言葉つうじねー! 言葉の壁に悩むマンガ116 Pt.

現実世界ではもちろん、マンガの世界でも言語というものは発生する。異なる言語を持つ者同士が出会った時、当然「言葉の壁」にぶつかるが、それを活かすも無視するも設定次第なのがマンガの世界である。今回は「言葉の壁」で悩むマンガをご紹介。

異世界召還×歴史上の偉人同士バトルという夢の詰まったアクションマンガ。 「織田信長」、「ラスプーチン」、「ビリー・ザ・キッド」など時代も国も違うキャラがぞくぞく登場する。作者「平野耕太」が得意とする「価値観の違うもの同士がお互いの主張をどこまでつらぬくか」を主軸にすえた盛大な国取り合戦作品。この異世界にはエルフやドワーフなどの亜人間が住んでおり、別の言語で会話している。彼等のセリフのフキダシにも、独自の言語が書き込まれる細かい設定もされている。途中でお互いにコミュニケーションが取れる様になるのだが、そこにはかの有名な「陰陽師」が絡んでいた。「自分」と「他者」を強く意識するアツい作品だ。

明治初頭、実在した英国人冒険家「イザベラ・バード」が見たニッポンという不思議の国を描く見聞録。「バード」さんとその通訳「イト」こと「伊藤」が出会う我々でさえ知らない当時の日本人の風俗、文化が非常に新鮮に映る。日本語が分からない「バード」さん目線で進むため、英語を話している人物以外のセリフは全て崩して書いた漢文の様に読めそうで読めない謎の音声表記だけだ。この知らない言語という不安やインパクトを視覚的に表すという描写がとても心に残る。それでも好奇心の強い「バード」さんは日本を見、彼等を知ろうとする。その情熱に感動する作品だ。

異世界召還されてしまった女子高生「ノリコ」。彼女が出会った不思議な青年「イザーク」。ふたりの知らないところで進む陰謀。そしてこの世界を震撼させる存在「目覚め」と「天上鬼」とは何か? ドキドキが止まらない。作者「ひかわきょうこ」のファンタジー傑作のひとつ。「ノリコ」はぼんやりした女の子だが、この世界で生き抜くと腹を決め、言葉を覚え始める……。が、言葉が全く分からず、初めは片言で話していた。その後上達していき、だいぶ話せる様になっていく。過程をしっかり描くことで「ノリコ」が異世界にいるのだという実感がひしひしと伝わってくる作品だ。

遥か未来、宇宙へと進出した人類は宇宙生命体「ヒディアーズ」と遭遇。人類生存の未来を賭けて「人類銀河同盟」を結成し、戦いを挑んでいた。銀河同盟軍のパイロット「レド」少尉は戦闘から離脱する母艦のワープに巻き込まれ、人型戦闘機「チェインバー」と共に地表の殆どが海に沈んだ地球へと転送されてしまった。巨大船団「ガルガンティア」に拾われた「レド」は、言語の違いに対し「チェインバー」を使い、翻訳化に成功。文明、思想が全く違う人たちとの出会いにより、「レド」だけではなく、人工知能を搭載した「チェインバー」も人類の幸せの定義や、自身の存在意義に対し、徐々に見つめなおしていった。この作品は、「ガルガンティア」と「人類銀河同盟」の思想、思考、意義などが大きく違うことに主人公はもちろん、船員、ヒロインの「エイミー」、果ては人工知能の「チェインバー」までが苦悩し、打ち解けていく様子が描かれている。正に言語化できない言葉の壁を越え、意思疎通に成功した作品と言えるだろう。