少女・チカが闘牛士を目指すヒューマンドラマ漫画。同性の恋人・マリアが妊娠したことで裏切りを知ったチカ。自ら死を選んで車道に立った彼女を救ったのは、闘牛士のマネージャーをしているアントニオだった。チカは彼から闘牛を学ぶことに。チカはマリアに見せつけるため、闘牛士として印象的な死を求めたのだ。だが闘牛士として歩み始めたチカは、他者に依存していた自分自身を見つめ直すようになる。
本作のタイトル「Golondrina(ゴロンドリーナ)」はスペイン語だ。主人公・チカに与えられた闘牛士としての名前である。意味は「つばめ」。チカがまるでつばめのように騒がしいことから名づけられた。チカは両親や、同性の恋人に捨てられた孤独な少女。彼女が心を許せる数少ない男友達であるセチュも、ゲイのため恋人にはなれない。そんな孤独感から他者からの承認欲求が強く、裏切った恋人に自分の死を見せつけるために闘牛士になったのだった。しかし伝統ある闘牛士の世界は厳しく、チカは己を見直すようになる。しかも目の前で、ライバルの闘牛士が大けがを負う。そのため彼は闘牛士を続けることはおろか、死ぬことさえできなくなってしまった。苛烈な現実を見せつけられ、チカは苦しむ。知られざる闘牛士の世界の内幕をじっくりと堪能できる骨太なヒューマンドラマ漫画だ。
国家監視の元、処刑人となった紅守黒湖(こうもり くろこ)が、数々の事件に挑むバイオレンス&アクション漫画。715人もの人間を殺害し、死刑囚となった女・黒湖。彼女はありとあらゆる殺人術に精通していた。そんな黒湖を「毒を持って毒を制す」の観点から凶悪犯を処刑するために働かせることに。だが彼女を待ち受ける事件は一筋縄ではいかぬものばかりだった。
本作のタイトル「MURCIELAGO(ムルシエラゴ)」はスペイン語だ。意味は「コウモリ」。主人公の名字、紅守(こうもり)から来ているのだろう。黒湖は筋金入りのサイコパス。残酷な現場に取り乱すこともなく、敵を殺傷するのにも全く躊躇しない。レズビアンで気に入った女性には親切で、将来見どころがありそうな少女を囲うこともある。黒湖には可愛らしい相棒・屠桜ひな子がいる。ひな子はまだ中学生だが、優れた運転技術を持っており、黒湖のドライバーとして活躍。そしてひな子の愛車がランボルギーニ社製の「ムルシエラゴ」である。彼女たちの前に現れるのは、拳銃も効かないほど異常な体質となってしまった麻薬常習者や、正義の名の元に大量殺人を犯す富豪など、常軌を逸した凶悪犯ばかり。そんな圧倒的な凶悪犯たちに敢然と立ち向かい、処刑してしまう過激すぎるバイオレンス漫画作品だ。
一流のイタリアンシェフを目指す主人公・伴省吾(ばん しょうご)の成長を描くヒューマンドラマ漫画。様々なイタリア料理を紹介するグルメ漫画でもある。福岡で暮らす省吾は、バイト先のイタリア料理店のオーナーシェフ・遠藤から、東京の弟弟子の店にヘルプに行ってくれないかと頼まれる。料理の腕に自信を持っていた省吾だったが、一流店の戦場のような調理場でその自信を打ち砕かれる。だが省吾は一流のシェフを目指し、一心不乱に研鑽していく。第53回小学館漫画賞一般向け部門受賞。2007年TVドラマ化。
本作のタイトル「バンビーノ」はイタリア語だ。意味は「坊ちゃん」。主人公の名字、伴ともかかっていて、バイト先のイタリア料理店でも「バンビ」と呼ばれていた。省吾はバイトをしながら調理師免許を取得、自信満々になっていた。ヘルプに入ったのは六本木で一番のイタリア料理店。その店の厨房は戦場のような忙しさで、作られる料理はどれもレベルが違う完成度の高さだった。ここでの省吾はまさに「バンビーノ」だった。だが遠藤が省吾を東京へ送り込んだのは、彼が一流の料理人になると見込んでのこと。その想いに応えるかのように、省吾は一人前のシェフになる決意をして大学を休学。地元に残した恋人とも別れ、一人東京で料理人の修行を続け、成長していくのだった。
モーリス・ルブランの小説『アルセーヌ・ルパン』シリーズのコミカライズ作品。後にベル・エポック(良き時代)と呼ばれる20世紀初頭のフランス。この時代に、ブルジョア相手に盗みを働く人物が話題を呼んでいた。かの者の名はアルセーヌ・ルパン。変装の名人で大胆不敵、神出鬼没の怪盗であり、芸術家、趣味人とも呼ばれていたその人である。
本作のタイトル「アバンチュリエ」はフランス語だ。冒険者、山師などの意味を持つ。またモーリス・ルブランの原作小説でも、ルパンが「怪盗紳士」を自称する時に、併せて使っている。本作の主人公・ルパンは誠実で勤勉だった両親が、ブルジョア階級によって不遇な死を遂げたことから、彼らに復讐すべく怪盗となった。彼は芸術家気質であり、自分の鮮やかな犯罪を世間の人々にお披露目しようとする。そんなルパンには頼りになる「ルパン一味」と呼ばれる仲間がいた。彼らの力もあって、ルパンはその名をフランス中に轟かせていた。誰もが知っている怪盗「アルセーヌ・ルパン」の名だが、ルブランの原作を読んでいる人は少なくなっている。この作品で「初代」の物語を知って、その魅力に触れて欲しい。
互いに関わらないようにして生きてきた異母兄弟の羽曳野凜(はびきの りん)と桐条緋生(きりじょう ひなせ)が、特殊な力を持つ者たちとの生死を賭けた争いに巻き込まれる、ダーク・ファンタジー漫画。大富豪・桐条家の血を引くために、桐条家に引取られた凛。彼は自分の周囲で次々と人が死ぬため、人との関りを極力避けていた。そんな凛を、桐条家の跡取りである異母兄弟の緋生は気にかけてくれていた。しかし緋生は凛のために命を落としてしまう。
タイトルの「メメント・モリ」はラテン語で「死を想え」という言葉。人はいつか死ぬという儚さを、忘れないようにと戒めるのに使われる。それゆえに今を楽しむといった趣旨の意味を持つこともある。本作の主人公・凛は首に「ⅩⅢ」の文字を持つ少年。タロットカードの大アルカナ「死神」にふられた数字だ。凛の意思に関わらず、彼はアルカナを名乗る者たちから命を狙われる。常に死がつきまとう凛は、極力ひとりでいた。だがある日、異母兄弟の緋生が凛を庇って死亡。凛は謎の男の導きによって緋生を「死狗(イヌ)」として生き返らせた。しかし凛と緋生の魂は繋がっていて、凛が死ねば緋生も死ぬ。凛は緋生のために、他者を犠牲にする選択を迫られるのだった。