15世紀にヨーロッパで勃発したフス戦争を題材に、ひとりの少女の戦いを描いた戦記漫画。主人公のシャールカは、ボヘミア王国で暮らすごく普通の農民の娘だった。当時ボヘミアでは、ヤン・フスが始めた宗教改革が広がり始め、守旧派との衝突が深刻化しつつあった。そんな中、シャールカは聖ヨハネ騎士団のフス派狩りで両親を殺され、自身も凌辱されて行き倒れたところを偶然通りかかったフス派の英雄ヤン・ジシュカに救われる。この出逢いをきっかけに、シャールカの人生は一変していく。
フス戦争とは、ヤン・フスを中心とするキリスト教改革派と、彼らを異端としたカトリック及び神聖ローマ帝国の間で勃発した戦争である。この戦いは宗教戦争という側面に加え、画期的な戦術が実行されたことで、歴史的に大きな転換点のひとつとされている。中でも個人が携行可能な銃火器として、マスケット銃が初めて実戦投入された意義は大きい。これにより、騎士による突撃戦術が主流だった戦闘は、一変していくこととなる。銃は腕力が必要ないため、華奢な女性でも屈強な男性と同等の活躍が可能。主人公であるシャールカは、そんな新戦術の象徴的な存在となっていく。なお、タイトルの「乙女戦争」は男女の戦いを描いたチェコの有名な伝説であり、本作の主人公の名前はそのヒロインに因んだものだ。
14世紀、イングランドとフランスの間で勃発した「百年戦争」を題材とする本格戦記アクション漫画。主人公のジョン・ホークウッドは傭兵部隊「白鴉隊(はくあたい)」を率いる若き隊長である。彼を筆頭に曲者揃いの白鴉隊は、フランス各地の戦場をしたたかに生き抜いてきた。やがてホークウッドは、ノルマンディ公領カンタン城に駐留中、イングランドの王太子エドワードの軍勢と対峙する。この一戦をきっかけに、物語は大きく動き出す。
百年戦争とは、1337年から1453年にかけてイングランドとフランスの間で行われた戦いを指す。いくつかの休戦を挟みつつだが、文字通り百年以上にわたって続いた戦争である。そもそもの発端は、フィリップ6世によるフランス王位継承に、血縁であったイングランド王エドワード3世が異を唱え、自らが王位に就こうとしたことであった。やがてイングランドとフランスの対立は深刻化し、エドワード3世はフランスへの侵攻を開始する。ホークウッドは、そのイングランド軍と対峙。騎士道が重んじられた戦いの世で、勝つためには手段を選ばなかったホークウッドの軍は目覚ましい戦果を上げる。この戦いで傭兵としての実力を認められたホークウッドは、敵対していた王太子エドワードに雇用されることとなる。歴史的な戦争を傭兵の視点から描く、ユニークな戦記アクションだ。
鎌倉時代中期に起こった元寇を題材とした戦記漫画。主人公の朽井迅三郎は、義経流の武芸者であり、かつて鎌倉幕府の御家人として海賊討伐で目覚ましい活躍をした男である。しかし迅三郎は北条一門の内紛が原因で罪人とされ、対馬に流刑処分となる。ところが、迅三郎に課せられたのは単なる流刑ではなく、高麗から日本に迫る蒙古と戦うことだった。2018年7月にテレビアニメ化。
極東の島国という地理的な条件のせいもあり、日本は他国からの侵略を受けた経験が少ない。それ故にいわゆる蒙古襲来、元寇は歴史的にも大きな出来事として記憶されている。元寇は鎌倉時代中期に、モンゴル帝国とその属国である高麗が、大船団を組んで日本に侵攻してきたことで勃発した戦争である。朽井迅三郎はまさにこの蒙古が襲来した対馬に流刑され、元寇の最前線で戦うことを余儀なくされる。流人ということもあり、当初対馬を治める宗氏一族の迅三郎への扱いは芳しいものではなかった。しかし、迅三郎は義経流兵法者としての実力と、戦の勘所に対する鋭い嗅覚で頭角を現し、対馬の防衛に欠かせない存在となっていく。
明治新政府と旧幕府勢力の間で勃発した戊辰戦争を題材とする大河歴史漫画。江戸幕府の旗本でロシア留学を経験した宇津木兵馬と、薩摩藩士でロンドン留学を経験した村田新八郎。旧幕府軍と明治新政府軍の若きエリートふたりの視点を中心に、時代の転換点を迎え、大きく揺れ動く日本を描いていく。兵馬と新八郎は立場は違えども、互いに敬意を抱く関係だった。そんなふたりは鳥羽伏見の戦いで、敵味方に分れて対峙する。
戊辰戦争は大政奉還によって樹立された明治新政府と、旧幕府勢力の間で行われた戦いである。主人公の宇津木兵馬は、オランダ語とフランス語が話せる上に、留学中にロシア貴族の令嬢、アンナと恋に落ち子供を授かるなど、旗本らしからぬ開明的な男である。だがロシアでは周囲の人々が兵馬とアンナの関係を快く思わず、彼はロシアからの脱出を余儀なくされる。この時に兵馬を手助けしたのが、薩摩藩からロンドンに留学中だった村田新八郎である。新たな日本を作るべく、異国で学んだ者同士として、兵馬と新八郎は互いに通じ合うものを感じていた。しかし帰国したふたりは、敵味方に分れて戦うこととなる。物語は兵馬と新八郎の数奇な運命と共に、戊辰戦争の内実をドラマティックに描いていく。
中国史上初の統一王朝となった秦の崩壊と、その後に起こった項羽と劉邦の戦いを描いた大河歴史ロマン漫画。主人公の張良は、秦によって滅ぼされた韓の遺臣。張良は復讐のため、秦の始皇帝暗殺を企て、滄海の村を訪れる。この地で天下無双の武力を持つ若者、窮奇を得た彼は暗殺計画を実行するも、惜しくも失敗。そこで張良は、軍師として秦を打倒しようと決意。自身の献策を受け入れる王の資質を持つ人物を捜し求めていく。
秦の始皇帝は、韓、趙、燕、魏、楚、斉の六国を滅ぼし、史上初の中国大陸統一という偉業を達成した。しかし統一の過程で六つの国を滅ぼしたことや、苛烈な改革などが原因となり、民衆の間に不満が高まっていく。やがて各地で反乱が発生し、秦は崩壊していく。この秦が崩壊していく過程で重要な役割を担ったのが、項羽と劉邦というふたりの人物だ。項羽は圧倒的な武力を備えた中国史でも屈指の猛将である。一方の劉邦はだらしない性格だが、人を惹きつける不思議な愛嬌の持ち主だった。主人公の張良は、この劉邦に仕えた軍師である。物語は史実に基づきながらも、随所に作者独自の創作が盛り込まれており、歴史を知る者にとっても、意外な展開が楽しめる。