フランスを舞台に描かれる壮絶なる純愛ストーリー『砂の城』174 Pt.

1944年のフランスから物語は始まる。富豪の令嬢と拾われ子の青年の純愛と次々に重なり合う悲劇。固い絆で結ばれ求め合うふたりに立ちはだかる身分の差。複雑な関係性のふたりの心象が津々と描き出されてゆく。悲しみ、痛みが浪々と重なり合ってゆく様が緻密に描かれている。

1944年春。フランスの富豪ローム家に待望の子供が生まれた。その娘はナタリー・ロームと名づけられ大切に育てられる。ナタリーが生まれた同じ日に、ローム家の前に捨てられていた4歳の男の子フランシス・ドベルジュは屋敷で引き取られ養われることとなる。共に育ったふたりは自然に互いを深く愛するようになり、その絆は誰も引き裂くことが出来ないほど強固なものだった。最初は反対していた父も、勉学に取り組む情熱とナタリーの一途な想いに折れ、ふたりの仲を認めた。フランシスとナタリーは大学を卒業する4年後に結婚しようと誓い合う。しかしその直後にナタリーの両親が飛行機の墜落事故で帰らぬ人となってしまう……。残されたナタリーのことを考えた叔母は彼女の将来を思い、フランシスとの仲を裂こうとするが、思い余ったふたりは断崖から飛び降り心中を図った。だが奇跡的にナタリーだけが生き残ってしまった……。