「渋谷」を舞台にした漫画35 Pt.

若者の街でありビジネス街でもある渋谷。東京にあり、日本有数の繁華街であるこの街は、漫画の舞台になることも多い。今回は渋谷の街を舞台にした5作品をピックアップした。

主人公・丸山佳奈と黒崎美々雨が、悪人退治のバイトをする舞台となるのが渋谷の街だ。渋谷地区の「浄化」を目的とする謎の組織・三島機関。美々雨は、この機関の一員として働いている。佳奈は、類稀な身体能力を買われ、美々雨にスカウトされた。美々雨は、武力では佳奈に及ばないが、鍼による記憶操作や、携帯電話を使用した催眠能力を得意としている。2人は、ときに武力を、ときに頭脳を駆使して、渋谷の街にはびこる「悪」を駆逐する。やがて2人は、渋谷のクラブで取り引きされるドラッグの事件解決に乗り出すことになる。

渋谷にある架空の高校・超渋谷高校は、ギャルばかりが集う場所。ギャルと一口に言っても「黒ギャル」や「姫ギャル」といった、お洒落へのこだわりを持った様々な女の子たちが登場する。そんな環境の学校で、地味な主人公・立川姫子は、肩身の狭い思いをしていた。しかし、女装男子・美神とちおとめとの出会いで、次第にお洒落に目覚めていく。とちおとめはギャルたちの憧れであり、男子たちも魅了してしまう。姫子は、そんなとちおとめに恋をする。姫ギャル姿のとちおとめも魅力的なのだが、男子の姿もカッコよく、ギャルたちのハートを鷲掴みにしてしまうのだ。

主人公・勝又揚太郎は、渋谷の片隅にあるとんかつ店「しぶかつ」の3代目。店の手伝いはするものの、後継ぎとしての意識は低かった。そんなある日、揚太郎は、出前先で訪れた渋谷のクラブでDJの魅力にハマる。楽しい音楽、盛り上がる空間、お洒落な女の子たち。「しぶかつ」におしぼりを納品している業者も、そのクラブの常連だった。そして、サプライズで登場した伝説のDJに感銘を受ける。揚太郎は、DJと当時にトンカツ屋の頂点を目指すようになる。若者の街であり、ビジネス街でもある渋谷を舞台に、「クラブ」と「トンカツ屋」の異色のコラボが楽しい作品だ。

本作の物語は、すべて渋谷区円山町を舞台にして描かれている。本作に収録されている「渋谷区円山町 青空」は、女子高校生・加藤由紀江が、渋谷区円山町のラブホテル街で、数学教師・ヤマケンを目撃したことから始まる。由紀江は、隣のクラスの男子・大野くんと付き合っていたが、なぜか、普段と違う姿を見てしまったヤマケンのことが、頭から離れなくなる。ヤマケンに携帯電話を没収された由紀江は、腹いせに「ラブホで目撃したことを言う」とヤマケンに告げるが、独身の自分が恋人とラブホテルに入ることに何の問題もないと反論される。由紀江はそんなヤマケンに強く惹かれモーションをかけ続ける。この話の続編が『渋谷区円山町 桜』に収録されている。

渋谷を舞台に描かれる、ギャル漫画の金字塔的作品。本作の主人公・寿蘭は、楽しいこと、可愛いものが大好きなコギャル。しかし、悪いことを自他共に許さない正義感の持ち主で、ケンカも強い。中学時代からの蘭の親友・山咲美由は、荒れた家庭環境で育った不良少女だったが、警察官である蘭の兄によって更生した。後に親友となる星野綾は、援助交際をしようとしていたところを蘭に説教されて思い止まる。連載当時に社会問題化していた「援助交際」「おやじ狩り」といった時事ネタや、ギャルの自由で軽いノリの裏側に隠されている、若者たちのリアルな悩みにも言及。こうした背景を描く意味でも、渋谷という街は重要な舞台になっている。