民俗学の教授が主人公の古代史ミステリー巨編。東亜文化大学で民俗学の教授を務める宗像伝奇(むなかたただくす)は、日本のみならず世界中を旅して伝説や神話を収集し、現地取材を行なっていた。はるか昔、その地で実際に何が起こったのか。己の想像力と行動力を武器に、古代の謎を解き明かしていく。
主人公の宗像伝奇は、民俗学の知識を元に様々な古代の謎の解明に挑む。その一つが日本でも天人女房や羽衣伝説として伝わる「白鳥処女説話」だ。世界中に伝説として語られることになった伝播ルートや仮説を講義していた宗像は、羽衣伝説の伝承地のひとつ、出雲のある村から出土したという七星剣に導かれて現地を訪れる。かつて白鳥の飛来地になっていた白鳥沼の側の祠と、干上がった沼の土壌から現れた鳥居の跡、そしてテレビの取材クルーによって引き起こされた予想外のトラブルなどから、宗像はこの地に残る白鳥伝説がたたら(鉄器文化)に関係することを導き出す。このように宗像はフィールドワークをしながら、その土地に残された伝説や謎と対面していくのだ。
イギリスの文学とお菓子を愛する教授の日常を描く。大学でイギリス文学の教鞭をとる雨宮誠は、イギリス文学と同様にイギリスのお菓子も深く愛していた。午後3時のお茶の時間には、イギリス文学に登場するお菓子をモチーフに、たまに遊びに来るイギリス育ちの姪の手を借りて様々なお菓子を手作りする。丁寧に描かれたお菓子作りの様子と、ほのぼのとした教授の日常がゆったりと描かれる。
都心から少し離れた町の丘の上にある私立青葉学院大学。この学校にはイギリス文学とお菓子を深く愛する教授の雨宮誠がいた。今日の3時のおやつは何にしようかと悩みながら、イギリスのお菓子を手作りするのが雨宮の日課。たまに遊びに来る姪のサヤは、イギリス育ちでイギリス人の祖母からお菓子作りを教わった腕ききの小学生。『不思議の国のアリス』のジャムタルトや『ナルニア国物語』のマーマレードロールといったイギリス文学に登場するお菓子を作りあげる過程が、料理監修のもと丁寧に描かれている。
一話読み切りで描かれる柳沢教授の日常物語。Y大学経済学部の教授、柳沢良則は、世の中のルールを順守し、正義を守り、我が道を征く。今年からY大学に通うことになった娘からは、そういった行動が恥ずかしいと言われてしまい途方に暮れることもある。そんな融通のきかない柳沢教授と、彼を取り巻く人々の人間模様がユーモラスに描かれる。
たとえみんなが通る近道でも、私道ならばその道は通らない。横断歩道ではない場所では、車が来ていなくても道路を渡らない。融通のきかない柳沢教授は、60年間ずっとこのように生きてきた。Y大学に入学して一緒に通学することになった娘からは、そういった行動を恥ずかしいと言われてしまい、ひょっとして娘はずっとそんな目で見てきたのかと気になったりもするが、柳沢教授はやはり我が道を突き進む。娘やY大学の学生など、教授の身近にいる人々が彼の日常に問答無用で巻き込まれていく、ユーモアたっぷりのヒューマンドラマだ。
名探偵シャーロック・ホームズの天敵として知られるモリアーティ教授を主人公に据えた物語。大英帝国と呼ばれ世界の大半を支配していた19世紀末のイギリスは、人口の3%にも満たない「上流階級」の人間たちによって支配されていた。貴族階級にあぐらをかいていたモリアーティ家を乗っ取った主人公たちは、階級制度に反旗をひるがえし、腐敗した社会を変えるべく悪の道を突き進む。
時は19世紀末、大英帝国最盛期のロンドン。生まれ落ちた家によって一生の身分が決まり、必然的に人間同士の間に差別を生む。深く根付いた階級制度に辟易するモリアーティ伯爵家の長子アルバートは、ある日慰問に訪れた孤児院で孤児の兄弟と出会う。神に祈る十字架の前で、正しく悪の道を説く孤児の魂に共感したアルバートは、彼らを自分の屋敷へ養子として迎え入れる。階級制度を振りかざしていた実の両親と本物の「ウィリアム」を火事の事故に見せかけて殺害し、3人はモリアーティ家の全てを手に入れることに成功。そして、ウィリアムとなった主人公は、ダラムの大学の若き天才教授として名を馳せながら、裏では世界を浄化するべく暗躍する。
森博嗣のミステリー小説『すべてがFになる』のコミカライズ作品。N大工学部建築学科助教授の犀川創平(さいかわそうへい)とN大生の西之園萌絵(にしのそのもえ)は、ゼミ合宿で世紀の天才として知られる真賀田四季(まがた しき)に会うために孤島を訪れる。真賀田研究所を訪れた2人が目撃したのは、ウエディングドレス姿で両手足を切断された死体だった。
孤島に建てられた研究所で、隔離された生活を送る世紀の天才である真賀田四季。彼女は9歳の時にプリンストン大学のマスターを授与され、11歳でMITの博士号を取得した天才プログラマだ。しかし彼女は天才とは別の、14歳で両親を殺害したということで注目を浴びた。心神喪失ということで無罪になった彼女は世間から姿を消し、孤島の研究所で研究を続けていた。その場所にN大工学部助教授の犀川と、N大生の萌絵たちがゼミ合宿でやってくる。他のゼミ生たちがキャンプの夜を楽しんでいる中、真賀田研究所を訪れた犀川と萌絵が密室の中で目撃したのは、両手足を切断されたウエディングドレス姿の死体だった。出入り口には監視カメラがあり、犯人の姿は映っていない。密室で起こった殺人事件に、助教授と生徒である犀川&萌絵コンビが挑む。