プロサッカーチームでキャプテンを務める主人公が、試合や練習で落ち込んだときにパフェを食べて癒されていく、日常グルメ漫画。伊勢裕香(いせゆうか)は、女子のプロサッカーチームに所属する選手。キャプテンを務めており、1部リーグ昇格を目指して日々チームメイトを叱咤激励していた。練習後はすぐに1人で帰るため、チームメイトにはサッカーにストイックだと思われている裕香。しかし、実際はお目当てのパフェを出す店に駆け込み、味をサッカーにたとえながら堪能するほどの無類のパフェ好きだった。
パフェ用の細長いグラスにアイスクリームとフルーツを主体に盛り付け、他に店独自の食材を飾っていく。別腹どころか食事のメインたりえる料理であるが、シンプルだからこそ個性が際立つと言えるだろう。裕香がパフェにハマり、食べ歩いているのもうなずける。かつてはフランスでプレイしていたこともある有望選手だが、現在は薄給であるためアルバイトをしながらプロ選手生活を続ける日々だ。チームのキャプテンとして仲間に厳しく接することも多く、リーダーとして考えなければならないことも多い。ストレスを抱えた裕香を癒す存在がパフェであり、時には悩みから脱出するヒントを与えてくれる救世主でもあるのだ。登場するのは実在の店舗なので、裕香が食べた味を自分で味わうこともできる。プロサッカー選手らしい食レポを堪能するのも一興だろう。
地方から東京に出てきてパティシエとして働くという夢を叶えた主人公が、癒しのために市販のお菓子を美味しくアレンジして楽しんでいく、日常アレンジ料理漫画。堤さんこと堤今日子は、雑誌やテレビにも紹介される都内のケーキ店で働くパティシエ。自身のケーキを紹介できる機会を得たが、実際に紹介されたのは店長の作ったケーキ。自分の実力不足のせいなのかと落ち込んだ堤さんは、市販されている甘い物を使用する、カロリー無視の禁断のレシピを試すのだった。
甘い物とカロリーは切っても切れない関係だ。砂糖や小麦粉、バターなど、カロリーの高さがほぼ約束されている原材料ばかりだ。それでも人はご褒美感覚で甘い物を口にする。堤さんは奈良県から上京し、都内でも有名なケーキ店で働くパティシエだ。お店ではローカロリーのケーキを中心に作っており、ファンはいるものの、結果が出ない自分に焦りを感じている。落ち込んでいるとき、堤さんが作るのは自分を甘やかすためのスイーツだ。全工程を最初から自分で作るわけではなく市販の商品をアレンジするのである。足していくのはバターやはちみつなど、高カロリーだからと敬遠されがちな食材だ。それをふんだんに使うのだから、背徳感や贅沢感も格別だ。いつもならやってはいけないことをしているとき、人は想像以上に幸福感を覚える。堤さんがハマる罪の味作り、これはやめられそうにない。
お菓子会社を舞台に、交際歴が一切ない主人公と、眉目秀麗で敏腕な部下がブログをきっかけに距離を縮めていく純愛ラブストーリー。お菓子会社の企画開発部の課長を務めている藤崎麗香は32歳。クールな美貌の持ち主だがロクな男性に言い寄られたことがなく、男性経験は皆無だった。密かな趣味はエッチな体験を創作で書くブログの更新。誰かと実際に身体を重ねることに興味を持てないでいた麗香だったが、眉目秀麗で女性の扱いに慣れていそうな部下、長谷川が自分のブログの読者であることを知ってしまう。
本作の舞台はお菓子会社である。作中には商品企画の過程を見ることができるが、お菓子作りそのものが本題ではない。お仕事はもちろんしているのだが、中心となるのは企画開発部に勤務する麗香と部下の長谷川の恋愛模様。二人の関係で重要なキーになるのが匂いだ。商品開発をする都合上、麗香たち社員は香水などの匂いのするものをつけることが禁止されている。それなのに、ちょっとしたきっかけでお互いの身体から甘い匂いがすることに気が付いてしまった。互いに男女として意識するきっかけになるのだが、甘い匂いというところがお菓子会社らしいなと感じられる。それが互いを意識するきっかけとなるのだから、どこかロマンが感じられる。
厳しい指導で不良たちから恐れられているが、実は甘味が大好きな教師と、そんな教師の一面を知ってしまった生徒の日常スイーツコメディ。高城心(たかぎしん)はとあるチェーンの喫茶店でアルバイトをしている女子高校生。ある日勤務しているお店に、見覚えのある男性が来店する。それは心が通う高校の教師で、厳しい指導で生徒から恐れられている「カズセン」こと数一樹(かずいっき)だった。店の名物でもあるスイーツを注文し堪能する数の姿には、怖さは微塵も感じられない。普段とのギャップに心は思わず可愛いと感じてしまうのだった。
味覚に性別や人格、容姿は全く関係ないのだが、強面な男性や厳しい性格の人が甘い物が好きだと言われると、ギャップを感じてしまうだろう。数一樹は高校の数学教師である。その厳しい指導は不良少年ですら震えあがるほどで、学校では「悪魔のカズセン」と呼ばれ恐れられる存在だ。眉間の深いしわに鋭い眼光が特徴的なインテリ系で、気難しいと評されるような外見をしているが、実は甘い物が大好き。どれくらいなのかと言えば、心のバイト先の某有名チェーンの喫茶店の名物である、デニッシュにソフトクリームを載せたスイーツを想像してほしい。あれを普通サイズで2個、シロップたっぷりで食べられるほどの、かなりの甘党である。食べているときは表情がゆるゆるに溶けてしまい、もはや同一人物とは思えないほどの変化だ。甘い物にこだわりが強いカズセンであるが、見習うべきなのは摂取したカロリーを消費する努力をしているところだろう。至福の時は厳しさと隣り合わせで存在するというわけだ。
とある海沿いの田舎町を舞台に、駄菓子マニアで大手のお菓子メーカーの社長令嬢が自分の夢のために、実家の駄菓子屋を継ぎたくない主人公に継ぐ気を起こさせようと画策していく、ハイテンション駄菓子コメディ。海沿いの半島にある田舎町に住む鹿田ココノツは高校1年生。実家は8代続く駄菓子屋を営んでおり、父のヨウも後を継いでほしいと言っているが、ココノツには漫画家になるという夢があった。ある日店番を巡って親子喧嘩をしていた2人の前に、1人の都会的な少女が現れる。2016年、2018年にテレビアニメが放送された。
駄菓子は子どもの味方である。とにかく単価が安い。子どものお小遣いはとにかく少ないが、美味しい物はなるべくたくさん食べたいし、成長期だからお腹もすきやすい。そんな時、10円や20円という子どもでも出せる範囲の金額で食べ物が買える。しかも駄菓子は安かろう不味かろうということもなく、子どもの口に入るものだから原材料に気を遣って作られているし、何より美味しい。駄菓子メーカーの安くて安心で美味しい物を作ろうという姿勢には頭が下がる。庶民なら誰もが一度はお世話になっているであろう駄菓子であるが、菓子であるため当然甘い物は多い。きなこ棒やあんずボー、黒糖でコーティングされた麩菓子にちょっと酸っぱい味が特徴のヨーグルなど枚挙にいとまがない。本作にはそんな実在の駄菓子が多数登場し、菓子メーカーの社長令嬢である枝垂(しだれ)ほたるが、駄菓子の魅力を熱弁してくれる。幼い頃は駄菓子をお腹いっぱい食べたいと誰もが夢想しただろう。ほたるの駄菓子への圧倒的な熱が、あの頃の憧れを思い出させてくれる。