僧侶で医師の松本照円(しょうえん)が、患者の命も心も救おうと奮闘する姿を描いた医療漫画。あおば台病院救命救急センターに勤務する松本は、得度をしてから医師になったというユニークな経歴の持ち主。医師兼僧侶として雇われ、院内の礼拝室では毎日のお勤めも行っている。松本は、「病院内に僧衣を着た坊主がいるなんて縁起が悪い」「深夜に念仏が聞こえてきて怖い」といったクレームにも負けず、常に「僧医」として、命と真摯に向き合う。
本作の主人公・松本は、肉を食べ酒も飲む生臭坊主だが、「病院付き僧侶(チャプレン)」としての業務を「裏稼業」とは思っておらず、仏の教えを患者のより良い人生のために役立てたいと思っている。小学生の頃に川へ釣り行き、誘った友達が目の前で溺れて命を落としてしまったという悲しい過去を持つ。その罪悪感から、人をきちんと成仏させられるよう僧侶になり、人の命をきちんと救えるよう医師になった。とはいえ、死は怖くないと説く僧侶と、人命救助が最優先の救急医という異なる2つの立場から、患者との向き合い方に苦悩することもしばしばだ。重篤な患者ばかりが運び込まれる過酷な医療の最前線で、命と戦う松本の勇姿に胸が熱くなる。
高校生にして解体会社社長の工具楽我聞(くぐらがもん)が、先祖より代々伝わる仙術を武器に、様々なものを破壊していくバトルアクション漫画。先代社長で父の工具楽我也(くぐらがなり)が行方不明になったため、解体業者「工具楽屋株式会社」の第25代社長に就任した我聞。社員らと共に業務を遂行する姿はもちろん、母をすでに亡くしている我聞が、妹弟を養ったり、部活動など高校生としての日常を楽しんだりする様子も描かれている。作者・藤木俊の初連載作品。
江戸時代から続いている工具楽屋は、表向きは普通の解体業者だが、政府や一流企業などが隠密に処理したい物を破壊する「こわしや」という「裏稼業」を持つ。工具楽屋の社長は代々、素手による破壊術「工具楽流仙術」の使い手。我聞も、鍛錬の結果、ビルなどの建造物の他に、特殊なナイフや危険な薬品なども破壊&解体する能力を身に付けている。同じ御川高校に通う有能な秘書や、生き字引のような専務、才能あふれる技術部長や営業部長ら多彩な社員たち。彼らと共に、工具楽屋を切り盛りし、父・我也が行方不明になった謎にも迫る本作。敵対する企業「真芝グループ」との因縁の対決に決着をつける我聞の活躍に注目だ。
元・超一流暗殺忍者だった主人公が、襲い来る敵から、手に入れた家族との幸せな生活を守ろうとするバトルアクション。祭のぶ夫は、普通の人間・綾を愛してしまったことで、忍びの掟を破ったとして忍者界から追放される。忍者の里を出たのぶ夫は、素性を隠しながらも綾と結婚し二児をもうけ、慎ましくも幸せな毎日を送っていた。そんな穏やかな生活を脅かすのは、美しい綾を狙う男共や、忍者界からの刺客たち。のぶ夫は、最強暗殺忍者としての力を発揮し、人知れず敵を打ちのめす。
のぶ夫は、会社では「仕事ができない」と上司に叱責され、町内会ではいいように雑務を押し付けられ、家では姑に「虫」呼ばわりされるような、気弱で口下手な冴えないサラリーマン。お世辞にも整った顔立ちとは言いがたいが、妻や子どもたちからは心から愛されており、のぶ夫もこの上ない幸せを感じていた。そんなのぶ夫の「裏稼業」は、最強で最凶の暗殺忍者。幼い頃から過酷な訓練に耐え、忍びの里のエースとして活躍していた彼の強さは絶対的。卑劣な御曹司やロリコン教師、パワハラ上司や変態ストーカーなど、のぶ夫の“慎ましく幸せな生活”を脅かす敵には容赦しない。冴えないサラリーマンの正体は最強のヒーローという、爽快な展開を楽しめる作品だ。
精神と記憶を破壊することができる暗殺者が主人公のサスペンス漫画。第二次世界大戦中にドイツの科学力をもって生み出された暗殺者・MIND ASSASSIN。日本人とドイツ人のクォーター・奥森かずいはその孫にあたり、記憶を破壊する超能力を「奥森医院」での診療に活かしながら、町のお医者さんとして、同居人・虎弥太(こやた)と共に生活している。作者・かずはじめのデビュー作品で、1995年にドラマCD化、1999年に小説化された。
奥森に受け継がれたのは「頭に外部から触れるだけでその生き物の精神と記憶を破壊できる」という特殊能力。普段は両耳につけた特殊なピアスによって力を抑制しているが、相手のつらく悲しい記憶のみを部分的に破壊し、町医者として人々を救っている。しかし、「裏稼業」のMIND ASSASSIN(暗殺者)として活動する時にはピアスを外し、黒い服に着替える。助けを求めてきた人を苦しめる加害者の元へ向かい、人知れず成敗する。報酬や依頼によって暗殺が遂行されることはないところが特徴的な本作。「奥森医院」を訪れる患者たちとの物語の他に、父にまつわる事件や、虎弥太との出会いの物語、奥森自身の過去も描かれている。
16歳の星華・モラニスが依頼を解決していく探偵少女漫画。11年前、アメリカで起きた東洋人男性の殺人事件。現場で発見された当時5歳の星華は、自分の本名や両親のことなど一切の記憶を失っていた。その後は、事件を担当した警察官ダン・モラニスの養女となる。しかし、14歳の時にダンが被弾して死亡してしまったため、彼の親友・小野島陽一に引き取られる。日本で暮らすことになった星華は、自分の本当の家族を捜すため、高校に通いながら探偵として活動を始めた。
主人公の星華は名門女子校に通っている高校生。「裏稼業」の探偵業務を優先する際は、たびたび学校を休むため、体が弱いという“設定”にしている。そんな星華が1人で切り盛りしている「小野島探偵事務所」は、巷で「早い・安い・確実」と噂になるほどの評判だ。しかし、彼女の正体を知っているのは、所長を務める小野島と、同じ学校に通う緑川まりな、運動神経抜群の藤崎飛鳥の3人だけ。まりなと飛鳥は、星華の探偵助手として行動を共にすることも多く、力を合わせて、不倫調査や行方不明事件、依頼人の探し物などの事件を解決していく。星華は自分の本名や本当の家族のことを知ることができるのか、過去が明らかになる結末まで、その目でしかと見届けてほしい。