あらすじ
第1巻
豊洲で仲卸しをする田ノ上水産の2代目にして、魚をこよなく愛する「ウオバカ」の田ノ上蒼は、ある日、漁師に頼んで漁船に乗せてもらい、福井沖の漁に参加していた。そこで蒼は、海に落ちてしまった新米漁師の諏訪大樹を救出する。自分は漁師に向いていないのではと落ち込む諏訪は、売り物にならない魚のヤガラをもらって帰る蒼のことが気にかかっていた。諏訪は、お前はなんの役にも立たないヤガラみたいな奴だと、よく仲間から言われていたのだ。蒼は、そんな諏訪を誘って豊洲まで連れていき、ヤガラの薄造りと椀物をごちそうする。身がフワワフしていて上品な味の椀物、シコシコした奥深い味の薄造りを食べた諏訪は、ヤガラがこんなに美味しい魚だったのかと衝撃を受ける。ヤガラは福井では売り物にならないが、料理の仕方によっては非常に美味しい魚のため、関西では高級魚として扱われていたのである。本当の味を知れば、邪魔者扱いのヤガラもきっと福井の海の宝物になると蒼から力説された諏訪は、漁師としてやっていく自信をもらうのだった。(第1話「雑魚という名の魚はいない」。ほか、5エピソード収録)
登場人物・キャラクター
田ノ上 蒼
豊洲市場で仲卸しをする田ノ上水産の2代目の男性。年齢は28歳。世界一、魚を愛する自他共に認める「ウオバカ」。魚の本当の美味しさを料理人や消費者に知ってもらうためなら、損得抜きで行動する熱血漢。漁船から海に落ちた大人の男性を、片手で船に持ち上げるほどの怪力の持ち主。魚をさばく技術も高く、料理に関する知識も豊富。また、深海魚を使った魚料理のアイデアを考案するなど、常識にとらわれない柔軟な思考を持つ。
諏訪 大樹
福井沖の漁船で、田ノ上蒼と同船していた新人漁師の男性。網を揚げる最中に海に落ちたところを、蒼に救われた。お前はなんの役にも立たないヤガラみたいな奴だとよく仲間から言われており、すっかり自信をなくしている。地元の福井では売り物にならないとされるヤガラをもらって帰る蒼に興味を持つ。
花田
銀座に店を構える割烹料理「はな田」の店主を務める中年の男性。田ノ上蒼とは仲がいい。赤坂の一流料亭で脇板を務めた経験があり、独立して銀座に店を開いた。料理の腕は一流ながらも、あまりお客さんが来ないことを悩んでいる。蒼は、花田の作る絶品の胡麻だれを活かすには、明石の極上のマダイでなければダメだと行動を起こす。
立ち喰い寿司やまとの店主
銀座で立ち喰い寿司「やまと」を経営する男性。一流の寿司屋で修行をした経験があり、板前としての技術は高いが、店が安さを売りにしている関係上、コストの安い養殖モノに頼らざるを得ず、高級寿司屋のひしめく銀座で苦戦を強いられている。その打開策として、田ノ上蒼から深海魚を使った寿司ネタを提案される。
土佐屋の親父
妻と二人で小料理屋の「土佐屋」を切り盛りしている男性。夫婦共に高知出身で、カツオを使った料理を売りとしている。高齢なことに加えて腱鞘炎のため、そろそろ店じまいを考えている。跡継ぎがいないため、店に魚を卸している顔なじみの田ノ上蒼に後継者になって欲しいと依頼する。
彰
都内のガード下でもつ焼き屋「大藤」を経営する男性。世界中の料理を勉強しており、日本でも一流の料理人として活躍できる技量を持つものの、「大藤」の先代が突然亡くなり、店を継いでいる。目利きで、田ノ上蒼の田ノ上水産で魚を仕入れては、原価ぎりぎりの値段で客に美味しい料理を提供している。
クレジット
- 原作
ベース
江戸前の旬 (えどまえのしゅん)
銀座の寿司屋で働く柳葉旬が、寿司を通じて周囲の人の心を開き、職人として成長していく。魚介類やそれに関連した日本文化についてのうんちくも豊富。原作:九十九森、漫画:さとう輝。 関連ページ:江戸前の旬
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北海道を舞台に、寿司職人を目指す姫野さくらの奮闘を描くグルメ漫画。同じ執筆陣による『江戸前の旬』のスピンオフ作品である。 関連ページ:北の寿司姫 江戸前の旬 特別編