、その危険を少しでも減らすために影武者が必要なのだ。国王のヘンリー亡き後、第一王位継承者の幼い王子・エドワードが即位したことで、王宮内の権力争いは激化。更には王族に恨みを抱いていたエドワードの影武者・ジョンの策略により、毒を飲まされ続けていたエドワードは命を落とす。王族の遠縁でジョンの幼馴染のジェインが新女王となるが、エリザベスの腹違いの姉のメアリ王女が国民を味方につけて王座を奪還。闇深い王宮で、純粋な心を持ち続けるエリザベスとロバートは強い絆を結び、協力しながら共に苦難を乗り越え、運命を切り開いていく。
「不思議の国のアリス」、「鏡の国のアリス」をモチーフとし、異空間と繋がる主人公の少年とヒロインの少女が失った自身の過去を知っていくダークファンタジー。オズ=ベザリウスは、親友兼従者のギルバート=ナイトレイを困らす悪戯好きで、四大公爵家ベザリウス家の次期当主。15歳の成人の儀を迎えるためにやってきた場所で懐中時計に触れた際、不思議な体験をする。そして儀式の最中に悲劇が起こり、異空間の「アヴィス」へと堕とされてしまうのだった。2009年テレビアニメ化。
アヴィスは大罪を犯した者が連れ去られるという悪夢のような世界。オズは、アヴィスで生まれた存在である「チェイン」の「血染めの黒うさぎ(ビーラビット)」ことアリスと契約し、元の世界へ生還する。しかし、元の世界では10年の月日が流れており、ギルバートは影を帯びた青年へと成長していた。オズが交わした契約は「違法契約」にあたり、アヴィスを研究対象とする特務機関の「パンドラ」に協力することに。オズは失った記憶を捜すアリスに協力し、100年前に起きた「サブリエの悲劇」に絡む謎や、アヴィスの世界を深く知っていく中で、自身の「罪」と「正体」の真相に近付いていく。残酷なシーンも多い中、仲間との絆やコミカルな演出も織り込まれ、キュートな場面も満載だ。
19世紀末期のイギリスを舞台に、悪魔と契約している幼い領主を主軸としたミステリータッチのダークファンタジー。ファントムハイヴ家は、「女王の番犬」としての裏稼業も担っている名門貴族。3年前に両親が他界してからは、息子のシエル・ファントムハイヴが領主となった。主従関係を結んでいる契約悪魔で執事のセバスチャン・ミカエリスと共に、怪事件に挑んでいく。2008年テレビアニメ化、2017年劇場アニメ化など、様々なメディアミックスで話題を呼んでいる。
シエルが悪魔のセバスチャンと契約を交わした背景には、両親の死やシエルの痛ましい過去が深く関わっている。様々な怪事件を解決に導いていく中で、少しずつシエルの過去にも触れられていく。シエルが眼帯で隠す右目には契約の証が刻まれ、両親を殺した黒幕に復讐を誓う心は、未だに闇に囚われたままだ。そんなシエルの周りを彩るのは、ドジで愉快な使用人や、協力者で極上の笑いを求める謎多き葬儀屋(アンダーテイカー)など、クセが強い者たち。だが、裏の顔を持つのはシエルだけでなく、作中には様々な伏線が張り巡らされている。作者の繊細で美麗なタッチで描かれる魅力的なキャラクターに目を奪われるが、セバスチャンの執事としての有能さやアクションバトルも大きな見どころだ。
20世紀の英国を舞台に、吸血鬼でありながら同族を狩る主人公と化け物や超人との争いを描くアクションバトル漫画。ヘルシング機関こと大英帝国王立国教騎士団は、国を吸血鬼などの脅威から守る特務機関。その機関に属している吸血鬼のアーカードは、とある村の牧師に扮して人を襲っていた吸血鬼を倒す。その際に巻き添えとなって瀕死状態に陥った女性警官のセラス・ヴィクトリアはアーカードによって吸血鬼となり、彼の眷属となるのだった。2001年テレビアニメ化。
本作の主軸となるのは、英国とプロテスタントに反する化け物を葬るために設立されたヘルシング機関。そのトップに立つのは、代々局長を務めてきたヘルシング家の現当主のインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングだ。最も危険で不死身の吸血鬼のアーカードは、10年前にミイラ状態からインテグラルの血を浴びて復活。それ以来、彼女に付き従ってヘルシング機関に属し、二丁拳銃を用いて化け物退治にあたっている。また、吸血鬼化したセラスはアーカードを「マスター」と呼び、次第に吸血鬼としての本領を発揮するようになる。プロテスタントの英国を中心に、カトリックのヴァチカン特務局第13課、更にはナチス残党も絡んだ激しい三つ巴の争いへと発展していく。