時は16世紀初頭、フィレンツェ。貴族スパレッティ家の娘として生まれた“アルテ”。何不自由ない箱庭育ちのお嬢様だった。小さい頃から絵にのめり込んでいたアルテ、母はその趣味を快くは思っていなかったが、父は応援し、絵を描くための様々な設備を整えていてくれた。
裕福とは言えないスパレッティ家。父の急死をもってアルテの生活は激変。女性は遺産を相続できないとされていた時代、良縁を求める女性には、多くの持参金が必要とされていたのだ。しかし家計を調べてみると僅かな額しか残されていない。娘の嫁ぎ先を探す母に対してアルテは反発する。
当時の女性には、現代のような権利が認められておらず、女性は家庭内で主人を支えるために、よく言う事を聞き、子を産み、そして育てる。それだけしか求められていなかった。
“女”だからといって制限を受ける時代。そんな時代に怒りを感じるアルテ。彼女は結婚という道を選ばずに、好きな絵画の技術を磨いて、職人になる道を選ぶ。
当然、女性が働く事。とくに職人になるなんて自立する事に理解がなかった時代。アルテは様々な困難に立ち向かいながら、夢へ向かって時代と闘っていく。
女性の立場というのは時代によって変わる。今の日本では男女平等。むしろ場所によっては女性が有利な事もあるが、それでも社会全体として見た場合、まだまだ女性の活躍が足りないと言われている。ルネサンス期のフィレンツェもそういう時代だった。アルテは画家を目指して大小様々な工房へと弟子入りを希望するが、どの工房も“女”だからと言う事で断られてしまう。そんな中唯一チャンスをくれたのが、一人で工房を切り盛りしている“レオ”。彼に与えられたチャンス。それはキャンバスを一晩で20枚仕上げる。という作業だった。
慣れた職人でも数枚がやっとと言うこの作業。レオは無理だと思ってわざと行わせたのだが、アルテは見事にやり遂げる。貴族のお嬢さんのお遊びだろうと思っていたレオは、彼女の決意を見て弟子入りを認めるのであった。
寡黙で怖い親方のレオ、彼は男女の区別をせず弟子としてアルテを指導していく。やがてその姿にだんだんと胸が苦しくなっていくアルテ。これって何なの?戸惑うアルテ。もちろんそれは初恋なのだが…。果たしてどうなっていくのだろうか。
職人になる為に、反骨精神で努力を続けるアルテ。読めばきっとアルテのトリコになるはずだ。