こぐまのパティシエが店主を務めるケーキ屋さんが舞台の、シュールでハートウォーミングな4コマ漫画。ちょっと世間知らずなこぐまの店主と常連客の青年とのやりとりを中心に展開する。作者は、SNS漫画家のカメントツ。友人のために描いた本作の1話目をTwitterで公開したところ、「かわいい」「癒される」とたちまち評判になり、1話しか公開されていないにもかかわらず書籍化が決定したという稀有な作品だ。
ごぐまが営むケーキ屋さんという、シュールな設定が癒しを呼ぶ本作。ケーキ屋さんのショーケースには、ショートケーキやモンブラン、チーズケーキといったオーソドックスなケーキが並ぶ。世間の事情に疎いごぐまは、ケーキの値段を決められなかったり、紙幣より銀色の硬貨を喜んだりする等、店主としては少々頼りない。しかし、常連の青年は「作るケーキは絶品だ」と絶賛。お客が増えすぎて困った店主をみかねた青年は、自ら店員として手伝うことを申し出て、その後もこぐまと一緒に働いている。ケーキの材料は、うさぎが営む「スーパーうさぎ」で購入。支払いをどんぐりで行うあたりも癒し度が高い本作らしい。
依頼人が奪われたものを取り戻す奪還屋(通称GetBackers)を生業にしている二人組が主人公のバトル漫画。美堂蛮(みどうばん)と天野銀次(あまのぎんじ)は、裏新宿と呼ばれるスラム街を根城に、毎回トラブルに巻き込まれながらも依頼をこなしている。実は2人は特殊な能力を操ることができるため、物語が進むにつれて登場する、個性豊かな能力者との異能力バトルが展開される点も見どころだ。2002〜2003年にテレビアニメ化された。
蛮と銀次が営む奪還屋は、請け負う仕事が多岐にわたる。それは、悪ガキに奪われたゲームソフトを取り返すといったしょぼい依頼から、すり替えられてしまったバイオリンの名器・トラディバリウスや、存在しないはずのゴッホの名画「13枚目のひまわり」を奪還するといった難しい依頼まで様々。しかし、成功率100%を誇るだけあり、無事に奪い返している。作中では、奪還屋と依頼人をつなぐ「仲介屋」や、依頼された品を目的地まで運ぶ「運び屋」、依頼された品なら何でも奪い取る「奪い屋」、依頼人や指定の品を護り抜く「護り屋」といった様々な〇〇屋も登場。彼らもまた、蛮と銀次と同様に特殊な能力を持つ能力者である場合が多い。依頼を巡って〇〇屋同士で協力したり対立することもある。
代々受け継がれてきた仙術を駆使し、世にはびこる悪を破壊していくアクション作品。主人公の工具楽我聞(くぐらがもん)は、高校生ながらも江戸時代から続くという老舗の解体業「工具楽屋」の25代目社長。学生生活のかたわら、ビルの解体作業といった仕事を請け負う日々を送っている。ごく普通の解体業者に見える「工具楽屋」だが、それは表の顔。実は、政府や企業の依頼を受けて、彼らが密かに葬り去りたいあらゆるものを壊す裏稼業「こわしや」を営んでいた。
我聞が社長を務める「工具楽屋」が、「こわしや」として依頼を受けて破壊するのは、化学兵器プラントや世間には公にできない物を盗みだした窃盗団など、特殊なものばかり。当然、現場には危険が伴うが、社長就任から日も浅く、「こわしや」としてはまだまだの我聞を、優秀な社員たちが支えている。我聞と同級生ながら社長秘書兼経理部長を務める國生陽菜(こくしょうはるな)は、冷静なオペレーションで戦闘をサポート。技術部長の森永優(もりながゆう)は、特殊な武器や爆弾製造に長けており、営業部長の辻原蛍司(つじはらけいじ)は、我聞の仙術の師匠でもある。戦時中は特殊部隊にいたという経歴の持ち主で、ずば抜けた狙撃の腕や運転技術で後方支援を行っているのは、会社の生き字引的存在の専務・中之井千住(なかのいせんじゅ)だ。「工具楽屋」は、「こわしや」としての仕事をこうして遂行する。
区役所の土木課に勤務する、さえない独身男・吉本大介が主人公。デスクでは居眠りばかりで、8時間のうち1時間しか働かない「パアピン」と蔑まれている大介だが、それは世を忍ぶ仮の姿。彼には、殺人と営利誘拐以外なら何でもやる「パーフェクト・ピンチフォロー・オフィス」の所長・代打屋トーゴーというもう一つの顔があった。裏の世界では知られた存在である大介が、ありとあらゆるトラブルを鮮やかな手腕で解決していく。
大介は裏の世界で、代打屋としての敏腕ぶりを知られているだけあり、持ち込まれる仕事は難題ばかり。世界最速の美人スプリンターの殺人予告を阻止や、スパイと入れ替わったという噂がある美人科学者が本物かどうかを見極めるなど。代打屋トーゴーが大介だと知らずに、職場の同僚・新井紀子から「お見合いで断られたい」という依頼が持ち込まれたこともある。どのような依頼でも、鋭い推理や奇抜なアイディアでくぐり抜ける大介。仕事の収支計算をする描写などが、代打屋という職業にリアリティを与え、本作を全くの夢物語のように感じさせない。
独特のタッチで描かれている、ノスタルジックで心温まる一話完結型のショートストーリー。黒いハットに黒いマントを身にまとい、古いフィルムカメラを手に街を歩く人物・谷遠可不可(こくとうかふか)。本作の主人公である可不可の職業は、写真屋だ。世の中から消えそうなもの、なくなりそうなものを写真に収め歩いている。そんな可不可の撮る写真には、本来ならば写るはずのないものが捉えられる奇跡の瞬間があり、それが見る者の心を慰める。
自身の職業をカメラマンとは呼ばず、写真屋という可不可。名刺にも写真屋と明記している。ちなみに、「プロのカメラマンか」と尋ねられた際には、「写真を仕事にして生活しているという意味でなら……プロだよ」と答えている。仕事場は古びた雑居ビルの4階で、撮影スタジオ兼現像所だ。彼が日々カメラで捉えるのは、使用されていない公衆電話ボックスや、立ち退きが決まった模型屋など、時代の流れによって失われゆくものがある。撮影している時に出会った人々を撮影し、彼らがかつて見た、幸福な過去が写真に浮かび上がることも。そんな可不可には、写真屋というノスタルジックな響きがぴったりだ。