実在の戦国武将・古田織部(ふるたおりべ)を主人公とし、その茶の湯と物欲の道に焦点をあてた文化系歴史長編ギャグ漫画。古田左介(後の織部)が織田信長・豊臣秀吉に仕えながらも、武人としての出世と数奇的趣味の間に葛藤する姿をコミカルに描いている。タイトルの「へうげもの」とは「ひょうげもの」と読み、おどけものといった意味で、数奇者としての織部を指している。史実を交えながら、織部のへうげものとしての道を描いた作品である。2011年にテレビアニメ化。
本作の信長は芸術を好む人物である。唐草牡丹の南蛮の服を愛用するなど、その類まれなセンスで織部を魅了する。性格は短気であり、気難しく粗暴な面も見られるが、織部の数奇者ぶりを好み、その驚いた顔を見るのを楽しみとしている。第1話で織部は信長より松永久秀への使者を仰せつかるも、松永の持つ幻の茶釜、通称「平グモ」に興味津々。しかし松永は平グモとともに爆発、自害してしまう。織部は四散した平グモの蓋の破片を回収し、信長のもとに持参する。やけどを顧みずに破片を拾った織部に対し信長は「火中の栗の皮を拾った」と久々の大笑いをし、織部をひょうげた奴だが何かしでかしそうだと評価する。信長は物語途中で退場するも、非常に魅力的な人物として描かれている。
戦国時代にタイムスリップした高校生の主人公が、瓜二つである織田信長と入れ替わり、天下人として乱世を生きる歴史SF軍記。ひょんなことから戦国時代に飛ばされた、普通の高校生・サブロー。彼がそこで出会ったのは自身に瓜二つの信長であった。病弱な信長にサブローは自分と入れ替わってほしいと懇願され、「織田信長」として生きていくことになる。2014年にテレビアニメ化およびテレビドラマ化され、2016年に実写映画化された。
本作での信長は歴史上の逸話や通説とは異なり、利発だが病弱な人物。乱世で生き抜くのが難しいと城から出奔した信長が、タイムスリップしてきたサブローと出会って入れ替わることで物語は動き出す。「織田信長」として生きることとなった、現代の高校生のサブローだが、性格は信長本人とは対照的で活発、身体能力も高い。サブローはなるべく記憶にある史実に沿った言動を試みるが、奇しくも自身の自然なふるまいこそが史実どおりのものだった。織田家の繁栄に伴い、サブローは徐々に武将としての品格を身につけ、天下人として成長していく。重厚な歴史物語であるが、サブローの奔放な性格もあってか、読みにくさは全く感じられない。歴史に翻弄されるも進み続けるサブローの成長から読者は目が離せなくなるだろう。
平成の時代から戦国時代へとタイムスリップしてしまった主人公・ケンが織田信長の料理頭として取り立てられ、歴史上の出来事や人物と、料理を通して関わりあっていく戦国グルメ漫画。料理や歴史以外の多くの記憶を失っているケン。だが、その料理の腕前は確かで、京でたちまち評判となる。その噂を聞きつけてやってきた信長は、ケンの料理の腕に興味を持ち料理頭として重用、そして物語は動き始める。2013年、2014年に実写ドラマ化。
本作の信長は、まず暴君然とした冷酷かつ残忍な面が目立つ。その点では歴史上の逸話に近い性格といえるが、同時にかなりの切れ者であり、大局を見定める目を持つ。しかし、その言動は一見粗暴に映るため、周囲が真意を読みとれないことがしばしばある。一方で徹底的な実力主義・合理主義者であるため、ケンの料理腕のみならず、人物としての真価をも見抜き、高く評価し重用している。そのためケンには、しばしば無理難題をふっかけ、それらは料理の域を超えることさえある。味覚に関しては、甘党で南蛮の味を好み、ケンの得意とする西洋料理を受け止める柔軟さを持つ。ケン自身も信長に対する忠義の念が徐々に強くなっており、歴史上での信長の最期を知りつつも、本作の信長の行く末を見届けようと考えている。
タイムスリップしてきた織田信長が、現代日本で教鞭をとるという歴史SF教育コメディ。高校教師・藤倉健一は、雷に打たれ、戦国時代にタイムスリップし信長に仕える。そして、「本能寺の変」のその日に再び落雷に遭い、現代に舞い戻ってきたものの信長まで連れてきてしまう。健一宅に居候として入居した信長は、高校で教鞭をとることとなる。『ムダヅモ無き改革』、『機動戦士ガンダムさん』といったギャグ漫画を多数手がける作者の歴史ギャグが冴えわたる。
本作はまず、信長が現代にタイムスリップし、教鞭をとるという設定が面白い。歴史の授業で、教科書に載っていない知識を見せつけたり、不良生徒を日本刀で退散させるなど、戦国時代に生きた武将ならではのエピソードが楽しい。学園ドラマとしても、信長が彼なりの方法で、不良生徒を更生させたり、モンスターペアレントと対決をしたりとなかなかの熱血教師ぶりで、ぐいぐい読ませてくれる展開が多い。また、信長の現代日本への適応の早さが可笑しく、テレビに驚きもせず、スマートフォンを欲しがったりするのもお茶目で愉快である。信長の歴史上のイメージを損なうことなく、新たな個性ある魅力的なキャラクターとして描写し、教育コメディに昇華させている作者の手腕は見事である。
セレブの中のセレブ、セレブの最上級である「セレベスト」をきわめんとする主人公・織田信長らが、「おもてなし」で競う、ラグジュアリー・コメディ漫画。財団法人「第六天魔」会長である信長が全セレベスト界の統一を目的に、歴史上の人物らと「おもてなし」を競いあうという異色のギャグ漫画だ。「[織田信長関連作品史上、最も織田信長に関係がない作品ランキング]堂々の第1位」というキャッチコピーも強烈である。続編に『セレベスト織田信長〜贅沢黙示録〜』がある。
本作の特徴は、絵がとにかく濃い点にある。紙面から匂い立つようである。信長は豪胆な人物で、まさに「セレベスト」として描かれ、伊達政宗や元部下の豊臣秀吉らと「おもてなし」対決で豪奢を競っていく。そういった対決のひとコマひとコマが、怒濤のごとく描写され、ギャグ漫画ながら手に汗を握り、圧倒されてしまう凄味がある。非常に突飛な設定ながらも、勢いで有無を言わさず読ませてくる作品だ。その熱い戦いは、大人のバトル漫画と形容してもよいであろう。この世界観、一度はまればきっと抜け出せない極上肉のようである。なお、ラッパーとしても活動している作者の手によるイメージソングが、動画サイトにアップされているので、ぜひ併せて楽しんでほしい。