鳴き麻雀を得意とする雀士の竜が、自身の力を求めるヤクザたちと闘牌を繰り広げていく麻雀漫画。会社社長や開業医など3人の男と卓を囲んでいた竜は、自身の職に関する質問に対し「親の遺産で暮らしている」とはぐらかしつつ、3人の捨牌を注意深く観察していく。その後、場を読み切った竜は役満気配の社長に臆さず危険な牌を堂々と捨て、直後にテンパイした社長の捨牌をロンし、見事に危険な場を流してみせた。1988年にOVA化、1995年に実写映画が公開された。
竜は鳴き麻雀を得意としている関係上、一局あたりの仕掛けが多いため、麻雀漫画によくある「思考を垂れ流すだけの展開」とならず、終始緊張感にあふれた駆け引きを楽しませてくれる。ヤクザが登場する世界観ながら麻雀に関しては非常にクリーンであり、誰一人イカサマを使うことなく各々の技術を武器に戦っていくので、麻雀をある程度嗜んでいる読者なら参考にできる戦法や考え方が多々見つかることだろう。また暴力団の抗争や主要人物の殺害などハードボイルドな展開もしばしば見られ、任侠系の作品として読んでも満足できるものとなっている。殺伐とした空気や勝負における泥臭いやりとりを好む人であれば、麻雀に詳しくなくとも楽しめるはずだ。
日本国の総理大臣であった小泉ジュンイチローが、様々な利権を懸けて諸外国のトップたちと「麻雀外交」を繰り広げていく麻雀バトルコメディ。アメリカ合衆国大統領のジョージ・ブッシュは麻雀初心者のフリをして小泉チルドレンの杉村タイゾーに近づき、賭け麻雀を仕掛けた末にタイゾーを倒し、身ぐるみはがして拘束してしまう。その後、ブッシュとタイゾーのいる部屋に突撃したジュンイチローは、戦闘機を賭け品としてブッシュと麻雀外交を始めるのだった。2010年にOVA化。
本作は、牌の絵柄を指の圧力で消したり、アガリ型を必殺技のように演出したり、「麻雀がオマケのアクション漫画」ともいえるほどの派手な闘牌シーンが最大の見所。その対局スタイルから押し引きや山読みといった技術要素は皆無であり、役さえ知っていれば十分話についていけるので、初心者や未経験者に読ませる麻雀布教用の漫画としては最適の一冊である。また登場人物や世界観については2000年代前半の政治模様を再現しており、当時を知る人にとっては、ブラックコメディな作品だと受けとめるかもしれない。首相が銃撃されたりナチスが復活したりと政治ドラマの展開自体は大スペクタルであるにもかかわらず、肝心の麻雀外交は笑いどころ満載であり、ひとたび読めばこのギャップに瞬く間にハマってしまうはずだ。
冴えない文学少女だった宮永咲が高校の麻雀部に入り、部員らと共に強豪校を打ち倒していく青春ドラマ。咲は同級生の須賀京太郎に麻雀の数合わせとして麻雀部へ連れて行かれ、不本意ながら場の空気に流されて部員らと雀卓を囲むことになる。すると咲が点数を自在に調整できるほどの実力を持っていることが明らかになり、部員の原村和(はらむらのどか)が帰路につく咲を呼び止めるも、咲は「麻雀がそれほど好きではない」と言い残しその場を去ってしまう。2009年、2014年にテレビアニメ化。
甲子園さながらの大規模な大会で麻雀対決を繰り広げるという世界観は、麻雀ファンなら誰しも一度は妄想したことがあるはずだ。本作はそれに加えて未来視や、自身の存在感を消すステルス化、特定の牌を集める能力など中二病要素をふんだんに盛り込んだバトルが展開されるので、麻雀に疎い読者でも退屈せずに読み進められる。また咲たちの対戦校全てに見せ場や選手の回想シーンがあり、それぞれの登場人物の魅力やチームの絆がうかがい知れるなど、青春漫画としての完成度も高い。作中に登場する雀士がほとんど女性であり、萌え要素やお色気成分を盛り込むことによって「麻雀漫画=硬派」のイメージから外れているからこそ、アニメ化の際に一時の麻雀ブームを生み出すほどの影響力を持つ作品になりえたのだろう。
ギャンブルに関して天賦の才を持つ赤木しげるが、極道の世界で様々な強者と闘牌を繰り広げていく麻雀漫画。ある日の夜、ヤクザとの賭け麻雀で負けが込んでいた南郷という男のもとに、全身ずぶ濡れの中学生・アカギがやってくる。この偶然を「流れを変えるキッカケ」と捉えた南郷が試しにアカギに麻雀を打たせてみたところ、彼は一夜にして麻雀の全てを理解し、ヤクザたちや代打ちのプロを相手に大勝利を収めるのだった。2005年にテレビアニメ化。
アカギは刑事が雀荘に聞き込みに来た隙に大胆なすり替えで役満手を作ったり、負けたら指を取ると脅してきた相手を逆に怯ませたりと、いかなる急場にも動じないどころか逆に利用してしまう豪胆さが魅力である。そうしたキャラの濃さゆえ、「死ねば助かるのに」「狂気の沙汰ほど面白い」など数々のアカギの名言は、作品が完結した今なお語り継がれている。また捨て牌の意味や雀士共通の癖など、実戦で役立つ相手の手の内の読み方が詳細に解説されており、数ある麻雀漫画の中でもひときわ実用的な一冊となっている。なお物語の後半は特殊ルールで戦うがゆえに技術要素が薄くなり、各話のほとんどが心理描写で埋め尽くされていくが、その先に待っている壮絶な決着に至るまでをぜひ見届けてほしい。
いじめられっ子の武田俊が、高校生の代打ち集団・ZOOに入り雀士としての才能を開花させていく麻雀漫画。俊は目立つ髪色が原因で学校でイジメに遭っていたが、ある日、自分の情けない姿を通りすがりのヤクザに一喝されたことを機に、不良らを徹底的に避ける形でイジメに抵抗し始める。そのころ極道の世界では「ヒョウ」をエースとする謎の女子高生代打ち集団が、大人らを相手に麻雀対決で勝利を収めていた。1998年にVシネマ化され、2013年に実写映画が公開された。
本作は麻雀漫画の中でもひときわアウトローな作風にもかかわらず、主人公サイドの登場人物の多くを高校生とすることで若い読者でも感情移入しやすくなっているのが魅力。ヤクザ同士の本格的な抗争もあるものの、基本的には代打ち集団の縄張り争いがメインに描かれるので、麻雀を生業とする人生に憧れている人ならより一層主人公に自己投影できることだろう。肝心の麻雀バトルでは技術要素とオカルト要素がバランス良く組み合わされており、どのキャラクターもそれぞれ異なる強みを持っているため、麻雀に関する読者の志向・熟練度を問わず楽しめるようになっている。また物語が進む内に肉弾戦を繰り広げるシーンも増えていくので、単純にアウトロー好きな人が読んでも期待外れになることはないはずだ。