「都落ち」して実家に戻ってきた青年とハーフである姪っ子の異文化交流を描いた日常漫画。主人公は、東京で職を失い田舎に帰ってきた27歳の独身男性・志摩崎修太郎。新しい仕事を見つけられない彼は、一旦実家に戻ることにしたのだが、実家の扉を開けた彼の目の前に、10歳の姪っ子ニーナが現れる。ニーナは修太郎の姉とフィンランド人の男性の間に生まれたハーフで、銀髪碧眼が特徴的な美少女。修太郎は実家に預けられたニーナの世話を任されることになる。
フィンランド人男性と結婚し、ニーナを儲けた修太郎の姉・洋子。夫と別れた彼女は女手ひとつでニーナを育ててきたのだが、仕事でアメリカ・フィンランド・中国を行き来する生活になったため、娘を実家に預けることにした。そのタイミングで実家に戻ってきたのが修太郎だ。修太郎の母は、実家に戻ってだらだらするつもりの息子に、ニーナの世話を任せる。修太郎がニーナと会ったのは、赤ん坊の頃に一度だけ。独身であるため、子供とどう接すればいいのかもわからない。当初はニーナの存在を持て余していた修太郎であったが、日々の何でもないことを素直に喜ぶニーナの姿に、いつからか癒やしを覚えるようになる。ニーナの存在が荒んだ修太郎の心を変えていく様は必見だ。
北海道の農業高等学校を舞台に、主人公が仲間との交流や授業を通して成長していく姿を描いた、酪農青春グラフィティー。主人公の八軒勇吾は中高一貫の進学校に通っていたが、受験に失敗して自信を喪失。激しい学力競争と家族から逃れるため、寮制である大蝦夷農業高等学校、通称エゾノーに進学した。エゾノーで個性豊かな仲間たちと出会った八軒は、彼らと共に様々な経験を重ねて人間的に成長していく。2013年7月にテレビアニメ化、2014年3月に実写映画化された。
エゾノーに通う生徒の大半は農業従事者だ。一方、八軒は一般家庭出身。エゾノーに入学した八軒を待ち受けていたのは、これまでの常識が通用しない特殊な環境だった。授業の多くは実習で、知力よりも体力勝負。自分と違って将来に関する明確なビジョンがあるクラスメイトたち。取り巻く環境に戸惑いや引け目を感じながら、八軒は日々を駆け抜け、食とは何か、生きるとは何かを学んでいく。本作の魅力は、八軒を通してあまり世間に知られていない農業高校について知ることができるという点だ。作者の荒川弘が農業高校出身者であるため、授業風景や農業高校の生徒だからこそ抱える悩みや葛藤にはリアリティがある。物語が面白いだけでなく、教育的効果もあるとして高い評価を得ている作品だ。
かつて「銀狼」と呼ばれた伝説の吸血鬼ハンターがとある事件を追っていく、ファンタジーサスペンスアクション漫画。主人公は、かつて伝説の吸血鬼ハンターとして名を馳せた70歳の男性ハンス・ヴァーピット。ある日、とうの昔に引退していた彼のもとに、警察から依頼が届く。その依頼とは、世間を騒がせている連続殺人事件の調査及び解決だった。それは、連続殺人事件の犯人が人外であることを示していた。人々を守るため、老兵は再び武器を手に取り立ち上がる。
物語の舞台となるのは、架空の都市サンサロド。この街で、ある猟奇的連続殺人事件が発生していた。被害者は全員骨を抜かれて殺害され、現場には血と肉と内臓と脳が残されているため「骨抜き事件」と呼ばれている。これは明らかに人間の起こした事件ではない。そこでサンサロド警察は、化け物退治のスペシャリストであるハンスに事件の調査を依頼することにした。ハンスは半吸血鬼の少女ココウィルと広大な屋敷で穏やかな余生を過ごしていたが、依頼を受けて再び戦いに赴く決意を固める。「骨抜き事件」の犯人は一体何者なのか。ハンスは犯人を退治することができるのか。先が読めない謎めいた展開と、渋くてかっこいい老齢の主人公の活躍から、最後まで目が離せない。
秋田犬・銀を主役とし、様々な犬たちの活躍を描いた、冒険熱血青春ドラマ漫画。雪の降るある日、奥羽山脈の麓にある民宿で、最強の熊犬・リキの子供たちが生まれた。その中に1匹だけ混じっていた「虎毛」を持つ仔犬。熊犬に適した貴重な毛並みを持って生まれた彼には「銀」という名前がつけられる。銀は、二子峠に巣食う人食い熊「赤カブト」と戦う運命にあった。成長した銀は赤カブトを倒すべく、共に戦ってくれる戦士たちを探す旅に出る。
「虎毛」とはまだら模様の毛並みのこと。奥羽山脈の麓にある村の猟師は、秋田犬の虎毛を貴重視した。虎毛は熊犬、つまりは狩猟目的で使われる狩猟犬に最も適している、という狩猟仲間の言い伝えがあったのだ。虎毛を持って生まれてきた銀が熊犬として育てられることは、当然のことだった。赤カブトとの戦いで谷底へ転落してしまった父・リキに代わり、銀は打倒赤カブトを誓うマタギ・竹田五兵衛のもとで過酷な特訓を受け、熊犬として逞しく育っていく。だがどれだけ成長しても、銀だけで赤カブトという強大な敵は倒せない。銀は全国から集まった野犬たちや、一命を取り留めたものの記憶を失ってしまった父・リキと共に、赤カブトに挑む。犬たちの手に汗握るバトルシーンを堪能しよう。
男たちが裏社会で頭脳戦・心理戦を繰り広げながら巨万の富を得ていく様を描いた、バイオレンス・ギャンブル漫画。森田鉄雄はギャンブル中毒者である20歳のフリーター。ある日、彼は競馬場で平井銀二という男に、日当10万円の仕事を持ちかけられる。それが全ての始まりだった。銀二との出会いをきっかけに、裏社会で生きていくことを決意した森田。彼は銀二とコンビを組み、悪党として生きる術を学んでいく。2017年1月にテレビドラマ化された。
競馬場で森田に声をかけてきた謎の男・平井。彼はあらゆる業界や政界から一目置かれる裏社会のフィクサーで「銀王」と呼ばれる人物だった。彼にかかれば、周囲の人間は皆、生贄として連れて行かれる羊同然。人を操り、全てが自分にとって有利に働くよう仕向け大金を手にしていく平井の手腕と悪党ぶりに、森田は強い憧れを抱くようになる。こうして森田は裏社会に飛び込み、平井のもとで悪党としての生き方を学んでいくことになった。やがて森田は平井を超え「金」と呼ばれる人間になりたい、という目標を持つようになる。本作の魅力は、人間の心理を利用した真剣勝負の数々にある。平井と森田が企業の社長や政治家を相手に繰り広げる、スリル満点のギャンブルの行方を見届けよう。