犬種も飼い主も不明な犬が、行った先々で人間の世話になる野良犬コメディ。漫画家の倉元がアパートに帰宅すると、部屋の中に見知らぬ犬がいた。仕方なく犬にエサをあげ、自身は漫画の原稿を仕上げようとするが、犬のいびきがうるさくて集中できない。元々どこの犬かもわからないため、倉元は駅前で犬に別れを告げる。原稿が没になってしまった倉元が駅に戻ってくると、そこには朝別れたはずの犬が座っていた。慰められた倉元は、犬と一緒に暮らし始める。1993年10月にテレビアニメ化。
ピンと立った白い耳に特徴的な左目を覆うような黒い模様。体毛は白でよく動く尻尾は黒である。身体はどちらかといえばずんぐりとしていて、表情豊かで愛嬌たっぷり。お腹を丸出しにした寝姿は無防備で、いびきをかいているのを見ると中年男性のようでつい笑ってしまう。犬種としてはブルテリア系のようだが、詳しくは明かされていない。飼い主も犬種も不明の犬は、後にバウと呼ばれるようになる。首輪をしているので元々は飼い犬のようだが、何故野良になってしまったのかはわからない。ただ人懐っこく、頭の良い犬であることはわかる。バウは人をよく見ており、誰が自分を世話してくれる人なのかを察したうえで甘えに行っている。最初に面倒を見ることになった倉元は、口では文句を言っていたがバウを追い出すことはなかった。お調子者な雰囲気はあるが、過去にはそれなりの経験をしてきたのかもしれない。バウは理想の飼い主を探すため、今日も愛嬌を振りまきながら街を歩いては、ちゃっかり人の世話になって生きてゆく。
ガラス工房を営むご主人とご主人が大好きな飼い犬のまったり日常コメディ。小松は秋田県の山中という、自然の中でガラス工房を営んでいる吹きガラス職人。彼はムーコという、小松のことが大好きな犬を飼っていた。小松が工房で作業中、ムーコは一人遊びに興じる。タオルを口で引っ張って裂いてみたり、自分の尻尾を追いかけて庭の池に落ちたり。やってはいけないことをすると小松は叱るが、ムーコはあまり気にしない。今日も大自然の中、ムーコののんびりとした日常が過ぎていく。2013年7月にミニアニメ化、2014年4月にテレビアニメ化。
ムーコは目の下から顎周り、首から腹周りと足の先が白く、それ以外は薄い茶色の体毛をしている。小柄で目の上には平安貴族のような、所謂マロ眉のように色が変わっている部分がある。黒くつやつやとしたお鼻がチャームポイントで、自身も見惚れるほどの自慢である。一見すると柴犬のようだが、犬種は特定されていない。ただ元気でご主人様である小松のことが大好きな女の子である。犬が登場する漫画は、鳴き声や表情、行動で気持ちを表現するか、モノローグを付けて心情を表現するかで分かれる。本作の場合は後者に近く、ムーコに吹き出しのセリフはないが、ムーコが考えているであろうことを示す手書きの言葉が添えられている。基本的には敬語で話すのだが、テンションが高いときも変わらない。黒々とした目も表情も変わらないのだが、かえってリアリティがあるように感じられる。ムーコは無邪気で、変わったことの起こらない日常でも全力だ。愛くるしく元気な姿は、小松じゃなくたって癒されてしまう。
荒廃した世界を旅する女子高生と相棒の柴犬の旅路を描く4コマコメディ漫画。女子高生であるご主人と柴犬のハルさんは、世界が終わりを迎え荒廃してしまった世界を旅している。時に、今自分は生きているのかそれとも死んでいるのか、幸せとは、といった哲学的な問答を繰り返したり、食事を分け合ったり、犬や猫、地球外生命体と出会ったり。崩れた道をものともせず、リードと首輪で繋がれた一人と一頭は、どこへ行くともなく歩き続けながら、ゆるく会話を繰り返していくのだった。
世界は終末を迎え荒廃し、人々は姿を消していた。その中に、女子高生が大きなリュックを背負って歩いているだけでもストーリー性があるのだが、彼女には相棒がいた。柴犬である。むくむくの体毛は顔周りとお腹が白く、背中や頭部が薄い茶色。名前はハルさん。ハルさんは女子高生の飼い犬であるらしく、一人と一頭で人がいなくなった世界を旅していた。犬は普通人の言葉を話せないが、長い時間を共に過ごせばある程度意思疎通を図ることができる。ご主人とハルさんもそうなのかと思いきや、事情はちょっと違う。ハルさんは人の言葉を話す柴犬なのだ。ただ人の言葉を話すだけでなく、知識も豊富だ。「シュレディンガーの猫箱」について論じたり、幸せについて問答したりする。つぶらな瞳は悟りを開いた賢者のようだが、ご主人にとっては柴犬のハルさんに変わりない。しかし、生徒と先生のような、子どもと保護者のような、やっぱり飼い主とご主人様のような不思議な関係だ。
コーギーと社会人男性のご主人の日常を描く、犬あるある満載コミックエッセイ。犬との暮らしは朝、お尻のドアップから始まる。寝ている枕元に寄り添う犬のドアップに驚きながら起きると、「遊んで」攻撃、「ごはんください」攻撃、「おやつください」攻撃が飛んでくる。飼い主は、犬がたまに部屋の隅を見つめているときには恐怖を覚え、変な顔をして寝ていれば無言でカメラを向ける。変顔をさせたりして撮っているうちに、待ち受け画面にする画像ばかりが溜まる。おもちゃを持って全力で遊びをねだり、寝ていれば添い寝もしてくれる。そんな犬との何でもない暮らし。
本作に登場するのは、ウェルシュ・コーギーという犬種である。体長が30センチほどとあまり大きくない。耳が大きく、足が短いのが特徴的だ。お尻が強調されるせいか、歩くたびにお尻がぷりぷりと左右に揺れる。コーギーのチャームポイントの一つは、間違いなくお尻だと言えるだろう。本作に登場する飼い主も、お尻と対面するところから朝が始まる。男一人とコーギーとの日常だが、飼い主の行動に共感する犬飼いの人は多いのではないだろうか。ご飯をねだるときの表情、言葉が聞こえてくるようなしぐさ。「わかる、こういう顔する」とつい愛犬に姿を重ねてしまうだろう。コーギーは活発な性格をしているせいか、遊んで、とねだることが多い。仕事の電話をしていたご主人の周囲にいつのまにかおもちゃが山盛りになっているさまは、笑ってしまうと同時に、愛犬のことがいっそう愛おしくなるだろう。玄関での見送りの際のしょぼんとした顔があまりに悲壮感に溢れていて胸が締め付けられる。目を輝かせている姿をずっと見ていたいものだ。
作者の実家で暮らす犬2頭に起こった出来事をコミカルに描くほぼノンフィクション犬ショートコメディ。作者、新めぐみの家族は父と母、兄と自分の4人で、実家ではMIXのエドとバーニーズマウンテンドッグのイズモが暮らしている。5年前のある日ペットショップに行った両親が、目の前で排泄をし、水を飲んで寝るという小さなイズモの姿を見て購入を決意したのだという。イズモと作者が一緒に過ごしてきた時間は少なく、会うたびに大きくなっていくイズモに驚く作者。とにかくパワフルで時折作者の存在を忘れるイズモと、そのお兄ちゃんのエドに度々事件が発生する。
大きい犬に憧れを抱く犬好きは多いはずだ。抱き着いてもビクともしない頑健な体躯に、思慮深そうな静かな瞳。バーニーズマウンテンドッグは大型犬で、黒を基本に白や茶など、艶のある長い体毛が特徴だ。原産国であるスイスでは、牧畜犬や護衛犬となるだけでなく、荷物の運搬もしたという。生粋の働く犬なのだ。とはいえ、日本の一般家庭であれば、重い荷物を背負い、山岳地帯で暮らす羊を追う必要はない。せいぜい飼い主と連れ立って散歩に向かうくらいである。大きな犬を連れて歩いたことのある人はわかると思うが、犬の力はとても強い。中型犬でも人間が引っ張られることがあるのだから、バーニーズくらい大きいと制御は難しいだろう。崖から転落したという父のエピソードはさもありなんと思えると同時に、犬の散歩では崖には近づくまいと心に誓わずにはいられない。とにかくパワフルなイズモだが、兄貴分のエドには忠実だ。さすが上下関係が厳しい犬社会である。小柄なエドの貫禄ある姿は、巨体なイズモに負けていない。