日中はサラリーマン、夜はヤクザという二つの顔を持つ近藤静也(しずや)が、時に命を懸けながら2つの世界を生き抜いていくヒューマンドラマ。静也は女性用下着のメーカーに勤めているが、試作品発表会でオムツ風の下着を発表して部長に怒られるなど冴えない社員であった。しかし父で新鮮組総長の勇足(いさみあし)が突如他の組によって殺害されると、静也は母親の妙の意向により三代目総長に就任することとなる。2000年、2009年に実写映画が公開された。
平社員として上司になじられる日々を送っていながらその実はある組織のトップ、という夢のあるサラリーマン像は、社会人なら大抵一度は妄想するものだろう。静也は争い事を嫌っていながら戦闘能力が高く、デザイナーとしても、常に上司に怒られていながらヒット作を連発するなど、「実はすごい」要素が豊富であり、読者に「もしかしたら自分も」と思わせてくれる。また抗争を嫌い極道組織をなくすことを目標にするなど、ヤクザらしからぬ平和主義者であり、一般社会人の苦労も知っていることから非常に感情移入しやすいのも大きな魅力だ。海外マフィアとの抗争もあるなどかなりスケールの大きい戦いが繰り広げられるので、アウトロー好きな人ならページをめくる手が止まらなくなるに違いない。
築地の仲卸「魚辰」の三代目となった赤木旬太郎が、見事な目利きや肥えた舌で同業者を驚かせていくヒューマンドラマ。銀行に勤めていた旬太郎は上司の命により99人の社員をリストラし、100人目として自らも辞職した。そして、妻の父が営む「魚辰」の三代目として築地に足を踏み入れるも、行き交う人や台車に次々ぶつかったり、カツオとブリを間違えたりと仕入れ業に関する素人ぶりを周囲にさらしてしまう。2008年に実写映画が公開された。
銀行員から魚の仲卸という全くの別業界へ飛び込み、様々なドジを踏み周囲の顰蹙を買ってもなお明るさを失わない旬太郎の姿には、これから何かに挑戦しようとしている人なら勇気づけられること間違いないだろう。目利きのコツや美味しい調理法といった魚に関する知識も数多く紹介されており、実生活で試してみることでより日々の食卓が賑やかになるはずだ。また後取り問題や客とのいざこざなど業界ならではの人間模様も楽しめるので、魚市場をよく利用する人や仲卸業に興味のある人にとっては必携の一冊といえる。なお現在では中央卸売市場が豊洲に移転し、築地魚河岸は場外市場のみとなってしまっているので、当時の懐かしさを味わいたい人にもおすすめだ。
とんかつ屋の後取り・勝又揚太郎(かつまたあげたろう)がひょんなことからナイトクラブにハマり、料理人とDJを同時に目指すギャグ漫画。揚太郎は父の営むとんかつ屋で働いていたが、やる気も技術も今ひとつで両親を困らせていた。しかしクラブ関係者にとんかつの出前を届けたことをきっかけに、ナイトクラブの存在を知って通い始めた。ある晩、有名DJからのテレパシーを通じて「とんかつもDJも同じ」ということを知った揚太郎は、後日とんかつを教わるため父に頭を下げるのだった。2016年にテレビアニメが放送された。
揚太郎はDJの立ち振る舞いや、流れている曲にとんかつ作りと同じ要素を感じるなど、パフォーマーならではの斬新な感性を持っており、本人がまじめにやっていることでも読者は思わず笑ってしまうことだろう。とはいえ店の後取りという立場にいながら仕事を面倒くさがっていた揚太郎が、クラブやDJに出会ったことを機に本気でとんかつの修業を始めるようになる姿は、「誰しもきっかけ一つで変われる」というメッセージがこめられているように思われ、読者に勇気を与えてくれるだろう。お茶目な掛け合いや勢い任せの展開もさることながら、包丁で指を切っただけで噴水のように血しぶきを上げたりと、描写がとにかくコミカルだ。小難しいことを考えずひたすら笑える漫画を読みたい人には特におすすめしたい。
ガンプラ愛好家のユウキ・タツヤが、ガンプラバトルの世界王者を目指して大会を勝ち上がっていくロボット漫画。聖鳳学園模型部の部長であるタツヤは、高校生にしてガンプラバトルの世界大会出場という快挙を成し遂げる。そして予選1回戦でデンマークの選手と激突したタツヤは、格上の機体を相手に華麗な動きで攻撃をかわし続け見事に勝利をおさめた。しかし同大会には現役最強の選手をはじめとした多くの強敵が一堂に会しており、優勝への道は遠い。
本作は自ら組み立てた機体を大舞台で戦わせるという、「ガンダム」やプラモデルのファンなら一度は夢見たであろうシチュエーションを存分に味わえる一冊だ。タツヤが部活や「ガンプラ塾」などの様々なコミュニティで腕を磨いてきたという経歴から、スポ根漫画をいきなりクライマックスから読むような感覚で楽しむこともできる。その一方で、大会序盤から多くの重要人物の名前が挙がるなど、話が膨らむ要素も多い。なお本作はアニメ「ガンダムビルドファイターズ」シリーズの様々な派生漫画の1つなので、作品への理解をより深めるためにもぜひ他のシリーズも購読してほしい。
世界中で指名手配されている大泥棒のルパンが行く先々でお宝を盗み、時には警察とバトルを繰り広げるアクション漫画。ある日、ディスコパーティーが行われていた大木博士の別邸に銭形警部が押し入り、「ルパンが潜んでいる」として家宅捜査を始めた。すると博士の秘書が首を吊った状態で発見されたり、博士の娘が刃物で切りつけられたりと、ルパンの仕業かと思われる凶行が屋敷内で次々と発生していく。1971年にテレビアニメの第1シリーズが放送された。
本作は誰もが認める国民的コンテンツの一つだが、作品のイメージについては「泥棒と警官がコミカルに戦う」程度にとどまっている人が多数を占めるだろう。しかしキャラクター同士のテンポの良い掛け合いを前面に出したアニメ版とは異なり、原作漫画では先の読めない展開や仰天のトリックが話の肝となっており、推理系作品としてかなり完成度の高い一冊に仕上がっている。また性的描写や殺人場面などハードボイルドなシーンがふんだんに盛り込まれているほか、ルパンの性格もアニメ版に比べて非情と思われるシーンが多いため、アウトロー系の作品が好きな人でも楽しめるはずだ。難しそうな漫画と思われるかもしれないが、基本的には一話完結のエピソードが多いので気軽に読み進めてほしい。