2人しか部員がいない高校の将棋部を舞台に、勝つまで告白できない後輩男子と好意を認めさせたい先輩女子の攻防を描く将棋ラブコメディ。将棋部には一年生の田中歩(あゆむ)と二年生の八乙女(やおとめ)うるしの2名が所属している。狭い部室で黙々と将棋を打っていたが、対局中に歩は突然うるしを、強くて可愛いと褒め始める。赤面したうるしは、歩に自分のことが好きなのではと問いかけるが、褒めるわりにはっきりとした好意を口にしない。歩のポーカーフェイスを崩し、なおかつ好意を認めさせるため、うるしは精一杯誘惑するのだった。
告白をするタイミングは難しい。この日と決めて心の準備をするか、勢いに任せるか。歩の場合は目標を設定し、達成した結果として告白をしようと心に決めていた。目標というのは、先輩であり想い人でもあるうるしに、将棋で勝つことである。歩は初心者なため強くはない。勝てないので告白できず、つのる想いを昇華できず悶々とした状態が続いているのである。とはいえ、完全に隠しきれているわけではない。うるしに対する好意が、時折口をついて出ることがあった。歩は完全なる無意識、思わずするっと口が滑ったというような印象だ。はっきりとした好意は口にしないものの、不意打ちで好意をにおわされては、気にしないわけにはいかない。うるしは歩の好意を確信しつつ攻めあぐねている様子でもあり、それが2人の将棋の対局とは真逆なところがあって興味深い。はたしてうるしは歩の堅牢な守りを突破できるのか。そうでなければ、歩の迅速な将棋の上達を願うばかりである。早くくっついて。
「死神」と呼ばれクラスで仲間外れにされている少女と、何も知らず「死神」である少女に憧れを抱く少年とのほのぼのラブコメディ。西村さんはクラスメイトから「死神」と呼ばれている。転校生である高田君は、西村さんが何故そう呼ばれているのかわからずにいた。本人に聞いてみたところ、目がギョロッとしていて死んだ魚みたいに見えるからではないのかと言う。近づくと「呪い」が移ると言われるから近づかないほうがいいと言われた高田君は、思わず目をキラキラさせ、カッコイイと叫んでしまうのだった。
西村さんは端的に言うと、クラスでいじめられている。「死神」という呼ばれ方はどう頑張ってもポジティブにとらえることはできないし、彼女に触ると呪いを移されてしまうらしい。給食を運んでいるときも、掃除の時間にも学芸会の発表のときだって、クラスメイトの悪意は西村さんに向けられていた。それを、言葉一つで変えてしまうのが高田君である。高田君は死神と呼ばれている西村さんに憧れているのだが、その理由がどう考えても中二病的なものに憧れる少年の思考だ。同情や善意ではなく、自分の好きな世界観を持っている存在に対する真っすぐな好意だからこそ、西村さんも高田君の言葉を素直に受け止めることができるのだろう。最初は全てを諦めきっているような表情をしていた西村さんが、赤くなったり慌てたりする姿を見ると、胸が温かくなる。コメディではあるが、誰かが救われる物語でもある。高田君にはこれからも変わらぬ好意で、西村さんを攻め続けてほしい。
正直すぎる体育会系男子と真面目熱血系女子を中心に、賑やかな学園生活を描くハイテンションラブコメディ。高校1年生の若宮真子(わかみやまこ)は風紀委員。学校生活にも慣れ、中間考査が行われた後に、風紀委員として本格的な活動が開始された。どこかで見たことのある男子生徒に目を向けた真子は、鞄の中に堂々とエロ本が入っているのを発見してしまう。呼び止めた真子に男子生徒、本田進一(しんいち)は的の外れた答えを返していたが、友達に借りたものだからと逃亡を図ろうとする。かくして進一と真子の熱い戦いが開始されたのであった。
進一はおよそモテるタイプの男子ではない。正直すぎてデリカシーに欠けるし、授業中は居眠りばかり。挙句の果てには学校なのにエロ本を堂々と持っていたりする。マイペースな性格で、我が道を行くタイプ。しかし、困った人がいれば助けずにはいられない、熱い心を持っているのだ。そのため、実際は女子にモテる。進一に心惹かれているうちの一人が真子だ。一見クール系だが、真面目すぎて暴走しやすく、天然なところもある。負けず嫌いで勝負ごとになると熱くなりやすく、そのことがきっかけで進一と関わるようになった。徐々に仲良くなったとはいえ、恋をしていると自覚するのは、本人にとっても不本意だろう。なにしろ知り合ったきっかけに、ロマンチックな要素は一切ない。恋心を認めたがらない真子のガードを、進一はものともせず恋心を的確に攻めていく。自覚がない言動だからこそたちが悪く、真子は振り回され気味だ。だからこそ、ついつい見守りたくなる二人だ。
恋愛経験ゼロな見栄っ張りな主人公と、偽装彼氏になったイケメン男子の絶対服従関係から始まる学園ラブコメディ。篠原エリカは見栄っ張りな性格。彼氏がいたことはないが、友達と話を合わせるため、彼氏がいるフリを続けていた。ある日本当は彼氏がいないのではと疑われ、街中で撮った男子の写真を彼氏と偽り、友達に見せる。しかし、写真の人物が同級生の佐田恭也(さたきょうや)だったと判明。エリカは恭也に彼氏のフリをしてもらう代わりに、あることを約束させられる。2014年テレビアニメ化、2016年に実写映画公開。
エリカが自分の見栄を守るため、彼氏役を依頼したのが、同級生の恭也である。エリカは当初知らなかったが、学年でも知られたイケメンで、王子然とした振る舞いから女子に人気のある男子だ。しかし、エリカの前で見せた素顔は王子というイメージからは程遠い。みながイメージする王子ならば、困っている女性を犬扱いはしないだろう。そう、恭也がエリカの偽装彼氏になる条件が、エリカが恭也の犬になるというだいぶ攻めたものだったのだ。犬好きだというが、その理由がご主人様に絶対服従で、健気に言いつけを守ろうとするその瞳がゾクゾクするほどかわいいからなのだとか。エリカはドン引きしていたが、犬好きな人にはちょっと共感できるポイントかもしれない。契約が成立したからには完全にエリカを犬扱いする恭也だが、ご主人様らしくエリカをかばう場面も少なくない。実は優しいというギャップに思わず胸がキュンとなる。絶対服従という約束を受け入れられれば、良い関係を築けそうだ。
幼馴染の妨害で彼氏ができなかった主人公と、幼馴染脱却を狙う男子の攻防を描く幼馴染ラブコメディ。柑奈(かんな)は自他ともに認める美少女だが、彼氏ができたことがない。合コンでそんな話題が出たとき、先輩で柑奈の幼馴染の誠が現れる。同級生男子たちを牽制する言動に、柑奈は辟易。邪魔をしないでと不満をぶつけると、お似合いと言われるのだから自分と付き合えばよいと提案される。しかし、柑奈の中で誠は兄のようなもので、男性としては見ていない。軽くかわそうとする柑奈に、誠はキスをして迫るのだった。
物語冒頭から、何故告白していないのかという疑問符が浮かぶくらい、誠はぐいぐいと攻めている男子である。告白するまでは、幼馴染として心配だからという建前で、柑奈が男子と交流することを妨害していたようだが、気持ちがなければそんなに熱心に行動しないだろう。柑奈はあまり疑問に思っていなかったらしく、その点に驚きを隠せない。完全なる外野から見ると、誠の意図は透けて見える。後にまったく男として見られていなかったことが判明するわけだが、思わず早く意識してもらえるといいね、と同情したくなってしまうレベルだ。意識してもらうために行動を起こしてからの展開は、完全なる攻めモードと言っても過言ではない。今まで気持ちを伝えることをためらっていたからこそ、想いがあふれ出してしまうのだろう。動揺している柑奈の様子を見ると、効果は言うまでもない。やはり、気持ちを伝えるのには、多少強引ともいえるくらいグイグイ攻めるのが効果的か、と改めて思わされる。