もともとは同作者の『天 天和通りの快男児』という漫画の登場人物であった、赤木しげるを主人公としたスピンオフ作品で、1992年に連載が開始されて2016年の時点で未だ連載中という長寿作品。
福本作品には基本的にギャンブルや勝負を扱った作品が多いが、アカギはその中でもギャンブルの王道ともいえる麻雀に特化した作品だ。
麻雀ならではの心理戦を丁寧に描いているのが本作の最大の特徴だが、あまりに細かく描いているため勝負の進行は非常に遅く、本作の大筋ともなっている「鷲巣麻雀編」は実に15年以上もの間ひとつの勝負を行っている。
本当に完結するのだろうか。
人気は福本作品の代表格でもある『カイジ』にも負けないものがあり、熱心なアカギファン、麻雀愛好家なら麻雀を打っている際に思わずアカギの真似をする人もいるほどだ。
・「死ねば助かるのに」
コミック一巻で、まだ13歳という幼いアカギが放つ強烈なひとこと。
これは死ねば楽になるということではない。死ぬ気になって挑めば活路は見出すことができ、道は拓けていくものだということを言っている。
勝負では守りに入ろう、今あるものを減らさないように勝負しようという考えは、長い目で見ればほぼ確実に負けを生んでいく。
窮鼠猫を噛むというが、進退窮まり、覚悟を持ったその時がその人の本当の実力を発揮できる時なのだろう。
同じようなことをいったものに、「勝利とはリスクと等価交換で手にするもの」ということばも登場する。
ナレーションで入ることばなのだが、アカギのギャンブル論をひとことで言い表している。
・「奴は死ぬまで保留する」
勝負をするかどうかという、決断で迷った浦部というキャラクターに対してアカギが言ったセリフ。
この手のセリフはアカギだけでなく他の福本作品にも数多く見られるもので、福本作品の根幹にある考えといえるのかもしれない。
『銀と金』では追いつめられた人間をネズミにたとえている。ネズミは逃げ道が用意されている限り決して戦わない。ただ逃げることのみを考えるという習性があるのだ。
『カイジ』シリーズでは、ゲームに参加するかどうかで迷っている参加者に対して、帝愛グループの利根川が「一生迷ってろ!そして失い続けるんだ、貴重な機会を!」ということばを残している。
実社会でも進むこともせず退くこともせず、とりあえず保留という態度を取ってしまう人も多いのではないだろうか。
人間の弱さの核心を突く名言だと思う。
福本作品をまだ読んだことのない方や麻雀に興味のない方には、難しいかもしれないが、他の作品には無い表現が多いので、読まず嫌いをせずに読んでみてほしい。