もともとは同作者の『天 天和通りの快男児』という漫画の登場人物であった、赤木しげるを主人公としたスピンオフ作品で、1992年に連載が開始されて2016年の時点で未だ連載中という長寿作品。
福本作品には基本的にギャンブルや勝負を扱った作品が多いが、アカギはその中でもギャンブルの王道ともいえる麻雀に特化した作品だ。
麻雀ならではの心理戦を丁寧に描いているのが本作の最大の特徴だが、あまりに細かく描いているため勝負の進行は非常に遅く、本作の大筋ともなっている「鷲巣麻雀編」は実に15年以上もの間ひとつの勝負を行っている。
本当に完結するのだろうか。
人気は福本作品の代表格でもある『カイジ』にも負けないものがあり、熱心なアカギファン、麻雀愛好家なら麻雀を打っている際に思わずアカギの真似をする人もいるほどだ。
・「合理性はあくまであんたの世界でのルール!残念ながら、その“合理性”じゃあ俺は縛れない。不合理に身をゆだねてこそ、ギャンブル」
赤木とはまったく対照的に、合理性を武器とする市川。合理的な人間というのは全てにおいて理由づけて行動する。
それによって赤木を追いつめはするものの、最後の最後でその合理性を逆手に取られ赤木に逆転負けを食わされてしまう。
一見すると道理に合わず不合理なことでも、人と人とが戦う勝負の世界では、その不合理な思考が合理性を上回り得ると赤木は考えたのだ。
・「オレには生涯…あんな目はできないだろうから…」
上の市川戦での勝利の後、華麗な逆転劇で歓喜に沸く仲間の南郷と安岡。
しかし、勝負に勝った赤木本人はまるで興味のないものを見るような目で金を見つめていた。
それを見た南郷は、博打の世界から足を洗うことを決意する。
アカギの中でも屈指の名シーンといえ、ほとんどの人は主人公の赤木ではなく、南郷と同じ気持ちを抱くのではないだろうか。
福本作品では、金によって狂人と化した人や、金に狂わされた人々を描くことが多いのだが、中でも金に無頓着なアカギは異質な存在なのが分かる。
・「倍プッシュだ…!」
アカギをよく知らないという人にもお馴染みの台詞かもしれない、「倍プッシュ」。
麻雀をまったくやったことがない赤木は、その天性の博才と麻雀で必要とされるスキルをすぐに嗅ぎつけ、裏プロの矢木を完封。
勝利に浮かれる南郷を反し、赤木は矢木に対して勝った金をそのまま賭ける「倍プッシュ」を持ちかける。
落ち目の相手に対しては容赦などせず一気に潰しにかかる、勝てるときにはとことん勝っておく、これは勝負の世界の鉄則だ。
福本作品をまだ読んだことのない方や麻雀に興味のない方には、難しいかもしれないが、他の作品には無い表現が多いので、読まず嫌いをせずに読んでみてほしい。