遙は入学早々に「風鈴高校の頂点を取りに来た」とクラスメイトに宣言し、面と向かって喧嘩を売る。そんな彼に食ってかかったのは同級生の杉下京太郎(すぎしたきょうたろう)だ。彼は中学時代から風鈴高校に出入りし、その情熱と才能を認められ、唯一入学前から防風鈴を名乗ることを許された男。風鈴高校、そして総代の梅宮を敬愛するあまり、杉下は遙の軽率とも取れる発言が許せず殴りかかる。教室は緊迫した空気に包まれるが、そんな中突如新入生を歓迎する校内放送が流れる。声の主こそ、風鈴の頂点である梅宮だった。彼は「これからの学園生活を楽しむように」など和やかなエールを送るが、最後に新入生に「風鈴高校の唯一のルール」であるとして、「お前ら…街を守れ」と告げた。人や物、思いといった大切なものを守ること説く彼の言葉に新入生たちは鼓舞され、いっせいに顔つきが変わる。張り詰めた空気の遙と杉下も、その放送をきっかけに互いに握手を交わし共に街を守っていくことになる。新入生とはいえ、中学時代に名を馳せた強者たちをたった一声で統率する梅宮。彼の底知れぬリーダー力を感じるセリフだ。
防風鈴の日課である街の巡回をしていた遥と杉下は、中学生を助けるため、力の絶対信仰を掲げる獅子頭連(ししとうれん)のヤンキーたちを蹴倒してしまう。この出来事をきっかけに防風鈴と獅子頭連の抗争が始まり、獅子頭連の頭取である兎耳山丁子(とみやまちょうじ)の提案によって、防風鈴と獅子頭連で喧嘩の団体戦を行うことになる。戦いの前夜、梅宮を中心に喧嘩の作戦を練る防風鈴のメンバーたちであったが、彼は「話せばわかる」と流暢に構え周囲を驚かせる。戸惑う遙に対して、梅宮は「ケンカは”対話”。拳は時に言葉より相手を知る言語になる」と説明。おそらく今まで幾度も修羅場をくぐってきた梅宮が発するその言葉は意外なものだったが、その”強さ”により説得力が増し、自然と納得してしまうような迫力がある。梅宮の一言に衝撃を受ける遙だったが、この後に待ち受ける戦いで彼はこの時の言葉を思い出して見事喧嘩に勝利する。梅宮の喧嘩論はもちろん、身をもって実感する遙の喧嘩シーンにも注目してほしい。
防風鈴と獅子頭連の団体戦も中盤に差し掛かり、いよいよ防風鈴が誇る四天王・柊登馬(ひいらぎとうま)と獅子頭連で5本指に入るほどの実力者・佐狐浩太(さここうた)の対戦に突入する。この対戦では他の相手とは異なりどこか私怨を感じさせる佐狐の振る舞いが目立つがそれもそのはず。彼と柊は同じ中学校に通っており、当時いじめられていた彼を助けたのが柊だった。佐狐は柊に憧れ、彼が頂点を獲ることを心から望んでいたが、当の柊は風鈴高校に入学し梅宮をサポートすると佐狐に告げ、彼を突き放す。信頼していた柊に裏切られたと感じた佐狐は、この恨みを晴らすべく今回の団体戦に臨んだのだ。激闘の末、柊は「期待にこたえてやれなくてすまなかった」と佐狐に過去の出来事を謝り、渾身の一撃を放ち勝利する。この2人の物語はそれぞれの回想シーンで描かれるため、読者しか知らない構成になっており防風鈴のメンバーも分からないようになっているが、戦いに勝利して戻ってきた柊に詳細を聞く者はいなかった。「聞かないのか?あいつが誰なんだとか」と梅宮に問いかける柊だったが、彼は「話したくなったら話してくれよ、それがオレの聞きたい話だ」と答えるだけだった。梅宮の相手を尊重する広い心、そして相手が話すのを黙って待つ、リーダーらしい心構えを感じるシーンだ。
圧倒的な強さで獅子頭連との団体戦に勝利した防風鈴。獅子頭連が巨悪化してしまった背景には、兎耳山が「自由」と「強さ」の意味を履き違えてしまったという理由があった。獅子頭連は一連の戦いを通し、そのことに気付かせてくれた防風鈴に感謝の意を示す。結果的に和解した防風鈴と獅子頭連は共に祝杯をあげることになるが、その席で兎耳山は梅宮にトップとしての信念について尋ねだす。みんなが楽しく生活できる日々を送りたいと考えた時に、たまたま自分にできることが風鈴のトップに立つことだったと答える梅宮。そんな彼の視野の広さや思考の的確さを目の当たりにした兎耳山は、改めて彼に感服する。「てっぺんは一人じゃなれねーだろ?てっぺんになれたのはみんなが担いでくれたからだ オレのやりたいことに共感して協力してくれたから…」と語る梅宮。自らの強さやリーダーという立場にあぐらをかかずに、リーダーとしての自覚と責任を持つ。防風鈴のメンバーが彼についていきたいと思える全ての理由が、このセリフに詰まっているのではないだろうか。