アンドロイドの男子高校生と個性的なキャラたちがおりなす正統派日常系学園ギャグ漫画。第1話では、春風(はるかぜ)高校光画部(写真部)が撮影旅行先の山中で主人公のR(あ~る)・田中一郎に出会い、1学期の最終日に彼が転校してくるまでが描かれる。とぼけた性格のアンドロイド・Rと、変人揃いの光画部の面々の学園生活にスポットをあてた作品だ。2010年代に入り、幾度か単発での新作発表があり、2018年には31年ぶりの続刊が発売され、話題となった。1991年にビデオアニメ化。
Rと光画部のメンバーを中心に描かれる日々のドタバタな学園生活がひたすら楽しい本作。当時としては珍しい、文化部にスポットをあてた作品であり、そういった意味でも斬新であった。また、元々パロディによるギャグを得意とし、そちらの方面からデビューした作者なので、本作でもそういったハイセンスなギャグが冴えわたっており、元ネタは文学、映画、漫画、特撮など多岐にわたる。そういった中で時折シニカルなネタも登場し、社会派の一面を感じさせる知性が見受けられ、後の作品の礎が本作の時点ですでに確立されつつあったことを思わせる。連載当時から30年以上を経た今日に至るまで根強い人気を誇り、今や主流の一つとなった文化部系日常系漫画の元祖ともいえる偉大な作品だ。
歩行式作業ロボット(レイバー)が実用化された、当時における近未来を舞台としたロボットSF漫画。第1話では、女性警察官で、後にレイバーの操縦者となる主人公・泉野明(いずみ のあ)が「警視庁警備部特科車両2課」通称・特車2課の第2小隊に加わるところから始まる。1989年にテレビアニメ化。1988年、1990年にビデオアニメ化。1989年、1993年、2002年に劇場アニメ化。2014年に実写映画化。2016年に短編アニメ化。
レイバー犯罪が社会問題となった首都圏を舞台に、警視庁が対策として設けた「特車2課」のパトロール用レイバー、通称「パトレイバー」を擁する第2小隊の活躍を描いた本作。新型パトレイバー「イングラム」の操縦者・野明を中心に、一見、昼行灯の後藤隊長や、レイバー製造企業の御曹司・篠原遊馬(しのはらあすま)など個性的なメンバーが揃っている。それら面々が社会悪と正面から対峙し、ときに苦悩しながら戦っていく骨太の社会派SFドラマだ。登場する新鋭レイバー、例えばブロッケンやグリフォンなどとの戦闘も熱く描かれている。漫画だけでなく、OVA、テレビ・劇場アニメなどでも成功した本作は、マルチメディアミックスの先駆者的作品としても名高い。作者の代表作であり、ロボットSFものの金字塔である。
地球人と一体化した美女宇宙人の活躍を描く本格SF作品。宇宙連邦警察の捜査官であるバーディー・シフォン・アルティラはテロリストを追い地球に赴いた際、偶然居合わせた高校生・千川(せんかわ)つとむに誤って致命傷を負わせてしまい、肉体修復完了まで一体化することとなる。本作は1985年より発表され、諸般の事情で未完のまま休止していたが、リメイク作品が2003年より連載、その続編には『鉄腕バーディー EVOLUTION』がある。1996年にビデオアニメ化。2008年、2009年にテレビアニメ化。
「二心同体」となった2人の戦いと、苦悩のドラマが丹念に描かれる本作。地球へ逃げ込んだ異星人犯罪者を追ってきた主人公が、地球人を傷つけてしまい一体化するという王道エピソードが、作者の巧みな物語の作り込みやキャラ設定により、本作は新しいSFの定番として完成しているのではないだろうか。同作者の他作品の連載開始に伴い2度休止し未完となっていた本作。2003年にリメイクされ、こちらも掲載誌休刊とともに他誌に移籍。そうした複雑な経緯をたどってきた作品である。発表開始が1985年で、『鉄腕バーディー EVOLUTION』として完結したのが2012年であるので、紆余曲折の27年にわたる作者最長のライフワーク的作品ともいえる。
駆け出し公務員の女性と不死者の青年が連続殺人事件を追う本格ミステリー作品。「オキナガ」と呼ばれる不老不死の人間が存在する社会が舞台。厚生労働省大臣官房参事からの辞令でオキナガの監督を行う部署「夜間衛生管理課」、通称「夜衛管(やえいかん)」に配属された新米公務員の伏木(ふせぎ)あかりと88歳のオキナガの青年・雪村魁(ゆきむらかい)が「羊殺し」と呼ばれる、70年にわたり未年(ひつじどし)に事を行っている連続殺人犯を追う物語である。
「オキナガ案件」と呼ばれる、オキナガにまつわる事件に次々関わっていく、あかりと魁。その折々で、魁が長年追っていた羊殺しによる連続殺人事件に触れていくあかり。そんな中、60年前に殺害された魁の幼馴染「長尾棗(ながおなつめ)」があかりの祖母であったことが判明し、2人はさらに深く事件に足を踏み入れるのであった。推定10万人が国内に存在するというオキナガ。彼・彼女らは差別や中傷などといった問題にさらされながらも、社会に溶け込んでいる。そういった社会で生きるオキナガの不老不死者であることの悲哀や、愛する者との哀別も本作では重要なテーマだ。これまでの作品で、絶えず鋭い社会風刺を行ってきた作者による新境地となる本格ミステリー作品である。
武将・伊勢新九郎盛時(いせしんくろうもりとき)、後の北条早雲の生涯を作者独自の解釈で描いた本格歴史漫画。室町時代中後期(戦国時代初期)が本作の舞台。冒頭では明応2(1493)年、38歳の伊勢新九郎が足利政知(まさとも)の子・茶々丸を討ち取るべく襲撃する場面から始まる。そして、さかのぼって27年前、まだ新九郎が千代丸と呼ばれていた頃の物語となる。大道寺(だいどうじ)の家に育てられていた千代丸だが、父・伊勢盛定の元に引き取られることとなり、伊勢宗家の屋敷で暮らすこととなる。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった武将が歴史上に登場する少し前の戦国時代初期。その中で生きた小田原北条氏の祖、後の北条早雲となる伊勢新九郎にスポットをあてた本作。最初期の戦国武将であり、素浪人から大名となった「下克上」の典型例として、これまでよく語られてきた伊勢新九郎の生涯が、作者の新たな歴史解釈と、卓越したアレンジ力で描かれる。誰でも知っている有名な武将ではなく、戦国武将のはしりとして知られる人物を題材としたのも作者らしい。これまでの作品と同様、硬軟おりまぜた描写は本作でも健在で、歴史作品であるこの作品においても、セリフ回しなどから作者のセンスが見てとれる。目下の最新作であり、新しい形で歴史人物の生を描いた意欲作である。