百日紅

百日紅

天才絵師・葛飾北斎とその娘お英、居候の善次郎の日々を中心に、江戸の生活や習俗を描いた時代漫画。

正式名称
百日紅
ふりがな
さるすべり
作者
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

稀代の絵師だが偏屈老人の葛飾北斎、行き遅れの娘・お英、居候の善次郎の3名は、絵の反古(ほご)が散らばる長屋で日々絵を描きながら暮らしていた。季節が移ろう中、彼らは江戸の町で様々なものに出会い、描き、そして生きていく。

登場人物・キャラクター

葛飾 北斎 (かつしか ほくさい)

江戸に名が鳴り響く稀代の絵師でありながら、娘・お栄とともに散らかり邦題の裏長屋で暮らしている。55歳。いくら金を積まれても気に入らない仕事はしない偏屈親父。粋を好み洒脱な面もある。何かと皮肉を言うが、洒落もわかる人物である。江戸後期の絵師葛飾北斎をモデルとしている。

お栄 (おえい)

葛飾北斎の三女。年増の女絵師。23歳。父親から絵師としての才能を受け継いでいて、時には代筆も行う。地黒で器量があまりよくない。顎が出ていることから、父北斎からは「アゴ」と呼ばれる。性根の据わった質で、大抵のことには動じない。火事場見物が好きで、火事が起これば夜中でも駆けつける。 様々な分野の絵をよく描くが、経験がないことから枕絵を苦手とする。兄弟子の初五郎(魚屋北渓・ととやほっけい)に惚れている。江戸後期の女性絵師葛飾応為(お栄)をモデルとした人物。

池田 善次郎 (いけだ ぜんじろう)

葛飾北斎宅に居候している絵師。23歳。菊川派の絵師であるが、北斎に私淑する。元武士だったが、刃傷事件を起こして浪人し、絵師となった。女物の単衣(ひとえ)を身にまとい、日々様々な女性とむつまじく風流に暮らしている。絵師としてはまだまだの腕前ながら、女を熟知しているためか枕絵では評価が高い。 後に渓斎英泉として後世に名を残す。江戸後期の絵師渓斎英泉をモデルとした人物。

井上 政 (いのうえ まさ)

葛飾北斎の門人で女絵師。口元のほくろが艶やかな妖艶な美女。28歳。幽霊画を好んで描く。北斎の愛人でもあるが、兄弟子の初五郎(魚屋北渓・ととやほっけい)に色目を使ったこともある。江戸後期の女性絵師葛飾北明をモデルとした人物。

歌川 国直 (うたがわ くになお)

歌川豊国門下の若手絵師。19歳。年若ながら年十数部を描く売れっ子絵師。信濃出身。歌川派ながら対立する葛飾北斎の画風を慕う異端児。橋の上で善次郎、お栄と知り合い、そのつてで北斎ともよしみを通じる。絵師仲間では酒豪で通っている。江戸後期の絵師歌川国直をモデルとした人物。

歌川 豊国 (うたがわ とよくに)

文化年間の浮世絵界を葛飾北斎と二分する大御所。46歳。あくまでも受け手重視の喜ばれる画風を旨とする。歌川国貞、歌川国直、歌川国芳らの師匠。江戸後期の絵師歌川豊国をモデルとした人物。

歌川 国貞 (うたがわ くにさだ)

歌川豊国門下で右腕的存在。28歳。後に師匠の名を継ぎ、歌川派の総帥となる。葛飾北斎の画風を取り入れようとする弟弟子・歌川国直に描き直しを命じ、小言を言った。江戸時代後期の絵師歌川国貞(三代目歌川豊国)をモデルとした人物。

歌川 国芳 (うたがわ くによし)

歌川豊国門下で歌川国直の弟弟子。まだ前髪を結っている17歳。国直の家に居候している。深川の遊女滝山の背中の刺青(ほりもの)見たさに、国直が彼女に酒合戦を挑んだ時も同席していた。この時、国直は酔いつぶれてしまい、国芳だけが彼女の背中の刺青を見ることができた。 江戸時代末期の絵師歌川国芳をモデルとした人物。

徳川 家斉 (とくがわ いえなり)

第十一代徳川将軍。文化十一年十二月八日、徳川家斉は鷹狩りの途中、浅草伝法院に葛飾北斎を召して、その御前にて絵を描かせた。この時、北斎はまず花鳥山水画を描いた。その後余興として、鶏を走らせることで「立田川に紅葉流るるの図」を描こうとするが、鶏が怖じ気づいて動かなかったため失敗してしまう。 しかし、北斎はとっさに指で龍を描くことで事なきを得た。江戸時代の十一代将軍徳川家斉をモデルとした人物。

萬字堂 (まんじどう)

錦絵草紙版元、本問屋。葛飾北斎、お栄、善次郎らに絵を依頼する版元。北斎の気まぐれにいつも振り回されている。北斎の代筆をしているお栄の才能を惜しみ、一本立ちさせようとする。

おたか

19歳の時、喜多川歌麿の絵のモデルとなり、以降、ひんぱんに描かれた女性。歌麿の死をみとった人物。お栄によると、葛飾北斎は昔、おたかに振られたらしい。病に伏せっているところを、お栄と北斎が相次いで見舞いに行ったが、幼馴染みが枕元に立ち、手を引かれて死出の旅に発つ。

多吉郎 (たきちろう)

葛飾北斎の次男でお栄の弟。19歳。御家人加瀬家に養子に入った。無骨な大男で、四角四面な性格の大真面目な男。善次郎のなじみの茶屋女に懸想しており、善次郎と北斎が渡りをつけたが、真面目すぎてまったく事が進展しなかった。

八造 (はちぞう)

一中節の師匠で幇間(ほうかん)もつとめる。初五郎(魚屋北渓・ととやほっけい)の代人として葛飾北斎のもとに訪れた。以来、何かと北斎の長屋に顔を出し、お栄と火事見物をしたり、北斎と吉原の花魁の首が就寝後伸びる様を見に行ったりした。

滝山 (たきやま)

深川の遊女。異常に酒が強く、生(き)の焼酎を一升飲んでも素面(しらふ)だと言われた女性。いつも洗い髪であることでも知られている。背中にとてつもない刺青をしているとの噂があり、それを見るため歌川国直が彼女に酒合戦を挑んだが、かなわず轟沈した。ただ、同行した歌川国芳だけがその背中の刺青を見ることができた。 刺青の絵柄は「源頼光の兜に食らいつく酒呑童子の首」であった。酒合戦の翌日、新川の酒問屋に身請けされた。

初五郎 (はつごろう)

葛飾北斎の門弟で売れっ子の絵師。34歳。才能があり、人柄もよい男前のやもめでお栄に惚れられている。善次郎の女の絵を「凄いような色気がある」と褒めた。江戸後期の絵師魚屋北渓をモデルとした人物。

川村 こと (かわむら こと)

葛飾北斎の後妻で、お栄の実母。北斎とは一緒に暮らしていない。北斎の仕事と暮らしぶりを心配して、訪ねてきた娘・お栄にあれこれ尋ねたこともある。江戸時代後期に実在した葛飾北斎の後妻ことがモデルとなった。

お猶 (おなお)

葛飾北斎の末の娘。お栄の妹。母親はこと。生来目が見えず、琵琶の修行のため尼寺にあずけられていた。脚気の病を得て、実家に戻ってきたが死去してしまう。死去の前、北斎は快癒を願って鍾馗の絵を描き、お栄に持たせて訪ねさせた。江戸時代後期に実在した葛飾北斎の四女お猶がモデルとなった。

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