藤子不二雄A作品特集152 Pt.

藤子不二雄Aは、漫画界に揺るぎない地位を築いた巨匠のひとりだ。その活動は精力的で、オカルト、ファンタジー、スポーツなど、幅広いジャンルで名作を世に送り出してきた。そんな藤子不二雄Aの名作を改めて振り返ってみよう。

作成日時:2022-04-13 00:00 執筆者:マンガペディア公式

藤子不二雄A作品特集

出典:小学館


『笑ゥせぇるすまん』

『笑ゥせぇるすまん』

出典:小学館

謎のセールスマン・喪黒福造と、彼と関わったことで人生が大きく変化する人々の物語を藤子不二雄Aが描く、オムニバス形式のブラック・ユーモア漫画。現代社会には、迷いや悩み、密かな欲望を抱える人々が数多くいる。そんな人々の心の隙間を埋める手助けをするのが、本作の主人公・喪黒福造だ。彼は料金は一切受け取らない。ただし依頼主は、喪黒との約束を守らなかったり、忠告を無視すると、厳しい代償を支払うことになる。1999年にテレビドラマ化。1989年、2017年にテレビアニメ化された。

藤子不二雄Aの名作である本作の主人公は喪黒福造だが、真の意味での主役となるのは、各エピソードの依頼主である「心の隙間を抱える人々」だ。彼らはそれぞれ、独自の悩みや表には出せない願望を抱きながら、鬱屈した日々を過ごしている。そんな人々の元を訪れ、悩みの解決手段を提供したり、願望を叶えるのが喪黒福造である。基本的に、喪黒と関わった人々は、一時的には望みを叶え、幸福な体験をする。しかし、彼らの多くは、欲望のエスカレートや当人の甘い性格、あるいは不幸な偶然から、喪黒との約束を破ってしまう。その結果、彼らは不幸な結末を迎えることとなる。依頼主は、ほとんどがごく普通の一般人だけに、読者も共感を抱きやすい。大人のための寓話とも言える作品だ。


『忍者ハットリくん』

『忍者ハットリくん』

出典:小学館

現代の町に現れた少年忍者・ハットリくんと、その仲間たちが巻き起こす騒動を藤子不二雄Aが描く、アクション・ギャグコメディ。伊賀の里から都会にやってきた少年忍者・ハットリカンゾウは、ひょんなことから男子小学生・三葉ケン一の家に居候することになる。優秀な忍者であるハットリくんは、持ち前の技で、周囲の人々を助けていく。その一方で、ハットリくんは現代社会の常識に疎いため、トラブルを引き起こすこともある。1966年4月にテレビドラマ化され、1981年9月にテレビアニメ化された。

藤子不二雄Aの名作である本作は、忍者という存在に、従来とは全く違った魅力を与えた作品だ。君主の命を受けて危険な任務をこなす、時代の影に生きる非情の者。あるいは、超絶的な忍術を駆使するスーパーヒーロー。本作の連載が開始された1960年代当時、一般的な忍者のイメージは、そんなシリアスなものが中心だった。本作は、少年忍者を現代社会に出現させ、子どもたちの友人として描いている。様々な忍術を駆使しながら、現代社会の常識にとらわれずに行動するハットリくんの姿は、実にユーモラス。忍者としてポーカーフェイスに務めているが、独特の口調や振る舞いには愛嬌もタップリだ。まさに忍者のイメージを一変させた漫画と言える。


『プロゴルファー猿』

『プロゴルファー猿』

出典:小学館

天才少年ゴルファーの奇想天外な活躍を藤子不二雄Aが描く、少年ゴルフ漫画の先駆けとなった作品。物語の主人公・猿こと猿谷猿丸は、天才的なセンスと、優れた技術を持つ少年ゴルファーだ。彼は近所にあるゴルフ場に無断で立ち入り、客たちに賭けゴルフを持ちかけ、荒稼ぎしていた。やがて、そんな猿の実力に目を付け、裏のゴルフ界を仕切るミスターXが接触してくる。

藤子不二雄Aの作品である本作の連載当時の1970年代、ゴルフは人気スポーツの1つだった。しかし、少年少女のゴルフ競技人口はごく僅か。そのため、当時の「週刊少年サンデー編集部」では、連載立ち上げに難色を示す声が多かった。そんな本作だが、編集部の予想を裏切り、読者の好評を博して人気作品となる。その要因と言えるのは、ゴルフというスポーツに、当時の少年漫画の方法論を巧く組み合わせたことだ。「旗つつみ」「松葉落とし」「モズ落とし」などの必殺技。猿に負けず劣らずの強烈な個性を持った、裏ゴルフ界のライバルたち。そして、断崖絶壁や溶岩が流れる岩場などが配置された、現実離れしたゴルフコース。こうした奇想天外な設定は、ゴルフを知らない少年たちの心をも掴み、大ヒットを生むこととなった。


『魔太郎がくる!!』

『魔太郎がくる!!』

出典:小学館

いじめられっ子の少年が、特殊な能力やアイテムで恨みを晴らす姿を藤子不二雄Aが描いた、オカルト・ホラー。主人公・浦見魔太郎は、チビで気の弱い、いじめられっ子の少年だ。魔太郎は、両親に連れられ、新しい学校に転入する。転入先の学校は、友情と愛情を校風としていた。ところが、魔太郎はそこでもいじめのターゲットにされてしまう。当初は懸命に堪える魔太郎だが、やがて彼の怒りが爆発する。

1970年代、世間はオカルトブームに沸いていた。漫画の世界も同様で、1970年代にはオカルト漫画の傑作が数多く生まれた。中でも、藤子不二雄Aの作品である本作『魔太郎がくる!!』、つのだじろうの『恐怖新聞』、そして古賀新一の『エコエコアザラク』ほか、オカルト・ホラーのヒット作が揃って掲載された「週刊少年チャンピオン」は、当時のブームの牽引役となっていた。本作は、オカルト漫画の中でも、独特な位置にある作品だ。その理由は、主人公・浦見魔太郎が、いいじめられっ子であること。魔太郎は、己が受けた酷い仕打ちを、細かくノートにメモしている。そして、我慢が限界に達すると、大魔王サタンの使徒としての能力「うらみ念法」を発動。残虐な手段で、いじめっ子に復讐を行う。「いじめられっ子の逆襲」というコンセプトは、多くの読者の共感を呼んだ。


『怪物くん』

『怪物くん』

出典:小学館

怪物ランドのプリンス・怪物くんと、愉快な仲間たちが巻き起こす騒動を藤子不二雄Aが描いた、ユーモアに満ちたオカルト・ファンタジー。主人公・怪物太郎は、怪物ランドの王位を継ぐための修行として、人間界にやってくる。彼は、引っ越し先のアパートで、隣の部屋に姉と2人で暮らす市川ヒロシ(ヒロ)と、半ば強引に友達となる。その日を境に、ヒロの日常は一変していくこととなる。

藤子不二雄Aの作品である本作の特徴は、恐怖の対象であるモンスターたちをデフォルメ化し、ユーモラスな存在として描いていることだ。吸血行為を禁じられ、トマトジュースを飲むドラキュラ。普段は人間の姿だが、満月を見ると変身する、世話好きでお人好しなオオカミ男。大柄で怪力の持ち主だが、心優しく感情豊かなフランケン。主人公・怪物くんのお供たちを始め、物語に登場するモンスターは、欧米の伝承や怪奇小説を元ネタにしたものが多い。残虐に人間を襲うモンスターたちが、本来とは異なる振る舞いを見せる様子は、実に愉快だ。個性的な主人公とモンスターたちが繰り広げるドタバタ劇は、モンスターに新たな魅力を与えている。


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