アーニャと一緒に暮らし始めたロイドは、子どもとの接し方が分からず、今までこなしてきたミッション以上に思い悩んでいた。そんな中、アーニャが黄昏の仕事道具でいたずらしたことをきっかけに敵に家を襲撃されてしまう。人質に取られてしまったアーニャを救うべく敵地に乗り込むロイドだったが、涙を流すアーニャに対してなぜか腹立たしい感情が生まれる。その感情をひも解くと、幼い頃に東西の戦争によって両親を失い味わった孤独、そしてただ泣くことしかできなかった無力な自分を、無意識のうちにアーニャと重ねていたのだと気づく。そして、戦闘中に自分の不注意で、子どもであるアーニャを危険な目に巻き込んでしまったことを恥じるロイドは、自分がスパイになった理由を思い出す。ロイドがスパイになった理由、それは「子ども(じぶん)が泣かない世界を作りたい」。スパイとしてではなく、彼自身の強い信念が垣間見える印象的なセリフだ。さらに、ロイドの心を読んでスパイになった理由を知ったアーニャは「ちち ものすごいうそつき でも…かっこいいうそつき!」となおさら彼に信頼を寄せるようになる。ロイドとアーニャ、「仮初め家族」の絆(きずな)が生まれたきっかけとなったセリフでもある。
ロイドとの特訓の末、なんとかイーデン校の筆記試験に合格したアーニャ。けれど、次の面接試験に「両親」揃って来るように言われ、ロイドは再び頭を抱えることになる。そんな矢先、アーニャの洋服を作るために訪れた仕立て屋で出会った、ヨル・ブライアという公務員の女性を形式上の妻にしようと企てる。ヨルの気配を消すのがうまい様子や、勘の良さに不信感を抱くロイドだったが、それもそのはず。ヨルのもう一つの顔は「いばら姫」のコードネームで暗躍する殺し屋だったのだ。任務のために「仮初めの家族」が必要なロイドに対して、他人からの注目を避けるために形式上の恋人を探していたヨル。偶然にも利害関係が一致した二人は、週末にヨルの友人が開催するパーティーに恋人として出席することになる。だが、タイミングが悪く、当日に任務が入ってしまったロイドは、ヨルとの待ち合わせ時間に遅れてしまう。一足先にパーティー会場に到着したヨルは、周囲が家族や恋人連れで盛り上がる中、同僚から独り身でいることを嘲笑(あざわら)われてしまい、パーティー会場を後にしようとする。そんな中、「ヨルの夫のロイド・フォージャーです」と言いながら任務帰りのロイドが颯爽(さっそう)と登場する。ヨルにロイドのような素敵な恋人がいることを妬んだ同僚は、ヨルをおとしめるような発言をするのだが、それに対してロイドが言い放った言葉が「誰かのために何かのために過酷な仕事に耐え続けることは、普通の覚悟では務まりません。誇るべきことです」なのだ。早くに両親を亡くし、弟を養うために幼い頃から過酷な仕事をこなしてきたヨル。その仕事が殺し屋とは知らないロイドだが、そんなロイドの一言に救われ、思わず頬を赤らめるヨルが印象的だ。このセリフによって、晴れて「仮初め家族」の母が誕生する。
「両親」が揃ったフォージャー家はイーデン校の面接試験に挑む。校門に足を踏み入れた瞬間から始まるイーデン校の過酷な試験。ドブにハマった生徒を見捨てず助けるかどうか、突然乱入してきた動物の群れにどう対応するのか……。想像の斜め上をいく試験の数々に受験生家族たちは素通りする中、実はスパイの男、殺し屋の女、超能力者の少女であるフォージャー家は難なくこなしていく。ついに三者面談にたどり着いたフォージャー家は、アーニャの的外れな回答に肝を冷やしながらも少しずつ進んでいく。けれど、美男美女、おまけに幸せそうなロイドとヨルを妬んだ一人の試験官が、わざとフォージャー家にボロを出させるよう意地悪な質問を投げかけ始める。ヨルへの侮辱とも取れる質問に始まり、その矛先はついにアーニャへ。「今のママと前のママどっちが高得点だ?」という質問に対して、本当に親を思い出しのか泣き出すアーニャ。ヨルも立ち上がり一発触発の空気が漂う中、ロイドが机に拳を振り下ろしこう告げる。「子どもの気持ちを軽んじるのが貴校の教育理念なのでしたら、選ぶ学校を間違えました」と。心の中では「仮初めの家族」だと言い聞かせながらも、スパイ、黄昏ではなくロイドとしての理性が爆発した瞬間だ。大切な妻、そして娘が侮辱されたことに対して抗議するロイドの姿からは「フォージャー家の父」としての頼もしさを感じる。
紆余(うよ)曲折を経て無事イーデン校に入学したアーニャ。イーデン校には優秀な功績を収めた者に星(ステラ)が送られるというしきたりがあり、それを八つ集めた生徒は「皇帝の学徒(インペリアル・スカラー)」として認められ校内で一目置かれる。ターゲットの現れる懇親会に列席するためには、アーニャを「皇帝の学徒(インペリアル・スカラー)」に仕立てあげなければならないが、いかんせん勉強が苦手なアーニャにとっては夢のまた夢の話……。そこで、アーニャと共に病院ボランティアという奉仕活動に従事することで星(ステラ)を獲得しようと試みるロイドだったが、好奇心旺盛で飽き性のアーニャの性格上、計画は見事失敗に終わる。やむなく病院を後にしようとしていた二人だったが、アーニャは超能力によって、病院内のプールで溺れて助けを呼んでいる男の子の声を耳にする。自身も泳げないにも関わらず、なりふり構わず男の子を助けるためにプールに飛び込むアーニャ。最終的にはロイドによって救出され、さらにはイーデン校からは人命救助の功績を讃えられて星(ステラ)を獲得し、全てが一件落着に終わる。予想外の展開で星(ステラ)を獲得できたのはもちろんだが、自分を顧みずに人を助けたアーニャの姿を誇らしく思うロイド。そんな時に心の中で「テロを未然に防いだ時のような誇らしい気分だ」とつぶやき「よくやったな」とアーニャの頭をなでる。善き行動を取った娘に対して、優しい笑みを浮かべるロイドは本物の父親のよう。「仮初めの家族」だが、本当の父娘のような温かい関係性がうかがえるシーンだ。