あらすじ
第1巻
山田瞬は、家では年の離れた姉である山田遙の作ったかわいい服を着て、まるで女の子のようにかわいく振る舞っていた。瞬自身もかわいい格好をするのは好きだったが、内心は男の子らしくなりたいという感情も持っており、転校した新しい学校ではカッコよさを意識した、より男の子っぽい服を着るように心がけていた。一方、瞬が転入したクラスの田野中いつきは、サッカーが大好きで、兄の田野中広斗と田野中崇人の影響もあって、見た目はかなりボーイッシュで男の子とまちがわれることの多い女の子だった。しかも瞬といつきの家は、となり同士であった。家でかわいい格好をしている瞬を、いつきが偶然見てしまったことで二人の関係は最悪なものとなるが、互いの兄や姉の存在、そしていつきの不器用な優しさが手助けとなり、瞬はどんどんいつきとなかよくなっていく。そんなある日、姉からの頼みでモデルとして撮影に挑むことになった瞬といつきは、衣装を着てなかよく笑っている姿をクラスメートの東城舞に見られ、写真をばらまかれてしまう。それをきっかけに、女の子のようにかわいい服を着ていた瞬は、クラスメートたちからおかまと馬鹿にされるようになる。ちょうどその時、クラスでは文化祭の出し物がシンデレラの劇に決まり、その配役が決められようとしていた。クラスの男子たちが、からかい半分に配役の提案をしたことで、劇はクラス中を大騒動に巻き込むことになる。
登場人物・キャラクター
山田 瞬 (やまだ まどか)
幼い頃から人形遊びやままごとをして、周囲にかわいがられて育った小学生の男の子。年の離れた姉である山田遙の作った服が大好きで、女の子の服やスカート、ワンピースなども着ているが、本当はもっと男の子らしくなりたいと思っており、そのジレンマに悩んでいる。H市への引っ越しに伴って学校も転校し、自宅がとなりの田野中いつきと同じクラスになった。いつきのことは、最初は男の子だと思い込んでいたため、「男らしくてカッコイイ」と発言し、彼女を傷つけることになった。その後、今度はいつきに女の子の服を着た姿を見られ、「キモイ」と言われたことでケンカに発展するが、サバサバとした彼女の考え方に共感し、なかよくなった。それ以降、学校ではいつきからそっけない態度を取られるものの、自宅ではいつきの兄の田野中広斗、田野中崇人といっしょにゲームをしたり、親同士も含めた家族ぐるみの付き合いが始まった。広斗からは女の子とカンちがいされたままで、女の子としてかわいがられている。かわいいと言われることを嬉しく思いながらも、男らしくいたい気持ちもあり、学校ではカッコイイ系を意識した男の子っぽい服を着るように心がけている。ある時、女子の格好をした山田瞬といつきが楽しそうに笑っている写真をクラス内に拡散されたことがきっかけで、クラスの男子から黒板に相合傘を書かれて「おかま」と揶揄される。さらに、文化祭の劇で瞬にシンデレラを、いつきに王子の役をやらせようとするなど、いじめに発展しそうになるが、その後いつきが性別を超えて配役を行うことを提案し、クラスの男子も継母や意地悪な姉妹の役を担うことになり、状況は収束する。しかし、用意したドレスが東城舞によって汚されそうになるなど、トラブルは続く。
田野中 いつき (たのなか いつき)
小学生の女の子で、そばかすが特徴。ショートヘアのボーイッシュな見た目で、男子とまちがわれることが多い。クラスの男子から、「おとこおんな」と揶揄されることもあるが、基本的に気にしていない。サッカークラブに所属しており、男子に交じってサッカーをプレイしても、引けを取らない身体能力の持ち主。転入生の山田瞬とは家がとなり同士。瞬が女の子の服を着ている姿を見た時に「キモイ」と発言し、互いに手を出すケンカに発展するが、その後は和解してなかよくなった。それ以降、学校では瞬にそっけない態度を見せるものの、自宅では兄の田野中広斗や田野中崇人を交えていっしょにゲームをしたり、親同士も含めた家族ぐるみの付き合いをしている。女の子らしくと言われることを嫌っているが、瞬の姉の山田遙がボーイッシュな服を勧めてくれたうえ、性別は関係ないと言ってくれたことで、遙にあこがれの気持ちを抱くようになる。そんな中、瞬が女子の格好をして、田野中いつきとなかよく笑っている写真を見られたことがきっかけで、クラスメートたちの態度が急変。クラスの男子に、瞬といつきの相合傘を黒板に書かれ、文化祭でやるシンデレラの劇の配役を面白半分で瞬にシンデレラを、いつきに王子の役をやらせようと提案される。しかし、逆にいつきから、性別を超えて配役を行うことを提案され、意地悪な姉妹と継母の役をクラスの男子たちがやることになった。からすが苦手という意外な一面も持っている。
山田 遙 (やまだ はるか)
山田瞬の姉で、大学1年生。瞬とはかなり年が離れていることもあり、瞬を溺愛している。服飾関係の学校に通っており、自作の服を瞬に着てもらうことに喜びを感じている。瞬に着せる服は、基本的に女子仕様のかわいらしいものだが、カッコイイ系などのさまざまなテイストの服を作っている。隣人である田野中家の田野中いつきと知り合って、彼女の魅力を引き立たせるカッコイイ系の服を作ってあげた。基本的に男の子らしく、女の子らしくという言葉に左右されない、その子に合った洋服を提供しようと考えている。
田野中 広斗 (たのなか ひろと)
田野中いつきの兄で、田野中崇人の双子の兄。高校1年生で明るく優しい性格ながら、いつきとは何かとケンカをすることが多い。山田瞬のことを女の子だと思い込んでおり、まったく疑っていない。しばらくたって、瞬から男子であることを打ち明けられることになるが、それからも色目で見ることなく、むしろ自分が無神経に瞬を傷つけたのではないかと反省している。その後は瞬をかわいがっていい関係を築いた。
田野中 崇人 (たのなか たかと)
田野中いつきの兄。高校1年生で、学校では落語研究会に所属している。双子の兄である田野中広斗とは異なる性格で、人当たりはちょっとキツめ。興味のないことにはまったく関心を持たないタイプ。妹のいつきを溺愛しており、いつきに近づくすべての男子を警戒している節がある。山田瞬を一目見て、すぐに男子であることを見抜いた。特にウジウジとした煮え切らない男を嫌っており、瞬の服装とは関係なくはっきりしない態度に苛立っている。いつきと瞬がシンデレラの劇を演じるにあたっては、落研の能力を生かして演技指導を買って出た。
東城 舞 (とうじょう まい)
山田瞬と田野中いつきのクラスメートの女の子。美少女ながら少々気の強いところがある。船長を務めている父親は不在がちなため、彼が帰って来たときにはいっしょに公園に行くなど、最大限に甘えている。久しぶりに帰宅した父親といっしょに自然公園にピクニックに行った際、瞬といつきがモデルとして撮影されている現場を目撃。女の子の格好をしている瞬と、なかよさそうに話すいつきの姿をこっそり写真におさめ、クラス中にばらまいた。これにより、クラス中の男子が瞬の姿に嫌悪感を示すことにつながった。その後、クラスで行うことになったシンデレラの劇において、瞬が用意した衣装のドレスにこっそり墨汁をたらし、汚そうとした。これは実は、男子といっしょにいることの多いいつきへの嫉妬心から起こした行動で、いつきとなかよくなりたいという思いを持っていた。
クラスの男子 (くらすのだんし)
山田瞬と田野中いつきのクラスメートの男子生徒たち。あまり女の子らしくないいつきをからかうこともあったが、サッカーがうまいこともあり、一目置いていた。しかし瞬が女子の格好をして、いつきとなかよく笑っている写真を見たことがきっかけで、態度を急変させる。黒板に瞬といつきの相合傘を書いたり、文化祭で演じるシンデレラ役を瞬に、王子役をいつきにやらせようと提案したりする。しかし、いつきからの提案で、逆にクラスメートの男子たちが性別を超えて意地悪な姉妹と継母の役をやることになり、しっぺ返しを受けることになる。