江戸時代の化粧師(けわいし)という職業を題材に、江戸の習俗・仕事を描く時代劇ビジネス漫画。主人公・式亭小三馬は江戸の薬屋「式亭正舗」の若旦那。そして売れっ子の化粧師でもあった。江戸一番の腕利きである彼は、化粧で女性を美しくするだけでなく、現代のビジネスにも通じる広告システムを用いて江戸中を美しくしていくのだった。1990年にテレビアニメ化。作品の舞台を大正に移した「化粧師 KEWAISHI」が2002年映画化。
本作のヒロイン・花火は花火師・丸屋源三の娘。父は爆死してしまうがその後、すぐれた審美眼を見込まれ、式亭正舗にファッションコーディネーターとして身を寄せることになる。他、小三馬のもとには、絵師の春永、戯作家志願の小柳定九郎、販売計画担当の番頭・両助といった才能が集まる。その才能がパズルのピースのようにしっかりはまり、アーティスト兼プロデューサーの役割を担う小三馬のもと江戸全体を化粧による広告戦略で、新たな輝きを生んでいく。人だけでなく、町をも美しくする化粧師としての優れたビジネスセンスを持つ小三馬の生きざまと江戸習俗をリアルに描いた作品だ。巨匠の手による現代にも通じる本格時代劇ビジネス漫画である。
史実をもとに、江戸の二大花火商の生きざまを独自の解釈で描いた本格花火漫画。幼いころに身寄りをなくし、江戸一の花火商「鍵屋」に引き取られた清七(せいしち)。それから15年後、清七は鍵屋の主人・弥兵衛に新興の花火商「玉屋」へと店替えを申し出る。その後、玉屋の新しい花火が江戸で流行したことで弥兵衛は玉屋をライバルと認め挨拶へとおもむく。だが、そこで待っていたのは清七であった。清七こそが玉屋壱兵衛であったのだ。
花火を打ち上げた際の掛け声「たまや」や「かぎや」の起源となった江戸の二大花火商をモチーフとした本作。史実にならいつつ、独自の解釈をまじえた本作であるが、江戸の習俗や、花火職人の生活がリアルに描写されている。幼い日に大火災による花火の事故を間近で目撃し、花火の「紅の華」に魅せられてしまった清七。引き取られた鍵屋弥兵衛のもとでつらくあたられるも、花火への情熱は消えることなく、すさまじいものがあった。独立し、新興の玉屋壱兵衛として線香花火「長手牡丹」を流行させる清七と、老舗の大旦那として君臨する鍵屋弥兵衛。2人の花火商が死と隣り合わせの稼業で、己の誇りを花火の美しさに宿して競うさまが克明な心理描写で描かれる。
花火師を志す男子高校生の日々を描いた青春漫画。主人公の刹那煌(せつなこう)は、幼いころに火事で家族を亡くし、火がトラウマになっていた。そのトラウマを克服すべく故郷へ戻った煌は、祭りの花火に心を奪われる。そこで謎多き同級生の如月銀河(きさらぎぎんが)が花火工場の一人息子と知り、彼の家で花火師となるべく、修業を始める。銀河は、煌が幼い日に出会った「魔法使い」のような花火師の弟子であった。
煌の目を通して花火の美しさや、そこに至るまでの工程といった、いわば裏の部分までも掘り下げる本作。まず、火がトラウマである煌が心惹かれることで、それほどに美しい花火であることが強調される。幼い日に煌が出会った「魔法使い」のような花火師とのエピソードもまた、煌が花火に惹かれる心情を補強している。「魔法使い」の弟子である銀河の家で修業を始めようとする覚悟も、大げさにいえば宿命であるのだろう。また、煌や銀河をはじめ、美形キャラクターが多数登場するのも特徴の1つで、それもまた見目麗しく、心奪われる要素だ。花火づくりの工程や花火職人の生活が詳細に描かれ、それを通して花火の魅力を存分に紹介する、他に類を見ない本格派花火師漫画である。
悪霊を退治する「死神」となった男子高校生の戦いを描いたバトルダークファンタジー漫画。主人公の男子高校生・黒崎一護(くろさきいちご)は、悪霊・虚(ホロウ)に襲われた際、「死神」朽木(くちき)ルキアから力を譲り受け、虚を退治する存在「死神代行」となる。仲間とともに虚や敵対勢力と戦う中、一護は死神として成長していく。2004年にテレビアニメ化。2006年より4度の劇場アニメ化。2018年に実写映画化。2005年より幾度のミュージカル化がなされた。
主人公の一護のみならず、多数登場する個性的な仲間や、また魅力ある敵対するキャラクターの人気も高い本作。そういった人気キャラクターの中、志波空鶴(しばくうかく)、岩鷲(がんじゅ)の花火職人の姉弟もまた独特の存在だ。死神たちの世界・尸魂界(ソウル・ソサエティ)内の居住区・流魂街(るこんがい)に住まう没落貴族である志波家の2人。姉の空鶴はその志波家の当主である。2人の兄である死神・海燕(かいえん)の死の原因がルキアにあると考えていた岩鷲は当初、死神を忌み嫌っていたが、一護らと接するうちに仲間としてともに戦うこととなる。こういったドラマある登場人物や迫力のバトルで大人気を博し、一時代を築いたスタイリッシュなダークファンタジーである。
忍者に憧れる男子高校生が、とある女子高校生との出会いをきっかけに、彼女を君主として守るために戦う忍術バトル漫画。炎を出す能力を持つ主人公・花菱烈火(はなびしれっか)はある日、治癒能力を持つ少女・佐古下柳(さこしたやなぎ)と出会う。隠している能力を打ち明けあった2人は打ち解け、烈火は柳を守ることを決意する。烈火は柳を守る宿命のため、心強い仲間とともに次々と現れる難敵らと戦い成長していく。1997年にテレビアニメ化。
実母・陽炎の「時空流離の術」によって赤子のときに、戦国時代から現代へ流れ着いた烈火。その赤子の烈火を拾い育てたのが、烈火の養父である花火職人の茂男だ。朝は寝起きの悪い烈火を起こそうと大乱闘を繰り広げ、日常での喧嘩はたえないが、烈火に深い愛情を注いで育ててきた。そのため、烈火は茂男が実父ではないと知っても、彼を慕っている。また、茂男の影響で、火薬を戦闘に使う烈火であるが、茂男からは喧嘩で火薬を使わないよう厳命されている。柳を守ることと同時に、陽炎の呪いを解くために始まる戦いの物語である本作。派手なバトルや、仲間との友情などに目がいきがちだが、陽炎や茂男との家族の愛情の物語でもある。