肉を喰らうと不老不死となる人魚を巡って起きる怪奇ファンタジー作品。五百年前、漁師をしていた青年・湧太は、漁師仲間と共に網にかかった人魚を食べた。仲間は死に、ひとり生き残った湧太は不老不死となる。人間に戻る方法を探し旅をしていた湧太は、人魚の肉で育てられた少女・真魚と出会う。
『人魚の森』『人魚の傷』『夜叉の瞳』などの短編~中編からなる本シリーズ。主人公の湧太は、漁師として暮らしていた普通の青年。偶然手に入れた人魚の肉を食べることになるが、それで不老不死になるとは思っていなかった。だが一緒に食べた仲間が死んで、自分だけが生き残ったことで苦しみ、五百年以上も人間に戻る手掛かりを求めてさまようことになる。ようやくたどり着いた人魚の里で、湧太は謎の少女・真魚と出会う。真魚は人魚たちの命を保つための贄として、人魚の肉で育てられた少女だった。人魚たちの生態を知り、人間に戻る術もないと言われた湧太は真魚を連れて里から逃げ出す。旅を続けるふたりは、人魚がもたらす不老不死を巡るいくつもの騒動や悲劇に巻き込まれていく。第20回星雲賞コミック部門を受賞。
人魚姫が、人間に釣られてしまった魚たちを食して弔う異色のグルメコメディ漫画。主人公のエラは、海底にある王宮で暮らしていた。友だちである魚たちからも慕われる、心優しい人魚の王女だ。ある日、彼女の友人であるカツオの鰹男が人間に釣られてしまう。エラは鰹男を弔うために地上を訪れるが、そこで人間たちが調理した魚料理の味に魅せられてしまう。
主人公のエラは美しい人魚姫で、父である海の王が治める平和な海の国に暮らしている。エラは魚たちにも慕われ、ケンカの仲裁や共食いを止めるよう進言する心優しさを持っている。ある日、彼女は人間に釣られた友だち・鰹男を弔うために地上に出る。そこで、供養のために食べた鰹男の美味しさに魅了されてしまう。以降、エラは釣られた魚の弔いのためと地上の魚料理店に通い詰める。当初、エラは友達である彼らを食すことに抵抗を感じていた。しかし彼女は心の中で謝罪しながらも、魚たちの美味しさに箸を止めることができない。やがて人魚の身でありながら、人間たちの出す旬の魚料理の本まで読むようになってしまう。コメディタッチながらも、どこか悲哀と狂気をはらんだグルメ漫画だ。
人間の男の子に恋した人魚姫が巻き起こすシュールなギャグ漫画。主人公である人魚姫のアルカは、嵐の夜に助けた人間の少年・亮に恋をした。彼と再会するために、声と引き換えに人間の足をもらったアルカ。しかしその足は精神が不安定になると痒くなってしまう。しかも亮は、イケメンである以外に取り柄がない。空気の読めない残念な性格をした、いじめられっ子だった。
独特のセンスのギャグ漫画家・尾玉なみえの描く人魚姫の恋物語。人魚姫のアルカが人間の少年に恋をして、声を引き換えに足を手に入れた地上に行くまでは良く知られている「人魚姫」の展開通り。しかし恋した少年の亮は王子様でも何でもなく、番長のデコ太にいじめられ、空気の読めない性格も災いしクラスで孤立するいじめられっ子だった。だが亮は、超マイペースの母・ママンの謎の教育方針によって生きることに精一杯で他のことは考えられないような性格に育っていた。思い人である亮が他の誰かと結ばれると、人間化した人魚は泡になってしまうので、アルカは亮がそんな性格で良かったと許容する。だがアルカは、自分が本当に亮を好きなのか悩み始める。シュールなギャグの中に、切なさやホロリとくるエピソードが詰められた作品だ。
人魚姫と人間の間に産まれた三人の人魚たちの愛の物語。NYでダンサーをしていた青年・アートは、ある日車を運転していた時記憶喪失の少年・ジミーと接触事故を起こしてしまう。それがきっかけでアートはジミーを引き取り、一緒に暮らすようになる。だが、ジミーは人間ではなかった。ジミーは宇宙を泳ぐ「人魚族」であり、やがて女性の体となって産卵するため地球を訪れていたのだった。
人魚姫・セイラと人間の間に産まれたジミー、セツ、ティルトの三つ子。かつてセイラと人間の恋によって人魚族は大きな厄災を被った。そしてセイラの子が人魚族と結ばれなければ、今度は人間の世界に災いが起きると予言された。そのような中、ジミーは記憶を喪い、セツやティルトとはぐれてしまう。そんなジミーは、アートという人間の青年に拾われた。彼は天才少年と呼ばれたダンサーだったが、最近はオーディションにも連敗中。しかしジミーの言葉によって再起を目指すことになる。ジミーは共に暮らすことになったアートに恋をするが、産卵のため体の女性化が進んでいく。やがて女性となったジミーは声を喪失。その一方でジミーと結ばれるはずだった人魚族の青年・ショナが現れ、セツは彼に恋をする。運命に翻弄されながらも、愛に生きる人魚たちの物語だ。
人魚姫から生まれた少女・七海をめぐる恋と友情の物語。主人公・七海は幼馴染の竹流に恋する普通の少女。七海は亡き母の遺言で、15歳まで海に入ってはいけないと言われていた。ある日、彼女の前に謎の転校生・水尾が現れる。水尾は七海の母が人魚であり、七海はその血を引いていると告げる。仲間を求めていた水尾は、竹流を利用して七海を海に連れ出すのだった。
主人公の・七海は、泳ぐのが苦手な女子中学生。彼女は母からの遺言で、15歳の誕生日まで海に入ってはいけないと言われていた。そんな七海は幼馴染の竹流のことが好きだが、彼の前では素直になることができない。ある日、彼らの前に現れた謎めいた美少女・水尾。彼女は人魚で、かつて人魚だった七海の母の仲間であった。しかし七海の母は人間に恋をして地上に行き、人間として亡くなったのだ。水尾は、七海が15歳までに海の水に触れれば人魚に戻ると説明し、海に連れて行こうとする。だが竹流が好きな七海は人間でいたいと願う。水尾は二人の仲を裂こうと画策するが…。人間と人魚の宿命の間で揺れる、切なくも優しい恋物語だ。