凍牌 ~ミナゴロシ篇~

凍牌 ~ミナゴロシ篇~

志名坂高次の代表作「凍牌」シリーズの第3作目で、「氷のK」を主人公にした物語の最終章。高津の死後、桜輪会は2代目の就任披露を延期し、組織の再編成を余儀なくされた。一方、敵対している関西の指定暴力団「山扇会」も金と人員を失い沈黙し、裏社会に力の空白が生まれていた。そんな中、裏社会から離れて麻雀(マージャン)を引退していたKは、ある日、桜輪会系倉橋組の黒木から助けを求められる。高津が遺した「羽鳥の名簿」と第28回竜凰位戦の優勝商品である「土曜会の記録」を巡り、アミナや桂木優との平和な生活を守るため、再び牌を握るKの姿を描いたサスペンス。「ヤングチャンピオン」2017年20号から2021年13号にかけて掲載された作品。

正式名称
凍牌 ~ミナゴロシ篇~
ふりがな
とうはい みなごろしへん
作者
ジャンル
麻雀
関連商品
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あらすじ

氷のK再び

裏社会から引退したKは、ふつうの高校生に戻ってアミナと平和な日々を送っていた。そんなある日、Kはアルバイト先の先輩から麻雀牌(はい)を使ったギャンブルに誘われる。Kは瞬時に先輩たちのイカサマを見抜き、それを逆手に取って圧倒する。そこに桜輪会の使いとして黒木が現れ、負けられない勝負があるからと、Kに代打ちを依頼する。一旦は断るKだったが、その日の夜、再度黒木からの電話を受け、倉橋の孫であるカズがKの代わりに勝負して危機に陥っていると聞かされる。カズに借りがあるKは、行くべきかどうかを迷っていると、アミナに背中を押され、カズの救出に向かう。その場に着いたKは、毒を飲まされて瀕死(ひんし)の状態のカズと対面する。Kはカズを救うため、雑居ビルの利権を賭けた勝負に挑む。半グレの松川はカズが死ぬまでのタイムリミットは15分程度だとKに伝え、山扇会戦の中継を見てKをおびき出すためにカズを囮(おとり)に使ったと告げる。その言葉にKは激怒し、松川を自分の敵と見なし叩(たた)き潰すと宣言し、ビルの利権とは関係なく個人的な差し馬を要求する。

竜凰位戦予選

「羽鳥の名簿」を狙った者からなんとか脱出したKの前に、謎の男、小野が現れる。Kは小野から今年の麻雀日本一を決める竜凰位戦の優勝の副賞として、「羽鳥の名簿」と並ぶ財政界の最大スキャンダルである「土曜会の記録」が出品されるため、手に入れて欲しいと依頼される。成功報酬として「新たな戸籍での完全に自由な人生」を提示されたKは、裏社会からの完璧な足抜けを決意して依頼を受ける。多少のいざこざはあったものの、Kはチームのリーダーとして真木英高川瀬りん、トシ、山下、尾形を率いて竜凰位戦に臨むこととなる。そんな中、「土曜会の記録」の出品を知った堂嶋戸村は、過去に因縁がある白翁が表舞台に出てくると予想し、決着をつけるために竜凰位戦への参戦を決める。堂嶋は偽造身分証を使って一般枠で予選に出場し、戸村は参謀としてエントリーはしないながらも堂嶋に同行する。堂嶋の参加を知ったKは、本戦に進出するのは堂嶋で確定だろうと予想するも、小野の画策によって予選参加者100名の内86名がグルという厳しい状況となっていた。辛くも予選決勝卓まで駒を進めた堂嶋だったが、同卓の三人は予想どおりグルの麻雀プロだった。プロ三人vs堂嶋という状況な中、堂嶋がテンパイすれば誰か別の一人が故意にチョンボをして場を流す戦法を取られ、堂嶋は一度も上がれないままに局が進んでいく。

竜凰位戦開始

次々と予選通過者が決まる中、関係者から呼び出されレストランに集まったK堂嶋倉橋は、そのメールが自分たちを集めるためのウソだったと気づく。そこに白翁が現れ、「土曜会の記録」を所持していることを打ち明け、それを第28回竜凰位戦で優勝した者に渡すと告げる。さらに白翁は土曜会の記録と同じく、財政界の最大スキャンダルである「羽鳥の名簿」の在処(ありか)を探しており、三人の中に所有者がいるのではないかと目星を付けていたのだ。三人とも羽鳥の名簿の在処を知らないことを伝えると、白翁は「敗者は勝者の奴隷となる」という条件を提示し、これが飲めなければ、例え優勝しても土曜会の記録は渡さないと言い放つ。土曜会の記録欲しさに倉橋とKはこの条件を受け入れ、土曜会の記録にまったく興味がない堂嶋も、白翁の権力を無力化するために条件を飲む。そんな中、運ばれてきたステーキが硬いというだけの理由で、白翁はシェフを銃で撃つ。突然の出来事に表情を一変させた三人の前に、関西の指定暴力団「山扇会」のが現れ、白翁と組んでいることを公言する。ただの日本一を決める麻雀大会が、裏の権力争いのステージに変わってしまったことを全員が理解し、文字どおり「すべてを賭けた」戦いとなる竜凰位戦が幕を開ける。

竜凰位戦準決勝A卓

準々決勝が終わり、勝ち残った者たちの思惑が交錯する中、準決勝が始まる。まずは準決勝最初の試合となるA卓は、ネットアイドルのMIYA、麻雀倶楽部西新人王の数馬、麻雀解説でお馴染みの元プロの八木、そして堂嶋という面子(メンツ)が対局する。準々決勝で堂嶋と数馬は同卓で、数馬がトップ、堂嶋が2着での勝ち抜けとなったが、試合前に数馬から挑発された堂嶋は怒り心頭で卓に着く。半荘(ハンチャン)2回の合計得点勝負という短期決戦は、「波」に乗れば堂嶋が圧倒するとKは予想するが、開局から八木が両面(リャンメン)待ちで速攻満貫を上がる。Kと共に中継を見ていた真木英高から、八木は派手な上がりはないものの相手に自分の麻雀をさせないことから「光を消す男」という異名を持つことを説明される。次局も軽い手で八木が上がり、Kは八木の麻雀の巧(うま)さに驚愕(きょうがく)する。八木以外の三人の点数に、ほとんど差がない状況のオーラスで数馬がリーチを仕掛ける。それを受けても動こうとしない堂嶋にチームKの面々が不思議に思っていると、八木がMIYAにワザと振り込んでMIYAは2000点を上がって1回戦は終了する。トップで半荘を終えた八木は自らの完璧なゲーム運びに満足するも、かつてライバルだった麻雀プロの前川を思い出して感傷に浸る。一方、観戦していたチームKは、数馬のアグレッシブさを「超短期決戦向き」だと分析する。休憩を挟み2回戦目が開始され、まずはMIYAが7700点を上がって次局は八木がリーチをかけると、それを受けて数馬がリーチで追いかける。この局は数馬が制し、この後の数局は数馬vs八木の撃ち合いとなる。手数と点数の高さで数馬が打ち勝ち、八木はトップから引き摺(ず)り下ろされる。卓上の雰囲気が変わったからKは「波」を感じ、堂嶋の反撃を予感する。

竜凰位戦準決勝B卓

準決勝B卓は、女流王者の川瀬りん、全日本アマチュアトーナメント優勝者のトシ、白翁、前女流王者の赤崎という面子となった。「チームK」から川瀬とトシが同卓することで、コンビ打ちやアシストなどのチームプレイが可能となるため、断然有利な卓となった。しかしKはここで白翁を潰すため、番組のADを500万円で買収し、川瀬の配牌に国士無双13面待ちを仕込む。Kの目論見どおり試合開始序盤に白翁が川瀬に役満を振り込み、白翁は圧倒的な最下位となる。それからも川瀬とトシのコンビ打ちで、1回戦目の半荘は大量のリードを保ったままチームKの圧勝で終了した。白翁がトップ通過するためには10万点以上が必要なこの状況を、誰もがこのまま白翁が負けると予想する中で、堂嶋だけは白翁の反撃を予感し、注目していた。休憩が終わって2回戦目の半荘が始まり、これまで同様川瀬はトシとコンビ打ちを続ける。しかしトシから送られたサインどおり、ワザと振り込んだ川瀬の牌は倍満の16000点だった。トップ目でありながら味方のトシによって失点させられた川瀬は、トシが裏切っていることに初めて気づく。

竜凰位戦準決勝C卓

Kは準決勝C卓の試合が始まる前、白翁野村に呼び出される。そこでKは野村から、B卓の対局中にMIYAが監禁され半グレにレイプされ、恋人のトシが脅迫されていた事実を聞かされる。Kは2回戦の半荘で、トシの様子がおかしかったことに納得するも、野村から不正を働いた半グレたちを全員殺したと告げられ眼つきが鋭くなる。野村は不正を絶対に許さない姿勢を再度Kに伝え、パソコンの画面にボコボコにされたADを映し出す。そのADはKが500万円で買収し、準決勝B卓の配牌(はいパイ)で役満を仕込んだ男だった。野村の命令により、ADの顔に硫酸がかけられ部屋には悲鳴が響き渡る。Kは自らが招いた結果だと受け入れて画面から目を逸(そ)らさなかったものの、あまりにも酷(ひど)い仕打ちに怒りを抱く。そんなKに対し、白翁は「C卓の勝者を当てたらADの命は助ける」と提案する。C卓は真木英高宮地、滝本、神鳥という面子で、すでに1回戦目の半荘が終了し、トップは真木、2着で宮地が追うという展開となっていた。もともと真木に頭が上がらない滝本のサポートがあるため、真木が有利と見てKは真木が勝つと予想する。神鳥は一般枠での参加だが、小さな組の代打ちをしているらしい。過去に宮地と対戦経験があるKは、宮地の攻めの強さを知っているが真木には及ばないと予想していた。ゲーム中盤、宮地から国士無双の気配が漂う。そこで神鳥が九萬を暗カンし、宮地から国士無双の目が消える。そのチャンスを真木は見逃さず、大物手をテンパイして滝本にカンさせドラを増やす。しかし、滝本がカンした牌はそろっておらず、「晒(さら)し間違いは上がり放棄で続行」というルールに基づきドラが増えたまま勝負は続行される。さらに打点を伸ばした真木はすかさずリーチをかける。しかし、ルールの落とし穴という隠し球を持っていたのは、真木だけでなく宮地もだった。なんと宮地と神鳥はコンビを組んでおり、神鳥の晒した九萬のうち2枚は違う牌だったのだ。真木が宮地の当たり牌をつかみ、リーチしているため躱(かわ)すことができずに役満の直撃を喰らう。かなりの点数を稼がなければ通過できない状況に追い込まれた真木は、滝本のサポートに徹するから決勝卓へ進んでくれと頭を下げる。誰もが真木はこれで潰れたと感じていたこの瞬間こそが、真木の狙いだった。

竜凰位戦準決勝D卓

準決勝D卓は大会最年少の柊純、ポーカープレイヤーのライトマン ポリス、一般参加の石原輝、前回優勝者のKという面子だった。試合前にライトマンは柊にコンビ打ちを持ち掛けるも即答で断られる。そしてKは準々決勝で対戦したユキから、瞳から感情を読むメカニズムを聞かされ、柊は麻雀中はつねに脳をフル回転して情報を集めているため、警戒が必要だとアドバイスを受ける。そして準決勝の最終戦が開始され、開始早々ライトマンが鳴きまくり裸単騎の状態となる。柊は捨て牌に迷彩を施しプレッシャーを与え、石原は不利な状況ながらもリーチをかける。一方Kは、様子見としてこの局は降りる。最終的に石原とライトマンの捲(まく)り合いとなるが、この局はライトマンが上がり牌を引いて制する。その後、特に目立った動きがないまま1回戦目の半荘の後半に入るが、Kと柊の守備が堅く、点数に大きな変化がないまま混戦状態となっていた。そんな中、Kは勝負手をテンパイするものの、リーチをかけない慎重さで様子をうかがっていた。その直後に石原が動く。純チャンと思われていた手牌(てはい)を次々と鳴き、暗カンしたところでリンシャン牌で大物手の上がり切る。感心したKが「堂嶋に似ている」と感想を漏らすと、石原は「オレが堂嶋だ」と言い放つ。その後も石原は役満をテンパイするが、惜しくも柊に振り込んで1回戦目の半荘は柊がトップで終了する。トップは逃したものの、観戦していた堂嶋は石原の成長を嬉しく感じていた。2回戦目の半荘が始まる直前、ライトマンが柊に抱きつき買収を持ち掛けるが、柊の父親がライトマンを引き離し2回戦目がスタートする。現在3位のKは、なるべく多くの点数を稼がなければならない状態でスピード重視の打ち方にシフトチェンジする。そこで石原がリーチをかけ、手牌の少ないKと柊が守備に徹するもライトマンのテンパイが追いつき追っかけリーチをかける。最終的にこの局はライトマンがツモ上がりし、打撃戦の様相を見せる局面だったが、白翁だけはライトマンの違和感に気づいていた。そして次局、石原が三元牌(さんげんパイ)を鳴き、プレッシャーをかけるとライトマンが中を切り、石原の大三元が確定する。だが、役満をテンパイしている石原は「波」を感じずに卓上の違和感を探る。そこでライトマンが四索(スーソー)をツモり大物手を決める。しかしライトマンが引いた牌は、卓上に存在するはずのない5枚目の四索だった。

竜凰位戦決勝

第28回竜凰位戦の決勝戦はK白翁堂嶋真木英高の四人に決定した。準決勝の2週間後に決勝戦が行われることとなり、各自思い思いに過ごす。そして決勝戦当日、控室に集まった四人はそれぞれの賭代を確認する。堂嶋が勝った場合は、白翁に対して地球の裏側に住み、暴力・殺人はもちろん法を犯さずに無一文から生活することを強要する。真木が勝った場合は「土曜会の記録」を手に入れ、賭け麻雀を合法化し、雀荘を日本統一させることを白翁に約束させる。Kが勝った場合は「土曜会の記録」を手に入れ、白翁は依頼者に引き渡すが「死に相当する何か」が待っていると告げる。白翁が勝った場合、三人を盲目にして白翁自身のもとで働いてもらうと提案する。しかし白翁は、負けて「土曜会の記録」と「自分自身」の二つを失うのが自分だけでは不公平だとクレームを入れる。その瞬間、白翁の背後のモニターに、アミナ川瀬りん石原輝の三人が椅子に縛られ、水槽に脚を浸けている映像が映し出される。水槽の中身は極低温でも凍らないエタノールで、現在の15度の温度から1000点の失点につき、それぞれの人質の水槽の温度を1度下げると白翁は予告する。賭代を二つにすることでようやく対等な賭けだと言い放ち、決勝戦が開始される。決勝戦は半荘を3回繰り返しトータルでポイントの高い者が優勝となる。スタート時の持ち点25000点に対し、チョンボの罰符(ばっぷ)は50000点という、力技封じのルールとなった。「チームK」としてKと真木の二人が残っている現状は大きなアドバンテージとなっているが、「波」に乗せると手が付けられない堂嶋を危険視したKは、堂嶋に一度も上がらせないために真木と二人で抑えにかかる。大物手をテンパイした堂嶋だったが、Kと真木のコンビプレイで一度も上がれず、1回戦目の半荘はKのトップで終了する。ワザと振り込んでサポートに回っていた真木はラスを引き、人質である川瀬の水槽の温度は氷点下まで達した。泣き叫ぶ川瀬の声が響く中、2回戦目の半荘が始まる。

登場人物・キャラクター

主人公

小柄で地味な見た目とは裏腹に「裏社会最強の雀士」と評される男子高校生。本名は「榊原圭」だが、そう呼ばれることはなく、通り名の「K」と呼ばれる。観察力と記憶力に長(た)けており、捨て牌を口にすれば目隠し... 関連ページ:K

アミナ

Kと同居している異国の少女。金髪で色黒の肌を持ち、明るい性格をしている。もともとは人身売買の商品として密輸されてきたため戸籍がなく、腎臓を患っていた。過去にKが麻雀勝負で勝った際に引き取られた。同居当初は入管に見つからないように部屋から出ることもできなかったが、Kが高津のもとで結果を出し続けたことで、ビザを与えられ腎臓も移植してふつうの生活を送れるようになる。「お金よりもパン」という人生哲学を持っており、何かを成すよりも生き残ることが一番大事だと考えている。Kからルール程度に教えられた麻雀だったが、以前は家にいる膨大な時間のほとんどをオンライン麻雀に費やしていたため、かなり麻雀がうまい。日本語と英語、タガログ語をしゃべれる。故郷の治安は非常に悪く、知り合いは強盗や地雷で何人も亡くなっている。Kと出会う前は相当過酷な環境だったため、異常に肝が据わっており暴力で心が折れることはない。人質として拉致されてもKを困らせるだけだと理解しているため、鼻骨が骨折しても脚を凍らされ指がなくなっても悲鳴一つ上げなかった。

桂木 優 (かつらぎ ゆう)

Kの幼なじみの女子高生。ショートヘアで、かわいらしい外見をしている。Kに想いを寄せているが、Kからは桂木優を危険に巻き込みたくないとの思いから、明確な返事をもらえていない。よくKの自宅にご飯を作りに来ている。前作「凍牌〜人柱篇〜」で「羽鳥の名簿」を賭けた麻雀勝負で人質となったり、「サバイバル麻雀」でKを自由にするためにロシアンルーレットをしたり、高津に向けて銃を撃ったりと、あまりにもショックな事件が続いたため、直近1年間の記憶がなくなっている。その際に大ケガを負ったが現在身体は完治し、ふつうの女子高生として過ごしている。

金髪でホスト然とした長身の青年。過去に高津の刺客から右眼を潰され、失明しているため眼帯を付けている。どこの組にも属さず、フリーの雀ゴロとして高レートの雀荘(ジャンそう)を主な活動の場としている。運気や... 関連ページ:堂嶋

戸村 (とむら)

堂嶋の金庫番を務める青年。長髪に切長な目をした頭脳派。トレーダーを生業としており、100億や200億はすぐに動かせると豪語している。堂嶋が闇賭博で稼いだ勝ち金の資金洗浄を任されている。過去に「人間島」で行われた麻雀大会で堂嶋と出会い、共に殺人寄生虫に冒された。殺人寄生虫を感染させたサイバーロックと白翁に強い確執があり、第28回竜凰位戦にはエントリーしなかったものの、堂嶋の参謀として同行している。予選では堂嶋を潰そうとするプロの汚い打ち筋や、故意にチョンボする様をネット配信してルールの改訂に持ち込んだ。

高津 (たかつ)

桜輪会系高津組の組長を務める男性。故人で、死亡時の年齢は46歳。鋭い目つきで黒髪をオールバックにし、ヤクザ然とした風貌をしている。桜輪会最強の代打ち集団「一軍」を率いて、組の勢力を拡大させて多大な功績を残した。もともと凄腕の代打ちだったが、大辻に敗北し麻雀を引退していた。高津自身が主催した「サバイバル麻雀」で、Kや堂嶋と死闘を繰り広げるものの、最終的にロシアンルーレットで死亡した。生前Kをかわいがっており、アミナの腎臓移植の手配をしたり偽造ビザを取得したりしていたが、それはKを飼い殺すための手段に過ぎなかった。また、麻雀勝負の際にはKの相棒として堂嶋を使うこともあったが、第27回竜凰位戦でKを決勝卓へ送り込むために手下に堂嶋を襲わせたことが判明し、Kからも「自由を阻む最大の敵」と見なされ、彼らと袂を分かった。「羽鳥の名簿」の所有者で、高津の死後名簿の在処を知る者はいないとされているが、サバイバル麻雀の前にKの自宅へ宅急便で送って託していた。死後なおヤクザとしてのカリスマ性は威光を放っており、いまだに倉橋の孫のカズをはじめ多くの極道たちから男惚(ぼ)れされている。

田代 (たしろ)

桜輪会の2代目会長に就任した中年男性。非常に細く小柄で、見るからに小物感を醸し出している。実際、桜輪会を取り仕切っているのは倉橋で、田代は傀儡(かいらい)に過ぎない。しかしプライドだけは高く、そんな現状を覆すために「羽鳥の名簿」の在処を吐かせようと、アミナを拉致して人質に取り、Kを拷問にかけた。Kが名簿の在処を吐かないことから、拷問役の口を封ずるため小野に射殺を命じた。倉橋を出し抜くために小野を使い、第28回竜凰位戦の優勝副賞である「土曜会の記録」を獲得させようと動く。

(かのう)

関西の指定暴力団「山扇会」の若頭を務める男性。関西で最大勢力を誇る。坊主頭で見るからに悪人面をしている。過去にKと堂嶋に超高レート麻雀で468億円を奪われ、山扇会に壊滅的なダメージを負わされた。その様子を裏ネット配信していたため、山扇会の弱体化はほぼすべての裏社会の人間の知ることとなった。そのためKと堂嶋を遺恨を抱いており、復讐のために「土曜会の記録」を持っている白翁を山扇会の実質トップに据え、第28回竜凰位戦でKと堂嶋を潰すために画策している。

倉橋 (くらはし)

桜輪会系倉橋組の組長を務める老人。白髪の角刈りで左眼に傷があり、前歯が抜けている。桜輪会の金庫番も務めており、高津とは旧知の間柄だった。2代目に就任した田代を「お飾り」に据え、実質桜輪会を取り仕切っている。第28回竜凰位戦の優勝副賞である「土曜会の記録」を獲得するため桜輪会から代打ちを複数人送り込むが、本戦まで残ったのは宮地一人だったため、Kが優勝した場合は桜輪会側に付いてもらうように交渉しようと考えている。「カズ」という名の孫がおり、中学卒業後に倉橋組に見習いとして修業させて鍛えた。

宮地 (みやじ)

桜輪会系仙台宮地一家の五代目組長を務める男性。年齢は15歳。大柄な体型で15歳とは思えない貫禄を漂わせており、ヤクザの組長にまで上り詰めた。麻雀は数か月前に覚えたが、持ち前の度胸と勝負強さで攻撃的な戦法で打つ。「土曜会の記録」を狙って、桜輪会として第28回竜凰位戦に参戦した。過去にKとも対戦したことがあり、当時よりも目まぐるしい成長を遂げている。

小野 (おの)

Kを拷問から救った謎の男性。短髪に顎髭(あごひげ)を生やしている。仕事となれば躊躇(ためら)わずに人を殺害する。第28回竜凰位戦に「チームK」を送り込み、優勝副賞である「土曜会の記録」を手に入れるために雇われている。予選にエントリーする人間100人中86人を抱き込み、堂嶋の予選突破を阻止しようとするなど手段を選ばない。雇用主をずっと隠していたが、実は桜輪会2代目会長を務める田代である。小野自身も竜凰位戦の予選に参戦するが、麻雀の腕は二流で予選決勝卓では石原輝に敗れ、本戦には参加できなかった。以後はKたちのサポート役を担った。

野村 (のむら)

第28回竜凰位戦の実行委員長で、「マックスTV」の社長も務めている男性。パーマがかった黒髪に髭を生やしている。元サイバーロックの社長で、白翁と深いつながりがある。主催者側として「不正は許さない」という姿勢を見せているが、不正を働いた者は容赦なく殺すなど、手段が極端で性格も破綻している。サイバーロック時代に堂嶋とも面識があり、一時期堂嶋を雇用していた。

ユキ

第28回竜凰位戦に九州地区から参戦した女性。高津が主催した「サバイバル麻雀」で、Kをかばって亡くなったアイの後輩。アイの特技である対戦相手の瞳から感情を読み取る能力を、ユキも持っている。その能力に加えて、対戦相手の匂いからも心理状態を読み取れる。その能力はアイ以上に強力で「千里眼のユキ」と呼ばれている。アイが死ぬ原因となったKに対して複雑な感情を抱いており、Kがどんな人間かを知るため竜凰位戦にエントリーした。

白翁 (はくおう)

短髪白髪の盲目の老齢な男性。財政界の最大スキャンダルの一つである「土曜会の記録」の所有者。裏社会に君臨し、表舞台に出てくることは滅多になく、叶からヤクザ組織「山扇会」の実権を任され、実質的にトップを務めている。サイバーロックの創始者で、野村に社長を任せていた。過去に「人間島」で殺人寄生虫の実験を行っており、もともとは「堂嶋」という名前だった。4年前に殺人寄生虫に感染した堂嶋と、治療法を賭けて勝負して敗北し、その時に賭代として両眼と名前を奪われ、「白翁」と名乗るようになった。両眼を潰された直後は自殺まで考えていたが、ある日、蝿(はえ)の飛ぶ音をやけにはっきりと聞こえるようになり、盲目となっても周囲を「知る」ことができると気づき復活した。権力を盤石なものにするため、白翁自身の所有する土曜会の記録と並ぶスキャンダルである「羽鳥の名簿」を欲し、第28回竜凰位戦の優勝副賞として土曜会の記録を出品し、所有者を探すため全国の猛者(もさ)を集めた。盲目であるため、対戦者は対局中は捨て牌を発声しなければならない。しかし、捨て牌の打牌音や牌の重さで牌を判別できるため、ウソを言ってもすぐに見抜く。また感覚を研ぎ澄ませる薬物を使用すれば、卓上のすべてを把握するほどの超感覚を手に入れる。第28回竜凰位戦には主催者枠で本戦から参加した。準決勝で川瀬りんから役満の直撃を受け、10万点以上稼がなければならない絶望的な状況でもふつうに打ち続けてトップで勝ち抜け、Kに「強さの底が見えない」と言わしめた。実は40年前から真木英高とコンビを組んでおり、真木が表の麻雀プロになったあとも、たまに二人でコンビ打ちをしていた。真木とコンビで打った麻雀は40年間不敗を続けている。殺人寄生虫の件で堂嶋と戸村に因縁があり、堂嶋から狙われている。金よりも他人の人生を縛る賭代を好み、Kや堂嶋、倉橋にそれぞれ負けたら「両眼を潰し白翁の奴隷となる」という条件を賭けさせた。裏社会の人間らしく、コンビ打ちがバレたという理由や、レストランで出された肉が硬いというささいな理由でも平気で人を殺す鬼畜。

真木 英高 (まき えいこう)

日本最大のプロ団体「麻雀倶楽部」の代表を務める男性。年齢は62歳。悪人面で眼光は鋭く、つねに機嫌の悪そうな表情を浮かべている。白髪をオールバックにまとめ、スーツを身につけている。麻雀を題材にした創作物は真木英高自身が元ネタとなっているものが多く、「伝説」と称されている。暴力的でワガママな性格だが、男気あふれて恐れられている反面、裏で手を回して川瀬りんのBSの麻雀番組のレギュラー出演を決めるなど、面倒見が非常によく麻雀倶楽部の人間からは尊敬されている。感情を顔に出すことは少ないが、川瀬から惚れられて人前でも平気でセックスを強要する。以前、前女流王者の赤崎と付き合っており、川瀬に乗り換えたという経緯がある。対戦者の集中力を削(そ)ぐため、ひどい匂いの整髪料を髪にたっぷり塗りつけたり、自分に頭が上がらない相手からのサポートを要求したりと、勝つためなら手段を選ばない。麻雀スタイルも強引に相手をねじ伏せるような打ち方で、Kから「暴力の極み」と評されるほどの強さを誇る。第28回竜凰位戦では「チームK」の一員として推薦枠で参戦した。実は白翁と40年前からコンビを組んでおり、二人で組んだ麻雀ではいまだに負けたことはない。現在は表の麻雀プロ団体を率いているが、若い頃は白翁と組んで高レートで麻雀を打ち、コンビ打ちに気づいた人間は容赦なく拉致して殺害するなど、凶暴なアウトローだった。荒事慣れしており、人質になった川瀬から泣きながら助けを求められた際にも、「ガマンしろ」の一言で片付けた。

石原 輝 (いしはら ひかる)

一時期、堂嶋とつるんでいた青年。作中では年齢が24歳だが、巻末のキャラクター設定では26歳となっている。ふつうの外見の目立った特徴のないフリーターで、堂嶋に出会い圧倒的な強さにあこがれて本格的に麻雀を打つようになる。堂嶋を目標としているため、堂嶋とよく似た豪快な打ち方をする。戸村からは堂嶋の弟子と見なされているが、堂嶋からは師弟関係を否定されている。第28回竜凰位戦に参戦し、自らを「堂嶋」と名乗るほど堂嶋に心酔している。堂嶋からは「イッシー」と呼ばれている。本戦前に小野から5億円で買収を持ちかけられるが断っている。

川瀬 りん (かわせ りん)

日本最大のプロ団体「麻雀倶楽部」に所属する女性。年齢は26歳。女流リーグ優勝、女流戦三冠、女子プロランキング1位という華々しい戦績を誇る。真木英高に惚れており、真木の命令なら人前であっても真木とのセックスをいとわない。真木の権力で新しく始まるBSの麻雀番組のレギュラー出演が決まっている。真木が前女流女王である赤崎から川瀬りんに乗り換えたこともあり、赤崎に逆恨みされて一方的に敵視されている。あくまで表の麻雀プロのため荒事には慣れておらず、拉致され人質となった際は、どうにもならない状況にもかかわらず泣き叫び助けを求めた。第28回竜凰位戦には「チームK」として参戦するが、優勝副賞である「土曜会の記録」については存在すら知らなかった。

ライトマン ポリス

ラスベガスや日本の裏カジノで稼いでいるギャンブラーの男性。年齢は37歳。主にポーカーを生業としている。金髪で眼鏡をかけ、蝶ネクタイを身につけている。竜凰位戦で初の外国人セミファイナリストである。過去に堂嶋とも対局しており、その勝負に対する姿勢を堂嶋から「本物」と評されている。主催者である野村とグルになっており、勝つためならテレビ中継されていてもイカサマをいとわない。また、柊純を堂々とコンビ打ちに誘っていたが、柊のポケットに麻雀牌を送り込むも劣勢になると、イカサマを告発するなどやりたい放題ながら、主催者側であるため不問にされる。シンプルに優勝賞金狙いであるため、竜凰位戦は「ノーリスクハイリターン」の勝負の場だと考えている。

柊 純 (ひいらぎ じゅん)

プロ団体「R3」に所属する少年。年齢は13歳。つねにオドオドと自信なさげな態度で声が非常に小さい。トップを取っても対局を振り返って反省している。父親がR3の代表を務めており、母親も麻雀プロ。9歳で麻雀を覚え、ほとんどの役満を上がっているほどに打ち込んでいる。集中力が凄まじく、脳のすべての容量を麻雀に使っていると父親が説明していた。卓上で起こるすべてを見逃さず、違和感があればとことん追求する。そのため、ふつうは警戒する必要のない牌のことも警戒するために消極的な打ち筋となっているが、開き直って攻勢に出ると攻守のバランスが完璧な麻雀を打つ。人間は脳を使うと瞳孔が通常より少しだけ大きくなるのがふつうだが、柊純の瞳孔は麻雀中はつねに最大となり、対局が終了するまで脳はフル回転している。その瞳からは感情を読み取れず、ユキから「バケモノ」と評されている。

集団・組織

桜輪会 (おうりんかい)

高津組や倉橋組、仙台宮地一家などを傘下に持つ広域暴力団。先代が引退し、現在は田代が2代目会長を務めているが、実質的に桜輪会を動かしているのは金庫番の倉橋である。生前の高津が代打ち集団「一軍」を率いており、勢力を拡大させた経緯がある。以前は構成員ではないが、一軍としてKも籍を置いていた。関西の指定暴力団「山扇会」と敵対しており、堂嶋とKが超高レート麻雀で468億円を奪って山扇会に壊滅的なダメージを与えた。

場所

サイバーロック

白翁が「堂嶋」と名乗っていた頃に、闇の情報を集めるために設立した会社。創設時は野村が社長を務めていた。社内の揉(も)め事は麻雀で可否を決めるというルールが存在する。「芽殖孤虫(がしょくこちゅう)」という殺人寄生虫を発見し、その治療法も併せて開発した。白翁はその治療法で大儲(もう)けしようと、「人間島」と呼ばれる島で殺人寄生虫の実験を行うため、高額な賞金の麻雀大会を開催して実験体を集めていた。殺人寄生虫の実験により、50人以上が亡くなっている。その麻雀大会には堂嶋と戸村も参加しており、二人とも殺人寄生虫に侵されてしまう。そこで治療法を賭けて堂嶋と白翁が勝負し、敗北した白翁は両眼と名前を奪われて引退した。

前作

凍牌 (とうはい)

のちにシリーズ化される志名坂高次の代表作「凍牌」シリーズの1作目。裏社会の行う高額の裏レート麻雀をする高校生ケイは、冷静・冷酷な打牌から「氷のK」と呼ばれていた。ケイは自宅にかくまっている少女アミナを... 関連ページ:凍牌

凍牌 ~人柱篇~ (とうはい ひとばしらへん)

志名坂高次の代表作「凍牌」シリーズの第2作目。現代日本を舞台に、謎の高校生雀士(ジャンし)榊原圭の命や名誉を懸けた麻雀バトルの数々と、裏社会に潜む陰謀の謎を描いた麻雀死闘黙死譚(たん)。前作『凍牌』と... 関連ページ:凍牌 ~人柱篇~

続編

凍牌 コールドガール (とうはい こーるどがーる)

志名坂高次の代表作「凍牌」シリーズの第4作目。前作『凍牌 ~ミナゴロシ篇~』で主人公だったKに代わり、その数年後を舞台にした本作『凍牌 コールドガール』は、Kの妹で高校生となったアミナの視点で物語が描... 関連ページ:凍牌 コールドガール

関連

牌王伝説ライオン (はおうでんせつらいおん)

志名坂高次の代表作『凍牌』の登場人物である堂嶋にスポットを当てたスピンオフ作品。「ライオン」の異名を持つ堂嶋が、強い打ち手を求めて麻雀を打つ姿を描く闘牌伝説。 関連ページ:牌王伝説ライオン

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